【この記事の結論・要約】
- Instagramでの誹謗中傷は、どこに書き込まれたかによってとれる手続が変わります。投稿やコメントは発信者情報開示請求の対象になりますが、DMは特定の相手に向けた通信であるため、この枠組みは使えません。
- ストーリーは24時間で消えます。見つけた時点で保存しなければ、内容を示せなくなります。
- 写真や動画が使われている場合には、名誉毀損だけでなく、肖像権侵害や著作権侵害としても主張できることがあります。
はじめに
Instagramは、写真や動画を中心としたサービスです。
そのため、文字だけの掲示板とは異なる形の被害が生じます。
実名や顔写真を出して使っている方も多く、書き込まれた内容が現実の生活に直接影響しやすいという特徴もあります。
この記事では、Instagramで誹謗中傷を受けた場合に、投稿の削除や投稿者の特定ができるのか、どのような手続をとることになるのかを解説します。
Instagramで起こる被害の形
| 場所 | 被害の例 |
|---|---|
| 投稿の本文 | 実名や活動名を挙げた中傷、虚偽の事実の記載 |
| コメント欄 | 自分の投稿への攻撃的な書き込み |
| ストーリー | 24時間で消える形での中傷、スクリーンショットの拡散 |
| ダイレクトメッセージ | 個別に送られる暴言、脅し、金銭の要求 |
| プロフィール欄 | 特定の人をおとしめる記載、アカウント名の使用 |
| なりすましアカウント | 本人になりすました投稿、写真の無断使用 |
複数の形が同時に起きていることもあります。
コメント欄での書き込みが始まり、その後DMが届くようになるという形です。
どこに書き込まれたかで扱いが変わる
開示請求の対象となる通信
発信者情報開示請求は、情報流通プラットフォーム対処法にもとづく手続です。
同法が対象とするのは特定電気通信であり、不特定の者によって受信されることを目的とする通信をいいます。
閲覧する人が限られていない通信が対象になるということです。
| 書き込まれた場所 | 開示請求の枠組み |
|---|---|
| 公開アカウントの投稿・コメント | 対象になる |
| 公開アカウントのストーリー | 対象になる |
| 非公開アカウントの投稿 | フォロワーの範囲によって判断が分かれる |
| ダイレクトメッセージ | 特定の相手に向けた通信であり、枠組みを使えない |
ダイレクトメッセージの場合
DMは、特定の相手に向けて送られるものです。
不特定の者によって受信されることを目的とする通信とはいえないため、開示請求の枠組みは使えません。
内容が悪質であっても、この点は変わりません。
「DMでも開示請求ができる」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。
もっとも、責任を追及できないわけではありません。
相手が誰か分かっている場合には損害賠償を請求できますし、内容によっては刑事の手続をとることも考えられます。
非公開アカウントの場合
非公開に設定されたアカウントの投稿は、承認されたフォロワーしか閲覧できません。
フォロワーが数人にとどまる場合と、数百人がいる場合とでは、状況が異なります。
フォロワーの人数、承認の基準、そこから外部に広まる可能性を踏まえて検討することになります。
権利侵害が成立するか
手続がとれるかという問題とは別に、その投稿が権利侵害にあたるかを検討します。
名誉毀損
具体的な事実を示して社会的評価を低下させた場合です。
公然性が必要であるため、DMでは成立しにくくなります。
他方、非公開アカウントであっても、フォロワーが多数であれば、そこから外部に広まる可能性を踏まえて公然性が認められる余地があります。

名誉感情の侵害
事実を伴わない罵倒については、名誉感情の侵害として主張することになります。
公然性を必要としないと考えられており、DMでも成立し得ます。
もっとも、社会通念上許される限度を超える侮辱行為といえることが必要です。

プライバシー侵害
本名、勤務先、交際関係といった私生活に関する事柄を書き込まれた場合です。
Instagramでは、投稿から生活圏が推測されることがあります。
そこから住所や勤務先を特定して書き込むという形の被害も生じます。

肖像権侵害・著作権侵害
写真が中心のサービスであるため、この2つが使える場面が多くあります。
自分が写っている写真を無断で使われていれば、肖像権の侵害にあたり得ます。
自分が撮影した写真を無断で使われていれば、著作権の侵害としても主張できます。
名誉毀損として争いにくい投稿でも、写真が使われていれば、これらの構成で削除や特定を進められることがあります。
投稿にどの写真が使われているかを確認することが、方針を決めるうえで重要になります。
もっとも、自分が写っている写真であっても、公開の場で撮影されたものや、自分で広く公開していたものについては、判断が変わることがあります。
その写真をどこに公開していたか、誰が入手できる状態にあったかを確認することになります。

投稿の削除
運営への報告
Instagramには、規約に違反する投稿を報告する機能があります。
いじめや嫌がらせ、なりすまし、性的な内容などは規約で禁じられており、報告によって削除やアカウントの停止といった対応がとられることがあります。
まず試す価値のある方法です。
ただし、運営の対応は運営の判断によるものであり、法律上の権利として削除を求めるものではありません。
報告しても対応されないことがあります。
自分のコメント欄の場合
自分の投稿に付けられたコメントは、自分で削除できます。
もっとも、削除すると内容を示せなくなります。
手続をとる可能性があるのであれば、削除する前に保存してください。
特定のアカウントからのコメントを制限する機能や、特定の語を含むコメントを表示しない機能もあります。
被害が続いている間は、これらを使って負担を減らすことも考えられます。
裁判手続による削除
運営への報告で対応されない場合には、送信防止措置依頼や、裁判所への仮処分の申立てを検討します。
投稿者を特定する方法
アカウント名だけでは特定できない
Instagramのアカウント名や表示名は自由に設定でき、変更もできます。
これらが分かっているだけでは、現実の人物にはたどり着けません。
プロフィールの写真や投稿の内容から相手の見当がつくことはありますが、それだけでは手続の資料になりません。
二段階の手続
- 運営会社から、投稿時のIPアドレスなどの開示を受ける
- そのIPアドレスを管理しているアクセスプロバイダから、契約者の情報の開示を受ける
権利が侵害されたことが明らかであることが要件とされているため、投稿の内容がこの水準に達しているかを検討することになります。

ログイン時の記録による場合
Instagramのようなログイン型のSNSの場合、投稿時のIPアドレスが保存されていないことがあります。
その場合、ログイン時の記録をもとに特定することになります。
この情報は特定発信者情報と呼ばれ、開示を求めるには追加の要件を満たす必要があります。
SNSの事案では、この点も確認しながら手続を進めることになります。
時間の制約
アクセスプロバイダの通信記録の保存期間は一般に3か月から6か月程度で、事業者によって異なります。
裁判手続による特定には3か月から9か月程度かかるため、投稿を見つけてから相談までに時間をかけると間に合わなくなります。
裏アカウントからの投稿
本アカウントとは別に作られたもの
本名で使っているアカウントとは別に、匿名のアカウントを作って書き込むという形があります。
アカウントが別であっても、手続の進め方は変わりません。
投稿時の通信記録が残っていれば、特定できる可能性があります。
身近な人物である場合
投稿の内容から、自分の生活を知っている人物だと分かることがあります。
この場合でも、推測だけで相手を名指しすることは避けてください。
推測が誤っていた場合、こちらが責任を問われる可能性があります。
心当たりがあることは、手続を進めるうえで有用な情報です。
相談の際にお伝えいただければ、それを踏まえて方針を検討します。
アカウントが削除された場合
投稿者がアカウントを削除してしまうことがあります。
投稿の内容とURL、アカウント名を保存していれば、手続を進められる場合があります。
何も残っていなければ、対象を特定できず手続に進めません。
ストーリーでの被害
ストーリーは、投稿から24時間で自動的に消えます。
消えることを前提に、投稿の本文では書かない内容が書かれることがあります。
見つけた時点で保存しなければ、内容を示せなくなります。
ストーリーでの被害については、以下の記事で詳しく解説しています。

なりすましアカウント
本人になりすましたアカウントが作られ、写真を無断で使われるという被害があります。
Instagramの規約では、他人になりすます行為が禁じられています。
運営への報告によって削除される場合があります。
法的な構成としては、写真の無断使用について肖像権侵害や著作権侵害、なりすましによって行われた投稿の内容について名誉毀損といった主張が考えられます。
なりすまし行為そのものをどう評価するかについては、裁判例の判断が分かれており、確立した基準があるとはいえません。
証拠の保存
保存すべき内容
- 投稿やコメントの本文と、投稿された日時
- 投稿のURL
- 投稿者のアカウント名、表示名、プロフィール画面
- 使われている写真や動画
- 前後のやり取り
- 非公開アカウントの場合は、フォロワーの人数が分かる画面
画面の一部だけを切り取った画像では、どの投稿か分からず、手続で使えないことがあります。
アカウント名とURLが入るように保存してください。
消える前に保存する
Instagramでは、投稿もコメントも、投稿者が自分で削除できます。
ストーリーは24時間で自動的に消えます。
気づいた時点での保存が、その後の手続を左右します。
不快な内容を見返すことが負担であっても、まず保存してください。
刑事の手続
問題となる犯罪
| 書き込みの内容 | 問題となる犯罪 | 公然性 |
|---|---|---|
| 具体的な事実を示して評価を下げるもの | 名誉毀損罪(刑法230条) | 必要 |
| 事実を伴わない罵倒 | 侮辱罪(刑法231条) | 必要 |
| 危害を加えることを告げるもの | 脅迫罪(刑法222条) | 不要 |
| 金銭などを要求するもの | 恐喝罪(刑法249条)など | 不要 |
| 性的な画像を拡散すると告げるもの | 脅迫罪、強要罪など | 不要 |
DMでの被害では、名誉毀損罪や侮辱罪は成立しにくくなりますが、脅迫罪や恐喝罪は成立し得ます。
告訴の期間
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。
告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条1項)。
匿名の投稿では、投稿者が判明した時点からこの期間が進み始めます。
請求できる金額の水準
投稿者を特定できた場合、損害賠償を請求することになります。
法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
同報告書では、不特定多数の者が認識し得たことや、社会的評価の低下が大きいことが増額の方向で考慮される事情として挙げられています。
投稿の回数が多い事案では金額が上がる傾向があり、同報告書では、投稿1回の事案の平均が30.7万円であるのに対し、10回から49回では78.3万円とされています。
なお、同報告書は、特定の民間データベースに登録された裁判例から抽出したものであり、同種事案全般の傾向を直接反映するものではありません。

店舗や事業者が被害を受けた場合
Instagramを集客に使っている店舗や事業者も、被害を受けることがあります。
投稿とコメントの両方が対象になる
自社の投稿に付けられたコメントのほか、第三者の投稿で店舗名を挙げて批判されることもあります。
位置情報やタグから、自社に関する投稿を見つけられる場合があります。
体験にもとづく投稿は争いにくい
実際に利用した人が体験を書いている場合、その体験があったこと自体を否定するのは容易ではありません。
削除や特定を求める場合には、投稿のうち客観的に事実と異なることを示せる部分に着目することになります。
「異物が入っていた」「無資格の者が施術していた」といった記載であれば、事実と異なることを示せる余地があります。

従業員が対象にされた場合
店舗への批判にとどまらず、特定の従業員の容姿や人格に向けられた書き込みがされることがあります。
この場合、権利を侵害されているのはその従業員本人です。
会社として対応する場合でも、本人が請求する立場にあることを前提に進めることになります。
書き込んでしまった側の対応
匿名のアカウントであれば分からないと考えて書き込んでしまう例があります。
しかし、投稿時の通信記録が残っていれば、特定される可能性があります。
投稿を削除しても、相手方が保存していれば資料として残ります。
プロバイダから意見照会書が届いた場合や、相手方の代理人から請求書が届いた場合には、期限が定められていることが多くあります。
放置すると訴訟を提起され、対応の選択肢が狭まります。

相談前に整理しておくこと
ご相談の際に次の点を整理しておいていただけると、検討が進みます。
- 対象となる投稿の一覧(本文、URL、投稿日時、アカウント名)
- どこに書き込まれたか(投稿、コメント、ストーリー、DMの別)
- 投稿者のアカウントが公開か非公開か、フォロワーの人数
- 自分の写真が使われている場合、その写真をどこに公開していたか
- 投稿の内容が事実と異なることを示せる資料
- 投稿者に心当たりがある場合、その相手とのやり取りの経緯
特に、どこに書き込まれたかによってとれる手続が変わります。
投稿とDMの両方がある場合には、それぞれについてお持ちください。
よくある質問(FAQ)
- DMで暴言を受けています。相手を特定できますか。
-
DMは特定の相手に向けた通信であるため、発信者情報開示請求の枠組みは使えません。
もっとも、相手が誰か分かっている場合には損害賠償を請求できますし、内容によっては脅迫罪などとして刑事の手続をとることも考えられます。
- ストーリーは消えてしまいました。もう対応できませんか。
-
内容を保存していれば、手続を進められる場合があります。
何も残っていない場合には、対象を特定できず難しくなります。他の方が保存していないか、確認していただくことも考えられます。
- 非公開アカウントでの書き込みも対象になりますか。
-
フォロワーの人数や、承認の基準によって判断が分かれます。
フォロワーが多数であれば、そこから外部に広まる可能性を踏まえて公然性が認められる余地があります。フォロワーの人数が分かる画面を保存しておいてください。
- 自分の写真を勝手に使われています。どうすればよいですか。
-
肖像権侵害として削除や損害賠償を求められます。
自分が撮影した写真であれば、著作権侵害としても主張できます。名誉毀損として争いにくい投稿でも、これらの構成で進められることがあります。
- 相手のアカウントが消えてしまいました。
-
投稿の内容とURL、アカウント名を保存していれば、手続を進められる場合があります。
もっとも、通信記録の保存期間という制約もあるため、早い段階でご相談ください。
- 投稿者に心当たりがあります。直接確かめてもよいですか。
-
お勧めできません。
推測が誤っていた場合、こちらが責任を問われる可能性があります。
公の場で名指しをすれば、名誉毀損にあたる可能性もあります。心当たりがあることは相談の際にお伝えください。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- 投稿やコメントは開示請求の対象になるが、DMは特定の相手に向けた通信であり枠組みを使えない
- 非公開アカウントの場合は、フォロワーの人数や範囲によって判断が分かれる
- 写真が使われていれば、肖像権侵害や著作権侵害としても主張できる
- ストーリーは24時間で消えるため、見つけた時点での保存が必要である
- 投稿者に心当たりがあっても、推測だけで名指しすることは避ける
Instagramでは、写真や動画が使われていることが多く、名誉毀損以外の構成をとれる場面があります。
どの構成で進めるかによって、削除や特定の見通しが変わります。
当事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴のいずれにも対応しています。
Instagramでの被害についても、当事務所にご相談ください。
投稿者の特定には通信記録の保存期間という時間的な制約があります。
お早めにご相談ください。
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