性的ディープフェイクの被害|削除請求と加害者の特定を解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 性的ディープフェイクを正面から禁止する法律は、現時点でありません。名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害といった既存の枠組みで対応することになります。
  2. 法律に規定がないことと、何もできないことは別です。削除の請求も、投稿者に対する損害賠償の請求も進められます。
  3. 被害者が18歳未満の場合は、児童ポルノにあたる可能性があります。鳥取県は条例で、生成AIによる加工画像を児童ポルノ等に含めることを明確化しました。

はじめに

顔写真をもとに、実際には存在しない性的な画像や動画が作られ、インターネット上に公開される被害が生じています。

SNSに載せた写真や卒業アルバムの写真など、日常の中で公開している画像が使われます。
作られた画像は本物と見分けがつきにくく、拡散すると回収できません。

この記事では、被害に気づいたときに何をすべきか、現在の法律でどこまで対応できるのか、加害者を特定できるのかを解説します。

被害に気づいたときにすること

記録を残す

  • 投稿されているページのURL
  • 投稿日時とアカウント名
  • 投稿に付けられている説明文やコメント
  • もとになったと思われる自分の写真
  • 知らせてくれた方がいる場合は、その経緯

画像そのものを直視することが難しい場合は、URLと日時の記録だけでも残しておいてください。
投稿者が削除したり、アカウントを消したりすると、確認できなくなります。

どこまで広がっているかを確認する

1か所だけとは限りません。

自分の氏名やアカウント名で検索する、画像から検索する、知らせてくれた方に確認するといった方法で、範囲を把握します。

削除の申請を行う

主要なSNSや画像共有サイトは、同意のない性的な画像の投稿を規約で禁じており、削除の申請を受け付けています。

本人からの申請で削除されることもあります。
対応されない場合に、次に述べる法的な手続を検討することになります。

性的ディープフェイクとは

言葉の意味

ディープフェイクは、深層学習を意味する英語と、偽物を意味する英語を組み合わせて作られた語です。
実在する人物の顔などを用いて、本物のように見える偽の画像や動画を作る技術、またはそれによって作られたものを指します。

性的な内容のものは、性的ディープフェイクやディープフェイクポルノと呼ばれます。
いずれも法律上の用語ではありません。

従来のコラージュとの違い

顔写真を性的な画像に合成する行為は、以前から行われてきました。
手作業による合成と、生成AIによる合成とで、適用される法律が変わるわけではありません。

違いは、作られる精巧さと量です。
短時間で大量に、本物と区別しにくい水準のものが作られるため、被害の広がり方が大きくなります。

顔写真1枚から作られる

特別な素材は必要ありません。
公開している顔写真があれば、誰でも対象になり得ます。

芸能人や配信者に限らず、学校や職場の関係者が被害を受ける場合があります。

被害の広がり

読売新聞が2023年12月から2024年11月にかけて、性的な偽画像を作成できるとうたう41のウェブサイトへのアクセス数を国別に調べたところ、日本からのアクセス数は米国、インドに次いで世界で3番目に多かったとされています1
日本からの月平均アクセス者数は約41万人で、その8割がスマートフォンからだったとされています。

また、警察庁の調査を報じた記事によれば、18歳未満のときの写真を性的画像に加工された被害について、2024年には全国の警察に110件の相談・申告が寄せられ、7件が摘発されたとされています。
2025年は9月までに79件の相談・申告があり、被害者の内訳は小学生4件、中学生41件、高校生25件、その他9件で、被害者と加害者の関係が同級生・同じ学校であるものが42件だったとされています。

こうした数字からも、被害が身近な関係の中で生じていることがうかがえます。

正面から規制する法律がない

この分野の特徴は、行為そのものを禁じる法律がないという点です。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律

いわゆるリベンジポルノを規制する法律です。

同法が対象とするのは、実際に撮影された性的な姿態の画像です。
生成AIで作られた画像は、実際に撮影されたものではないため、この法律の対象になるかが問題になります。

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わいせつ電磁的記録頒布等罪

刑法175条は、わいせつな電磁的記録を頒布した者を処罰すると定めています。

この罪は、社会の性的な秩序を守るための規定です。
被害を受けた本人の権利を守るためのものではないため、個人としての救済には直接つながりません。

また、この罪はわいせつ性のある画像を対象とするため、わいせつ性が認められない画像を処罰することはできません。
2025年10月には、生成AIで特定の人物の画像をもとに性的な画像を作り公開した人が、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕された例が報じられています。
この事案では、画像全体が生成AIによって作られていたため、名誉毀損罪での立件例がないとも報じられています。

AI新法にも規定がない

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律は、2025年に成立しました。

もっとも、同法は基本理念と国等の責務を定めるもので、罰則はありません。
生成AIによる画像の作成を直接規制するものではありません。

既存の枠組みで対応することになる

そのため、名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害、著作権侵害といった既存の枠組みを組み合わせて対応することになります。

2020年10月に報道された事例では、女性芸能人の顔を合成したアダルト動画をインターネット上に公開したとして、複数名が名誉毀損罪と著作権法違反の疑いで逮捕されました。
これが、国内でディープフェイクポルノに関する逮捕の初例とされています。

もとになった動画の権利者との関係で著作権の問題が生じ、顔を使われた本人との関係で名誉毀損の問題が生じるという構造です。

鳥取県の条例

全国で最初の規制

鳥取県は、青少年健全育成条例を改正し、児童ポルノ等の定義を明確化しました。

生成AIその他の情報処理に関する技術を利用して青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態を描写したものについても、児童ポルノ等に含まれるという解釈を示し、その作成、製造、提供を禁止しています。
2025年(令和7年)4月1日に施行されました。

県内に居住、通学、通勤する18歳未満の子どもが被害者であれば、県外で作成や提供が行われた場合も対象になるとされています。

過料と削除命令

同年6月30日には、実効性を高めるための再改正が可決されました。

禁止規定に違反した者に対して5万円以下の過料を科すこと、画像の廃棄や削除を命じること、命令に従わない場合に氏名を公表することが定められています。

国の法律との関係

条例による規制は、その自治体の範囲にとどまります。

全国的な規制は、現時点では国の法律によることになりますが、そこに明確な規定がありません。
国会でも取り上げられており、今後の動きによって状況が変わる可能性があります。

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律が2025年5月に成立した際、衆参両院の内閣委員会は、政府に対し、AI技術を悪用したディープフェイクポルノ、とりわけ児童の画像等を使用したものへの対策を求める附帯決議を行いました。
これを受けて、2025年12月に策定された人工知能基本計画では、ディープフェイクなどAIを悪用した問題について、調査研究を実施しリスクへの対応を行うことが盛り込まれています。

もっとも、これらは対応の方針を示すものであり、罰則を伴う法律の制定には至っていません。
諸外国では、米国、英国、フランス、オーストラリア、韓国、台湾などがすでに専用の処罰規定を設けています。
今後、国内でも法整備が進む可能性があります。

民事上の責任

削除や損害賠償を求める場合には、どの権利が侵害されたかを主張することになります。

権利主張の内容
名誉毀損その人が性的な行為をしたという事実を示すものとして、社会的評価を低下させる
プライバシー侵害性的な事柄について、公にされたくない状態を害する
肖像権侵害顔の画像を承諾なく使用される
名誉感情の侵害人格的価値に対する自己評価をおとしめられる

名誉毀損として主張する場合

偽の画像であっても、名誉毀損は成立し得ます。

名誉毀損で問題になるのは、社会から受ける評価が下がるかどうかです。
その画像が偽物であるかどうかではなく、閲覧した人がその人の行為として受け取るかどうかが問われます。

もっとも、明らかに作り物であると分かる形で示されている場合には、判断が分かれます。

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肖像権侵害として主張する場合

顔の画像を承諾なく使われている点をとらえるものです。

もとになった写真が本人のものであれば、その使用が問題になります。
画像が偽物であることを前提としても主張できるため、構成として組み立てやすい面があります。

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複数の構成を併せて主張する

実務では、いずれか一つに絞るのではなく、複数の権利侵害を併せて主張することになります。

削除を求める場合も、損害賠償を求める場合も、投稿の内容と表示のされ方に即して構成を決めます。

削除を求める方法

段階

  1. サイトの削除フォームからの申請
  2. 送信防止措置依頼
  3. 裁判所への仮処分の申立て

性的な画像については、サイトの規約で明確に禁じられていることが多く、申請の段階で削除される場合があります。

拡散した場合

転載された先がある場合には、それぞれについて削除を求めることになります。

拡散が進むほど対応の負担が増えます。
検索結果に表示されている場合には、検索サービスに対する対応も検討します。

削除した後も確認が必要になる

一度削除されても、同じ画像が別の場所に投稿されることがあります。

画像はすでに複製されているため、削除によって存在自体をなくすことはできません。
定期的に確認し、見つかるたびに削除を求めるという対応が必要になる場合があります。

投稿者を特定して、今後同様の投稿をしないことを約束させることに意味があるのは、この点にあります。

加害者を特定できるか

投稿された場所による

不特定の人が閲覧できる場所に投稿されていれば、発信者情報開示請求の対象になり得ます。

他方、ダイレクトメッセージやグループ内でのやり取りで送られた場合には、この枠組みは使えません。

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作った人と投稿した人

画像を作った人と、それを投稿した人が同じとは限りません。

開示請求で分かるのは、投稿した人につながる情報です。
作った人を特定するには、そこから先の事情を確認していくことになります。

身近な人物による場合

もとになった写真が、限られた範囲にしか公開していないものである場合には、加害者が身近にいる可能性があります。

どの写真が使われたのか、その写真を誰が見られる状態にあったのかを整理することが、手がかりになります。

刑事の手続

相談と被害届

各都道府県の警察には、サイバー犯罪に関する相談窓口があります。

相談に行く際は、投稿のURL、投稿日時、アカウント名を整理して持参してください。
もとになったと思われる自分の写真がどこに公開されていたかも、併せて説明できるようにしておきます。

告訴の要否

名誉毀損罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。
告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条1項)。

投稿者が匿名である場合、この期間は投稿者が判明した時点から進み始めます。

どの罪で構成するか

正面から規制する法律がないため、事案ごとに罪名を検討することになります。
名誉毀損罪のほか、もとになった画像や動画がある場合にはリベンジポルノ防止法違反や著作権法違反、被害者が18歳未満であれば児童ポルノに関する罪が問題になります。

請求できる金額の水準

投稿者を特定できた場合、損害賠償を請求することになります。

法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
同報告書では、表現内容の権利侵害性が強度であることや、不特定多数の者が認識し得たことが、増額の方向で考慮される事情として挙げられています。

なお、同報告書は、特定の民間データベースに登録された裁判例から抽出したものであり、同種事案全般の傾向を直接反映するものではありません。

慰謝料とは別に、投稿者を特定するために要した費用を請求できる場合があります。

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被害者が18歳未満の場合

児童ポルノにあたるか

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律は、児童ポルノの所持、提供、製造などを禁じています。

児童ポルノの被写体は実在する児童であることを要すると解されており、実在する児童の姿態を描写したものであれば、絵やコンピュータグラフィックスであっても児童ポルノにあたり得るとされています。

生成AIで作られた画像についても、実在する児童の姿態を描写したものと評価できるかという観点から検討されることになります。

なお、名古屋地判令和8年6月4日は、実在する女児の写真を生成AI(人工知能)で加工した「性的ディープフェイク」を所持した事件において、児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で懲役3年6月(求刑懲役6年)を言い渡しました2
実在する女児の写真を生成AI(人工知能)で加工した画像について、「一般人から見れば実在する女児の裸と誤信させるに足りるほど精巧なもの」とし、児童ポルノに当たるとしたようです。

学校内で起きた場合

同級生の写真を加工して共有するという形で被害が生じることがあります。

学校への相談と並行して、削除と加害者への対応を進めることになります。
作成した側が未成年であっても、自分の行為の責任を判断できる能力があれば、本人が賠償責任を負います。

本人が責任を問われるものではない

もとになった写真を自分で公開していたことを理由に、被害を訴えられなくなるわけではありません。

顔写真を公開することは、日常的に行われていることです。
それを性的な画像に加工することを承諾したことにはなりません。

著名人・配信者の場合

顔が広く知られている方は、対象にされやすい立場にあります。

公の立場にあることとの関係

公の場で活動している方であっても、性的な画像を作られることまで受け入れているわけではありません。

活動内容に対する批判が一定の範囲で許容されるという考え方は、この場面にはあてはまりません。
活動と無関係に、性的な対象としておとしめるものだからです。

事務所や勤務先を通じた対応

所属する事務所がある場合には、事務所を通じて対応が行われることがあります。

もっとも、権利を侵害されているのは本人です。
本人が請求する立場にあることを前提に、どの範囲まで事務所が関与するかを決めることになります。

作成してしまった側の責任

公開していない場合

作成しただけで公開していない場合、名誉毀損は成立しません。
社会から受ける評価が下がるという結果が生じていないためです。

もっとも、被害者が18歳未満であれば、製造や所持そのものが問題になり得ます。
また、本人に送りつけた場合には、脅迫などの問題が生じます。

公開した場合

民事上の損害賠償と、刑事上の責任の両方が問題になります。

投稿を削除しても、すでに生じた責任がなくなるわけではありません。
請求を受けた場合の対応については、以下の記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

偽物だと分かる画像でも請求できますか。

請求できます。

名誉毀損としては、閲覧した人がその人の行為として受け取るかどうかが問われるため、明らかに作り物と分かる場合には判断が分かれます。
もっとも、肖像権侵害やプライバシー侵害としては、偽物であることを前提としても主張できます。

自分で公開していた写真が使われました。それでも請求できますか。

できます。

顔写真を公開することと、それを性的な画像に加工されることとは別の問題です。
公開していたことを理由に、加工や拡散を承諾したことにはなりません。

性的ディープフェイクを禁止する法律はありますか。

正面から禁止する国の法律は、現時点ではありません。
名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害、著作権侵害といった既存の枠組みで対応することになります。

鳥取県は条例で、18歳未満の子どもについて生成AIによる加工画像を児童ポルノ等に含めることを明確化しています。

作った人を特定できますか。

不特定の人が閲覧できる場所に投稿されていれば、発信者情報開示請求によって投稿した人につながる情報を得られる可能性があります。

ただし、作った人と投稿した人が同じとは限らず、そこから先は個別に確認していくことになります。

画像を見るのがつらく、確認できません。

URLと投稿日時の記録だけでも残しておいてください。
どこまで広がっているかの確認や、内容の確認は、弁護士が代わりに行うこともできることもあります。

子どもが被害を受けました。どこに相談すればよいですか。

警察のサイバー犯罪に関する相談窓口や少年相談の窓口があります。
学校内で起きた場合には、学校への相談も必要になります。

削除や加害者への請求といった手続は、親権者が行うことになります。

まとめ

この記事の要点は次のとおりです。

  • 性的ディープフェイクを正面から禁止する国の法律は、現時点ではない
  • 名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害といった既存の枠組みで削除と損害賠償を求められる
  • 鳥取県は条例で、18歳未満の子どもについて生成AIによる加工画像を児童ポルノ等に含めることを明確化した
  • 実在する児童の姿態を描写したものであれば、絵やコンピュータグラフィックスでも児童ポルノにあたり得るとされている
  • 作った人と投稿した人が同じとは限らない
  • 自分で公開していた写真が使われた場合でも、請求はできる

法律に明確な規定がないことから、対応を諦めてしまう方がいます。
しかし、削除も、投稿者への請求も進められます。

当事務所では、インターネット上の画像の削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求のいずれにも対応しています。
画像の確認を含めて、当事務所にご相談ください。

拡散が進むほど、対応の負担は大きくなります。
お早めにご相談ください。

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  1. https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/14670627 ↩︎
  2. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD047NO0U6A600C2000000/ ↩︎

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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