【この記事の結論・要約】
- 自分で削除依頼をする前に、証拠を保存してください。削除依頼の内容が公開される仕組みであるため、依頼したこと自体が掲示板の利用者に知られる可能性があります。
- 削除を急ぐと、投稿の記録が失われて投稿者の特定に支障が出ることがあります。どちらを優先するかは、最初に決めておく必要があります。
- 本名ではなく源氏名で書かれている場合でも、その表記が本人を指すと分かる状況であれば、権利侵害を主張できます。
はじめに
ホスラブ(ホストラブ)は、ホストクラブ、キャバクラ、風俗店といった業種を対象とした匿名の掲示板です。
業界の情報交換の場である一方、店舗名や源氏名を挙げた書き込みが行われ、そこで働く方や店舗が被害を受けることがあります。
この記事では、書き込みを削除する方法、投稿者を特定できるのか、そして削除と特定のどちらを先に進めるべきかを解説します。
ホスラブで起こる被害
書き込まれる内容
| 内容 | 問題となる権利侵害 |
|---|---|
| 源氏名を挙げた容姿や人格への攻撃 | 名誉感情の侵害 |
| 性的なサービスを提供しているという記載 | 名誉毀損、プライバシー侵害 |
| 本名、出身地、学校名などの記載 | プライバシー侵害 |
| 客との関係についての記載 | 名誉毀損、プライバシー侵害 |
| 病歴に関する記載 | プライバシー侵害 |
| 店舗の営業実態についての虚偽の記載 | 名誉毀損、信用毀損 |
| 写真の無断掲載 | 肖像権侵害 |
生活への影響
この業種では、本名を出さずに働いている方が多くいます。
本名や出身地を書き込まれると、家族や知人に仕事を知られることにつながります。
また、書き込みを理由に源氏名を変えざるを得なくなれば、それまでの顧客との関係も失われます。
店舗にとっても、在籍しているキャストが特定されて中傷されれば、営業に影響が及びます。
自分で削除依頼をする前に
依頼の内容が公開される
ホスラブには削除依頼のフォームが用意されていますが、依頼の内容が公開される仕組みとされています。
つまり、誰がどの書き込みについて削除を求めたのかが、掲示板の利用者に見える状態になります。
そこから、書き込まれた本人が気にしていることが伝わり、かえって書き込みが増えるおそれがあります。
削除依頼をすること自体が、新たな書き込みの材料になりかねないということです。
先に証拠を保存する
削除されれば、その書き込みの内容を示せなくなります。
後から投稿者に責任を追及する可能性があるのであれば、削除を求める前に保存してください。
何を保存すべきかは、後の章で説明します。
削除されないこともある
フォームから依頼しても、削除されるとは限りません。
削除の基準が公開されているわけではなく、応じるかどうかは運営の判断によります。
応じられなかった場合には、送信防止措置依頼や裁判所への仮処分の申立てを検討することになります。
削除と特定はどちらを先にするか
この判断は、最初に決めておく必要があります。
削除を優先する場合
書き込みが閲覧され続けることによる被害を、早く止められます。
他方、削除によって投稿が見えなくなると、対象を特定する資料が手元の記録だけになります。
保存が不十分であれば、その後の手続に支障が出ます。
特定を優先する場合
通信記録の保存期間という制約があるため、特定を急ぐという判断もあります。
その間、書き込みは残り続けることになります。
被害が続いている状況では、負担の大きい選択です。
並行して進める場合
証拠を保存したうえで、削除と特定の両方を進めることもできます。
書き込みの数、内容の深刻さ、投稿された時期によって、どの進め方が適しているかが変わります。
ご相談の際に、この点を含めて方針を決めることになります。
権利侵害が成立するか
源氏名で書かれている場合
名誉毀損では、第三者が読んで対象者を特定できることが前提になります。
本名が書かれていなくても、店舗名と源氏名が挙げられていれば、その人を指すものと分かります。
掲示板の利用者にとって誰のことか分かる状態であれば、同定可能性は認められ得ます。
本名を出していないことを理由に諦める必要はありません。

名誉毀損
具体的な事実を示して社会的評価を低下させた場合です。
「客と店外で会っている」「本番行為をしている」といった記載は、事実の摘示にあたります。
これらが事実と異なるのであれば、名誉毀損として主張できます。

名誉感情の侵害
容姿や人格を罵倒する書き込みについては、名誉感情の侵害として主張することになります。
もっとも、社会通念上許される限度を超える侮辱行為といえることが必要です。
一語だけで、日常的に使われる程度の表現にとどまる場合には、認められにくくなります。
他方、同じ人物が繰り返し書き込んでいる場合には、全体として判断される余地があります。
関連する書き込みをまとめて保存しておくことが重要です。

プライバシー侵害
本名、出身地、学校名、家族構成、病歴、住んでいる地域といった情報を書き込まれた場合です。
これらは私生活に関する事柄であり、内容が真実であることは責任を免れる理由になりません。
むしろ、真実であるからこそ、公開によって私生活の平穏が害されます。
この業種では、仕事をしていること自体を知られたくないという方が多くいます。
そのため、名誉毀損よりもプライバシー侵害として構成するほうが適している場面があります。

事実と異なることを示せるか
名誉毀損として主張する場合、書かれた内容が真実であれば、公共性と公益目的が認められることで責任が否定される余地があります。
もっとも、この業種に関する書き込みでは、公共の利害に関する事実とは認められにくい類型が多くあります。
個人の私生活や容姿に関する内容であれば、なおさらです。

投稿者を特定する方法
二段階の手続
- 掲示板の運営者から、投稿時のIPアドレスなどの開示を受ける
- そのIPアドレスを管理しているアクセスプロバイダから、契約者の情報の開示を受ける
権利が侵害されたことが明らかであることが要件とされているため、書き込みの内容がこの水準に達しているかを検討することになります。

時間の制約
アクセスプロバイダの通信記録の保存期間は一般に3か月から6か月程度で、事業者によって異なります。
裁判手続による特定には3か月から9か月程度かかるため、書き込みを見つけてから相談までに時間をかけると間に合わなくなります。
同じ人物による書き込みかどうか
掲示板では、同じ人物が複数の書き込みをしていることがあります。
もっとも、それは手続を進めて記録の開示を受けるまで分かりません。
どの書き込みを対象とするかによって、結果が変わることもあります。
権利侵害が明らかといえる書き込みを選んで手続を進め、そこから同じ人物によるものが判明することもあります。
請求できる金額の水準
投稿者を特定できた場合、損害賠償を請求することになります。
掲示板の事案は低額になりやすい
法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
媒体別に見ると、電子掲示板の事案は平均29.4万円、中央値25.0万円と、全体より低い水準です。
同報告書は、その理由として、裁判例が掲示板への投稿の信用性に言及していることを挙げています。
匿名で根拠のない書き込みが多数される掲示板については、閲覧する人もその前提で見ているという判断が示された例があるということです。
なお、同報告書によれば、爆サイ.comの事案3件については平均60.0万円とされており、掲示板であれば一律に低いというものでもありません。
また、同報告書は、特定の民間データベースに登録された裁判例から抽出したものであり、同種事案全般の傾向を直接反映するものではありません。
書き込みの回数が多い場合
同報告書によれば、投稿1回の事案の平均が30.7万円であるのに対し、10回から49回では78.3万円とされています。
掲示板では、同じ人物が繰り返し書き込んでいることが多くあります。
関連する書き込みをまとめて保存しておくことが、結果に影響します。

現実に生じた不利益
同報告書では、生活や仕事への具体的な支障が発生したことが、増額の方向で考慮される事情として挙げられています。
客が来なくなった、源氏名を変えざるを得なくなった、店舗を移らざるを得なくなったといった影響があれば、それを示せるようにしておいてください。
売上の記録や、店舗とのやり取りが資料になります。
刑事の手続
問題となる犯罪
書き込みの内容によっては、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立します。
店舗の営業を妨げる内容であれば、信用毀損罪や業務妨害罪(刑法233条)が問題になることもあります。
危害を加えることを告げる内容や、金銭を要求する内容であれば、脅迫罪や恐喝罪の問題となります。
告訴の期間
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。
告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条1項)。
匿名の書き込みでは、投稿者が判明した時点からこの期間が進み始めます。
相談に行く際の準備
書き込みを一覧にまとめ、いつ、どのような内容が書かれたかを整理しておくと話が進みます。
1件だけを示すより、繰り返されている状況を示すほうが、深刻さが伝わります。
削除代行業者への依頼
弁護士でなければできない
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁じています。
他人の依頼を受けて、その人に代わって削除を求める行為は、これにあたる可能性があります。
業者に依頼しても、法的な手続には進めません。
依頼した場合の不利益
費用を支払っても削除されないことがあります。
また、業者に時間をかけている間に通信記録の保存期間が過ぎれば、投稿者の特定ができなくなります。
削除だけを目的とする場合でも、まず弁護士にご相談いただくほうが確実です。
証拠の保存
保存すべき内容
- 書き込みの本文と投稿日時
- スレッドのURLと、書き込みのレス番号
- スレッドのタイトル
- 前後の書き込み
- 同じ内容が複数のスレッドにある場合は、そのすべて
書き込みの一部だけを切り取った画像では、どのスレッドのどの書き込みか分からず、手続で使えないことがあります。
URLとレス番号が入るように保存してください。
スレッドごと保存する
掲示板では、前後のやり取りの中で意味が決まる書き込みがあります。
その書き込みだけを見ると誰のことか分からなくても、スレッドの流れから対象者が分かることがあります。
同定可能性を示すうえでも、スレッド全体を保存しておくことが有用です。
他のサイトへの転載
掲示板の書き込みは、まとめサイトや他の掲示板に転載されることがあります。
元の書き込みを削除しても、転載された先は残ります。
自分の源氏名や店舗名で検索し、どこに転載されているかを確認しておく必要があります。
検索結果に表示されている場合には、検索サービスに対する対応も検討することになります。
見続ける必要はない
書き込みを確認する作業は、精神的な負担が大きいものです。
ご自身で行うことが難しい場合には、弁護士が確認することもできます(別途費用が発生する場合があります)。
スレッドのURLだけでもお伝えいただければ、そこから内容を確認できます。
店舗として対応する場合
誰の権利が侵害されているか
店舗の営業実態について虚偽の内容が書き込まれていれば、店舗の名誉が毀損されています。
他方、在籍するキャスト個人に向けられた書き込みについては、権利を侵害されているのはその方本人です。
店舗として対応する場合でも、本人が請求する立場にあることを前提に進めることになります。
同業者による書き込み
競合する店舗や、そこで働く人による書き込みが疑われることがあります。
この場合、営業上の利益を害する目的が認められれば、公益を図る目的とはいえないことになります。
もっとも、誰が書き込んだかは手続を進めなければ分かりません。
推測だけで相手を名指しすることは避けてください。
書き込んでしまった側の対応
匿名の掲示板であれば分からないと考えて書き込んでしまう例があります。
削除すれば済むわけではない
書き込みを削除しても、すでに生じた責任がなくなるわけではありません。
相手方が保存していれば、そのまま資料になります。
また、削除しても通信記録が消えるわけではないため、手続が進めば特定される可能性があります。
通知が届いた場合
プロバイダから意見照会書が届いた場合や、相手方の代理人から請求書が届いた場合には、期限が定められていることが多くあります。
放置すると訴訟を提起され、対応の選択肢が狭まります。
請求された金額がそのまま認められるわけではないため、内容を確認したうえで対応を検討することになります。

相談前に整理しておくこと
ご相談の際に次の点を整理しておいていただけると、検討が進みます。
- 対象となるスレッドのURL
- 特に問題のある書き込みのレス番号と投稿日時
- 書き込みの内容が事実と異なる場合、それを示せる資料
- いつごろから書き込みが始まったか
- 書き込みによって生じた具体的な影響
- 心当たりのある相手がいる場合、その相手とのやり取りの経緯
書き込みがいつ行われたかは特に重要です。
通信記録の保存期間との関係で、手続が間に合うかどうかを判断する材料になります。
よくある質問(FAQ)
- 自分で削除依頼をしてもよいですか。
-
依頼の内容が公開される仕組みとされているため、依頼したこと自体が掲示板の利用者に知られる可能性があります。
そこから書き込みが増えるおそれもあります。また、削除されると内容を示せなくなるため、投稿者への責任追及を考えている場合には、先に証拠を保存してください。
- 源氏名で書かれています。本名が出ていなくても請求できますか。
-
できる場合があります。
店舗名と源氏名が挙げられていれば、掲示板の利用者にとって誰のことか分かる状態といえます。
本名を出していないことを理由に諦める必要はありません。 - 書かれた内容が事実の場合はどうなりますか。
-
名誉毀損としては、公共の利害に関する事実であり、目的が公益を図ることにあり、真実であることが証明されれば責任を負わないとされています。
もっとも、個人の私生活や容姿に関する内容であれば、公共の利害に関する事実とは認められにくくなります。
また、私生活に関する事柄であれば、プライバシー侵害として主張できます。 - 書き込みが削除されてしまいました。もう特定できませんか。
-
書き込みの内容とURL、レス番号、投稿日時を保存していれば、手続を進められる場合があります。
何も残っていなければ、対象を特定できず難しくなります。まずは手元にどの記録が残っているかをご確認ください。
- 削除代行業者から連絡がありました。依頼してもよいですか。
-
お勧めできません。
他人の依頼を受けて報酬を得る目的で削除を求める行為は、弁護士法72条に違反する可能性があります。
費用を支払っても削除されないことがあり、その間に通信記録の保存期間が過ぎれば特定もできなくなります。 - 書き込みを見るのがつらく、確認できません。
-
スレッドのURLだけでもお伝えいただければ、内容の確認は弁護士が行うことができる場合があります。
ご自身で見続ける必要はありません。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- 削除依頼の内容が公開される仕組みであるため、自分で依頼すると新たな書き込みを招くおそれがある
- 削除を急ぐと、投稿者の特定に支障が出ることがある
- 本名が出ていなくても、店舗名と源氏名から本人と分かれば権利侵害を主張できる
- 私生活に関する事柄であれば、内容が真実でもプライバシー侵害として主張できる
- 掲示板の事案は認められる金額が低い傾向にあるが、書き込みの回数が多ければ上がる
- 削除代行業者への依頼は、弁護士法に違反する可能性がある
削除と特定のどちらを優先するかによって、進め方が変わります。
何を最も重視するかを決めたうえで、手続を選ぶことになります。
当事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求のいずれにも対応しています。
書き込みの内容を確認するところから、当事務所にご相談ください。
投稿者の特定には通信記録の保存期間という時間的な制約があります。
お早めにご相談ください。
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