リポストや転載でも責任を負うか|拡散した人への請求を解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 自分で書いた投稿でなくても、責任を負うことがあります。コメントを付けない単純なリポストについて、不法行為の成立を認めた裁判例があります。
  2. 「いいね」を押した行為について不法行為を認めた裁判例もありますが、押した人の立場や、それまでの言動が考慮されたものです。押せば直ちに責任を負うというものではありません。
  3. 被害を受けた側から見ると、拡散した人全員に請求するのは現実的ではありません。誰を対象とするかを選ぶことになります。

はじめに

誹謗中傷の被害は、最初の投稿だけで終わりません。
拡散されることで、閲覧する人の範囲が一気に広がります。

拡散した人は「自分が書いたわけではない」と考えがちですが、そうした行為についても責任が認められた裁判例があります。

この記事では、どのような行為が問題になるのか、裁判所がどのような判断をしているのか、被害を受けた側は誰に何を求められるのかを解説します。

拡散にも責任が生じる

元の投稿者だけが責任を負うわけではない

名誉毀損は、社会から受ける評価を低下させたことによって成立します。

拡散する行為は、その内容を新たな範囲の人が読める状態に置くものです。
評価を低下させるという結果に加わっている以上、拡散した人自身の行為として責任が問われることになります。

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問題になる行為

行為扱い
コメントを付けないリポスト不法行為の成立を認めた裁判例がある
コメントを付けた引用リポスト自分の投稿として評価される
「いいね」不法行為を認めた裁判例があるが、事案の事情が考慮されている
スクリーンショットの転載転載した人自身の投稿として評価される
まとめサイトへの掲載掲載した運営者の責任が問題になる
ダイレクトメッセージでの転送公然性を欠くため名誉毀損は成立しにくい

コメントを付けないリポスト

大阪高裁の判決

元大阪府知事が、自身に関する投稿をリツイートした人に対して損害賠償を求めた事案があります。

大阪高裁令和2年6月23日判決(判タ1495号27頁)は、次のとおり判示しました。

「元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,当該投稿について不法行為責任を負うものというべきである。」

「経緯、意図、目的、動機等のいかんを問わず」とされている点が重要です。
賛同のつもりだったか、批判のつもりだったか、単に記録しておくためだったかは問われません。

2種類のリポスト

大阪高裁の判決は、リツイートに2種類があることを前提に判断しています。

「リツイートには単純リツイートと引用リツイートの2種類があり,前者は,自己のコメントを付けずに他者(元ツイート主)のツイートを他者(元ツイート主)の名義のまま転送するもの,後者は,自己のコメントを付けて他者(元ツイート主)のツイートを自己の名義で転送するもので,本件投稿は単純リツイートである。」

名義が誰のものとして表示されるかが、両者の違いです。

なぜコメントがなくても責任を負うのか

同判決は、単純なリツイートの表示のされ方に着目しています。

単純なリツイートでは、リツイートした人ではなく、元の投稿者のアイコンと氏名が大きく表示されます。
リツイートであることは小さな文字で表示されるにとどまります。

そのため、読んだ人は元の投稿の内容をそのまま受け取ります。
判決は、この行為を、元の投稿の表現内容をそのままの形で自分のフォロワーが読める状態に置く行為にほかならないとしています。

ただし、元の投稿の表示や、リツイートしたことを示す表示が加わることによって、表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合は別とされています。

フォロワー数が考慮されている

同判決は、リツイートした人のフォロワーが18万人を超えていたことを指摘しています。

その人数の閲読可能な状態に置かれたこと、さらにそのフォロワーがリツイートすれば、より多くの人が読める状態になることにも触れています。
どれだけの範囲に広がったかが、判断に影響するということです。

拡散した人にも認められる反論

拡散した人が責任を免れる場合もあります。

公共性・公益目的・真実性

大阪高裁の判決も、違法性阻却事由または責任阻却事由が認められる場合を除くとしています。

元の投稿の内容が公共の利害に関する事実であり、目的が公益を図ることにあり、真実であると認められれば、拡散した人も責任を負いません。
真実であると証明できない場合でも、真実と信じたことに相当の理由があれば、故意または過失が否定されます。

もっとも、拡散した人が独自に裏付けを持っていることは多くありません。
元の投稿を見ただけで拡散した場合、相当の理由は認められにくくなります。

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意味内容が変わったといえる場合

大阪高裁の判決は、元の投稿の表示やリポストしたことを示す表示が加わることによって、表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除くとしています。

どのような場合がこれにあたるかは、個別の判断になります。

コメントを付けた引用リポスト

引用の形でコメントを付けた場合、画面には自分のアイコンと氏名が表示されます。

自分の投稿として表示される以上、その内容について責任を負うことになります。
単純なリポストよりも、責任が認められやすい形といえます。

批判の形をとった場合

「こんなひどい投稿がある」という形で引用した場合はどうか。

元の投稿を批判する意図であっても、その内容を新たに広める結果は生じます。
コメントの内容から、元の投稿の意味内容が変わったと評価できるかどうかによって判断が分かれます。

批判のつもりで引用したことが、そのまま免責の理由になるわけではありません。

「いいね」を押した場合

東京高裁の判決

性被害を訴えた女性が、自身を中傷する投稿に「いいね」を押した国会議員に対して損害賠償を求めた事案があります。

東京高裁令和4年10月20日判決(判タ1511号38頁)は、名誉感情の侵害にあたるとして不法行為の成立を認めました。
第一審は請求を認めていませんでした。

同判決は、まず次のとおり述べています。

「人の名誉感情を侵害する行為は、それが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合には、その人の人格的利益を侵害するものとして不法行為が成立すると解するのが相当である。」

名誉毀損ではなく、名誉感情の侵害として構成されている点が特徴です。

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「いいね」の意味をどう判断するか

同判決は、「いいね」を押す行為について、好意的・肯定的な感情を示したものと一般的に理解されているとしています。

他方で、押すか押さないかの二者択一であるため、どの部分に好意的な評価をしているかが当然に明確になるわけではないこと、ブックマークとして使う場合もあることを指摘しています。

そのうえで、判断の方法について次のとおり述べています。

「対象ツイートの記載内容等から、「いいね」を押すことによって対象ツイートのどの部分に好意的・肯定的な評価をしていると理解することができるかを検討する必要があるし、また、「いいね」を押した者と対象ツイートで取り上げられた者との関係や「いいね」が押されるまでの経緯も検討する必要がある。」

押した人と相手との関係や、そこに至る事情まで見たうえで判断するということです。

この事案で考慮された事情

同判決が結論を導くにあたって挙げた事情は、次のとおりです。

  • 「いいね」を押した回数が合計25回と多数に及んでいること
  • それ以前にも、相手に対する揶揄や批判を繰り返していたこと
  • そのため、単なる故意にとどまらず、名誉感情を害する意図があったと認められること
  • 約11万人のフォロワーを擁するアカウントで行われたこと
  • 押した人が国会議員であり、その発言等には一般人と比較し得ない影響力があること

一般化はできない

この判決をもって、「いいね」を押せば責任を負うと理解するのは正確ではありません。

25回という回数、それ以前からの言動、フォロワー数、国会議員という立場が積み重なって、社会通念上許される限度を超える侮辱行為と判断されたものです。
一度だけ押した、相手との間に経緯がないという場合には、同じ結論にはなりません。

また、現在のX(Twitter)では、この裁判例の時とは仕様が変わり、他人の「いいね」を確認することができなくなっています。
そのため、ここに挙げられているような事情を立証することも非常に難しい状況です。

名誉毀損ではなく名誉感情の侵害とされた理由

「いいね」を押す行為は、具体的な事実を示すものではありません。
そのため、事実の摘示を必要とする名誉毀損としては構成しにくくなります。

同判決は、押された対象の投稿が相手を侮辱する内容であったこと、押した人がそれに賛意を示したことをとらえて、名誉感情の侵害としました。
どの権利侵害として構成するかによって、必要となる主張が変わる例といえます。

スクリーンショットの転載

投稿の画面を撮影した画像を貼り付ける行為も、拡散にあたります。

転載した人自身の投稿になる

スクリーンショットの場合、自分のアカウントの投稿として表示されます。
元の投稿とのつながりも切れるため、転載した人自身の行為として評価されやすくなります。

元の投稿が削除された後も残る

元の投稿を削除しても、スクリーンショットは残ります。

被害を受けた側から見れば、元の投稿の削除だけでは解決しないということです。
どこに転載されているかを確認する必要があります。

まとめサイトへの掲載

掲示板やSNSの投稿を集めて記事の形にするサイトがあります。

元の投稿を引用しているだけであっても、掲載した運営者の責任が問題になります。
見出しの付け方や、どの投稿を選んで並べたかによって、新たな意味が生じている場合もあります。

検索結果に表示されやすく、元の投稿より広く読まれることもあります。
被害の程度という点では、元の投稿より大きくなることもあります。

刑事責任を問えるか

ここまでは民事上の責任について述べました。
拡散した行為について、刑事の責任が問題になることもあります。

名誉毀損罪の成否

拡散する行為も、公然と事実を摘示する行為にあたり得ます。
元の投稿を書いた人とは別に、拡散した人自身について名誉毀損罪が成立する余地があります。

もっとも、刑事では故意が必要です。
内容を確認せずに拡散した場合には、この点が問題になります。

民事と刑事で結論が分かれ得る

民事上の責任が認められても、刑事事件として立件されるとは限りません。
拡散した人の数が多い事案では、捜査機関がどこまで対象とするかという問題もあります。

処罰を求める場合には、告訴を検討することになります。
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、告訴は犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります。

被害を受けた側から見た対応

全員を対象にすることは困難

拡散が進んだ事案では、リポストした人が数百人、数千人に及ぶことがあります。

全員を特定して請求することは、手続の面でも時間の面でも現実的ではありません。
どの投稿を対象とするかを選ぶことになります。

対象を選ぶ視点

  • 拡散の範囲が大きいもの(フォロワー数、表示回数)
  • コメントを付けて内容を補強しているもの
  • 繰り返し行っているもの
  • 検索結果に表示されるなど、影響が続いているもの
  • 元の投稿者と近い関係にあることがうかがえるもの

削除は広く求められる

損害賠償を請求する相手は絞らざるを得ませんが、削除はそれぞれについて求められます。

投稿者に特定されなくても、サイトの運営者に対して削除を求めることができるためです。
被害を止めることが目的であれば、削除を優先するという判断もあります。

時間の制約

拡散した人を特定する場合も、通信記録の保存期間という制約を受けます。

元の投稿者の特定を進めているうちに、拡散した人の記録が消えてしまうことがあります。
どこまでを対象とするかは、早い段階で決めておく必要があります。

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拡散した人に請求できる金額

拡散した人に対しても、慰謝料を請求できます。

法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
同報告書では、不特定多数の者が認識し得たことや、社会的評価の低下が大きいことが増額の方向で考慮される事情として挙げられています。

拡散した人の場合、フォロワー数や表示回数が、どれだけの範囲に広まったかを示す事情になります。
元の投稿者と同じ金額になるとは限らず、拡散の範囲や回数によって変わります。

なお、同報告書は、特定の民間データベースに登録された裁判例から抽出したものであり、同種事案全般の傾向を直接反映するものではありません。

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拡散してしまった側の対応

削除すれば済むわけではない

リポストを取り消しても、すでに生じた責任がなくなるわけではありません。

相手方が記録を保存していれば、そのまま資料になります。
もっとも、削除したことは、示談の交渉において考慮される事情の一つにはなります。

請求を受けた場合

意見照会書や請求書が届いた場合には、期限が定められていることが多くあります。

元の投稿者と同じ金額を負担するとは限りません。
拡散の範囲、回数、コメントの有無によって、認められる金額は変わります。

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よくある質問(FAQ)

リポストしただけでも責任を負いますか。

負う可能性があります。

大阪高裁は、コメントを付けない単純なリツイートについて、元の投稿の内容を自分のフォロワーが読める状態に置くことを認識している限り、その経緯や意図を問わず不法行為責任を負うとしました。
賛同のつもりでなかったという説明は、それだけでは理由になりません。

「いいね」を押しただけで訴えられますか。

不法行為を認めた裁判例はありますが、その事案では、25回にわたって押していたこと、それ以前から相手を揶揄する言動を繰り返していたこと、約11万人のフォロワーがいたこと、押した人が国会議員であったことが考慮されています。
一度押しただけで同じ結論になるものではありません。

批判するつもりで引用した場合はどうなりますか。

批判の意図であっても、内容を新たに広める結果は生じます。
コメントの内容によって元の投稿の意味が変わったと評価できるかによって判断が分かれます。

批判のつもりだったことが、そのまま免責の理由になるわけではありません。

拡散した人全員を訴えられますか。

制度上は可能ですが、人数が多い場合は現実的ではありません。
特定には一人ずつ手続が必要で、通信記録の保存期間という制約もあります。

拡散の範囲が大きいもの、コメントを付けているもの、繰り返し行っているものなどから対象を選ぶことになります。

元の投稿が削除されれば解決しますか。

解決しません。

スクリーンショットで転載されたものや、まとめサイトに掲載されたものは残ります。
検索結果に表示され続けることもあります。

どこに転載されているかを確認したうえで、それぞれについて対応する必要があります。

ダイレクトメッセージで他人に送った場合はどうですか。

1対1のやり取りでは公然性を欠くため、名誉毀損は成立しにくくなります。
もっとも、複数人が参加するグループに送った場合には、人数やそこから広まる可能性によって判断が変わります。

まとめ

この記事の要点は次のとおりです。

  • コメントを付けないリポストについて、不法行為の成立を認めた裁判例がある
  • その判決は、投稿の経緯、意図、目的、動機を問わないとしている
  • 「いいね」について不法行為を認めた裁判例もあるが、回数や押した人の立場が考慮されている
  • スクリーンショットの転載やまとめサイトへの掲載は、元の投稿が削除されても残る
  • 被害を受けた側は、拡散した人全員ではなく対象を選ぶことになる
  • 拡散した人を特定する場合も、通信記録の保存期間の制約を受ける

拡散が進むほど、対応する範囲は広がり、負担も大きくなります。
どこまでを対象とするかは、早い段階で決めておく必要があります。

当事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求のいずれにも対応しています。
拡散の被害を受けている方も、拡散したことで請求を受けた方も、当事務所にご相談ください。

投稿者の特定には通信記録の保存期間という時間的な制約があります。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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