【この記事の結論・要約】
- 名前が書かれていなくても、投稿の内容から誰のことか分かる場合には、法的な責任を問える可能性があります。
- 「親しい友達」限定のストーリーや、非公開アカウントからの投稿であっても、責任を問える場合があります。「限られた人にしか見せていないから問題ない」とはいえません。
- ストーリーは24時間で消えます。見つけたその場で記録しなければ、内容を証明する手段がなくなります。
はじめに
インスタグラムのストーリーは24時間で消えるため、投稿する側は気軽な気持ちで書き込みがちです。
しかし、書かれた側からすれば、消える投稿であっても受ける影響は変わりません。
次のようなご相談が寄せられています。
- 名前は書かれていないが、内容から自分のことだと分かる投稿をされている
- 「親しい友達」に自分を入れたうえで、自分を指す悪口を書かれている
- ストーリーの内容が学校や職場に広まってしまった
- 何度も繰り返されており、やめさせたい
本記事では、インスタのストーリーに悪口を書かれた側が、どのような対応をとれるのかを解説します。
まず行うこと|その場で記録する
ストーリーは投稿から24時間で自動的に消えます。
投稿者が自分で削除すれば、それより早く消えます。
消えてしまえば、どのような内容が書かれていたのかを証明する手段がなくなります。
「気持ちを落ち着けてから考えよう」「明日相談してみよう」と思っているうちに、対応できる時間が過ぎてしまいます。
見つけた時点で、まず記録してください。
何を記録するか
| 記録するもの | 具体的な内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 投稿の内容 | 文字、画像、動画、スタンプなど、表示されているもの全体 | 一部を切り取らず、画面全体を残す |
| アカウントの情報 | ユーザー名、表示名、アイコン | プロフィール画面も併せて記録する |
| 表示日時 | 投稿からの経過時間の表示、自分が確認した日時 | 画面に表示されている情報が分かるようにする |
| 閲覧できた範囲 | 「親しい友達」向けの表示になっているか、通常の公開か | 後述する公然性の判断に関わる |
| 前後の投稿 | 同じ人が連続して投稿している場合、その全体 | 一連の流れが分かるようにする |
画面録画で残す
スクリーンショットだけでは足りません。
ストーリーには、動画、音声、時間の経過とともに表示が変わる要素が含まれることがあります。スクリーンショットでは、これらが残りません。
スマートフォンの画面録画機能を使い、ストーリーを最初から最後まで記録してください。
そのうえで、静止画としてのスクリーンショットも併せて保存します。
記録が残っていれば、進められる場合があります
投稿が消えてしまった後でも、記録が残っていれば手続を進められる場合があります。
反対に、記録がなければ、どれだけ内容を覚えていても、それを証明することはできません。
手続ができるかどうかは、記録が残っているかどうかで大きく変わります。
名前が書かれていなくても対象になるか
ストーリーでの悪口は、名前を書かずに、誰のことかは分かる形で書かれることが少なくありません。
「昨日一緒にいた人」「バイト先の後輩」といった書き方や、イニシャルだけを書く方法です。
名前が書かれていないからといって、責任を問えないわけではありません。
法的には、その投稿が誰のことを指しているのかが分かるかどうかが問われます。
これを同定可能性といいます。
判断にあたっては、次のような事情が考慮されます。
- 投稿に書かれた属性(所属、立場、外見など)
- 投稿されたタイミングと、その前後の出来事
- 投稿者と自分との関係
- その投稿を見た人が、実際に自分のことだと分かったかどうか
注意していただきたいのは、「自分のことだと思った」というだけでは足りないという点です。
その投稿を見た第三者が、自分のことを指していると分かる状態であることが必要です。
そのため、記録を残す際には、投稿の内容だけでなく、なぜそれが自分を指していると分かるのかを説明できる材料も併せて整理しておくと、その後の検討が進めやすくなります。
また、名誉感情侵害(侮辱)の主張をする際には、厳密な同定可能性がなくとも権利侵害が認められる可能性があります。
「親しい友達」限定の投稿はどうなるか
インスタグラムには、特定の人だけにストーリーを表示する機能があります。
「限られた人にしか見せていないのだから問題ない」と考える方がいますが、そうとは限りません。
名誉毀損には「公然性」という要件がある
名誉毀損が成立するためには、摘示された事実を不特定または多数の人が認識しうる状態であることが必要とされています。
これを公然性といいます。
そのため、閲覧できる範囲が限られている場合には、この要件が問題になります。
範囲が限られていても認められる場合がある
もっとも、閲覧できる範囲が限られているからといって、直ちに公然性が否定されるわけではありません。
判断にあたっては、次のような事情が考慮されます。
- 閲覧できた人の人数
- 閲覧できた人の属性(自分と面識のある人か、無関係の人か)
- そこからさらに広まる可能性があるか
特に3つ目は重要です。
閲覧した人が内容をスクリーンショットで保存し、他の人に見せることは容易です。
そうした可能性が認められる場合には、閲覧できた人数が少なくても公然性が肯定されることがあります。
これを伝播可能性といいます。
裁判例では、閲覧できたのが4人であった事案でも、そこから広まる可能性を認めて公然性を肯定したものがあります。
「親しい友達」限定であっても、非公開アカウントからの投稿であっても、同じことがいえます。
公然性と伝播可能性については、以下の記事で詳しく解説しています。

公然性が認められない場合でも
仮に公然性が認められない場合であっても、侮辱(名誉感情の侵害)として責任を問える場合があります。
「限られた人にしか見せていないから何を書いてもよい」ということにはなりません。
どのような投稿が法的に問題となるか
不快な投稿がすべて法的な問題になるわけではありません。
投稿の内容によって、問題となる権利が変わります。
名誉毀損
具体的な事実を示して、社会的な評価を低下させる投稿です。
「あの人は物を盗んだ」「不倫している」といった内容がこれにあたります。
事実として正しい内容であっても、公共の利害に関するものでなければ、名誉毀損となり得ます。
侮辱(名誉感情の侵害)
具体的な事実を示さずに、人格を攻撃する投稿です。
「キモい」「消えろ」といった言葉がこれにあたります。
ただし、不快であればすべて違法というわけではなく、社会通念上許される限度を超えているかどうかが問われます。
プライバシー侵害
本人が公開していない私生活上の事実を、正当な理由なく公開する投稿です。
交際関係、家庭の事情、病気のことなどを書かれた場合が該当し得ます。
写真の無断掲載
本人に無断で撮影した写真や、本人が公開していない写真を掲載する行為は、肖像権の侵害となり得ます。
自分が撮影した写真を無断で使われた場合には、著作権の問題も生じます。
どこからが法的に問題となるのかについては、以下の記事で解説しています。

とり得る対応
Instagramへの報告
アプリ内から、そのストーリーを報告することができます。
- 対象のストーリーを表示します
- 画面右下のメニュー(「…」のアイコン)を選択します
- 「報告する」を選び、理由を選択して送信します
ただし、注意点が2つあります。
第一に、判断されるのはコミュニティガイドラインに違反しているかどうかであり、法的に権利侵害があるかどうかではありません。
そのため、名誉毀損にあたり得る投稿であっても、削除されないことがあります。
第二に、ストーリーは24時間で消えるため、報告の結果が出る前に自然に消えてしまうことがあります。
報告は、繰り返されている場合にアカウントへの措置を求める手段として意味がありますが、その投稿を消すための手段としては、間に合わないことが多いといえます。
いずれにしても、報告の前に記録を残してください。
投稿者が分かっている場合
ストーリーでの悪口は、投稿者が誰かは分かっているという場合が少なくありません。
この場合、次のような対応が考えられます。
話し合いによる解決
繰り返しをやめるよう求め、必要に応じて謝罪を求めます。
弁護士名義の通知
弁護士から書面を送り、投稿の削除と再発の防止を求めます。
第三者から法的な指摘を受けることで、投稿が止まることは少なくありません。
損害賠償請求
投稿の内容や繰り返しの程度によっては、慰謝料を請求できる場合があります。
学校で生じている場合
投稿者が同じ学校の生徒である場合、法的手続の前に、学校に相談することが考えられます。
学校には、いじめの防止等のための対策を講じる義務があります。
担任だけでなく、いじめ防止のための組織や、教育委員会に相談する方法もあります。
もっとも、学校の対応が十分でない場合や、内容が悪質な場合には、法的な手続を検討することになります。
投稿者が分からない場合
匿名のアカウントから投稿されているなど、投稿者が分からない場合には、発信者情報開示請求という手続により、投稿者を特定できる可能性があります。
Meta Platforms, Inc.に対して投稿時のIPアドレス等の開示を求め、そこから判明した通信事業者に対して契約者の氏名・住所の開示を求める、という2段階の手続になります。
ただし、時間の制約があります。
通信事業者が接続記録を保存している期間は、一般に3か月から6か月程度とされています。
保存期間は事業者によって異なります。
この期間を過ぎると、技術的に特定できなくなります。
発信者情報開示請求の流れについては、以下の記事で解説しています。

費用をかける価値があるかどうか
投稿者を特定する手続には、相応の費用と時間がかかります。
Meta社に対する手続と通信事業者に対する手続という複数の段階を経る必要があるためです。
一方、ストーリーでの悪口について認められる慰謝料の額は、必ずしも高額にはなりません。
特定に要した費用が、最終的に相手から回収できる額を上回ることもあります。
そのうえで、それでも手続をとる意味がある場合があります。
- 投稿が繰り返されており、止める必要がある
- 内容が悪質で、生活や仕事に影響が出ている
- 相手に、二度と行わないと約束させたい
反対に、一度きりの投稿で、既に収まっている場合には、費用をかけて特定するより、記録を残して様子を見るという判断もあり得ます。
投稿者が分かっている場合には、弁護士名義の通知だけで解決することもあります。
この場合、特定の手続は不要です。
どの方法が適しているかは、投稿の内容、繰り返しの有無、投稿者が分かっているかどうかによって変わります。
まず何ができるかを確認するために、ご相談ください。
やってはいけない対応
同じように書き返す
自分のストーリーで言い返したり、相手について書いたりすることは避けてください。
自分が責任を問われる側になりかねません。
また、やり取りが続くことで、周囲に広まる範囲も広がります。
相手のアカウントを晒す
相手のユーザー名やアイコンを自分の投稿で公開する行為も、名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われることになりかねません。
記録を残さずに報告する
前記のとおり、記録がなければ内容を証明できません。
すぐに問い詰める
「自分のことだ」という前提が、誤っている可能性もあります。
問い詰めた結果、別のトラブルに発展することもあります。
まず記録を残し、第三者から見て自分のことだと分かる内容かどうかを整理してから、対応を考えてください。
Instagram以外にも書かれている場合
同じ人が、複数のサービスに書き込んでいることがあります。
ThreadsはInstagramのアカウントを用いて登録する仕組みです。
そのため、Instagramで悪口を書いている人が、Threadsにも書いているという場合があります。
もっとも、ThreadsとInstagramは別のサービスとして扱われるため、手続はそれぞれ検討する必要があります。
Threadsについては、以下の記事で解説しています。

TikTokについては、以下の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)
- 名前が書かれていませんが、自分のことだと分かります。対象になりますか。
-
なり得ます。
法的には、その投稿が誰のことを指しているのかが分かるかどうかが問われます。
投稿に書かれた属性、投稿されたタイミング、投稿者との関係などから判断されます。ただし、自分がそう思ったというだけでは足りず、投稿を見た第三者から見て分かる状態であることが必要です。
また、名誉感情侵害(侮辱)の主張をする際には、厳密な同定可能性がなくとも権利侵害が認められる可能性があります。
- 「親しい友達」だけに公開されたストーリーでも、責任を問えますか。
-
問える場合があります。
名誉毀損には公然性という要件がありますが、閲覧できた人数が少なくても、そこからさらに広まる可能性が認められれば、公然性が肯定されることがあります。
裁判例には、閲覧できたのが4人であった事案でも公然性を認めたものがあります。また、公然性が認められない場合でも、名誉感情侵害として責任を問える場合があります。
- ストーリーが消えてしまいました。もう何もできませんか。
-
記録が残っていれば、手続を進められる場合があります。
スクリーンショットや画面録画が残っていないか確認してください。記録がまったくない場合には、内容を証明することが難しくなります。
今後、同じことが繰り返された場合に備え、見つけた時点で記録するようにしてください。 - 相手は分かっています。それでも弁護士に相談する意味はありますか。
-
あります。
投稿者が分かっている場合、特定の手続は不要であり、弁護士名義で通知を送るところから始められます。
第三者から法的な指摘を受けることで投稿が止まることは少なくありません。費用も、特定まで行う場合と比べて抑えられます。
- 警察に相談すればいいですか。
-
内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪にあたる可能性があります。
ただし、警察は民事上の損害賠償には対応しません。
また、記録がなければ捜査は難しくなります。身の危険を感じるような内容であれば、ためらわずに警察に相談してください。
そうでない場合は、まず記録を残し、対応の方針を整理することをおすすめします。 - 子どもがインスタで悪口を書かれています。保護者として何ができますか。
-
まず、お子様と一緒に投稿の記録を残してください。
投稿者が同じ学校の生徒である場合、学校への相談が考えられます。
担任のほか、いじめ防止のための組織や教育委員会に相談する方法もあります。学校の対応が十分でない場合や内容が悪質な場合には、法的な手続を検討することになります。
- ストーリーではなく、コメント欄に悪口を書かれました。同じように対応できますか。
-
できます。
名誉毀損や侮辱にあたるかどうかの判断、投稿者を特定する手続は、投稿された場所によって変わりません。むしろコメントは、削除されない限り残り続けるため、ストーリーのように24時間で消えることを心配する必要はありません。
ただし、投稿者が自ら削除することはありますので、見つけた時点で記録してください。
- なりすましアカウントを作られました。対処できますか。
-
アプリ内の報告機能から、なりすましとして報告する方法があります。
報告の際、本人であることを確認するための資料の提出を求められることがあります。報告によって削除されない場合や、そのアカウントの投稿によって社会的評価が低下しているような場合には、法的な削除請求や発信者情報開示請求を検討することになります。
- 費用はどのくらいかかりますか。
-
具体的な費用については、記事末尾のリンクからサービスページをご確認いただくか、ご相談の際にご説明します。
まとめ
- ストーリーは24時間で消えます。見つけた時点で、画面録画とスクリーンショットで記録してください。
- 名前が書かれていなくても、投稿の内容から誰のことか分かる場合には、責任を問える可能性があります。
- 「親しい友達」限定や非公開アカウントからの投稿であっても、そこから広まる可能性が認められれば、名誉毀損が成立し得ます。
- 投稿者が分かっている場合には、弁護士名義の通知だけで解決することもあります。特定の手続が必ず必要というわけではありません。
- 特定まで行う場合は、通信記録の保存期間という制約があります。
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