【この記事の結論・要約】
- 性的な画像を示して金銭などを要求する行為は、恐喝罪や強要罪にあたります。要求に応じても終わるとは限らず、支払った後にさらに要求される場合があります。
- まず行うべきは、やり取りの記録を残すことです。相手のアカウントを消される前、自分がブロックする前に保存してください。
- 加害者が海外にいる場合、特定や賠償の回収は難しくなります。他方、画像が拡散された場合の削除や、刑事の手続は進められます。
はじめに
性的な画像や動画を送ってしまい、それを示して金銭を要求されているという相談があります。
この状況に置かれた方は、家族や職場に知られることを恐れ、誰にも相談できないまま要求に応じてしまうことがあります。
相手は、その心理を利用して要求を重ねます。
この記事では、被害に遭ったときにまず何をすべきか、どのような犯罪が成立するのか、画像が拡散された場合に削除を求められるのかを解説します。
被害に遭ったときにまずすること
要求に応じない
金銭を支払っても、それで終わるとは限りません。
支払いに応じたことで、要求が繰り返される場合があります。
追加の画像を求められている場合も同じです。
応じるほど、相手が持つ資料が増えることになります。
やり取りを保存する
ブロックや削除をする前に、記録を残してください。
- 相手のアカウント名、表示名、プロフィール画面
- 知り合った経緯が分かる部分(どのサービスで、いつ)
- 要求された内容と日時
- 送金先として指定された口座や送金方法
- 実際に送金した場合は、その記録
- 画像が投稿されている場合は、そのURLと投稿日時
相手はアカウントを削除して姿を消すことがあります。
消された後では、どのようなやり取りがあったのかを示せなくなります。
連絡を続けない
記録を残した後は、相手とのやり取りを続ける必要はありません。
交渉して画像を消させようとしても、応じられることは期待できません。
削除したと告げられても、確認する方法がありません。
一人で抱えない
相手は、周囲に知られることへの不安を利用します。
警察には、サイバー犯罪に関する相談窓口が各都道府県に置かれています。
また、性的な画像の被害については、削除の支援を行っている民間の相談先もあります。
弁護士に相談する場合も、内容が外部に伝わることはありません。
セクストーションとは
言葉の意味
セクストーションは、性を意味する英語と、ゆすりを意味する英語を組み合わせて作られた語です。
性的な画像や動画を用いて相手を脅し、金銭や追加の画像を要求する行為を指して使われます。
法律上の用語ではありません。
成立する犯罪は、要求された内容や相手との関係によって変わります。
被害の型
| 型 | 要求されるもの | 相手 |
|---|---|---|
| 金銭を要求される型 | 金銭、電子マネー、暗号資産 | SNSやアプリで知り合った相手。海外からの犯行である場合がある |
| 画像を要求される型 | さらに性的な画像や動画 | 同上。被害者が未成年である場合が目立つ |
| 交際関係にもとづく型 | 復縁、交際の継続、金銭 | 交際相手、元交際相手 |
どの型かによって、相手を特定できる見込みも、とれる手続も変わります。
要求が続く仕組み
この被害では、相手が最初から画像を得ることを目的として接触してくる場合があります。
一定期間やり取りを重ねて親しくなった後に画像を求め、それを得た時点で態度を変えるという流れがとられます。
被害を受けた方が、自分の判断を責める必要はありません。
また、相手が複数人で役割を分けている場合もあります。
連絡してくる相手が変わっても、同じ被害の一部であることがあります。
成立する犯罪
要求された内容や、画像が公開されたかどうかによって、問題となる犯罪が変わります。
| 状況 | 問題となる犯罪 | 親告罪か |
|---|---|---|
| 金銭を要求された | 恐喝罪(刑法249条) | 親告罪ではない |
| 画像を拡散すると告げられた | 脅迫罪(刑法222条) | 親告罪ではない |
| 追加の画像や行為を求められた | 強要罪(刑法223条) | 親告罪ではない |
| 画像を公開された | 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 | 親告罪ではない |
| 被害者が18歳未満 | 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 | 親告罪ではない |
恐喝罪
金銭を要求された場合には、恐喝罪が問題になります。
刑法249条1項は、次のとおり定めています。
(恐喝)
第二百四十九条
「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。」
実際に支払ってしまった場合は既遂となり、支払わなかった場合でも未遂として処罰の対象になります。
脅迫罪
画像を拡散すると告げる行為は、名誉に害を加えることを告げるものとして脅迫罪が問題になります。
刑法222条1項は、次のとおり定めています。
(脅迫)
第二百二十二条
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。」
脅迫罪は、本人に向けて告げられれば成立します。
1対1のやり取りであっても問題ありません。
強要罪
金銭ではなく、追加の画像の送信や特定の行為を求められた場合には、強要罪が問題になります。
刑法223条1項は、生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた者を処罰すると定めています。
画像が公開された場合
実際に画像が公開された場合には、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が問題になります。
同法は、第三者が撮影対象者を特定できる方法で私事性的画像記録を公表する行為を処罰しています。
この罪は、告訴がなくても起訴できます。

被害者が18歳未満の場合
被害者が18歳未満であれば、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律の問題になります。
画像を要求して送らせる行為、送られた画像を持ち続ける行為、第三者に提供する行為が、それぞれ処罰の対象になります。
被害者本人が責任を問われるものではありません。
支払ってはいけない理由
終わらない
一度支払うと、相手は支払う意思と能力があると判断します。
金額を変えて要求が繰り返されたり、別の名義で連絡が来たりすることがあります。
警察や自治体の注意喚起でも、支払いに応じないよう呼びかけられています。
削除されたか確認できない
相手が画像を削除したと告げても、それを確かめる方法はありません。
複製されていれば、削除の約束に意味はありません。
支払いによって得られるのは、当面の間は公開されないという不確かな状態だけです。
すでに支払ってしまった場合
支払ってしまった場合に自分を責める必要はありません。
その時点で記録を残し、相談してください。
送金の記録は、被害を示す資料になります。
送金先の口座が国内のものであれば、そこから手がかりが得られる場合もあります。
画像が公開された場合の削除
サイトへの削除の申請
SNSや動画サイトには、性的な画像の投稿を禁じる規約があり、削除の申請を受け付けています。
本人が申請できる場合もありますが、対応されないときには、送信防止措置依頼や裁判所への仮処分の申立てを検討します。
拡散している場合
転載された先がある場合には、それぞれについて削除を求めることになります。
拡散が進むほど対応の負担が増えるため、公開を確認した時点で早く動く必要があります。
検索結果に表示されている場合には、検索サービスに対する対応も検討します。
権利侵害の構成
削除を求める根拠は、プライバシー侵害、肖像権侵害、名誉毀損などです。
性的な画像の公開は、知られたくない程度が高い私生活上の事柄を公にするものであり、プライバシー侵害として構成しやすい類型です。

公開されているかを確認する
拡散すると告げられた段階では、実際に公開されているかどうかが分かりません。
確認する範囲
自分の氏名やアカウント名で検索する、画像共有サイトを確認するといった方法があります。
相手が示してきた投稿先がある場合には、その場所を確認します。
もっとも、確認のために画像投稿サイトを見て回ることは、精神的な負担が大きい作業です。
ご自身で行うことが難しい場合には、無理に行う必要はありません。
公開されていない場合
実際には公開されていないことがあります。
公開するという告知だけで要求が行われている場合です。
この場合でも、脅迫罪や恐喝罪は成立します。
公開されていないから何もできないということはありません。
公開されていた場合
URL、投稿日時、投稿者のアカウント名を保存してください。
その画面を直視することが難しければ、日時と場所の記録だけでも残しておいてください。
加害者を特定できるか
相手が国内にいる場合
交際相手や元交際相手など、相手が誰か分かっている場合には、そのまま損害賠償を請求できます。
相手が匿名であっても、公開されたサイトへの投稿があれば、発信者情報開示請求によって特定できる可能性があります。

海外からの犯行である場合
金銭を要求する型では、海外から行われている場合があります。
この場合、相手を特定して賠償を得ることは現実的に難しくなります。
他方、画像が公開された場合の削除は、サイトの運営者に対して行うですので、加害者が誰か分からなくても進められることがあります。
1対1のやり取りの場合
要求がダイレクトメッセージで行われている場合、そのやり取りは特定の相手に向けた通信です。
発信者情報開示請求は、不特定の者が受信できる通信を対象とする手続であるため、この枠組みは使えません。
相手を特定する手段としては、刑事の手続が中心になります。
民事の請求
慰謝料の請求
相手が特定できている場合には、損害賠償を請求できます。
性的な画像を用いて脅す行為は、精神的な苦痛の程度が大きい類型です。
画像が公開された場合には、その後の生活への影響も考慮されます。
支払ってしまった金銭についても、返還を求めることになります。
画像の廃棄を求める
示談をする場合には、金銭の支払いだけでなく、画像やその複製をすべて廃棄すること、今後公開しないこと、第三者に提供しないことを内容に含めます。
もっとも、複製が残っていないことを確認する方法はありません。
約束をさせることに一定の意味はありますが、それで完全に安心できるわけではないという前提で判断することになります。
公開を止めるための手続
公開されるおそれがある段階では、人格権にもとづいて、公開の差止めを求めることも考えられます。
相手が誰か分かっていることが前提になるため、交際相手や元交際相手からの被害で選択肢になります。
刑事の手続
相談と被害届
各都道府県の警察には、サイバー犯罪に関する相談窓口があります。
相談に行く際は、保存した記録を整理して持参してください。
いつ、どのサービスで知り合い、どのような要求を受けたのかを時系列にまとめておくと、話が進みます。
告訴の要否
恐喝罪、脅迫罪、強要罪は親告罪ではありません。
被害者の告訴がなくても、捜査の対象になります。
もっとも、告訴を行うことで、処罰を求める意思を明確に示せます。
告訴状を整えて提出することで、対応が変わることがあります。
捜査の見通し
相手が海外にいる場合、捜査が進んでも検挙に至らないことがあります。
それでも、被害を届け出ておく意味はあります。
同じ手口の被害が複数寄せられることで、捜査につながる場合があるためです。
相談できる窓口
この被害には、複数の相談先があります。
警察
各都道府県にサイバー犯罪に関する相談窓口が置かれています。
緊急の場合は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話(#9110)があります。
削除の支援を行う窓口
性的な画像の削除について、支援を行っている民間の団体があります。
サイトへの削除の申請を代わりに行うなどの対応を受けられる場合があります。
弁護士
削除、相手方への請求、刑事の手続を一貫して進められます。
どの手続をとるべきかの判断を含めて相談できます。
いずれの窓口でも、相談した内容が家族や職場に伝えられることはありません。
未成年が被害を受けた場合
本人が責任を問われるものではない
自分で画像を送ってしまったことを理由に、責任を問われるのではないかと不安に思う方がいます。
しかし、被害者は保護される立場にあります。
送ってしまったことを理由に、被害を訴えられなくなるわけではありません。
保護者に知られたくない場合
保護者に知られることを恐れて相談できず、要求に応じ続けてしまうことがあります。
時間が経つほど、相手が持つ資料は増え、状況は悪くなります。
学校のスクールカウンセラー、自治体の相談窓口、警察の少年相談の窓口など、相談できる場所があります。
手続は保護者が行う
被害者が未成年の場合、削除請求や損害賠償請求といった手続は親権者が行うことになります。
保護者の方が相談に来られる場合には、本人と一緒に相談するか、本人が話せる範囲で状況を整理していただくことになります。
交際相手・元交際相手からの場合
交際していた相手から、別れ話をきっかけに画像を示して要求を受けることがあります。
この場合、相手が誰か分かっているため、損害賠償の請求や刑事の手続を進めやすくなります。
他方、関係を続けたいという要求であれば、ストーカー規制法の問題にもなります。
公開されていない段階でも、警告や禁止命令の対象となる場合があります。
公開された後に対応するより、その前に手を打つほうが被害は小さくなります。
勤務先や資格への影響
被害を受けた方が、自分の職業や立場への影響を心配されることがあります。
被害者が責任を問われるものではない
画像を送ったこと自体によって、被害者が刑事上の責任を問われるものではありません。
もっとも、公開された場合には、勤務先での立場や資格に影響が及ぶ可能性があります。
だからこそ、公開される前の段階で対応を検討する意味があります。
勤務先に連絡すると告げられた場合
勤務先や学校に画像を送ると告げられることがあります。
この場合も、名誉に害を加えることを告げるものとして脅迫罪が問題になります。
実際に送られた場合には、その相手方に対して削除や破棄を求めることになります。
よくある質問(FAQ)
- すでに支払ってしまいました。どうすればよいですか。
-
その時点で支払いを止め、記録を残してください。
送金の記録は被害を示す資料になります。支払ってしまったことを理由に、その後の対応ができなくなるわけではありません。
- 相手をブロックしてもよいですか。
-
やり取りを保存してからにしてください。
連絡手段によっては、ブロックすると、過去のメッセージや相手のプロフィールを確認できなくなることがあります。アカウント名、知り合った経緯、要求の内容と日時が分かる形で記録を残してください。
- 相手が海外にいる場合、何もできませんか。
-
相手を特定して賠償を得ることは難しくなります。
他方、画像が公開された場合の削除はサイトの運営者に対して行うものであり、加害者が誰か分からなくても進められます。
刑事の手続として被害を届け出ることもできます。 - まだ画像は公開されていません。それでも相談できますか。
-
相談できます。
公開される前の段階であれば、要求への対応方針を決めたうえで、公開された場合に備えて記録を整えておくことができます。
要求を受けている段階で相談いただくほうが、とれる選択肢は多くなります。 - 自分から送った画像でも削除を求められますか。
-
求められます。
自分から送ったことと、それを第三者が見られる状態に置かれることとは別の問題です。
性的な画像の公開は、知られたくない程度が高い私生活上の事柄を公にするものであり、プライバシー侵害として削除を求められます。 - 家族や職場に知られてしまいますか。
-
弁護士に相談した内容が外部に伝わることはありません。
手続を進める場合でも、どの範囲まで知られる可能性があるかを事前に説明したうえで方針を決めます。ご懸念がある場合は、相談の際にお伝えください。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- 要求に応じても終わるとは限らず、支払いを重ねる結果になり得る
- ブロックや削除をする前に、やり取りを保存する
- 恐喝罪、脅迫罪、強要罪はいずれも親告罪ではなく、告訴がなくても捜査の対象になる
- 加害者が海外にいる場合、特定や賠償の回収は難しい
- 画像が公開された場合の削除は、加害者が分からなくても進められる
- 被害者が未成年であっても、本人が責任を問われるものではない
この被害では、誰にも言えないまま時間が過ぎることが最も状況を悪くします。
相手はそれを前提に要求を重ねます。
当事務所では、インターネット上の画像の削除、発信者情報開示請求、刑事告訴のいずれにも対応しています。
公開される前の段階でも、当事務所にご相談ください。
相手のアカウントが消される前に記録を残す必要があります。
お早めにご相談ください。
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