【この記事の結論・要約】
- Discordでの誹謗中傷は、どこに書き込まれたかによって扱いが変わります。公開されたサーバーのチャンネルへの投稿と、ダイレクトメッセージとでは、とれる手続が異なります。
- 不特定の人が閲覧できるチャンネルへの投稿であれば、発信者情報開示請求の対象になり得ます。他方、ダイレクトメッセージは特定の相手に向けた通信であるため、この枠組みは使えません。
- Discordを運営する会社は外国会社として日本に登記があり、日本における代表者も選任されています。海外のサービスであることを理由に手続を諦める必要はありません。
はじめに
Discordは、ゲームやコミュニティの連絡手段として広く使われています。
参加者が固定されたコミュニティであるために関係が密になりやすく、いったん関係が悪化すると、集中的な攻撃を受けることがあります。
閉じた空間であるため、外部に相談しにくいという特徴もあります。
この記事では、Discordで誹謗中傷を受けた場合に、投稿の削除や投稿者の特定ができるのか、どのような手続をとることになるのかを解説します。
Discordで起こる被害の形
サーバーとチャンネルの仕組み
Discordでは、サーバーと呼ばれる単位でコミュニティが作られ、その中に話題ごとのチャンネルが置かれます。
サーバーには、誰でも参加できるものと、招待を受けた人だけが参加できるものがあります。
また、サーバーの中でも、特定の役割を与えられた人だけが閲覧できるチャンネルを設けることができます。
この閲覧できる範囲の違いが、法律上の判断に影響します。
被害の形
| 場所 | 被害の例 |
|---|---|
| 公開サーバーのチャンネル | 実名や活動名を挙げた中傷、虚偽の事実の書き込み |
| 非公開サーバーのチャンネル | 元の仲間内での悪口、退出した人への中傷 |
| ダイレクトメッセージ | 個別に送られる暴言、脅し、金銭の要求 |
| ボイスチャンネル | 通話中の暴言 |
| プロフィールやサーバー名 | 特定の人をおとしめる名称の使用 |
複数の形が同時に起きていることが多くあります。
サーバー内で中傷が始まり、退出した後もダイレクトメッセージが届くということもあります。
どこに投稿されたかで扱いが変わる
Discordの事案では、この点の確認が出発点になります。
発信者情報開示請求の対象となる通信
発信者情報開示請求は、情報流通プラットフォーム対処法にもとづく手続です。
同法が対象とするのは特定電気通信です。
同法2条1号は、次のとおり定めています。
「特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号及び第三号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。」
重要なのは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信という部分です。
閲覧する人が限られていない通信が対象になります。
この区別により、Discordでは次のように扱いが分かれます。
| 投稿された場所 | 開示請求の枠組み |
|---|---|
| 誰でも参加できるサーバーのチャンネル | 対象になり得る |
| 招待制のサーバーのチャンネル | 参加者の範囲によって判断が分かれる |
| ダイレクトメッセージ | 特定の相手に向けた通信であり、枠組みを使えない |
| グループのダイレクトメッセージ | 同上 |
ダイレクトメッセージの場合
ダイレクトメッセージは、特定の相手に向けて送られるものです。
そのため、不特定の者によって受信されることを目的とする通信とはいえず、開示請求の枠組みは使えません。
これは、内容が悪質であっても変わりません。
もっとも、責任を追及できないわけではありません。
相手が誰か分かっている場合には、そのまま損害賠償を請求できます。
また、内容によっては刑事の手続をとることも考えられます。
非公開サーバーの場合
招待制のサーバーについては、参加者の範囲によって判断が分かれます。
参加に条件がなく、招待リンクが公開されているサーバーであれば、実質的には誰でも閲覧できる状態にあります。
他方、ごく少数の知人だけが参加しているサーバーでは、閲覧する人が限られています。
参加人数、参加の条件、招待リンクがどのように配られているかを確認したうえで検討することになります。
権利侵害が成立するか
手続がとれるかという問題とは別に、その投稿が権利侵害にあたるかを検討します。
名誉毀損と公然性
名誉毀損が成立するには、不特定または多数の人が認識し得る状態であること(公然性)が必要です。
ここで注意が必要なのは、先ほどの特定電気通信の判断とは判断が異なるという点です。
閲覧できる人が限られていても、そこから外部に広まる可能性があれば、公然性が認められる余地があります(伝播可能性)。
非公開サーバーであっても、参加者が多数であれば、公然性が認められる可能性があります。
開示請求の枠組みが使えない場合でも、名誉毀損としての責任は生じ得るということです。

具体的な事実が書かれているか
名誉毀損には、具体的な事実の摘示が必要です。
「金を持ち逃げした」「他のメンバーに嫌がらせをしている」といった内容であれば、事実の摘示にあたります。
「感じが悪い」「気に入らない」といった評価にとどまる場合は、名誉毀損としては争いにくくなります。

名誉感情の侵害
事実を伴わない罵倒については、名誉感情の侵害として主張することになります。
名誉感情の侵害は公然性を必要としないと考えられており、ダイレクトメッセージでも成立し得ます。
もっとも、社会通念上許される限度を超える侮辱行為といえることが必要です。

脅迫にあたる場合
危害を加えることを告げる内容であれば、脅迫罪が問題になります。
刑法222条1項は、次のとおり定めています。
(脅迫)
第二百二十二条
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。」
脅迫罪は公然性を必要としません。
ダイレクトメッセージで送られた内容であっても成立し得ます。
ハンドルネームで活動している場合
Discordでは、本名を明かさずに活動していることが多くあります。
名誉毀損では、第三者が読んで対象者を特定できることが前提になります。
もっとも、そのアカウント名で継続的に活動し、参加者の間で誰のことか分かる状態であれば、同定可能性が認められる余地があります。
本名が知られていないことを理由に、直ちに諦める必要はありません。

私生活上の事柄を書かれた場合
本名、住所、勤務先、家族関係といった情報をサーバー内に書き込まれた場合には、プライバシー侵害の問題になります。
Discordでは、交流の中で個人的な事情を話していることがあります。
関係が悪化した後に、それをサーバー内で暴露されるという被害が生じます。

Discordで見られる誹謗中傷
Discordの事案には、いくつか共通する経過があります。
コミュニティ内の対立から始まる
運営方針をめぐる対立、参加者同士のトラブル、交際関係のもつれなどをきっかけに、一方が排除される形で中傷が始まります。
参加者の多くが以前は親しくしていた相手であるため、個人的な事情を知られていることが多く、私生活に関する情報が持ち出されやすくなります。
別のサーバーへ広がる
元のサーバーだけでなく、関係する別のサーバーにも同じ内容が書き込まれることがあります。
また、XなどのSNSに転載される場合もあります。
この段階になると、閲覧できる範囲が広がり、社会的評価への影響も大きくなります。
転載先ごとに対応が必要になるため、負担も増えます。
退出後も続く
サーバーを退出した後も、ダイレクトメッセージで誹謗中傷されることもあります。
また、本人が閲覧できない場所で中傷が続いている場合もあります。
本人が確認できない以上、他の参加者から知らせてもらうほかありません。
知らせてくれる方がいる場合には、その内容を保存してもらってください。
投稿の削除
サーバー管理者への依頼
サーバー内の投稿は、サーバーの管理者や権限を与えられた参加者が削除できます。
最も早いのは、管理者に削除を求める方法です。
もっとも、管理者自身が中傷に加わっている場合や、投稿者と親しい場合には応じてもらえません。
運営への報告
Discordの運営は、コミュニティガイドラインに違反する行為の報告を受け付けています。
嫌がらせやいじめ、個人情報の暴露などは、ガイドライン上禁止されています。
報告により、投稿の削除やアカウントの停止といった対応がとられることがあります。
ただし、運営の対応は運営の判断によるものであり、法律上の権利として削除を求めるものではありません。
報告しても対応されないことがあります。
裁判手続による削除
任意の対応で削除されない場合には、裁判所に仮処分を申し立てる方法があります。
もっとも、Discordの投稿は検索サイトに表示されるものではなく、サーバーの参加者しか見ないという性質があります。
削除によって得られる効果と、手続に要する負担とを比べたうえで判断することになります。
投稿者を特定する方法
ユーザー名だけでは特定できない
Discordのユーザー名や表示名は自由に変更できます。
これらが分かっているだけでは、現実の人物にはたどり着けません。
相手が誰か分からない場合には、運営から情報の開示を受ける手続が必要になります。
日本の裁判手続がとれる
Discordは海外のサービスですが、運営会社は外国会社として日本に登記されています。
登記事項証明書によれば、DISCORD INC.はアメリカ合衆国デラウェア州一般会社法を準拠法とする会社で、本店はカリフォルニア州サンフランシスコにあります。
令和6年7月16日に日本における代表者が選任され、同年8月1日に登記されています。
日本における代表者が選任されているため、書類の送達についても日本法人と同じように進められます。
そのため、日本の裁判手続きで進めることが可能です。
開示請求の流れ
枠組みを使える投稿について、手続は二段階になります。
- 運営会社から、投稿時のIPアドレスなどの開示を受ける
- そのIPアドレスを管理しているアクセスプロバイダから、契約者の情報の開示を受ける
権利が侵害されたことが明らかであることが要件とされているため、投稿の内容がこの水準に達しているかを検討することになります。

時間の制約
アクセスプロバイダの通信記録の保存期間は一般に3か月から6か月程度で、事業者によって異なります。
裁判手続による特定には3か月から9か月程度かかるため、投稿を見つけてから相談までに時間をかけると間に合わなくなります。
ボイスチャンネルでの被害
記録が残らない
通話での暴言は、文字のメッセージと違い、そのままでは記録が残りません。
後から内容を示せなければ、どのような発言があったのかを立証できません。
被害が続いている場合には、記録を残す方法を検討することになります。
自分が参加している通話の録音
自分が参加している通話を録音することは、相手の同意がなくても違法とはされないと考えられています。
裁判でも、こうした録音が証拠として用いられることがあります。
通話での発言も責任の対象になる
複数人が参加している通話での発言は、その場にいた人が認識できる状態でされたものです。
参加人数や、そこから広まる可能性によっては、名誉毀損の公然性が認められる余地があります。
ただし、発信者情報開示請求の対象となるかどうかは、また別の検討が必要です。
刑事の手続
| 書き込みの内容 | 問題となる犯罪 | 公然性 |
|---|---|---|
| 具体的な事実を示して評価を下げるもの | 名誉毀損罪(刑法230条) | 必要 |
| 事実を伴わない罵倒 | 侮辱罪(刑法231条) | 必要※ |
| 危害を加えることを告げるもの | 脅迫罪(刑法222条) | 不要 |
| 金銭などを要求するもの | 恐喝罪(刑法249条)など | 不要 |
| 性的な画像を要求し、拡散すると告げるもの | 脅迫罪、強要罪など | 不要 |
※民事上の名誉感情侵害は公然性は不要です
ダイレクトメッセージでの被害では、名誉毀損罪や侮辱罪は成立しにくくなりますが、脅迫罪や恐喝罪は成立し得ます。
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。
告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条1項)。
証拠の保存
Discordのメッセージは、投稿者本人やサーバーの管理者が削除できます。
気づいた時点での保存が、その後の手続を左右します。
保存すべき内容
- メッセージの本文と投稿日時
- 投稿者のユーザー名、表示名、アイコン
- サーバー名とチャンネル名
- メッセージごとのリンク
- 前後のやり取り
- サーバーの参加人数と、参加の条件が分かる画面
メッセージのリンクは、メッセージの操作メニューから取得できます。
どのサーバーのどのチャンネルのどのメッセージかを示すものであり、対象を特定するうえで役立ちます。
参加人数の記録が重要になる
Discordの事案では、閲覧できる人の範囲が争点になる可能性があります。
そのため、サーバーの参加人数、チャンネルを閲覧できる人の範囲、参加に条件があるかどうかを記録しておく必要があります。
後からサーバーが非公開に変更されたり、退出させられたりすると、確認できなくなります。
退出する前に保存する
被害を受けている状況では、サーバーから退出したいと考えるのが自然です。
しかし、退出すると、そのサーバーの内容を確認できなくなります。
退出する前に、必要な範囲を保存しておいてください。
未成年が当事者の場合
Discordは学生の利用も多く、当事者が未成年である場合があります。
被害を受けた側が未成年であれば、手続は親権者が行うことになります。
加害者側が未成年であっても、自分の行為の責任を判断できる能力があれば、本人が賠償責任を負います。
加えて、監督義務を怠ったとして親自身が責任を負うこともあります。
学校内の関係から生じた事案では、学校への相談と並行して進めることも考えられます。
請求できる金額の水準
投稿者を特定できた場合、損害賠償を請求することになります。
法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
名誉感情侵害のみの事案では、平均23.0万円、中央値15.0万円と、より低い水準です。
投稿の回数が多い事案では金額が上がる傾向があり、同報告書では、投稿1回の事案の平均が30.7万円であるのに対し、10回から49回では78.3万円とされています。
なお、同報告書は、特定の民間データベースに登録された裁判例から抽出したものであり、同種事案全般の傾向を直接反映するものではないと明記しています。

書き込んでしまった側の対応
閉じたコミュニティであることから、外部に知られないと考えて書き込んでしまう例があります。
しかし、参加者の誰かが内容を記録していれば、そのまま資料になります。
サーバーを退出しても、記録が消えるわけではありません。
プロバイダから意見照会書が届いた場合や、相手方の代理人から請求書が届いた場合には、期限が定められていることが多くあります。
放置すると訴訟を提起され、対応の選択肢が狭まります。

よくある質問(FAQ)
- Discordは海外のサービスですが、日本で手続をとれますか。
-
運営会社は外国会社として日本に登記されており、日本における代表者も選任されています。
海外のサービスであることを理由に手続を諦める必要はありません。 - ダイレクトメッセージで暴言を受けています。特定できますか。
-
ダイレクトメッセージは特定の相手に向けた通信であるため、発信者情報開示請求の枠組みは使えません。
もっとも、相手が誰か分かっている場合には損害賠償を請求できますし、内容によっては脅迫罪などとして刑事の手続をとることも考えられます。 - 少人数の非公開サーバーでの悪口も名誉毀損になりますか。
-
参加者の人数や、そこから外部に広まる可能性によって判断が分かれます。
閲覧できる人が限られていても、そこから情報が広まる可能性があれば公然性が認められる余地があります。名誉感情の侵害として主張することも考えられます。
- 通話中の暴言はどう扱われますか。
-
そのままでは記録が残らないため、内容を示せる状態にしておく必要があります。
自分が参加している通話を録音することは、相手の同意がなくても違法とはされないと考えられています。複数人が参加している通話での発言であれば、公然性が認められる余地があります。
- サーバーから退出したほうがよいですか。
-
被害を止めるという意味では有効ですが、退出するとそのサーバーの内容を確認できなくなります。
退出する前に、メッセージの内容、サーバー名とチャンネル名、参加人数が分かる画面を保存しておいてください。 - 相手のユーザー名しか分かりません。それでも相談できますか。
-
相談できます。
ユーザー名や表示名は変更できるため、それだけでは現実の人物にたどり着けませんが、投稿がどこにされたか、どのような内容かによって、とれる手続が変わります。
まず投稿の内容と場所を保存してご相談ください。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- Discordでは、どこに書き込まれたかによってとれる手続が変わる
- 不特定の人が閲覧できるチャンネルへの投稿は、発信者情報開示請求の対象になり得る
- ダイレクトメッセージは特定の相手に向けた通信であり、この枠組みは使えない
- 手続がとれるかという問題と、権利侵害が成立するかという問題は別である
- 運営会社は日本に登記があり、日本における代表者も選任されている
- サーバーの参加人数や参加条件は、後から確認できなくなるため早めに記録する
閉じた場での被害は、外部から見えないために深刻さが伝わりにくく、相談が遅れがちです。
記録が残っているうちに対応を検討することが重要になります。
当事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴のいずれにも対応しています。
投稿者の特定には通信記録の保存期間という時間的な制約があります。
お早めにご相談ください。
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