【この記事の結論・要約】
- 「誹謗中傷」は法律用語ではありません。法的な手続をとるには、その投稿が名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの権利侵害にあたるかどうかを判断する必要があります。批判や論評として許される範囲にとどまるものは、対象になりません。
- とり得る手続は、投稿の削除、投稿者の特定、損害賠償請求、刑事告訴の4つです。削除を先行させると特定が難しくなることがあり、順序の判断が重要になります。
- 投稿者の特定には通信記録の保存期間という制約があり、時間の経過とともに手段が失われます。まず証拠を保存したうえで、早い段階で相談してください。
はじめに
インターネット上に自分や自社に関する書き込みを見つけたとき、多くの方が最初に考えるのは「これは消せるのか」「誰が書いたのか分かるのか」ということです。
もっとも、その前に確認すべきことがあります。その投稿が、法的に問題のあるものといえるかどうかです。
不快な投稿がすべて削除や損害賠償の対象になるわけではありません。
批判や論評として許される範囲のものについては、手続をとっても認められません。
本記事では、まずどこからが法的に問題となる誹謗中傷なのかを裁判例をもとに整理し、そのうえで削除・特定・損害賠償・刑事告訴という4つの手続の全体像を解説します。
どこからが誹謗中傷にあたるのか
「誹謗中傷」は法律用語ではない
「誹謗中傷」という言葉は日常的に使われますが、法律上の用語ではありません。
「誹謗中傷罪」という犯罪もありませんし、「誹謗中傷されたから削除してほしい」という請求権があるわけでもありません。
法的な手続をとるためには、その投稿が具体的にどのような権利を侵害しているのかを特定する必要があります。
主に問題となるのは、名誉権、名誉感情、プライバシー、肖像権です。
批判と誹謗中傷の違い
判断の出発点になるのは、その投稿が「事実」を述べているのか、「意見・評価」を述べているのかという区別です。
- 事実の摘示:「あの会社は残業代を支払っていない」「Aは不倫している」など、証拠によって存否を決めることができる内容
- 意見・論評:「あの会社は働きにくいと思う」「Aのやり方は好きになれない」など、書き手の評価
この区別が重要なのは、どちらにあたるかによって、責任を負わないための要件が異なるためです。
最高裁判所平成9年9月9日判決(ロス疑惑訴訟夕刊フジ事件 平成6年(オ)第978号損害賠償請求事件、民集51巻8号3804頁)は、この点について次のように述べています。
新聞記事による名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものである。
つまり、「感想を述べただけだから名誉毀損にはならない」というものではありません。
そのうえで、同判決は、責任を負わないための要件を次のように整理しています。
事実を摘示した場合
事実を摘示しての名誉毀損にあたっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、右行為には違法性がなく、仮に右事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される
意見・論評を表明した場合
一方、ある真実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである
整理すると、責任を負わないためには次の要件を満たす必要があります。
| 事実を摘示した場合 | 意見・論評を表明した場合 | |
|---|---|---|
| 共通 | 公共の利害に関する事実に係ること/専ら公益を図る目的であること | 同左 |
| 内容 | 摘示した事実が重要な部分において真実であること | 前提としている事実が重要な部分において真実であること |
| 上記の証明がない場合 | 真実と信じるについて相当の理由があれば、故意・過失が否定される | 同左 |
| 追加の要件 | — | 人身攻撃に及ぶなど、意見・論評としての域を逸脱していないこと |
注目すべきは、意見・論評であっても「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したもの」であれば、違法性を欠くとはいえないとされている点です。
「これは自分の感想だ」と述べれば何を書いてもよいわけではない、ということになります。
また、事実が真実であると証明できなくても、真実と信じるについて相当の理由があれば責任を負わないとされている点も重要です。
この「相当の理由」が認められるかどうかは、実務上しばしば争いになります。
インターネット上の投稿でも、責任を免れる要件は緩やかにならない
前記のとおり、事実を摘示した場合であっても、その事実を真実と信じるについて相当の理由があれば、責任を負わないとされています。
では、インターネット上の投稿については、この「相当の理由」が緩やかに認められるのでしょうか。
最高裁判所は、これを否定しています。
最高裁判所平成22年3月15日第一小法廷決定(ラーメンフランチャイズ事件 平成21年(あ)第360号名誉毀損被告事件、刑集64巻2号1頁)は、インターネットの個人利用者による名誉毀損が問題となった刑事事件において、次のように判断しました。
インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の表現手段を利用した場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。
同事件では、投稿者が根拠とした資料の中に一方的な立場から作成されたものが含まれていたことなどから、真実と誤信したことについて相当の理由があるとはいえないとされています。
インターネット上で見た情報をそのまま信じて書き込んだというだけでは、責任を免れることにはなりません。
なお、これは刑事事件についての判断ですが、民事上の名誉毀損においても、真実と信じるについての相当の理由が問題となる場面は同様に生じます。
「意見のように見える表現」が事実の摘示とされる場合
実務上、しばしば争いになるのが、意見や伝聞の形式を採っていながら、実質的には事実を述べているという場合です。
前記の平成9年判決は、この点についても判断を示しています。
まず、記事の意味内容が社会的評価を低下させるものかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきであるとしています(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決を引用)。
そして、この基準は、事実の摘示か意見・論評かの区別においても妥当するとしました。
そのうえで、次のように述べています。
当該部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し、右部分が、修辞上の誇張ないし強調を行うか、比喩的表現方法を用いるか、又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ、間接的ないしえん曲に前記事項を主張するものと理解されるならば、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である。
「〜という噂を聞いた」「〜らしい」「あくまで個人の感想ですが」といった形式を採っていても、前後の文脈から特定の事実を主張していると理解されれば、事実の摘示として扱われます。
インターネット上の投稿には、この種の書き方が多く見られます。
形式的な言い回しにとらわれず、全体として何を述べているかで判断されるという点を押さえておく必要があります。
なお、社会的評価を低下させるかどうかの判断基準を示した最小二昭和31年7月20日(昭和29年(オ)第634号慰藉料並びに名誉回復請求事件、民集10巻8号1059頁)の要旨は、次のとおりです。
一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。
判断の分かれ目になる4つの視点
以上を踏まえると、実務上は次の4点が検討されることになります。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 事実か、評価か | 一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、具体的な事実を述べているといえるか |
| 内容が真実か | 事実を述べている場合、それが真実であるといえるか。真実と信じるについて相当の理由があるか |
| 誰のことか分かるか | 実名でなくとも、他の情報と併せて対象者が特定できるか(同定可能性) |
| 限度を超えているか | 意見・論評にとどまる場合でも、人身攻撃に及ぶなど、その域を逸脱していないか |
実際の判断例
同じ相手に向けられた複数の投稿であっても、内容ごとに結論が分かれることが少なくありません。
東京地方裁判所令和5年11月16日判決は、輸出ビジネスの指導を行うスクールを営む原告が、被告のツイッター(現X)上の投稿によって名誉を毀損されたなどとして損害賠償を求めた事案です。
この判決では、投稿の内容ごとに次のように判断が分かれました。
| 投稿の内容 | 判断 |
|---|---|
| 女性関係に関する投稿 | 社会的評価を低下させるものとはいえない |
| 新型コロナウイルス感染症の流行下の会食・海外旅行、二重価格表示に関する投稿 | 公共性、公益目的等が認められ、違法性が阻却される |
| 詐欺行為、指導した生徒、危険商材であること、優良誤認表示等、その他違法行為に関する投稿 | 原告の名誉を毀損するものと認められる |
そのうえで、慰謝料70万円と弁護士費用10万円の限度で請求を一部認容しました。
「全体として悪質だ」という主張ではなく、どの記述がなぜ違法なのかを個別に検討する必要があるのは、このためです。
権利侵害の類型
名誉毀損(名誉権侵害)
公然と事実を摘示し、他人の社会的評価を低下させる行為です(民法709条・710条、刑法230条1項)。
法人も名誉毀損の主体として保護されます。
もっとも、摘示された事実が①公共の利害に関する事実に係り、②専ら公益を図る目的で行われ、③真実であることの証明があったときは、違法性が阻却されます(刑法230条の2第1項)。
真実であることの証明がない場合でも、真実と信じるについて相当の理由があったときは、責任を負わないとされています。
インターネット上の投稿では、この違法性阻却が問題になることが少なくありません。
特に口コミサイトへの投稿は、消費者や求職者にとって有用な情報であるとして公共性・公益目的が認められやすく、投稿された側が「事実に反する」ことを示せるかどうかが分かれ目になります。
侮辱(名誉感情の侵害)
具体的な事実を示さずに、他人を罵倒する行為です。
民事上は、名誉感情の侵害として問題になります。
ただし、単に不快な言葉であれば足りるわけではなく、社会通念上許される限度を超えているかどうかが問われます。
名誉毀損が「社会から受ける客観的な評価」を保護するのに対し、名誉感情の侵害は「自分自身の人格的価値について有する主観的な評価」を保護するものであり、両者は保護する利益が異なります。
そのため、社会的評価を低下させるとまではいえない罵倒であっても、名誉感情の侵害として問題になることがあります。
プライバシー侵害
本人が公開していない私生活上の事実を、正当な理由なく公開する行為です。
プライバシー侵害が認められるためには、一般に、①私生活上の事実又は事実と受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準として公開を欲しない事柄であること、③一般の人にまだ知られていない事柄であること、が必要とされています(東京地方裁判所昭和39年9月28日判決「宴のあと」事件参照)。
住所、電話番号、勤務先、病歴、家族関係などが典型例です。
肖像権侵害
無断で撮影された写真や、本人が公開していない画像を無断で掲載する行為です。
公開の目的、撮影された場所、被写体の社会的地位などを踏まえ、社会生活上受忍すべき限度を超えるかどうかで判断されます。
信用毀損・業務妨害
虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害する行為です(刑法233条)。
同条にいう「信用」は、支払能力や支払意思といった経済的な信用に関するものと解されています。
「あの会社は倒産寸前だ」「資金繰りが破綻している」といった、事実に反する経済的な信用に関する投稿は、名誉毀損とは別にこの罪が問題となり得ます。
脅迫(平穏生活権侵害)
生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫する行為です(刑法222条)。
「殺す」「家に行く」といった投稿がこれにあたり得ます。
著作権侵害
自分が撮影した写真や執筆した文章を、無断で転載される行為です。
誹謗中傷とあわせて生じることがあります。
まず行うこと|証拠の保全
どの手続をとるにしても、最初に行うべきは証拠の保存です。
投稿は、投稿者自身によって削除されたり、アカウントごと消されたりすることがあります。
削除されてしまえば、どのような投稿があったのかを立証できません。
保存すべきもの
| 保存するもの | 具体的な内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 投稿のURL | 投稿ごとに割り当てられているアドレス | 手続で対象を特定するために必要になる |
| 投稿の内容 | 本文の全文、添付されている画像・動画 | 一部を切り取らず、投稿全体が分かる形で保存する |
| 投稿者の情報 | アカウント名、表示名、プロフィール欄の記載 | プロフィール画面も併せて保存する |
| 投稿日時 | 投稿された日時、確認した日時 | 画面に表示されている日時が分かるようにする |
| 前後のやり取り | 返信、引用、それに対する反応 | 投稿の意味や広がりを示す事情になる |
スクリーンショットの撮り方
URLと日時が同じ画面に写るようにしてください。
投稿本文だけを切り取った画像では、いつ、どこに投稿されたものかを示すことができません。
パソコンのブラウザから閲覧し、アドレスバーを含めた画面全体を保存する方法が確実です。
削除を先行させる場合の注意点
投稿者の特定まで考えている場合、削除を先行させることには注意が必要です。
投稿が削除されると、その投稿が存在したこと自体を立証することが難しくなります。
また、削除に伴い、特定の手がかりとなる情報が失われる可能性もあります。
とり得る4つの手続と、その順序
インターネット上の誹謗中傷に対してとり得る手続は、次の4つです。
| 手続 | 何ができるか | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 投稿の削除 | 投稿を見えなくする | 数週間〜2か月程度 |
| 投稿者の特定 | 匿名の投稿者が誰かを明らかにする | 複数の手続を要し、相応の期間 |
| 損害賠償請求 | 特定した相手に金銭の支払いを求める | 交渉で数か月、訴訟なら1年程度 |
| 刑事告訴 | 相手の刑事責任を追及する | 捜査機関の判断による |
削除だけでよいのか、特定まで必要なのか
この判断が、進め方全体を決めます。
削除だけを求めるのであれば、比較的短い期間・低い費用で対応できます。
一方、投稿者の特定まで求める場合には、削除の順序、通信記録の保存期間、費用の見通しを含めて、最初に方針を決めておく必要があります。
特定まで求めるのは、次のような場合です。
- 同じ相手による投稿が繰り返されており、削除だけでは止まらない
- 損害賠償を請求したい
- 二度と行わないという約束を取り付けたい
- 投稿者が社内の人物である可能性があり、確認が必要
全体の期限を決めるのは通信記録の保存期間
投稿者の特定には、時間の制約があります。
通信事業者が接続記録を保存している期間は、一般に3か月から6か月程度とされています。
保存期間は事業者によって異なります。
この期間を経過すると、法的な主張が正しくても、技術的に特定できなくなります。
サイトへの削除依頼と回答待ちを繰り返しているうちに、この期間が経過してしまうことがあります。
特定まで視野に入れている場合は、削除の手続と並行して準備を進める必要があります。
手続1:投稿の削除
サイト内の通報・削除依頼
各サイトには、利用規約違反を報告する窓口が設けられています。無料で行うことができます。
もっとも、ここで判断されるのは運営会社が定める規約への違反の有無であり、法的な権利侵害の有無ではありません。
権利侵害にあたり得る投稿であっても、削除されないことがあります。
情報流通プラットフォーム対処法に基づく削除の申出
2025年4月1日、従来のプロバイダ責任制限法が改正され、情報流通プラットフォーム対処法に名称・内容が改められました。
同法に基づき、書面(送信防止措置依頼書)を送付して削除を求める方法があります。
また、この改正により、一定規模以上のプラットフォーム事業者は大規模特定電気通信役務提供者として総務大臣の指定を受け、削除申出の窓口を整備・公表し、申出者に対して一定の期間内に措置の有無等を通知することなどが義務づけられました。
もっとも、期間内に義務づけられているのは「通知」であって、削除ではありません。
通知の内容が「削除しない」であることも当然にあり得ます。
この法律によって削除を請求できる権利が新設されたわけではなく、削除するかどうかの判断基準そのものは改正前と変わっていません。
裁判所を通じた削除(仮処分)
任意の削除に応じない場合、裁判所に対して削除を命じる仮処分を申し立てます。
通常の訴訟よりも短い期間で結論が出る手続であり、申立てから決定まで1〜2か月程度が目安です。
申立てにあたっては、法務局に担保金を供託する必要があります。
担保金は、手続の終了後、所定の手続を経て返還されます。
なお、仮処分は申し立てれば当然に認められる手続ではありません。
相手方も反論を行うため、どの記述がどの権利をどのように侵害しているのかを、証拠に基づいて具体的に示す必要があります。
手続2:投稿者の特定(発信者情報開示請求)
2段階の手続
第1段階:サイトの運営会社に対し、投稿時のIPアドレスとタイムスタンプ等の開示を求めます。この段階では、まだ投稿者の氏名や住所は分かりません。
第2段階:IPアドレスから判明した通信事業者に対し、その通信記録に対応する契約者の氏名・住所の開示を求めます。
発信者情報開示命令
2022年10月1日に施行された改正により、発信者情報開示命令という手続が設けられ、これらを一連の手続として進められるようになりました。
あわせて、次の2つの命令を申し立てることができます。
- 提供命令:サイトの運営会社に対し、判明した通信事業者の名称等を申立人に提供するよう命じるもの
- 消去禁止命令:手続の間、通信記録を消去しないよう命じるもの
開示が認められる要件
開示が認められるためには、権利侵害が明白であることと、開示を受けるべき正当な理由があることが必要です。
「気に入らない」「不快だ」という理由だけでは認められません。
前記の裁判例のとおり、意見・論評として許される範囲にとどまる投稿や、公共性・公益目的が認められて違法性が阻却される投稿については、開示は認められません。
手続3:損害賠償請求
慰謝料の目安
金額は、投稿の内容、閲覧された範囲、投稿が繰り返されたかどうか、被害者の職業や社会的立場といった事情によって異なりますが、一般的な目安は次のとおりです。
| 権利侵害の種類 | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 個人の名誉毀損 | 10万円〜50万円程度 |
| 事業者の名誉毀損 | 50万円〜100万円以上(業務への影響による) |
| 名誉感情の侵害(侮辱) | 数万円〜30万円程度 |
| プライバシー侵害 | 10万円〜50万円程度 |
事業者の場合は、営業上の損害が生じ得るため、個人よりも高い水準となる傾向があります。
もっとも、これらはあくまで目安であり、個別の事案で認められる金額は事案ごとに判断されます。
営業上の損害の立証は容易ではない
事業者の場合、慰謝料に加えて売上の減少などの営業上の損害を主張することが考えられます。
もっとも、投稿と売上の減少との因果関係を立証することは容易ではなく、営業上の損害が認められず慰謝料等の限度にとどまる例も少なくありません。
投稿の前後の状況を示す資料を残しておくことが重要になります。
調査費用の請求
投稿者の特定に要した弁護士費用について、その一部の賠償を求められる場合があります。
ただし、認められるのは実際に要した金額の一部にとどまるのが通常です。
示談で定めておくべきこと
金銭の支払いだけでなく、今後同様の投稿を行わないこと、既存の投稿を削除することといった条項を設けることで、再発を防ぐことが考えられます。
手続4:刑事告訴
成立し得る犯罪
| 罪名 | 成立する場合 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪(刑法230条1項) | 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪(刑法231条) | 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合 | 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 |
| 信用毀損罪・偽計業務妨害罪(刑法233条) | 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した場合 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 脅迫罪(刑法222条) | 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合 | 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 |
侮辱罪は、2022年の改正により法定刑が引き上げられ、拘禁刑・罰金が加えられました。
告訴期間
名誉毀損罪と侮辱罪はいずれも親告罪であり、犯人を知った日から6か月以内に告訴する必要があります(刑法232条1項、刑事訴訟法235条1項)。
投稿者を特定した後、速やかに告訴の要否を判断する必要があります。
弁護士に依頼した場合にできること
どの手続をとるべきかの判断
その投稿が法的に問題となるものか、削除だけでよいのか特定まで必要か、費用をかける価値があるかを、事案に応じて検討します。
手続の期限の管理
通信記録の保存期間、名誉毀損罪の告訴期間など、この分野には複数の期限があります。
期限から逆算して手続の順序を決めます。
主張と証拠の組み立て
削除も開示も、どの記述がどの権利をどのように侵害しているかを、証拠に基づいて示せるかによって結果が決まります。
相手方とのやり取りの窓口
投稿者が特定された後の交渉を、代理人として行います。
当事者どうしのやり取りによって事態が悪化することを防げます。
媒体・状況別の解説記事
投稿された媒体によって、削除の申請方法、運営会社の対応、開示請求の進め方は異なります。該当する記事をご覧ください。
SNSに書き込まれた場合
X(旧Twitter)のの投稿について、削除の方法と開示請求の進め方を解説しています。

Instagram・TikTokの投稿について解説しています。

スレッズの投稿について、削除の方法と開示請求の進め方を解説しています。

LINEオープンチャットの投稿について、開示請求の進め方を解説しています。

掲示板・Q&Aサイトに書き込まれた場合


企業の口コミサイトに書き込まれた場合


サイトの運営者が分からない場合
調べてもCDN事業者の情報しか出てこないサイトについて、運営者にたどり着く手続を解説しています。

開示請求を受けた側の場合
プロバイダから意見照会書が届いた方に向けて解説しています。

よくある質問(FAQ)
- 批判と誹謗中傷の違いは何ですか。
-
判断の出発点は、事実を述べているか、意見・評価を述べているかという区別です。
事実を述べたものであれば、その内容が虚偽であるかどうかが問題になります。
意見や論評はそれ自体では違法とされないのが原則ですが、人身攻撃に及ぶなど社会通念上許される限度を超えていれば違法となり得ます。 - 誹謗中傷されたら、まず何をすべきですか。
-
証拠の保存です。
投稿のURL、本文の全文、投稿者のアカウント情報、投稿日時が同じ画面に写るように保存してください。
投稿は削除される可能性があり、削除されると内容を立証できなくなります。 - 匿名アカウントからの投稿でも特定できますか。
-
発信者情報開示請求により特定できる可能性があります。
ただし、権利侵害が明白であることが必要であり、通信記録の保存期間(一般に3か月から6か月程度)という時間の制約もあります。
- 削除だけを先にしてもらうことはできますか。
-
できますが、投稿者の特定まで考えている場合は注意が必要です。
投稿が削除されると、その投稿が存在したこと自体の立証が難しくなり、特定の手がかりとなる情報が失われる可能性もあります。
特定まで求める場合は、削除を依頼する前にご相談ください。 - 相手が特定できなくても損害賠償請求はできますか。
-
できません。
損害賠償請求は特定の相手に対して行うものであるため、投稿者が誰か分からない状態では請求できません。
投稿の削除は、投稿者が分からなくても求めることができます。 - 昔の投稿でも削除や特定は可能ですか。
-
削除は、投稿が残っている限り求めることができます。
一方、特定については通信記録の保存期間の制約があるため、投稿から日数が経過している場合は困難になります。 - 投稿してしまった側からの相談も受けていますか。
-
プロバイダから意見照会書が届いた方からのご相談もお受けしています。
意見照会書への対応については、上記の関連記事で解説しています。
まとめ
- 「誹謗中傷」は法律用語ではなく、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの権利侵害にあたるかどうかで判断されます。
- 同じ相手に向けられた投稿であっても、内容ごとに違法かどうかの結論は分かれます。どの記述がなぜ違法なのかを個別に検討する必要があります。
- とり得る手続は、削除・特定・損害賠償請求・刑事告訴の4つです。削除だけでよいのか特定まで必要かによって、進め方が変わります。
- 投稿者の特定には通信記録の保存期間という制約があり、削除の依頼と回答待ちを繰り返すうちに手段が失われることがあります。
- まず証拠を保存したうえで、早い段階でご相談ください。
当事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の削除、投稿者の特定、特定後の損害賠償請求まで一貫してお受けしています。
投稿を保存したうえで、お早めにご相談ください。
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