【この記事の結論・要約】
- CloudflareなどのCDNを経由するサイトは、真のサーバー(オリジンサーバー)と運営者の情報が外部から見えない構造になっており、通常のサイトより削除・投稿者特定の手続が一段階以上多くなります。
- 手続の大きな流れは、①Cloudflareに対する発信者情報開示請求、②判明したホスティング事業者・運営者に対する削除請求と投稿者情報の開示請求、③アクセスプロバイダに対する開示請求、④損害賠償請求等、の4段階です。Cloudflareは外国法人ですが、日本の裁判所の国際裁判管轄を認め、開示を命じた裁判例があります。
- 段階が多い分、時間がかかり、各段階の通信記録(ログ)の保存期間との時間競争になります。サイトが閉鎖されると情報が保有されていないとして開示が受けられなくなる場合もあり、CDN経由と分かった時点で、証拠保全と早期の着手が重要です。
はじめに
「匿名の掲示板サイトに誹謗中傷を書き込まれた。削除依頼をしようにも、運営者の名前も連絡先もどこにも書かれていない」「サイトのサーバーを調べてみたら、Cloudflareという海外の会社の情報しか出てこなかった。もう手の打ちようがないのか」
インターネット上の誹謗中傷への対応は、通常、サイトの運営者に削除を求め、投稿者の特定を進めるところから始まります。
ところが、悪質なサイトの中には、運営者の身元を徹底的に隠しているものがあり、その多くがCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)と呼ばれるサービス、代表的にはCloudflare(クラウドフレア)を利用しています。
このようなサイトは、一見すると「削除もできない、犯人も分からない、打つ手のないサイト」に見えます。
しかし、実際には、CDNの向こう側にいるサーバーと運営者にたどり着くための法的手続を日本の裁判所で進められる可能性があります。
本記事では、Cloudflare経由のサイトに書き込みをされた場合の、削除と投稿者特定の手続の全体像を解説します。
なお、Cloudflareをはじめとする各事業者の対応は時期によって変動してきた経緯があるため、本記事では確定的な運用の詳細ではなく、手続の大きな流れをお伝えします。
個別の事案での見通しは、ご相談の際にその時点の状況を踏まえてご説明します。
対応の出発点|誰に請求できるかを調べる
インターネット上の書き込みへの対応は、削除を求めるにせよ投稿者を特定するにせよ、「誰に対して請求するのか」を決めるところから始まります。
運営者情報が表示されているサイトであれば、その運営者が請求の相手方になります。
しかし、運営者情報が一切表示されていないサイトの場合、相手方が誰なのかを調べるところから始めなければなりません。
そして、この調査の結果によって、その後に取るべき手続が変わります。
まず証拠を保全する
調査に着手する前に、書き込みの証拠を保全してください。
手続の途中で書き込みやサイト自体が消えることがあり、証拠がなければその後の削除請求や損害賠償請求に支障が生じます。
保存すべきものは次のとおりです。
| 保存するもの | 具体的な内容 | 留意点 |
| 対象ページのURL | 書き込みが表示されているページのアドレス | 手続で対象を特定するために必要になる |
| 書き込みの内容 | 本文、添付されている画像 | 一部を切り取らず、書き込み全体が分かる形で保存する |
| 表示日時 | 書き込みの投稿日時、確認した日時 | 画面に表示されている日時が分かるようにする |
| サイトの情報 | サイト名、ドメイン、運営者情報の表示の有無 | 運営者情報が表示されていないこと自体も記録しておく |
| 前後のやり取り | 返信、関連する書き込み | 書き込みの意味や広がりを示す事情になる |
スクリーンショットを撮る際は、URLと日時が同じ画面に写るようにしてください。
書き込みの本文だけを切り取った画像では、いつ、どこに掲載されていたものかを示すことができません。
パソコンのブラウザから閲覧し、アドレスバーを含めた画面全体を保存する方法が確実です。
サイトの情報を調べる
サイトの画面を見ただけでは、そのサイトがどこのサーバーに置かれているかは分かりません。
ドメイン名の登録情報や、サイトにアクセスした際にサーバーから返される情報を調べることで、初めて判断できます。
調査の結果として、Cloudflare(クラウドフレア)という事業者の情報しか出てこないことがあります。
Cloudflareは、サイトの前面に立って配信を担うサービスを提供している米国の事業者です。
この場合、サイト本体が置かれているサーバーの情報は外部から見えなくなります。
詳しくは次の項で説明します。
Cloudflareを経由しているかどうかは、公開されている情報からある程度確認できます。
代表的なものは次の2つです。
ネームサーバーを確認する
ドメイン名の登録情報を調べられるWHOIS検索サービスで、対象サイトのドメインを検索します。
表示された情報のうち「ネームサーバー」(Name Server)の欄が、○○.ns.cloudflare.com のような表記になっている場合、そのドメインの名前解決をCloudflareが担っていることになります。
レスポンスヘッダーを確認する
ブラウザには、サイトを表示する際にサーバーとやり取りされる情報を確認する機能(開発者ツール)が備わっています。
Cloudflareのネットワークを通過した応答には、cf-ray という項目が付与されます。
この項目が確認できれば、Cloudflareを経由していることになります。
確認結果の位置づけ
いずれも、あくまで目安です。
配信を担うサービスを提供している事業者はCloudflareだけではなく、他の事業者が使われている場合には別の表記になります。
また、Cloudflareのサービスにも複数の使い方があり、名前解決のみに利用していて配信は経由していない場合など、上記の確認結果だけでは判断がつかないこともあります。
事業者側の設定は変更されることもあるため、確認した時点の状況が後の手続の時点でも同じとは限りません。
そのため、これらはご自身で状況を大まかに把握するための確認方法とお考えください。
どの事業者にどの手続を取るべきかという判断は、調査結果を踏まえて弁護士が行います。
調査の結果によって進み方が分かれる
調査の結果は、大きく2つに分かれます。
サーバーを提供している事業者が判明した場合
レンタルサーバー会社など、サイト本体が置かれているサーバーの提供事業者が判明した場合は、通常のサイトと同じ進め方になります。
その事業者や運営者に対して、書き込みの削除(送信防止措置)を求めるとともに、投稿者を特定するための発信者情報の開示を求めていくことになります。
Cloudflare等の情報しか出てこない場合
サーバーの提供事業者にたどり着けず、Cloudflareの情報しか出てこない場合は、通常のサイトにはない工程が加わります。
まずCloudflareに対する手続によって、その向こう側にあるサーバーと運営者の情報を取得し、そこから先の請求に進むという流れになります。
本記事では、以下、この場合の手続を解説します。
削除だけを望む場合
投稿者の特定までは求めず、書き込みを消したいだけであれば、サイト内に問い合わせフォームや削除依頼の窓口が設置されていないかを確認する方法もあります。
運営者情報が表示されていなくても、削除の窓口だけは機能しているサイトがあり、コストのかからない手段として試す価値はあります。
ただし、投稿者の特定まで視野に入れている場合、削除を先行させることには注意が必要です。
書き込みが削除されると、その書き込みが存在したこと自体の立証が難しくなり、特定の手がかりとなる情報が保持されなくなるおそれがあるためです。
削除と特定のどちらを先行させるかは事案によって判断が分かれるため、特定まで求める場合は、削除の依頼をする前にご相談ください。
CDN(Cloudflare)とは何か
調査の結果、Cloudflareの情報しか出てこなかった場合、そのサイトはCDNを経由していることになります。
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)とは、ウェブサイトの表示を高速化・安定化させるために、サイトの「前面」に立って世界中にコンテンツを配信するネットワークサービスです。
Cloudflareはその代表的な事業者であり、世界中の無数のサイトが利用しています。
CDN自体は、セキュリティや表示速度の向上のための正当なサービスです。
問題は、その仕組みの副作用です。
CDNのサーバーは、閲覧者からのアクセスを受け取る窓口として、サイトの本体(オリジンサーバー)の手前に置かれます。
閲覧者がサイトのアドレスにアクセスすると、名前解決によって示されるのはオリジンサーバーのIPアドレスではなく、分散して置かれたCDNのサーバーのIPアドレスです。
そのため、外部からIPアドレスやサーバー情報を調査しても、出てくるのはCDN(Cloudflare)の情報だけになります。
サイトの本体が置かれている真のサーバーの所在も、そのサーバーを契約している運営者の情報も、外からは見えません。
この構造は、正当なサイトにとってはセキュリティ上の利点ですが、悪質なサイトにとっては身元隠しの手段として機能します。
運営者情報を一切表示しない匿名掲示板や誹謗中傷サイトの多くが、この構造の陰に隠れているのが実情です。
したがって、CDN経由のサイトへの対応は、「まずCDNの向こう側にいるサーバーと運営者を突き止める」という、通常のサイトにはない工程から始まることになります。
Cloudflareを相手方とする手続は日本の裁判所で進められるのか
「海外の会社が相手では、日本の裁判所では何もできないのではないか」という質問をよく受けます。
この点については、Cloudflareを相手方とする裁判例が公表されています。
開示請求を認めた裁判例(知的財産高等裁判所令和4年2月21日判決)
漫画の著作権者が、Cloudflareに対し、当時のプロバイダ責任制限法4条1項に基づいて発信者情報の開示を求めた事案です。
問題となったのは、「漫画村」というウェブサイトに著作物がアップロードされたことでした。
第一審の東京地方裁判所は請求を全部棄却しましたが、控訴審は原判決を変更し、発信者の氏名又は名称および住所について開示を命じました。
この判決で示された判断のうち、実務上重要なのは次の点です。
第一に、国際裁判管轄が認められたこと。
相手方が米国カリフォルニア州の法律に準拠して設立された会社であっても、日本の裁判所で審理することが認められています。
第二に、Cloudflareが「開示関係役務提供者」に当たるとされたこと。
判決は、被控訴人はプロバイダ責任制限法4条1項(現在の情報流通プラットフォーム対処法5条1項)にいう開示関係役務提供者に当たるとみるのが相当である、と判断しています。
CDN事業者が開示請求の相手方になり得ることが、裁判所によって明確にされたものです。
第三に、一部の情報が任意に開示されても、残りの情報の開示請求はできるとされたこと。
この事案では、Cloudflareが訴訟の途中で電子メールアドレス・IPアドレス・タイムスタンプを任意に開示していました。
裁判所は、開示を定める省令の各号に掲げる情報は類型的かつ一般的に開示することが相当なものとして定められているとして、事業者が一部の情報を任意に選別して開示することにより、その余の情報の開示の必要性が直ちに失われるものとは解されない、と判断しています。
第四に、開示されたログから発信者にたどり着けるとは限らないこと。
判決は、開示されたログからは専門的な捜査機関によっても発信者の特定には至らなかったことがうかがわれる、と述べています。この点は後述します。
なお、これは著作権侵害の事案です。
誹謗中傷の事案に同じ判断がそのまま当てはまるわけではありませんが、CDN事業者に対する開示請求の枠組みを示したものとして参考になります。
情報流通プラットフォーム対処法上の位置づけに関する裁判例(東京地方裁判所令和7年11月19日判決)
出版社4社が、海賊版サイトに対してCDNサービスを提供していたCloudflareに対し、損害賠償を求めた事案です。
裁判所は、Cloudflareが情報流通プラットフォーム対処法3条1項の「関係役務提供者」に当たるとした上で、同社がサービスの提供を停止することは技術的に可能であったとして、免責に関する主張を退けました。
そして、CDNサービスの提供が海賊版サイト運営者による権利侵害を容易にしたとして、幇助(民法719条2項)による損害賠償責任を認めています。
国際裁判管轄についても、日本国内の利用者に対して送信され日本国内で損害が生じたという客観的事実が認められるとして、日本の裁判所の管轄を肯定しました。
この判決も著作権に関するものであり、また地方裁判所の判断です。
報道によれば被告側は控訴する方針を示しており、確定した判断ではありません。
もっとも、CDN事業者が情報流通プラットフォーム対処法上どのように位置づけられるかについて、正面から判断した例として重要です。
手続の全体像|4つの段階
CDN経由のサイトに対する削除・投稿者特定の手続は、大きく次の4段階で進みます。
STEP1:Cloudflareに対する発信者情報開示請求
Cloudflareに対して、発信者情報開示の裁判手続により、同社が保有するサイト側の情報、すなわちサービス契約者(サイト運営者)の氏名・メールアドレス等の登録情報や、オリジンサーバーのIPアドレス等の開示を求めます。
ここで重要なのは、この段階で開示を求める対象は、書き込みをした投稿者の情報ではなく、「サイトを運営している側」の情報だという点です。
投稿者の特定は、サイト側の情報を取得した後の段階で進めることになります。
開示された情報がそのまま使えるとは限りません
前記の東京地判令和7年11月19日は、Cloudflareがサービスの利用契約を締結する際の本人確認手続を簡略化していたと認定しています。
同判決によれば、その事案で米国の裁判所の命令に基づいて開示された運営者の住所は、一方のウェブサイトについては国名のみであり、他方については実在する場所ではあるものの運営者とは関係のない場所でした。
また、前記の知的財産高等裁判所令和4年2月21日判決も、開示されたログからは捜査機関によっても発信者の特定に至らなかったことがうかがわれる、と述べています。
つまり、契約者情報の開示を受けられたとしても、その情報から直ちに運営者の実像にたどり着けるとは限りません。
もっとも、この段階の成果はそれだけではありません。
オリジンサーバーのIPアドレスが判明すれば、契約者情報が使えなくても、次の段階に進むことができます。
どの情報を開示の対象として求めるかによって、その後に取り得る手段が変わるため、申立ての内容の組み立てが重要になります。
サイトが閉鎖されると情報が得られなくなる場合があります
知財高判令和4年2月21日の事案では、対象サイトが既に閉鎖されていたことを理由に、一部の発信者情報については保有していないというCloudflareの主張が認められ、その部分の請求は棄却されています。
サイトの閉鎖や契約の終了によって情報が失われる可能性があるという点でも、早期の着手が重要になります。
STEP2:判明したホスティング事業者・運営者への削除請求と開示請求
STEP1でオリジンサーバーの所在が判明すると、そのサーバーを提供しているホスティング事業者(レンタルサーバー会社等)や、契約者であるサイト運営者が明らかになります。
そこで次に、ホスティング事業者や運営者に対して、①問題の書き込みの削除(送信防止措置)の請求と、②書き込みをした投稿者のIPアドレス・タイムスタンプ等の開示請求を行います。
削除と特定の両方をここで進めるのが基本形です。
なお、オリジンサーバーが海外の事業者である場合には、この段階でさらに手続上のハードルが加わることがあります。
どこまで進められるかは事案によるため、STEP1の結果を踏まえて方針を再検討することになります。
また、Cloudflareには、オリジンサーバーを別に用意せずにコンテンツを配信できるサービスも用意されています。
このようなサービスが使われている場合には、そもそもオリジンサーバーが存在しない、あるいはCloudflare上のサイトがオリジンサイトと同じ位置づけになるため、手続の相手方や求めるべき情報が変わります。
対象サイトがどの類型に当たるかは、調査によって判断することになります。
STEP3:アクセスプロバイダに対する開示請求
STEP2で投稿者のIPアドレスが開示されると、投稿時に使われた回線のアクセスプロバイダ(携帯キャリアや光回線の事業者)が判明します。
そのプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の氏名・住所の開示を受けることで、投稿者の特定に至ります。
この段階は、通常の誹謗中傷案件における投稿者特定と同じ流れです。
なお、アクセスプロバイダが接続記録を保存している期間は、一般に3か月から6か月程度とされています。
保存期間は事業者によって異なり、これより短い場合もあります。
手続に時間を要する間に記録が消去されることを防ぐため、必要に応じて消去禁止命令の申立てを行います。
発信者情報開示請求の一般的な流れについては、以下の記事で解説しています。

STEP4:投稿者・運営者に対する損害賠償請求等
投稿者が特定できれば、損害賠償請求(示談交渉・訴訟)や、事案によっては刑事告訴を進めます。
また、悪質なサイト運営者自身の責任を追及できる場合もあります。
さらに、前記の東京地判令和7年11月19日のように、CDN事業者自身の責任が問題となる事案もあります。
ただし、同判決は著作権に関するものであり、また控訴の方針が示されている段階です。
開示を受けた相手方には、事業者から意見照会書が送付されます。
この段階で相手方から示談の申入れがされることもあります。
意見照会の手続については、以下の記事で解説しています。

削除に関する注意点|Cloudflareに請求するだけでは消えない場合がある
削除を急ぐあまり、Cloudflareの通報フォーム等に通報して結果を待ち続ける方がいますが、注意が必要です。
通報フォームでできること・できないこと
Cloudflareは、通報の種類に応じたカテゴリーを設けており、誹謗中傷に関するものについては、暴力的脅威やハラスメントに関するカテゴリー、またはそれ以外の違法・有害なコンテンツに関する一般のカテゴリーを用いることになります。
もっとも、Cloudflareは、自社がホストしていないコンテンツをインターネット上から削除することはできない、との立場を公表しています。
CDNは、コンテンツそのものを保有しているのではなく、オリジンサーバー上のコンテンツを配信・キャッシュする立場にあるためです。
他方で、同社は、著作権に関する苦情については、苦情をウェブサイト運営者およびホスティングプロバイダーに転送し、権利者にホスティングプロバイダーの連絡先を伝える対応をとると説明しています。
そのため、通報は、削除そのものを実現する手段としてではなく、次の段階に進むための手がかりを得る手段として位置づけられる場合があります。
なお、これは同社が著作権に関する苦情について公表している説明であり、誹謗中傷に関する通報で同じ対応がされるとは限りません。
書き込み単位で止めることはできない
前記の東京地判令和7年11月19日は、Cloudflareがキャッシュの停止をドメイン単位で行うことはできたものの、コンテンツ単位で行うことはできなかった、と認定しています。
つまり、「問題の書き込みだけをCDN側で止めてもらう」ということは、技術的にできないようです。
CDN側でできるのは、そのサイト全体に対するサービスの提供を止めるかどうかという判断であり、これは事業者にとって影響の大きい措置です。
同判決では、海賊版サイトという事案の性質を踏まえて、サービスの提供の停止が「技術的に可能」な送信防止措置に当たると判断されましたが、一般の誹謗中傷の事案で同じ判断がされるとは限りません。
削除の本筋はオリジン側への請求
削除の本筋は、STEP1・STEP2を通じてオリジン側にたどり着き、そこに削除請求を行うことです。
あわせて、被害の拡大を抑える手段として、検索エンジンの検索結果からの削除(検索結果に表示されなくする措置)を並行して進めることも考えられます。
サイト自体を消せなくても、検索から見つかりにくくすることで、被害の広がりを抑えられる場合があります。
投稿者特定に関する注意点
CDN経由のサイトに対する投稿者特定は、通常の案件より段階が一つ以上多いため、全体として相応の期間を要します。
時間との勝負になる
この手続には時間の制約があります。
STEP3で必要となる投稿者のIPアドレスの記録(ログ)は、サイト側にもアクセスプロバイダ側にも、無期限に保存されているわけではありません。
手続に時間をかけている間にログの保存期間が過ぎれば、途中まで進んでも投稿者にたどり着けなくなります。
加えて、前記のとおり、サイトの閉鎖によってCDN事業者側の情報が失われる可能性もあります。
段階が多いCDN経由の案件は、通常の案件以上に、この時間との競争が厳しくなります。
書き込みを発見したら、証拠保全を直ちに行った上で、できる限り早く手続に着手することが重要です。
警察の捜査に期待して待つことの限界
「被害届を出せば、警察が運営者を調べてくれるのではないか」というご相談もあります。
しかし、Cloudflareは、法執行機関への対応について、米国以外の国の政府も適正な手続に従う必要があるとの考えを示しており、通常は、刑事共助条約に基づく要請などの外交手続を経て、米国の裁判所を通じて要請を出すことが最善であるとの立場を公表しています。
そのため、刑事手続によって運営者の情報が得られることを前提に待ち続けるのは、現実的ではない場合が多いといえます。
身の危険を感じるような事案であれば警察への相談は当然に必要ですが、運営者や投稿者の特定という目的については、民事の手続を並行して進めることを検討すべきです。
弁護士に相談するメリット
CDN経由のサイトへの対応は、①対象サイトの技術的な調査、②外国法人を相手方とする裁判手続、③判明した先(国内外のホスティング事業者)に応じた方針の立て直し、④ログの保存期間を踏まえた段取りの組み立て、という複数の専門的判断が連続する手続です。
当事務所では、対象サイトの調査の段階から、Cloudflareへの開示請求、削除請求、投稿者の特定、損害賠償請求まで、一貫して対応しています。
「運営者が分からないサイトだから」と諦める前に、そのサイトに対して現時点で何がどこまでできるのかを、まずご確認ください。
よくある質問(FAQ)
- 匿名の誹謗中傷サイトで、運営者がどこにも書かれていません。諦めるしかないのですか。
-
諦める必要はありません。
運営者情報が表示されていなくても、CDNやサーバーの調査から法的手続によって運営者側の情報にたどり着く道があります。
裁判所も、Cloudflareが開示請求の相手方となる事業者に当たると判断しています。まずはサイトの調査によって、どの手続が使えるかを確認するところから始めます。
- Cloudflareの通報フォームから報告しましたが、削除されません。
-
CDNはコンテンツそのものを保有していないため、通報や削除請求だけでは削除に至らない場合が少なくありません。
削除の本筋は、法的手続によってオリジンサーバー側(ホスティング事業者・運営者)にたどり着き、そこに削除請求を行うことです。
通報の結果を待ち続けるより、並行して法的手続を進めることをお勧めします。 - 海外の会社が相手でも、日本の裁判所で手続できるのですか。
-
できます。
知財高判令和4年2月21日は、米国法人であるCloudflareを相手方とする発信者情報開示請求について、日本の裁判所の国際裁判管轄を認めた上で、発信者の氏名又は名称および住所の開示を命じています。
東京地判令和7年11月19日も、同社に対する損害賠償請求について日本の国際裁判管轄を肯定しています。 - Cloudflareから運営者の氏名や住所が開示されれば、必ず特定できるのですか。
-
そうとは限りません。
東京地判令和7年11月19日は、Cloudflareが利用契約の締結時の本人確認手続を簡略化していたと認定しており、その事案で開示された住所は、国名のみであったり、実在するが運営者とは関係のない場所であったりしました。
もっとも、契約者情報が使えない場合でも、オリジンサーバーのIPアドレスが判明すれば次の段階に進むことができます。
どの情報の開示を求めるかという申立ての組み立てが重要になります。
- 警察に被害届を出せば、運営者を調べてもらえるのではないですか。
-
Cloudflareは、米国以外の国の法執行機関からの要請については、刑事共助条約に基づく要請などの外交手続を経て米国の裁判所を通じて要請することが最善であるとの立場を公表しています。
そのため、刑事手続によって情報が得られることを前提に待ち続けるのは現実的でない場合が多く、民事の手続を並行して進めることをお勧めします。身の危険を感じる事案では、警察への相談を優先してください。
- 削除だけを先に済ませてから、投稿者の特定に進むことはできますか。
-
順序には注意が必要です。
書き込みが削除されると、その書き込みが存在したこと自体の立証が難しくなり、また特定の手がかりとなる情報が保持されなくなるおそれがあります。
削除と特定のどちらを先行させるか、あるいは並行して進めるかは、事案によって判断が分かれるため、あらかじめご相談ください。 - どのくらいの期間がかかりますか。
-
通常のサイトに対する手続より段階が一つ以上多いため、全体として相応の期間を要します。
所要期間は、各段階での相手方の対応や、オリジンサーバーの所在(国内か海外か)によって大きく変わるため、一律の見通しは示せませんが、段階が多いからこそ早期の着手が重要になります。 - 書き込みからかなり時間が経っています。もう手遅れですか。
-
時間の経過は、ログの保存期間との関係で投稿者の特定を難しくする方向に働きますが、直ちに手遅れとは限りません。
また、投稿者の特定が難しい場合でも、書き込みの削除や検索結果からの削除など、被害を止めるための手段は残されていることがあります。
現時点で何ができるかを確認するためにも、早めにご相談ください。
- 自分でもできますか。弁護士に頼むべきですか。
-
サイト内の削除窓口への請求など、ご自身で試せる手段はあります。
他方、CDN経由のサイトに対する裁判手続は、外国法人を相手方とする申立てや技術的な調査を含み、ご自身で進めることの負担が大きい類型です。
少なくとも、方針の見極めの段階で一度ご相談いただくことをお勧めします。
まとめ
- 運営者が分からないサイト、調べてもCloudflareの情報しか出てこないサイトは、「打つ手のないサイト」ではありません。
- CDNの向こう側にいるサーバーと運営者にたどり着くための手続が存在し、①Cloudflareへの開示請求、②ホスティング事業者・運営者への削除請求と開示請求、③アクセスプロバイダへの開示請求、④損害賠償請求、という4段階で進めていくことができます。
- 知財高判令和4年2月21日は、米国法人であるCloudflareを相手方とする発信者情報開示請求について、日本の裁判所の国際裁判管轄を認め、同社が開示関係役務提供者に当たるとした上で、発信者の氏名又は名称および住所の開示を命じました。
- 一方で、開示された情報から直ちに運営者にたどり着けるとは限らず、段階が多い分、時間を要し、ログの保存期間との競争になります。サイトが閉鎖されれば、情報を保有していないとして開示が受けられなくなる場合もあります。
- 書き込みを発見したら、証拠保全を直ちに行い、早期に着手することが、削除と特定の両方の成否を左右します。
当事務所では、CDN経由のサイトを含むインターネット上の誹謗中傷・権利侵害について、サイトの調査から削除請求、投稿者の特定、損害賠償請求まで一貫して対応しています。
運営者の分からないサイトへの書き込みでお困りの方は、お早めにご相談ください。
インターネットの誹謗中傷等についてはこちら
弊所の弁護士へのご相談等はこちらから