【この記事の結論・要約】
- CloudflareなどのCDNを経由するサイトは、真のサーバー(オリジンサーバー)と運営者の情報が外部から見えない構造になっており、通常のサイトより削除・投稿者特定の手続が一段階以上多くなります。
- 手続の大きな流れは、①Cloudflareに対する発信者情報開示請求(サイト側の契約者情報・オリジンサーバー情報の取得)、②判明したホスティング事業者・運営者に対する削除請求と投稿者情報の開示請求、③アクセスプロバイダに対する開示請求(投稿者の氏名・住所の特定)、④損害賠償請求等、の4段階です。Cloudflareは外国法人ですが、日本の裁判所で手続を進められる状況にあります。
- 段階が多い分、時間がかかり、各段階の通信記録(ログ)の保存期間との時間競争になります。「運営者が分からないから諦める」のではなく、CDN経由と分かった時点で、証拠保全と早期の着手が重要です。
はじめに
「匿名の掲示板サイトに誹謗中傷を書き込まれた。削除依頼をしようにも、運営者の名前も連絡先もどこにも書かれていない」 「サイトのサーバーを調べてみたら、Cloudflareという海外の会社の情報しか出てこなかった。もう手の打ちようがないのか」
インターネット上の誹謗中傷への対応は、通常、サイトの運営者に削除を求め、投稿者の特定を進めるところから始まります。
ところが、悪質なサイトの中には、運営者の身元を徹底的に隠しているものがあり、その多くがCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)と呼ばれるサービス、代表的にはCloudflareを利用しています。
このようなサイトは、一見すると「削除もできない、犯人も分からない、打つ手のないサイト」に見えます。
しかし、実際には、CDNの向こう側にいるサーバーと運営者にたどり着くための法的手続が存在し、日本の裁判所で進められる可能性があります。
本記事では、Cloudflare経由のサイトに書き込みをされた場合の、削除と投稿者特定の手続の全体像を解説します。
なお、Cloudflareをはじめとする各事業者の対応は時期によって変動してきた経緯があるため、本記事では確定的な運用の詳細ではなく、手続の大きな流れをお伝えします。
個別の事案での見通しは、ご相談の際にその時点の状況を踏まえてご説明します。
CDN(Cloudflare)とは何か|なぜ削除も特定も難しくなるのか
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)とは、ウェブサイトの表示を高速化・安定化させるために、サイトの「前面」に立って世界中にコンテンツを配信するネットワークサービスです。
Cloudflareはその代表的な事業者であり、世界中の無数のサイトが利用しています。
CDN自体は、セキュリティや表示速度の向上のための正当なサービスです。
問題は、その仕組みの副作用です。
CDNを経由するサイトでは、閲覧者からのアクセスはすべてCDNのサーバーを通して行われるため、外部からIPアドレスやサーバー情報を調査しても、出てくるのはCDN(Cloudflare)の情報だけになります。
サイトの本体が置かれている真のサーバー(オリジンサーバー)の所在も、そのサーバーを契約している運営者の情報も、外からは見えません。
この構造は、正当なサイトにとってはセキュリティ上の利点ですが、悪質なサイトにとっては身元隠しの手段として機能します。
運営者情報を一切表示しない匿名掲示板や誹謗中傷サイトの多くが、この構造の陰に隠れているのが実情です。
したがって、CDN経由のサイトへの対応は、「まずCDNの向こう側にいるサーバーと運営者を突き止める」という、通常のサイトにはない工程から始まることになります。
まず確認すること
法的手続に進む前に、次の2点を確認してください。
第一に、運営者への直接の削除請求を試す余地です。
サイト内に問い合わせフォームや削除依頼の窓口が設置されている場合、そこからの請求で削除に至ることもあります。
運営者情報が表示されていなくても、削除窓口だけは機能しているサイトも存在します。
コストのかからない手段として、まず確認する価値があります。
第二に、対象サイトが本当にCDN経由かどうかです。
サイトのドメインやIPアドレスの調査によって、Cloudflare等のCDNを経由しているか、真のサーバーが直接見えているかを確認できます。
この調査自体は技術的なもので、弁護士にご相談いただければ、対応方針の検討と併せて行います。
CDNを経由していなければ、通常のサイトと同じ手続(サーバー会社・運営者への削除請求と開示請求)で進められます。
なお、いずれの場合も、書き込みを発見した時点で証拠の保全(対象ページのURL・スクリーンショット・保存日時の記録)を必ず行ってください。
手続の途中で書き込みやサイト自体が消えることがあり、証拠がなければその後の損害賠償請求に支障が生じます。
手続の全体像|4つの段階
CDN経由のサイトに対する削除・投稿者特定の手続は、大きく次の4段階で進みます。
STEP1:Cloudflareに対する発信者情報開示請求
Cloudflareに対して、発信者情報開示の裁判手続により、同社が保有するサイト側の情報、すなわちサービス契約者(サイト運営者)の氏名・メールアドレス等の登録情報や、オリジンサーバーのIPアドレス等の開示を求めます。
ここで重要なのは、この段階で開示を求める対象は、書き込みをした投稿者の情報ではなく、「サイトを運営している側」の情報だという点です。
投稿者の特定は、サイト側の情報を取得した後の段階で進めることになります。
STEP2:判明したホスティング事業者・運営者への削除請求と開示請求
STEP1でオリジンサーバーの所在が判明すると、そのサーバーを提供しているホスティング事業者(レンタルサーバー会社等)や、契約者であるサイト運営者が明らかになります。
そこで次に、ホスティング事業者や運営者に対して、①問題の書き込みの削除(送信防止措置)の請求と、②書き込みをした投稿者のIPアドレス・タイムスタンプ等の開示請求を行います。
削除と特定の両方をここで進めるのが基本形です。
なお、オリジンサーバーが海外の事業者である場合には、この段階でさらに手続上のハードルが加わることがあります。
どこまで進められるかは事案によるため、STEP1の結果を踏まえて方針を再検討することになります。
STEP3:アクセスプロバイダに対する開示請求
STEP2で投稿者のIPアドレスが開示されると、投稿時に使われた回線のアクセスプロバイダ(携帯キャリアや光回線の事業者)が判明します。
そのプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の氏名・住所の開示を受けることで、投稿者の特定に至ります。
この段階は、通常の誹謗中傷案件における投稿者特定と同じ流れです(発信者情報開示請求の一般的な流れは、別の記事で解説しています。)。

STEP4:投稿者・運営者に対する損害賠償請求等
投稿者が特定できれば、損害賠償請求(示談交渉・訴訟)や、事案によっては刑事告訴を進めます。
また、悪質なサイト運営者自身の責任を追及できる場合もあります(損害賠償の考え方は、別の記事で解説しています。)。

Cloudflareに対する手続
「海外の会社が相手では、日本の裁判所では何もできないのではないか」という質問をよく受けます。
この点の状況を、大きな流れとして説明します。
Cloudflareは米国の法人ですが、日本国内でも事業を展開しており、現在では、日本の裁判所においてCloudflareを相手方とする削除・開示の手続を進められる状況にあります。
かつては裁判外の請求に応じない対応が争いになった時期もありましたが、その後、手続環境は変化し、国内の裁判手続による対応の蓄積が形成されてきました。
ただし、次の点には注意が必要です。
Cloudflareの対応、すなわち、どの範囲の情報を保有・開示するか、手続にどの程度の期間を要するかは、時期によって変動してきた経緯があります。
したがって、本記事の記載を含め、過去のある時点の運用を前提に確定的な見通しを立てることは適切ではありません。
ご相談をいただいた時点での最新の状況を確認した上で、個別の事案の見通しをご説明します。
削除に関する注意点|Cloudflareに請求するだけでは消えない場合がある
削除を急ぐあまり、Cloudflareの悪用報告フォーム等に通報して結果を待ち続ける方がいますが、注意が必要です。
CDNは、コンテンツそのものを保有しているのではなく、オリジンサーバー上のコンテンツを配信・キャッシュする立場にあります。
このため、Cloudflareの建付け上、コンテンツの削除はオリジン側(ホスティング事業者・サイト運営者)が行うべきものとされており、CDNへの通報や削除請求だけでは削除に至らない場合があります。
削除の本筋は、STEP1・STEP2を通じてオリジン側にたどり着き、そこに削除請求を行うことです。
あわせて、被害の拡大を抑える手段として、検索エンジンの検索結果からの削除(検索結果に表示されなくする措置)を並行して進めることも有効です。

投稿者特定に関する注意点
CDN経由のサイトに対する投稿者特定は、通常の案件より段階が一つ以上多いため、全体として相応の期間を要します。
そして、この手続には時間の制約があります。
STEP3で必要となる投稿者のIPアドレスの記録(ログ)は、サイト側にもアクセスプロバイダ側にも、無期限に保存されているわけではありません。
手続に時間をかけている間にログの保存期間が過ぎれば、途中まで進んでも投稿者にたどり着けなくなります。
段階が多いCDN経由の案件は、通常の案件以上に、この時間との競争が厳しくなります。
書き込みを発見したら、証拠保全を直ちに行った上で、できる限り早く手続に着手することが重要です。
弁護士に相談するメリット
CDN経由のサイトへの対応は、①対象サイトの技術的な調査、②外国法人を相手方とする裁判手続、③判明した先(国内外のホスティング事業者)に応じた方針の再構築、④ログ保存期間を踏まえた段取りの設計、という複数の専門的判断が連続する手続です。
当事務所では、対象サイトの調査の段階から、Cloudflareへの開示請求、削除請求、投稿者の特定、損害賠償請求まで、一貫して対応しています。
「運営者が分からないサイトだから」と諦める前に、そのサイトに対して現時点で何がどこまでできるのかを、まずご確認ください。
よくある質問(FAQ)
- 匿名の誹謗中傷サイトで、運営者がどこにも書かれていません。諦めるしかないのですか?
-
諦める必要はありません。
運営者情報が表示されていなくても、CDNやサーバーの調査から法的手続によって運営者側の情報にたどり着く道があります。
まずはサイトの調査によって、どの手続が使えるかを確認するところから始めます。 - Cloudflareの通報フォームから報告しましたが、削除されません。
-
CDNはコンテンツそのものを保有していないため、通報や削除請求だけでは削除に至らない場合が少なくありません。
削除の本筋は、法的手続によってオリジンサーバー側(ホスティング事業者・運営者)にたどり着き、そこに削除請求を行うことです。
通報の結果を待ち続けるより、並行して法的手続を進めることをお勧めします。 - 海外の会社が相手でも、日本の裁判所で手続できるのですか?
-
Cloudflareについては、日本の裁判所で削除・開示の手続を進められる状況にあります。
- どのくらいの期間がかかりますか?
-
通常のサイトに対する手続より段階が一つ以上多いため、全体として相応の期間を要します。
所要期間は、各段階での相手方の対応や、オリジンサーバーの所在(国内か海外か)によって大きく変わるため、一律の見通しは示せませんが、段階が多いからこそ早期の着手が重要になります。
- 書き込みからかなり時間が経っています。もう手遅れですか?
-
時間の経過は、ログの保存期間との関係で投稿者の特定を難しくする方向に働きますが、直ちに手遅れとは限りません。
また、投稿者の特定が難しい場合でも、書き込みの削除や検索結果からの削除など、被害を止めるための手段は残されていることがあります。現時点で何ができるかを確認するためにも、早めにご相談ください。
- 自分でもできますか?弁護士に頼むべきですか?
-
サイト内の削除窓口への請求など、ご自身で試せる手段はあります。
他方、CDN経由のサイトに対する裁判手続は、外国法人を相手方とする申立てや技術的な調査を含み、ご自身で進めることの負担が大きい類型です。
少なくとも、方針の見極めの段階で一度ご相談いただくことをお勧めします。
まとめ
運営者が分からないサイト、調べてもCloudflareの情報しか出てこないサイトは、「打つ手のないサイト」ではありません。
CDNの向こう側にいるサーバーと運営者にたどり着くための手続が存在し、①Cloudflareへの開示請求、②ホスティング事業者・運営者への削除請求と開示請求、③アクセスプロバイダへの開示請求、④損害賠償請求、という4段階で進めていくことができます。
一方で、段階が多い分、時間を要し、ログの保存期間との競争になります。
書き込みを発見したら、証拠保全を直ちに行い、早期に着手することが、削除と特定の両方の成否を左右します。
当事務所では、CDN経由のサイトを含むインターネット上の誹謗中傷・権利侵害について、サイトの調査から削除請求、投稿者の特定、損害賠償請求まで一貫して対応しています。
運営者の分からないサイトへの書き込みでお困りの方は、お早めにご相談ください。
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