誹謗中傷で警察から連絡が来たら|逮捕の可能性と取調べの対応

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 侮辱罪では、そのほとんどが略式命令によって処理されています。法務省が公表した173件の事例では、169件が略式命令請求で、公判請求は4件でした。
  2. インターネット上の書き込みによる事例では、罰金10万円とされたものが最も多くなっています。対面での事案と比べて、金額が高くなる傾向があります。
  3. 罰金や科料であっても前科になります。示談が成立して告訴が取り下げられれば起訴されないため、対応を検討する意味があります。

はじめに

インターネットへの書き込みについて、警察から連絡を受けることがあります。

民事の請求を受ける場合とは異なり、刑事の手続では処罰そのものが問題になります。
対応を誤ると、前科がつくことにもつながります。

この記事では、連絡が来た段階で何が起きているのか、逮捕される可能性はあるのか、取調べにどう対応すべきかを解説します。

連絡が来た段階で何が起きているか

捜査はすでに始まっている

警察から連絡が来ているということは、被害を受けたとする人からの申告があり、捜査が開始されているということです。

名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であるため、起訴されるには被害者の告訴が必要です。
告訴が受理されている場合と、被害届の段階である場合とがあります。

なぜ自分だと分かったのか

匿名で書き込んだはずなのに、なぜ特定されたのかと疑問に思われることがあります。

捜査機関は、サイトの運営者や通信事業者に対して照会を行い、通信記録から契約者をたどることができます。
被害者側が民事の開示請求によって特定し、そのうえで告訴をしているという場合もあります。

民事の請求と並行することがある

警察からの連絡とは別に、相手方の代理人から損害賠償の請求書が届くことがあります。

刑事と民事は別の手続であり、一方が終わっても他方が残ります。
どちらにどう対応するかを、併せて検討する必要があります。

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手続の流れ

在宅のまま進む場合、次の流れになります。

  1. 警察から出頭を求める連絡を受ける
  2. 警察署で取調べを受け、供述調書が作成される
  3. 捜査の結果が検察庁に送られる
  4. 検察庁でも取調べを受けることがある
  5. 検察官が起訴するかどうかを決める

起訴するかどうかが決まるまでの間が、対応できる期間です。
この間に示談が成立すれば、起訴されない可能性が高まります。

呼び出しは1回で終わるとは限らず、複数回にわたることもあります。

逮捕される可能性

在宅のまま進むことが多い

出頭を求める連絡が来ているということは、その時点では逮捕されていないということです。

逮捕は、逃亡や証拠の隠滅のおそれがある場合に行われます。
住居がはっきりしており、呼び出しに応じている状況であれば、これらのおそれは小さいと判断されます。

もっとも、誹謗中傷事案で逮捕されている事例もあります。
必ず逮捕されないというわけではありません。

応じないと状況が変わる

他方、呼び出しに応じない、連絡が取れないという状態が続けば、逃亡のおそれがあると判断される方向に働きます。

書き込みを続けている場合も同様です。
連絡を受けた後に投稿を削除する行為が、証拠の隠滅と受け取られることもあります。

取調べへの対応

述べた内容は調書に残る

取調べで述べた内容は、供述調書という書面にまとめられます。

この書面は、その後の手続で用いられます。
後から説明を変えようとしても、最初に述べた内容との食い違いを指摘されることになります。

署名する前に内容を確認する

調書は、自分が話したとおりの表現で書かれるとは限りません。

読み聞かせや閲覧の際に、内容が自分の認識と違うと感じた場合には、訂正を求めることができます。
納得できない内容であれば、署名を拒むこともできます。

供述しないこともできる(黙秘権)

自分の意思に反して供述する必要はありません(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。

もっとも、黙っていることが常に有利に働くわけではありません。
認めるべき部分と争う部分を整理したうえで対応するほうが、結果につながることもあります。

取調べを受ける前に弁護士に相談していただければ、事案に即した方針を検討できます。

問題となる犯罪と刑罰

書き込みの内容犯罪法定刑
具体的な事実を示して評価を下げるもの名誉毀損罪(刑法230条)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
事実を伴わない罵倒侮辱罪(刑法231条)1年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料
危害を加えることを告げるもの脅迫罪(刑法222条)2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
店舗や会社の業務を妨げるもの業務妨害罪(刑法233条・234条)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

どの罪にあたるかは、書き込みの内容によって決まります。

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侮辱罪で実際に科された刑

法務省刑事局は、侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会の資料として、侮辱罪の事例集を公表しています。

2022年(令和4年)7月7日の改正法施行日以降に行われた行為のうち、侮辱罪のみで処断され、2025年(令和7年)6月30日までに裁判が確定した173件が掲載されています。

ほとんどが略式命令

処理区分件数
略式命令請求169件
公判請求4件

略式命令は、被疑者が同意した場合に、公開の法廷を開かずに書面で罰金や科料を科す手続です
侮辱罪では、そのほとんどがこの方法で処理されています。

科された金額

裁判結果件数
科料9,000円39件
科料9,900円17件
罰金1万円1件
罰金5万円3件
罰金7万円1件
罰金10万円103件
罰金20万円4件
罰金30万円5件

罰金10万円とされたものが103件と、全体の6割近くを占めています。

インターネット上の事案は重くなる傾向

掲載された173件のうち、インターネット上の書き込みによるものは104件です。

裁判結果ネット上の事案対面などの事案
科料(9,000円・9,900円)20件36件
罰金10万円73件30件
罰金20万円以上8件1件

対面での事案では科料にとどまるものが半数を超えているのに対し、インターネット上の事案では罰金10万円以上が8割近くを占めています。

書き込みが不特定多数の目に触れること、記録が残り続けることが影響していると考えられます。

どのような書き込みが対象になっているか

事例集には、事案の概要も記載されています。

掲示板やSNSに氏名とともに罵倒する言葉を書き込んだもの、勤務先のスレッドに書き込んだもの、検索サイトの口コミ欄に書き込んだものなどがあります。
1回だけの書き込みで処罰された事例もあります。

「バカ」「アホ」といった、日常的に使われる程度の言葉であっても、対象が特定されている状況で書き込まれれば、処罰されている事例があるということです。

氏名と併せて書き込まれた事例が多い

事例集に掲載されたインターネット上の事案を見ると、被害者の氏名や勤務先を挙げたうえで罵倒する言葉を書き込んだものが多くを占めています。

誰のことを指しているかが明らかな状態で書き込まれているということです。
民事で問題になる同定可能性と同じく、対象が特定できるかどうかが前提になります。

口コミ欄への書き込みも含まれる

検索サイトの口コミ欄に書き込んだ事例も、複数掲載されています。

店舗や病院への評価として書いたつもりであっても、特定の人物に向けた侮辱と評価されれば、処罰の対象になり得ます。

前科になる場合

罰金や科料でも前科になる

有罪の裁判を受ければ、その内容が罰金や科料であっても前科になります。

略式命令によるものでも同じです
公開の法廷が開かれないため軽く受け止められがちですが、有罪の判断がされていることに変わりはありません。

不起訴との違い

起訴されなければ、有罪の裁判を受けることはなく、前科もつきません。

捜査の対象となった記録は残りますが、これは前科とは区別されます。
起訴されるかどうかが、大きな分かれ目になります。

資格や職業への影響

罰金以上の刑を受けたことが、資格の制限につながる場合があります。

どのような影響が生じるかは、職業や資格によって異なります。
該当する可能性がある場合には、その点も踏まえて方針を検討する必要があります。

示談と不起訴

親告罪であることの意味

名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、告訴がなければ起訴されません(刑法232条1項)。

示談が成立し、告訴が取り下げられれば、起訴されないことになります。
脅迫罪や業務妨害罪は親告罪ではないため、この点は異なります。

示談で決めるべき内容

  • 支払う金額と支払方法
  • 告訴を取り下げること
  • 対象となった書き込みを削除すること
  • 今後同様の投稿をしないこと
  • この件について他に債権債務がないことの確認

告訴の取下げを内容に含めなければ、金銭を支払っても刑事の手続が続く可能性があります。
民事の解決と刑事の解決を、併せて図る必要があります。

示談金の水準

金額の目安としては、民事で認められている慰謝料の水準が参考になります。

法務省民事局が令和8年4月に公表した調査報告書によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料は、平均47.0万円、中央値30.0万円でした。
名誉感情侵害のみの事案では、平均23.0万円、中央値15.0万円です。

もっとも、刑事の示談では、処罰を免れるという事情も加味されるため、これより高い金額を求められることもあります。

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相手の連絡先が分からない場合

示談を進めるには、相手方と連絡を取る必要があります。

被害者の連絡先は、本人の意向を確認したうえで、弁護士に対してであれば伝えられることがあります。
本人が直接連絡を取ろうとすることは、かえって状況を悪くします。

民事と刑事が並行する場合

説明に食い違いが生じないようにする

意見照会書への回答、相手方への返答、取調べでの供述は、それぞれ別の場面で行われます。

しかし、内容に食い違いがあれば、後の手続で指摘されることになります。
どの段階でどのように説明するかを、最初に整理しておく必要があります。

どちらを先に進めるか

示談が成立すれば、刑事と民事の両方が解決します。

他方、刑事の手続には時間の制約があります。
起訴されるかどうかが決まる前に示談を成立させることに意味があるため、進め方を考える必要があります。

弁護士に依頼した場合

相手方との連絡

被害者の連絡先は、本人が直接知ることはできません。

代理人である弁護士に対してであれば、本人の意向を確認したうえで伝えられることがあります。
示談の申入れを行うには、この段階を経る必要があります。

捜査機関への対応

弁護人として選任されていることを捜査機関に伝え、示談の交渉を進めている旨を説明することができます。

示談の見込みがあることが分かれば、処分の判断にあたって考慮されます。

取調べに向けた準備

取調べで何を聞かれるか、どこが争点になるかを、事前に整理できます。

書き込みの内容が名誉毀損罪や侮辱罪にあたるかどうかを検討したうえで、認める部分と争う部分を決めることになります。
取調べを受けた後では、方針を変えにくくなります。

やってはいけない対応

連絡を無視する

出頭の求めに応じないままでいると、逃亡のおそれがあると判断される方向に働きます。

都合が悪い場合には、その旨を伝えて日程を調整できます。
連絡を取らないままにすることが、最も避けるべき対応です。

相手方に直接連絡する

謝罪のつもりで連絡しても、相手方は警戒します。

接触したこと自体が、証拠の隠滅や働きかけと受け取られることもあります。
示談の申入れは、代理人を通じて行うべきです。

書き込みを続ける

連絡を受けた後も書き込みを続ければ、反省がないと評価されます。

事例集にも、侮辱罪で処罰されたことについて書き込みを行い、それ自体が事案に含まれているものがあります。

本人以外に連絡が来た場合

家族が書き込んだ場合

回線の契約者と書き込んだ人が異なる場合、契約者に連絡が来ることがあります。

契約者であるというだけで責任を負うわけではありません。
もっとも、事情を聞かれることにはなります。

未成年が書き込んだ場合

14歳以上であれば、刑事責任を問われます。
家庭裁判所に送致され、少年事件として扱われることになります。

14歳未満であれば刑事責任を問われませんが、児童相談所への通告などの対応がとられることがあります。

いずれの場合も、保護者として被害者への対応を検討することになります。

よくある質問(FAQ)

警察から電話が来ましたが、逮捕されますか。

出頭を求める連絡が来ている時点では、逮捕されていません。
逮捕は逃亡や証拠の隠滅のおそれがある場合に行われるため、住居がはっきりしており呼び出しに応じている状況であれば、そのおそれは小さいと判断されます。

他方、連絡に応じないままでいると、判断が変わる可能性があります。

侮辱罪ではどのくらいの刑になりますか。

法務省が公表した173件の事例では、罰金10万円とされたものが103件と最も多く、次いで科料9,000円が39件でした。
インターネット上の書き込みによる事案では、罰金10万円以上が8割近くを占めています。

罰金を払えば前科はつきませんか。

つきます。

有罪の裁判を受けた以上、内容が罰金や科料であっても前科になります。
略式命令による場合も同じです。

前科を避けるには、起訴されないことが必要になります。

示談すれば起訴されませんか。

名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であるため、示談が成立して告訴が取り下げられれば起訴されません。

ただし、脅迫罪や業務妨害罪は親告罪ではないため、告訴の取下げがあっても起訴される可能性は残ります。

取調べで話さないほうがよいですか。

自分の意思に反して供述する必要はありません。

もっとも、黙っていることが常に有利に働くわけではなく、認めるべき部分と争う部分を整理したうえで対応するほうが結果につながることもあります。
取調べを受ける前にご相談いただければ、事案に即した方針を検討できます。

投稿を削除すれば済みますか。

済みません。

すでに行われた書き込みについて責任がなくなるわけではなく、捜査機関も被害者側も内容を保存しています。
連絡を受けた後の削除が、証拠の隠滅と受け取られることもあります。

まとめ

この記事の要点は次のとおりです。

  • 出頭を求める連絡が来ている時点では逮捕されていないが、応じないと判断が変わる
  • 取調べで述べた内容は調書として残り、後の手続で用いられる
  • 侮辱罪の事例173件のうち169件が略式命令によって処理されている
  • インターネット上の事案では罰金10万円以上が8割近くを占める
  • 罰金や科料でも前科になる
  • 示談が成立して告訴が取り下げられれば、起訴されない

刑事の手続には、起訴されるかどうかが決まるまでという時間の制約があります。
その前に示談を成立させられるかどうかが、結果を分けます。

当事務所では、刑事弁護とインターネット上の誹謗中傷の双方を取り扱っています。
警察から連絡を受けた方は、取調べを受ける前に当事務所にご相談ください。

起訴される前でなければ、とれる対応が限られます。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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