逮捕記事をネットから消したい|削除できる条件と手順を解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 逮捕を報じた記事や、それを転載した投稿は、削除を求められる場合があります。もっとも、削除を求める相手によって、求められる水準が異なります。
  2. 判断には、事件の内容、逮捕からの経過年数、その後どのような処分を受けたか、現在の生活状況などが影響します。不起訴になった場合と有罪判決を受けた場合とでは、見通しが変わります。
  3. 逮捕された時点では削除が認められなくても、時間の経過によって結論が変わることがあります。一度断られた場合でも、改めて求める余地があります。

はじめに

自分の名前で検索すると、過去の逮捕を報じた記事が表示されるというご相談があります。

事件そのものは終わっていても、記事が残り続ければ、就職や転職、取引先との関係に影響します。
不起訴になった場合であっても、逮捕されたという事実だけが残ります。

この記事では、どのような場合に削除が認められるのか、処分の内容によって見通しがどう変わるのか、どのような手順で進めるのかを解説します。

どこに何が残っているかを確認する

対応を検討する前に、どこに何が残っているかを把握する必要があります。

残っている場所特徴
報道機関のウェブサイト一定期間で削除されることが多い
ポータルサイトのニュース欄配信期間の経過により削除されることが多い
まとめサイト長期間残りやすい
電子掲示板スレッドとして残り続ける
SNSへの転載投稿者が削除しない限り残る
検索結果元のページが残っている限り表示される

確認の方法

自分の氏名で検索し、表示されるページを一覧にしてください。

氏名と地名、氏名と罪名など、組み合わせを変えて検索すると、見落としを防げます。
それぞれのURL、掲載されている内容、掲載された日付を記録します。

記事が残ることによる影響

就職や転職

採用の場面で、氏名を検索されることがあります。

逮捕の記事が表示されれば、それだけで選考から外れることがあります。
不起訴になっていても、検索した人にはその後の処分まで分かりません。

取引や契約

事業を営んでいる場合には、取引先が検索することもあります。

本人だけでなく、勤務先や家族にも影響が及ぶことがあります。

本人以外の記載

記事の中に、家族の氏名や住所が記載されていることがあります。

その場合、家族自身の権利が侵害されていることになります。
誰の権利が問題になっているかを整理したうえで、それぞれについて削除を求めることになります。

削除を求める根拠

プライバシー侵害として求める

逮捕された事実は、私生活に関する事柄です。

他人にみだりに知られたくない情報であるため、プライバシー侵害を理由として削除を求めることになります。
報道された内容が事実である以上、名誉毀損としては構成しにくくなります。

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更生を妨げられない利益

最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決(民集48巻2号149頁)は、前科にかかわる事実について次のとおり判示しています。

「その者が有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有するというべきである。」

公表されない法的利益と、公表する理由とを比べて判断されることになります。

報じられた時点では適法であったこと

逮捕を報じること自体は、その時点では公共の利害に関する事実の報道として許されます。

削除を求めるということは、報道が違法であったと主張するのではなく、時間の経過によって公表を続ける理由が失われたと主張することになります。
この違いが、判断の枠組みに影響します。

処分の内容による違い

逮捕された後にどのような処分を受けたかは、判断に影響する事情の一つです。

処分の内容意味
不起訴(嫌疑なし・嫌疑不十分)犯罪の嫌疑が認められなかった、証拠が不十分だった
不起訴(起訴猶予)証拠は揃っているが、起訴しないと判断された
略式命令による罰金有罪であり、前科がつく
執行猶予付きの判決有罪であり、前科がつく
実刑判決有罪であり、服役する

不起訴になった場合

起訴されなかった場合、有罪の判断はされていません。

それにもかかわらず、逮捕の記事だけが残っていれば、読んだ人は有罪であったかのように受け取ります。
この点は、削除を求めるにあたって説明すべき事情になります。

不起訴となったことを示す資料として、不起訴処分告知書があります。
検察庁に請求することで交付を受けられます。

有罪となった場合

有罪の判決を受けた場合でも、削除を求められないわけではありません。

刑法34条の2は、禁錮以上の刑の執行を終えてから10年、罰金以下の刑の執行を終えてから5年を経過したときは、刑の言渡しがその効力を失うと定めています。
執行猶予の場合は、猶予期間が経過した時点で効力を失います。

後で述べる最高裁の判決も、刑の言渡しが効力を失っていることを、削除を認める方向の事情として挙げています。

少年事件の場合

少年法61条は、家庭裁判所の審判に付された少年について、氏名や写真など本人と推知できる記事や写真を新聞などに掲載してはならないと定めています。

そのため、本人と分かる形で報じられている場合には、この点が削除を求める理由になります。
なお、2022年の改正により、18歳と19歳については一定の場合に例外が設けられています。

削除を求める相手による違い

同じ逮捕記事であっても、誰に対して削除を求めるかによって、判断の枠組みが異なります。

投稿そのものの削除

最高裁令和4年6月24日第二小法廷判決(民集76巻5号1170頁)は、逮捕された事実を報じる記事を転載したツイートについて、運営者に対する削除請求を認めました。

公表されない法的利益が、投稿を一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、削除を求めることができるとしています。

この事案で考慮されたのは、逮捕から約8年が経過し刑の言渡しが効力を失っていること、転載元の報道記事がすでに削除されていること、投稿が逮捕当日に速報することを目的としたものであること、氏名で検索すると表示されること、公的立場にある者ではないことです。

検索結果の削除

検索結果からの削除については、より高い水準が求められます。

最高裁平成29年1月31日第三小法廷決定(民集71巻1号63頁)は、公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除を求めることができるとしました。
投稿そのものの削除には「明らかな場合」という限定が付かないのに対し、検索結果の削除にはこの限定が付きます。

検索結果に表示され続けることの負担は大きいものの、手続としては元のページの削除から進めることになります。

どちらを先に求めるか

元のページが削除されれば、検索結果からも表示されなくなります。

そのため、まず元のページの削除を求め、それが実現しない場合に検索結果の削除を検討するという順序になります。
転載先が多数ある場合には、どこまでを対象とするかを決める必要があります。

判断に影響する事情

削除が認められるかどうかは、次のような事情から判断されます。

事情削除が認められやすい方向認められにくい方向
経過年数長い短い
事件の性質社会的関心が低い社会的関心が高い
処分の内容不起訴、刑の言渡しの効力が消滅実刑、服役中
本人の立場一般の私人公務員、公職の候補者、著名人
報道の範囲限られた媒体広く報道された
現在の生活社会復帰している同種の問題が続いている

事件の性質

前掲の平成29年決定は、児童買春の被疑事実による逮捕について、社会的に強い非難の対象とされ罰則をもって禁止されていることから、今なお公共の利害に関する事項であるとしました。

事件の性質によっては、時間が経過しても公共の利害との関わりが失われにくいということです。

現在の生活状況

社会復帰していること、同種の問題を起こしていないことは、削除を求める理由になります。

就職していること、家族がいること、地域で生活していることなど、現在の状況を示す資料を整理しておくことになります。

媒体ごとの見通し

報道機関のウェブサイト

報道機関は、報道の自由という立場から、削除に応じることに慎重です。

他方、一定期間が経過すると記事を公開しなくなる運用をしている社もあります。
その場合、時間の経過とともに解決することがあります。

まとめサイト・掲示板

報道機関の記事が削除された後も、転載された内容が残り続けることがあります。

これらは報道機関ではないため、報道の自由という理由は当てはまりにくくなります。
前掲の令和4年判決も、転載元の記事がすでに削除されていることを、削除を認める方向の事情として挙げています。

SNSへの転載

投稿者が削除しない限り残ります。

運営者に対して削除を求めることになります。
令和4年判決は、まさにこの類型について削除を認めたものです。

削除の手順

  1. どこに何が残っているかを一覧にする
  2. 処分の内容や現在の生活状況を示す資料を整える
  3. サイトの運営者に対して、任意の削除を申し入れる
  4. 応じられない場合は、裁判所に仮処分を申し立てる
  5. 元のページが残る場合は、検索結果の削除を検討する

自分で申し入れる場合

サイトの問い合わせ窓口から、削除を申し入れることができます。

もっとも、なぜ削除すべきかを法的な理由とともに説明しなければ、応じられにくくなります。
また、申入れの内容が公開される掲示板もあるため、事前に確認が必要です。

仮処分による場合

任意の申入れで応じられない場合には、裁判所に削除の仮処分を申し立てます。

この場合、公表されない法的利益が優越することを、資料によって示す必要があります。
処分の内容、経過年数、現在の生活状況を、具体的に主張することになります。

刑事事件の段階からできること

報道されるかどうか

逮捕されたすべての事件が報道されるわけではありません。

事件の内容や、その時期の報道の状況によって変わります。
報道されなければ、その後の削除の問題も生じません。

処分の内容が後に影響する

刑事事件の段階でどのような処分を得られるかは、その後の削除にも影響します。

不起訴となれば、有罪の判断がされていないことを説明できます。
略式命令による罰金であっても、執行を終えてから5年で刑の言渡しは効力を失います。

刑事事件の対応と、その後に残る記事への対応は、つながっているということです。

示談が成立した場合

被害者との間で示談が成立していれば、不起訴となる可能性が高まります。

その結果として、削除を求める際にも有利な事情となります。

時期の判断

早すぎる場合

事件からの経過年数は、判断に大きく影響します。

逮捕された直後や、刑事手続が続いている段階では、公表する理由が失われていないと判断されやすくなります。
この段階では、削除が認められる可能性は低くなります。

時間の経過は有利に働く

逆にいえば、時間が経つほど削除を求めやすくなります。

刑の言渡しが効力を失った時点、社会復帰して一定期間が経過した時点は、改めて求める契機になります。

一度断られた場合

過去に削除を求めて応じられなかった場合でも、諦める必要はありません。

その後に時間が経過し、処分が確定し、社会復帰しているという事情があれば、判断が変わる可能性があります。
前掲の令和4年判決も、逮捕から約8年が経過したことを考慮しています。

削除が認められない場合

対象を絞る

すべての掲載を消すことが難しくても、一部は削除できる場合があります。

報道機関の記事は残っても、転載したまとめサイトの記事は削除できるということがあります。
影響の大きいものから順に対応するという進め方になります。

事実と異なる記載がないか確認する

転載される過程で、内容が変わっていることがあります。

報道されていない事実が付け加えられている、不起訴になったにもかかわらず有罪であったかのように書かれているといった場合には、名誉毀損としても主張できます。

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よくある質問(FAQ)

不起訴になりましたが、記事が残っています。

起訴されなかった以上、有罪の判断はされていません。
それにもかかわらず逮捕の記事だけが残っていれば、読んだ人は有罪であったかのように受け取ります。
この点は削除を求めるにあたって説明すべき事情になります。

不起訴処分告知書は検察庁に請求することで交付を受けられます。

有罪になった場合でも削除できますか。

求められないわけではありません。

刑法34条の2により、禁錮以上の刑の執行を終えてから10年、罰金以下の刑の執行を終えてから5年を経過すると、刑の言渡しは効力を失います。
執行猶予の場合は猶予期間の経過時です。

最高裁の判決も、刑の言渡しが効力を失っていることを削除を認める方向の事情として挙げています。

検索結果から消すことはできますか。

検索結果の削除には、公表されない法的利益が優越することが明らかであるという、より高い水準が求められます。
まず元のページの削除を求め、それが実現しない場合に検討するという順序になります。

元のページが削除されれば、検索結果からも表示されなくなります。

逮捕された直後ですが、削除を求められますか。

刑事手続が続いている段階では、公表する理由が失われていないと判断されやすく、削除が認められない可能性が高いです。
他方、報道されていない事実が書かれている場合や、内容が事実と異なる場合には、その時点でも対応できることがあります。

以前に削除を断られました。

その後に時間が経過し、処分が確定し、社会復帰しているという事情があれば、判断が変わる可能性があります。
最高裁が削除を認めた事案でも、逮捕から約8年が経過していました。

改めて求める余地があります。

転載先が多すぎて対応しきれません。

すべてを一度に消すことは現実的でない場合があります。
検索結果に表示されやすいもの、内容が詳しいものから順に対応するという進め方になります。

どこまでを対象とするかを決めたうえで進めることになります。

まとめ

この記事の要点は次のとおりです。

  • 逮捕記事の削除は、プライバシー侵害を理由として求めることになる
  • 投稿そのものの削除と検索結果の削除とでは、求められる水準が異なる
  • 不起訴になった場合、有罪の判断はされていないことを説明する必要がある
  • 有罪となった場合でも、刑の言渡しが効力を失えば削除を求めやすくなる
  • 時間の経過は、削除を求めるうえで有利に働く
  • 一度断られた場合でも、事情が変われば改めて求める余地がある

事件そのものが終わっていても、記事が残る限り影響は続きます。
処分の内容と経過年数によって見通しが変わるため、現在の状況を踏まえた判断が必要になります。

当事務所では、刑事弁護とインターネット上の記事の削除の双方を取り扱っています。
逮捕された事件の対応から、その後に残る記事の削除まで、当事務所にご相談ください。

転載が進むほど、対応する範囲は広がります。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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