開示請求に身に覚えがない|意見照会書が届いた場合の確認と回答

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 意見照会書は、投稿に使われた回線の契約者に届きます。そのため、家族や同居人が投稿した場合など、自分が投稿していなくても届くことがあります。
  2. 身に覚えがない場合は、まず書面が本物か、対象の投稿がどれか、その時間帯に回線を使えた人は誰かを確認します。そのうえで、事実に沿って回答することが大切です。
  3. 事実と異なる否認や、家族をかばって自分が投稿したと認めることは、後の手続で大きな不利益につながるおそれがあります。

はじめに

プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたものの、書かれている投稿にまったく心当たりがない、という相談があります。

身に覚えがないからといって放置したり、よく確認しないまま回答したりすると、後で困ることになりかねません。
反対に、事実を確認したうえで適切に回答すれば、自分が投稿していないことを手続の中で伝えることができます。

この記事では、インターネット上の投稿について、身に覚えのない意見照会書が届いた場合に、何を確認し、どう回答すればよいかを解説します。

意見照会書は回線の契約者に届く

被害者が発信者情報開示請求をすると、請求を受けたプロバイダは、原則として、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴かなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。
この意見を聴くために送られてくるのが意見照会書です。

ただし、プロバイダが把握しているのは、投稿に使われた回線の契約者です。
実際に誰が投稿したかまでは分からないため、意見照会書は契約者宛てに届きます。

そのため、次のような場合には、契約者本人が投稿していなくても意見照会書が届きます。

  • 同居している家族が、自宅の回線から投稿した
  • 家族名義のスマートフォンを、別の家族が使って投稿した
  • 来客や同居人が、自宅のWi-Fiに接続して投稿した

開示請求の手続全体の流れについては、以下の記事で解説しています。

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書面が本物か確認する

身に覚えのない書面が届いた場合、まず、その書面が本当にプロバイダから送られたものかを確認してください。

意見照会書は、自分が契約しているプロバイダ(通信会社)から届きます。
契約していない会社の名前で届いた場合や、書面に記載された連絡先がそのプロバイダの公式の連絡先と一致しない場合は、注意が必要です。

また、本来の意見照会書は、開示に同意するかどうかを尋ねるものであり、意見照会書の段階でプロバイダが金銭の支払いを求めることはありません。
「示談金を振り込めば開示を止められる」といった記載がある書面は、架空請求を疑ってください。

不審な点がある場合は、書面に書かれた連絡先ではなく、契約書類やプロバイダの公式ウェブサイトに記載された窓口に問い合わせて確認します。

身に覚えがない場合に考えられること

考えられる事情内容
同居の家族が投稿した配偶者や子どもなどが、同じ回線や家族名義の端末から投稿した
来客や同居人が回線を使った自宅のWi-Fiに接続した友人、シェアハウスの同居人などが投稿した
自分の過去の投稿を忘れている以前使っていたアカウントや、時間が経った投稿を覚えていない
回線や端末が不正に使われたWi-Fiのパスワードが知られていた、アカウントが乗っ取られていた
記録の誤りプロバイダや被害者側の記録に誤りがある

このうち、自分の過去の投稿を忘れていないかは、最初に確認しておくべき点です。
意見照会書には、対象の投稿の内容や日時、投稿されたサイトが記載されていることが多いため、それを見て思い当たることがないか確認してください。

記録の誤りの可能性もありますが、それを裏付けることは容易ではありません。
まずは、ほかの事情に当てはまらないかを確認することが先決です。

まず確認すること

対象の投稿

意見照会書に記載された投稿の内容、投稿日時、投稿されたサイトやアカウント名を確認します。
別紙として投稿の画面の写しが添付されていることもあります。

自分が使っているサイトやサービスか、自分が知っている人物や出来事についての投稿かを確認してください。
投稿の対象となっている人物に心当たりがあれば、その人物と関わりのある家族や知人が投稿した可能性も考えられます。

その時間帯に回線を使えた人

投稿日時に、その回線を使うことができた人を確認します。

  • 同居している家族
  • その日に自宅を訪れていた人
  • Wi-Fiのパスワードを知っている人
  • 家族名義で契約している端末を使っている人

自分がその時間帯に外出していた、仕事をしていたなど、自分が投稿できなかった事情があれば、それを裏付ける資料(勤務の記録、移動の記録など)も確認しておきます。

家族に確認するときの注意

家族に確認する場合は、問い詰めるのではなく、意見照会書が届いたこと、回答の期限があること、事実によって対応が変わることを伝えてください。
特に子どもの場合、叱られることを恐れて事実を話さないことがあります。

確認の結果、家族が投稿していたことが分かった場合でも、慌てて投稿やアカウントを削除させることは避けてください。
削除しても投稿についての責任はなくならず、手続を知った後の削除は、事情によっては不利に受け取られるおそれがあります。

回答の考え方

自分も家族も投稿していない場合

確認しても、自分も家族も投稿しておらず、ほかに回線を使った人にも心当たりがない場合は、開示に同意しない旨と、その理由として投稿に心当たりがないことを回答することが考えられます。

その際、「身に覚えがない」と書くだけでなく、投稿日時に自分が回線を使える状況になかったことなど、具体的な事情があれば記載します。
プロバイダは、回答の内容を踏まえて開示に応じるかどうかを判断し、裁判所の手続では回答の内容が考慮されることがあります。

家族が投稿していた場合

家族が投稿していた場合、開示を求められているのは契約者の情報です。
投稿した家族の情報が直接開示されるわけではありません。

この場合、回答の内容をどうするかは、投稿の内容が権利侵害にあたるか、投稿した家族が成人か未成年か、その後の請求にどう対応するかによって変わります。
家族本人の意向も含めて、回答する前に検討が必要です。

開示に同意しない場合の理由の書き方や、拒否した後の流れについては、以下の記事で解説しています。

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回答書は後の手続で使われる

意見照会書への回答は、プロバイダを通じて被害者側に伝わったり、裁判所の手続で資料として扱われたりします。
回答の内容は、開示された後の交渉や訴訟でも参照されることがあります。

そのため、回答には、確認できた事実だけを書くことが大切です。
推測で「家族が書いたのだと思う」と書いたり、確認していない事情を断定したりすることは避けてください。

事実と異なる回答をしない

自分の投稿を否認しない

自分が投稿したことを覚えているのに、身に覚えがないと回答することは避けるべきです。

開示の手続が進めば、契約者の情報は開示される可能性があり、その後の交渉や訴訟で投稿者が誰かが争われることになります。
否認した後に自分の投稿であることが明らかになれば、回答の内容だけでなく、その後の説明全体の信用性が疑われるおそれがあります。

自分の投稿である場合の意見照会書への対応は、以下の記事で解説しています。

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家族をかばって自分が投稿したと認めない

反対に、家族、特に子どもが投稿したことが分かったときに、契約者である親が「自分が投稿した」と認めてしまうこともあります。

しかし、事実と異なる内容を認めれば、その後の示談や訴訟は、自分が投稿者であることを前提に進みます。
また、刑事告訴がされている場合には、事実と異なる供述が捜査や処分に影響することにもなります。
家族を守るつもりでも、事実に沿って対応することが結果として適切です。

家族が投稿していた場合の責任

責任を負うのは投稿した本人

投稿による損害賠償の責任を負うのは、原則として投稿した本人です。
回線の契約者であるというだけで、家族の投稿について賠償責任を負うわけではありません。

ただし、相手方は開示された契約者を投稿者と考えて請求してくるため、契約者が対応せざるを得ないことになります。
その中で、実際の投稿者が誰かを説明していくことになります。

子どもが投稿していた場合

子どもが投稿していた場合でも、自分の行為の責任を判断できる能力があれば、子ども本人が賠償責任を負います(民法712条参照)。
責任を判断できる能力がない場合は、親などの監督義務者が責任を負います(民法714条1項)。

また、子どもに責任を判断できる能力がある場合でも、親が監督義務を怠ったことによって損害が生じたといえるときは、親自身が責任を負うことがあります。

未成年が投稿した場合の責任については、以下の記事で解説しています。

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回答しなかった場合

意見照会書に回答しないまま期限を過ぎると、プロバイダは発信者から意見がなかったものとして手続を進めます。
身に覚えがないという事情は、回答しなければプロバイダにも裁判所にも伝わりません。

身に覚えがない場合こそ、期限内に回答することが大切です。

開示された後に「自分ではない」と争う場合

開示されても投稿者と認められたわけではない

発信者情報が開示されても、開示されるのは回線の契約者の氏名や住所などです。
開示されたことによって、契約者が投稿者であると認められたわけではありません。

開示の後に損害賠償を求める訴訟が起こされた場合、被告が投稿したことは、原則として請求する側が立証する必要があります。

示していく事情

もっとも、回線の契約者であることは、投稿者であることを推認させる事情として扱われることがあります。
身に覚えがないと述べるだけでは足りず、次のような具体的な事情を示していくことになります。

  • 投稿された時間帯に自分が回線を使える状況になかったこと(勤務の記録、移動の記録など)
  • 同じ回線を使うことができた人が他にいたこと
  • 自分が対象のサイトやアカウントを使っていないこと
  • 投稿の対象となった人物や出来事と自分との関わりがないこと

家族が投稿していた場合の説明

開示された後に、実際には家族が投稿していたことを相手方に説明する場合、その家族が誰かを明らかにすることになります。
相手方は、その家族に対して改めて請求をすることになります。

投稿した家族が未成年であれば、親が法定代理人として交渉することになります。
家族が成人であれば、本人が対応することになり、契約者が代わりに示談をする場合には、誰の責任についての示談かを示談書で明確にしておく必要があります。

特定にかかった費用の請求

相手方は、投稿者を特定するためにかかった費用を損害として請求してくることがあります。
この費用も、投稿による損害として請求されるものであるため、投稿していない契約者が当然に負担するものではありません。

開示された後に届く請求への対応については、以下の記事で解説しています。

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訴訟になった場合については、以下の記事で解説しています。

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トレントによる開示請求の場合

ファイル共有ソフト(BitTorrent)の利用を理由とする著作権侵害の意見照会書についても、家族の利用など身に覚えがないという相談があります。

トレントの場合は、投稿による名誉毀損などとは論点が異なるため、以下の記事で解説しています。

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弁護士に依頼する場合にできること

身に覚えのない意見照会書が届いた場合、弁護士に依頼すると、次のような対応が可能です。

  • 書面の内容を確認し、考えられる事情を整理する
  • 確認できた事実に基づいて、回答書を作成する
  • 家族が投稿していた場合に、誰がどのような責任を負うかの見通しを立てる
  • 開示された後の請求に対して、交渉や訴訟の対応を行う

回答書の内容は、その後の手続にも影響します。
家族が関わっている場合は、家族の間で話し合う前に、どのように対応するかを整理しておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

家族に確認しましたが、誰も心当たりがないと言っています

確認した結果として、心当たりがない旨を回答することになります。

ただし、後で家族が投稿していたことが分かると、回答の内容と食い違うことになります。
投稿の内容や日時を具体的に示して、改めて確認しておくことをお勧めします。

来客が自宅のWi-Fiを使った可能性があります。その人の名前を書く必要がありますか

確認できていない段階で、特定の人の名前を書いて投稿者だと断定することは避けてください。
回答書には、回線を利用できた人が他にいたという事実を記載することが考えられます。

会社や学校の回線から投稿されたとして、勤務先に意見照会書が届きました

回線の契約者が会社や学校であれば、意見照会書は契約者である会社や学校に届きます。
会社から事情を聞かれた場合は、事実に沿って説明する必要があります。

身に覚えがないのに開示に同意すると、どうなりますか

契約者の情報が開示され、相手方から請求を受けることが考えられます。
同意したからといって投稿者であると認めたことにはなりませんが、身に覚えがない場合は、開示に同意するかどうかを慎重に検討してください。

子どもが投稿していたことが分かりました。親が代わりに支払う必要がありますか

子どもに責任を判断できる能力があれば、子ども本人が責任を負います。

ただし、親の監督義務が問題になる場合や、示談の交渉を親が行う場合もあります。
子どもの年齢や投稿の内容を踏まえて検討が必要です。

回答の期限が迫っていて、家族への確認が間に合いません

プロバイダに連絡し、回答の期限を延ばせるか相談することが考えられます。
期限を過ぎて何も回答しないことは避けてください。

まとめ

  • 意見照会書は回線の契約者に届くため、自分が投稿していなくても届くことがある
  • まず書面が本物か、対象の投稿がどれか、その時間帯に回線を使えた人は誰かを確認する
  • 家族が投稿していた場合も、慌てて投稿を削除させない
  • 回答書には確認できた事実だけを書く
  • 自分の投稿を否認することも、家族をかばって自分が認めることもしない
  • 開示されても投稿者と認められたわけではなく、その後の手続で争うことができる

身に覚えのない意見照会書への対応は、届いた時点の確認と回答の内容によって、その後の進み方が変わります。

当事務所では、意見照会書が届いた方からのご相談に対応しています。
身に覚えのない書面が届いた方や、家族が投稿していたことが分かった方は、当事務所にご相談ください。

意見照会書には回答の期限があります。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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