不倫の内容証明が届いたら、回答期限までに何をすべきか

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【この記事の結論・要約】

  1. 内容証明郵便は、どのような内容の文書をいつ送ったかを郵便局が証明するものであり、それ自体に支払を強制する力はありません。ただし、慰謝料の請求として、時効の完成を6か月猶予する効果があります。
  2. 無視や受け取り拒否をしても、請求がなくなるわけではありません。受け取らなかった場合でも、意思表示が届いたものと扱われることがあり、放置すれば訴訟を起こされるおそれがあります。
  3. 回答期限までに、差出人、事実関係、請求額、慰謝料以外の要求を確認し、対応の方針を決める必要があります。回答書は証拠として残るため、認める範囲や書き方に注意が必要です。

はじめに

交際相手の配偶者や、その代理人の弁護士から、不倫の慰謝料を請求する内容証明郵便が届くことがあります。
書面には、請求額や回答期限、場合によっては「期限までに回答がなければ法的措置をとる」といった記載があり、どう対応すべきか判断に迷うことがあります。

内容証明郵便が届いたからといって、書かれている金額を支払う義務が決まるわけではありません。
一方で、無視や受け取り拒否をすると、かえって不利な状況になることがあります。

本稿では、内容証明郵便の法的な意味、差出人ごとの違い、確認すべき内容、無視や受け取り拒否をした場合の扱い、回答期限までにすべきこと、回答書の注意点について解説します。
あわせて、探偵費用や退職などの要求が書かれていた場合や、勤務先や家族に知られた場合の対応も取り上げます。

内容証明郵便とは

それ自体に支払を強制する力はない

内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったかを、郵便局が証明する郵便です。
証明されるのは、その文書を送ったという事実であり、書かれている内容が正しいことまで証明されるわけではありません。

また、内容証明郵便には、裁判所の判決のように、支払を強制する力はありません。
書面に「〇日以内に支払え」と書かれていても、その金額を支払う義務が、書面によって決まるわけではありません。

時効の完成が6か月猶予される

一方で、内容証明郵便による慰謝料の請求には、法律上の効果があります。
民法150条1項は、次のように定めています。

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

不倫の慰謝料を請求する権利は、請求する側が損害と加害者を知った時から3年で時効によって消滅します(民法724条1号)。
内容証明郵便で請求されると、その時から6か月間は時効が完成しません。
時効が近いことを理由に、相手が内容証明郵便を送ってきている場合もあります。

まず差出人を確認する

内容証明郵便が届いたら、まず誰が差し出したものかを確認します。
差出人によって、その後の連絡の相手や、対応の進め方が変わります。

相手の配偶者本人から届いた場合

相手の配偶者本人が差し出した場合は、本人との間でやり取りをすることになります。
本人からの請求は感情的な内容を含むことがあり、直接連絡を取ると、話合いがかえってこじれることがあります。
電話や面会で直接話す前に、どのような方針で回答するかを決めておく必要があります。

弁護士から届いた場合

弁護士が代理人として差し出した場合、相手の配偶者は弁護士に交渉を依頼しています。
以後の連絡は、相手の配偶者本人ではなく、代理人の弁護士に対して行うことになります。
交渉がまとまらなければ訴訟に移ることも想定して、対応を考える必要があります。

行政書士・司法書士の名前が書かれている場合

行政書士は、依頼を受けて内容証明郵便などの書類を作成することはできます。
しかし、紛争になっている事件について、代理人として相手方と交渉することは、弁護士法72条により認められていません。
行政書士が作成した書面であっても、交渉の相手は、差出人である相手の配偶者本人になります。

司法書士のうち、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、請求額が140万円以下の事件に限り、代理人として交渉することができます(司法書士法3条1項7号)。
請求額が140万円を超える場合は、司法書士が代理人として交渉することはできません。

書かれている内容を確認する

不倫の期間や回数など、事実関係

書面には、不倫の始まった時期、期間、回数、会っていた場所などが書かれていることがあります。
これらが事実と合っているか、どこまでが事実で、どこからが相手の推測なのかを確認します。

書面の記載から、相手がどのような証拠を持っているかを推測できる場合もあります。
ただし、書面に書かれていないからといって、相手が証拠を持っていないとは限りません。

請求額とその根拠

請求額は、請求する側が自由に決めることができるため、裁判で認められる金額より高い金額が書かれていることがあります。
請求額が妥当かどうかは、不倫の期間や回数、相手の夫婦が離婚したかどうかなどの事情によって判断されます。
請求額と、裁判で認められる金額の違いについては、以下の記事で解説しています。

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回答期限

書面には、「本書面到達後〇日以内に回答されたい」といった回答期限が書かれていることがあります。
この期限は、請求する側が一方的に定めたものであり、期限を過ぎたことで、直ちに支払義務が生じたり、金額が増えたりするわけではありません。

もっとも、期限までに何の連絡もなければ、請求する側は、話合いによる解決は難しいと判断し、訴訟の準備に入ることがあります。
期限内に結論を出せない場合でも、検討中であることや、弁護士に相談していることを伝えておく必要があります。

慰謝料以外の要求

書面には、慰謝料のほかに、探偵費用の支払、交際相手との接触禁止、誓約書への署名、勤務先の退職などが求められていることがあります。
これらの要求には、応じる義務があるものと、応じる義務がないものがあります。
扱いについては、後記の「慰謝料以外の要求が書かれていた場合」で解説します。

無視した場合・受け取りを拒否した場合

無視すると訴訟を起こされるおそれがある

内容証明郵便を無視しても、請求がなくなるわけではありません。
回答がなければ、請求する側は、慰謝料の支払を求める訴訟を起こすことを検討します。

訴訟を起こされた後も対応せず、答弁書を出さずに期日に欠席すると、相手の主張する事実を認めたものとみなされ(民事訴訟法159条3項・1項)、請求どおりの判決が出るおそれがあります。
判決が確定すれば、給与や預貯金を差し押さえられる可能性もあります。

受け取りを拒否しても、届いたものとみなされることがある

内容証明郵便の受け取りを拒否したり、不在のまま放置したりしても、請求が届いたものと扱われることがあります。

最高裁平成10年6月11日判決(平成9年(オ)第685号・民集52巻4号1034頁)は、相続の場面で、内容証明郵便が受取人の不在により配達されず、郵便局での保管期間が過ぎて差出人に戻された事案です。
最高裁は、意思表示が「到達」したといえるための考え方について、次のように述べています。

(中略)右にいう「到達」とは、意思表示を記載した書面が相手方によって直接受領され、又は了知されることを要するものではなく、これが相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りるものと解される

そのうえで、最高裁は、受取人が不在配達通知書によって弁護士から書留郵便が送られてきたことを知っており、受け取ろうと思えばさほどの労力なく受け取れた事情などから、遅くとも郵便局での保管期間が満了した時点で、内容証明郵便に書かれた意思表示が届いたと判断しました。

現在の民法は、この考え方を条文で定めています。
民法97条2項は、次のように定めています。

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

受け取りを拒否しても、請求を受けたという事実は変わらず、時効の完成も猶予されることになります。
受け取りを拒否すれば、請求する側は、話合いではなく訴訟による解決を選ぶ可能性が高くなります。

回答期限までにすべきこと

期限内に対応する意思を示す

回答期限までに方針を決められない場合でも、期限内に、請求を受け取ったこと、内容を検討していること、追って回答することを伝えておく必要があります。
この段階では、事実を認めたり、金額について約束したりする必要はありません。

手元の資料を整理し、消さない

交際相手とのメッセージや写真、交際の経緯がわかる資料は、消さずに保存しておきます。
これらは、相手の主張する事実が正しいかどうかを確認したり、既婚者と知らなかったことや、交際の経緯を示したりする資料になる場合があります。
請求を受けた後に資料を消すと、証拠を隠したと受け取られ、かえって不利になるおそれがあります。

交際相手と口裏を合わせない

内容証明郵便が届くと、交際相手(請求してきた人の夫または妻)と連絡を取り、対応を相談したくなることがあります。
しかし、事実と異なる説明をそろえるような口裏合わせは、後に発覚すると、不誠実な対応として不利に扱われるおそれがあります。
また、交際相手とは、慰謝料の負担をめぐって利害が対立する立場にあります。
交際相手が、配偶者との関係を修復するために、事実と異なる説明をする可能性もあります。

支払義務そのものを争えるか確認する

次のような事情がある場合は、減額ではなく、支払義務そのものを争える可能性があります。

  • 交際相手が既婚者であると知らず、知らなかったことに落ち度もない場合
  • 不倫が始まる前から、相手の夫婦の婚姻関係が破綻していた場合
  • 請求する側が不倫と不倫相手を知ってから3年以上経っており、時効が成立している場合
  • 肉体関係がなく、またはそれを示す証拠がない場合

既婚者と知らなかった場合については、以下の記事で解説しています。

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婚姻関係の破綻については、以下の記事で解説しています。

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回答書を送るときの注意点

回答書は証拠として残る

回答書に書いた内容は、後に訴訟になった場合、証拠として提出されることがあります。
謝罪の気持ちから、不倫の期間や回数について相手の主張をそのまま認める内容を書いてしまうと、後から事実と異なると主張することが難しくなります。

謝罪の意思を示すこと自体は、話合いを進めるうえで意味があります。
ただし、謝罪の文面と、事実関係を認める文面は分けて考え、認める範囲は事実に即して慎重に決める必要があります。

金額をその場で承諾しない

回答書や電話で、請求額を支払うと約束してしまうと、その約束を後から覆すことは困難です。
減額を求める事情がある場合は、その事情と、妥当と考える金額を示して回答することになります。
支払うことになった場合は、示談書を作成して、追加の請求を受けないようにしておく必要があります。

示談書の作り方については、以下の記事で解説しています。

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弁護士が代理人になった場合

請求を受けた側が弁護士に依頼すると、弁護士は相手方に受任通知を送ります。
以後の連絡は、弁護士を通して行うことになるため、相手の配偶者や、その代理人と直接やり取りする必要はなくなります。
自宅に書面が届くことを避けたい場合も、連絡先を弁護士の事務所にすることで、家族に知られるきっかけを減らすことができます。

慰謝料以外の要求が書かれていた場合

探偵費用(調査費用)の請求

不倫の調査のために探偵(調査会社)に支払った費用を、慰謝料とあわせて請求されることがあります。
調査費用が損害として認められるかどうか、認められる場合にどの範囲までかは、調査の必要性や金額の相当性などから個別に判断されます。
調査にかかった費用の全額を、当然に支払わなければならないわけではありません。

退職や転居の要求

職場で知り合った場合などに、勤務先を辞めることや、転居することを求められることがあります。
慰謝料を支払う義務があるとしても、退職や転居に応じる義務はありません。
交際相手との接触を避けるための取り決めが必要な場合でも、仕事上の連絡に限るなど、退職以外の方法で取り決めることが考えられます。

誓約書への署名の要求

交際相手と今後接触しないことなどを約束する誓約書に、署名するよう求められることがあります。
誓約書には、違約金や、慰謝料についての取り決めが含まれていることがあるため、内容を確認してから判断する必要があります。

誓約書の効力と注意点については、以下の記事で解説しています。

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勤務先や家族に知らせるとほのめかされている場合

書面に、「支払わなければ勤務先に知らせる」「家族に伝える」といった記載がある場合は、慎重な対応が必要です。
不倫の事実を勤務先などに伝える行為は、伝え方によっては名誉毀損やプライバシー侵害に当たる可能性があります。
また、金銭の支払を求めるにあたって、不倫を公にすると告げる行為は、要求の内容や方法によっては恐喝罪(刑法249条)に当たる可能性もあります。

勤務先や家族に知られた場合

内容証明郵便が勤務先に届いた場合

自宅の住所がわからないなどの理由で、内容証明郵便が勤務先に送られてくることがあります。
封筒や書面の内容が勤務先の人の目に触れる形で送られた場合、送り方によっては、名誉毀損やプライバシー侵害の問題が生じる可能性があります。
勤務先に届いた場合は、以後の連絡先を指定するなど、これ以上勤務先に送られないようにする対応を早めにとる必要があります。

家族に知られたくない場合

自宅に内容証明郵便が届いた場合、家族が受け取ったり、書面を目にしたりすることがあります。
家族に知られたくない場合は、連絡先を指定して、以後の書面や電話がそちらに届くようにする方法があります。

慰謝料を請求された場合の全体の流れについては、以下の記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

内容証明郵便の回答期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?

回答期限は請求する側が一方的に定めたものであり、過ぎたことで直ちに支払義務が生じるわけではありません。

ただし、訴訟の準備に入られるおそれがあるため、できるだけ早く、検討していることや弁護士に相談していることを伝える必要があります。

内容証明郵便の受け取りを拒否すれば、請求を免れますか?

受け取りを拒否しても、請求を免れることはできません。
正当な理由なく受け取りを拒否した場合は、通常届くはずだった時に届いたものとみなされ(民法97条2項)、請求する側は訴訟による解決を選ぶ可能性が高くなります。

身に覚えのない内容の内容証明郵便が届きました。どうすればよいですか?

事実と異なる内容であれば、無視せず、事実と異なる点を明確に示して回答することが大切です。
回答書は証拠として残るため、誤解を招く表現や、事実と異なる内容を認めるような表現を書かないよう注意が必要です。

相手の弁護士から電話がかかってきました。その場で答えるべきですか?

その場で事実を認めたり、金額について約束したりする必要はありません。
内容を確認したうえで書面で回答することや、弁護士に相談してから回答することを伝え、その場での回答は控えることが大切です。

内容証明郵便が勤務先に届きました。どうすればよいですか?

以後の連絡先を指定するなどして、これ以上勤務先に書面が送られないようにする対応を早めにとる必要があります。
勤務先の人の目に触れる形で送られた場合は、送り方によっては名誉毀損やプライバシー侵害の問題が生じる可能性もあります。

交際相手(既婚者)に、内容証明郵便が届いたことを相談してもよいですか?

事実と異なる説明をそろえる口裏合わせは、後に発覚すると不利に扱われるおそれがあります。
また、交際相手とは慰謝料の負担をめぐって利害が対立する立場にあるため、交際相手の意向に沿って対応を決めることは避けるべきです。

まとめ

  • 内容証明郵便は、送った文書の内容と日付を郵便局が証明するものであり、それ自体に支払を強制する力はない。
  • 内容証明郵便による請求は催告に当たり、時効の完成が6か月猶予される(民法150条1項)。
  • 差出人が本人か、弁護士か、行政書士かによって、連絡の相手や対応が変わる。行政書士は代理人として交渉することはできない。
  • 無視や受け取り拒否をしても請求はなくならず、届いたものとみなされることがある(民法97条2項、最高裁平成10年6月11日判決)。
  • 回答期限までに、事実関係、請求額、慰謝料以外の要求を確認し、少なくとも対応する意思を示しておく必要がある。
  • 回答書は証拠として残るため、認める範囲は事実に即して慎重に決め、金額をその場で承諾しない。
  • 退職や転居の要求に応じる義務はなく、探偵費用も全額を当然に支払わなければならないわけではない。

当事務所では、不倫の慰謝料を請求された方からのご相談と、慰謝料を請求したい方からのご相談の両方をお受けしています。
内容証明郵便が届いた後の対応は、差出人や書かれている内容、手元にある資料によって変わります。
内容証明郵便が届いた場合や、回答期限が迫っている場合は、当事務所にご相談ください。
回答書を送る前に、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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