浮気・不倫の誓約書は効力があるか、違約金はどこまで認められるか

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 不倫の誓約書や念書は、呼び方にかかわらず、当事者の合意として法的な効力を持ちます。配偶者に書かせる誓約書についても、令和6年の民法改正で夫婦間の契約の取消権(旧民法754条)が削除されました。
  2. 違約金を定めることはできますが、著しく高額な違約金は、公序良俗に反するとして無効とされる可能性があります。違約金は損害賠償額の予定と推定されるため、金額の決め方によっては、かえって請求できる額が限られることもあります。
  3. 不倫相手に書かせる誓約書に清算条項を入れると、後から慰謝料を請求できなくなるおそれがあります。慰謝料も含めて解決する場合は、示談書を作るのが適切です。

はじめに

配偶者の不倫が発覚したとき、再び同じことが起きないように、配偶者や不倫相手に誓約書を書かせたいと考えることがあるかと思います。
一方で、作った誓約書に本当に効力があるのか、違約金はいくらまで定められるのかといった点は、作成の段階では見落とされがちです。

誓約書は、書き方を誤ると、違約金が認められなかったり、後から慰謝料を請求できなくなったりすることがあります。
また、書かせ方によっては、署名が無効や取消しの対象になることもあります。

本稿では、不倫の誓約書・念書の法的な効力、配偶者に書かせる場合と不倫相手に書かせる場合の注意点、無効や取消しになる内容、違約金の定め方について解説します。
あわせて、誓約書への署名を求められた側が確認すべき点も取り上げます。

不倫の誓約書・念書とは

誓約書と念書の違い

誓約書は、ある事柄を守ることを約束する書面です。
念書は、後日の証拠とするために、約束した内容や確認した事実を書き残して相手に渡す書面です。

もっとも、法律上は、書面の表題によって効力が変わるわけではありません。
「誓約書」「念書」「確認書」のいずれであっても、効力を判断する際に重要なのは、書かれている内容と、作成したときの状況です。

示談書との違い

誓約書は、多くの場合、一方の当事者が「今後〇〇しない」と約束する内容を書き、相手に差し入れる形をとります。
これに対して示談書(合意書)は、慰謝料の金額や支払方法などを双方で取り決め、紛争全体を終わらせるための書面です。

差し入れる形の誓約書であっても、相手がこれを受け取り、内容を了承していれば、当事者間の合意として効力を持ちます。
そのため、誓約書と示談書の違いは、効力の有無ではなく、何を取り決めるかにあります。

誓約書と示談書のどちらを作るべきか

どちらの書面を作るべきかは、何を決めたいかによって変わります。

  • 配偶者に、再び不倫しないことを約束させたい場合:誓約書
  • 不倫相手に、まず関係を断つことを約束させ、慰謝料はあらためて請求したい場合:誓約書(慰謝料の請求を妨げない旨を明記する)
  • 不倫相手との間で、慰謝料の支払も含めて解決したい場合:示談書

慰謝料も含めて解決する場合の示談書の作り方については、以下の記事で解説しています。

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配偶者に書かせる誓約書

夫婦間の約束も効力を持つ

改正前の民法754条は、夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消すことができると定めていました。
そのため、配偶者に書かせた誓約書は、婚姻中であれば後から取り消されるおそれがありました。

この規定は、令和6年の民法改正により削除され、改正法は令和8年4月1日に施行されました。
現在は、夫婦間の約束であっても、ほかの契約と同じように効力を持ちます。
なお、施行日より前に作成された誓約書に改正前の規定が適用されるかどうかは、改正法の経過措置によって決まります。

書いても効力が認められにくい約束

配偶者に書かせる誓約書には、次のような約束が書かれることがあります。
しかし、これらは書面に書いても、そのとおりの効力が認められるとは限りません。

  • 「再び不倫したら離婚に応じる」:離婚するかどうかの意思を、事前の約束で拘束することはできません。ただし、再び不貞行為があれば、その事実は裁判上の離婚原因(民法770条1項1号)になります。
  • 「再び不倫したら親権を渡す」:親権者は、離婚の際に父母の協議で定め、協議が調わない場合は家庭裁判所が定めます(民法819条)。事前の約束どおりに決まるとは限りません。
  • 「再び不倫したら全財産を渡す」:著しく過大な約束は、公序良俗に反するとして無効とされる可能性があります。

一方で、「交際相手と一切連絡を取らない」「約束に違反した場合は違約金を支払う」といった約束は、内容が相当であれば効力を持ちます。

再び不倫したときの証拠としての意味

配偶者が不倫の事実を認めて署名した誓約書は、その時点で不貞行為があったことを示す証拠になります。
後に離婚や慰謝料が問題になったとき、過去の不倫を本人が認めていたことを示す資料として使える場合があります。
不倫の証拠として扱われるものについては、以下の記事で解説しています。

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不倫相手に書かせる誓約書

接触禁止の範囲を具体的に書く

不倫相手に書かせる誓約書の中心は、配偶者と今後接触しないことの約束です。
「接触」の範囲があいまいだと、違反があったかどうかで争いになります。
面会だけでなく、電話、メール、SNSなどの連絡も含めるのか、職場が同じで仕事上の連絡が避けられない場合はどう扱うのかを、具体的に書いておく必要があります。

慰謝料を請求するなら清算条項を入れない

注意が必要なのは、誓約書に「本件に関し、本誓約書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを確認する」といった清算条項を入れる場合です。
清算条項は、その書面で紛争をすべて終わらせることを意味します。
誓約書に清算条項を入れると、後から慰謝料を請求しようとしても、すでに解決済みであると反論されるおそれがあります。

関係を断つ約束を先に取り付け、慰謝料はあらためて請求するつもりであれば、清算条項は入れず、「本誓約書は、慰謝料の請求を妨げるものではない」旨を明記しておくことが重要です。
反対に、慰謝料も含めて解決する場合は、誓約書ではなく、清算条項を入れた示談書を作成することになります。

配偶者との関係を続ける場合の求償権

不倫相手が慰謝料を支払った場合、支払った金額のうち一定の部分について、不倫をした配偶者に負担を求めること(求償)ができる場合があります。
夫婦関係を続ける場合、求償に応じて支払われるお金は、実質的に夫婦の家計から出ていくことになります。
慰謝料について取り決める際は、求償権の扱いもあわせて決めておく必要があります。

無効・取消しになる内容

公序良俗に反する約束

誓約書は当事者の合意として効力を持ちますが、どのような内容でも有効になるわけではありません。
民法90条は、次のように定めています。

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

不倫の誓約書では、次のような約束が、公序良俗に反するとして無効とされる可能性があります。

  • 著しく高額な違約金
  • 勤務先を退職する、転居するといった、生活の基盤を奪う約束
  • 全財産を渡すといった、著しく過大な財産上の約束

特に、不倫相手に退職を約束させる条項は、職業を選ぶ自由に関わるため、効力が認められない可能性が高いと考えられます。
退職を求めること自体が、後に不当な要求として問題にされるおそれもあります。

脅して書かせた誓約書

相手を脅して誓約書に署名させた場合、その署名は強迫による意思表示として取り消される可能性があります(民法96条1項)。
たとえば、「署名しなければ会社に知らせる」「家族にばらす」と告げて署名させた場合がこれに当たり得ます。

さらに、脅迫や暴行を用いて義務のないことを行わせた場合は、強要罪(刑法223条)が問題になることもあります。
誓約書を書かせる側は、相手を長時間引き留める、大勢で取り囲む、勤務先や家族への通知をほのめかすといった方法をとらないよう注意する必要があります。

違約金の定め方

違約金は損害賠償額の予定と推定される

誓約書には、約束に違反した場合に支払う違約金を定めることができます。
違約金について、民法420条は次のように定めています。

1 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

違約金を定めておけば、違反があったときに、損害の大きさを一から証明しなくても、定めた金額を請求できるのが原則です。
一方で、違約金は損害賠償額の予定と推定されるため、実際の損害が違約金の額より大きいと主張しても、原則として違約金の額を超えて請求することは難しくなります。

たとえば、違約金を低めに定めていた場合、再度の不倫が原因で離婚に至ったとしても、請求できる額が違約金の額に限られるおそれがあります。
違約金とは別に慰謝料も請求できるようにしたい場合は、その旨を誓約書に明記しておく必要があります。

高額すぎる違約金は無効とされる可能性がある

違約金の額は当事者が自由に決めることができますが、著しく高額な違約金は、公序良俗に反するとして、相当な額を超える部分が無効とされる可能性があります。
相当な額かどうかは、約束の内容や違反行為の内容、不倫の慰謝料として裁判で認められる金額の水準などから判断されることになります。

高額な違約金を定めておけば抑止になると考えがちですが、違反があった後に違約金の有効性そのものが争われ、かえって解決が長引くことがあります。
不倫の慰謝料として裁判で認められる金額の水準については、以下の記事で解説しています。

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違反となる行為を具体的に書く

違約金を請求するには、誓約書に定めた約束に違反したことを示す必要があります。
そのため、何をすれば違反になるのかを、具体的に書いておくことが重要です。
不倫相手に書かせる誓約書の場合、たとえば次のような条項が考えられます。

  1. 乙は、甲の配偶者Aと、面会、電話、メール、SNSその他方法を問わず、一切の連絡及び接触をしないことを誓約する。ただし、業務上必要な連絡については、この限りでない。
  2. 乙が前項に違反したときは、乙は甲に対し、違約金として金〇〇万円を支払う。
  3. 本誓約書は、甲の乙に対する慰謝料の請求を妨げるものではない。

違約金を「違反1回につき〇〇万円」とする定め方もあります。
ただし、連絡のたびに違約金が発生すると合計額が大きくなり、全体として過大であるとして争われる原因になります。

公正証書にする場合

誓約書や示談書を公正証書にし、強制執行に服する旨の文言(強制執行認諾文言)を入れておけば、一定の金銭の支払については、裁判をしなくても強制執行ができます(民事執行法22条5号)。

もっとも、「約束に違反したら違約金を支払う」という内容は、違反があったことが支払の条件になっています。
このような条件付きの支払について強制執行をするには、条件が満たされたこと、つまり違反があったことを文書で証明する必要があり(民事執行法27条1項)、すぐに強制執行できるとは限りません。
公正証書は、慰謝料を分割で支払う場合など、支払額と期日が決まっている約束で特に意味を持ちます。

誓約書に違反されたら

誓約書に違反があった場合は、違約金の請求や、新たな不貞行為についての慰謝料の請求を検討することになります。
請求するには、違反があったことを示す証拠が必要です。
連絡を取り合っていることがわかるメッセージや、会っていることがわかる写真などを、改ざんを疑われない形で保存しておく必要があります。

請求の内容と時期を明確にするため、書面で請求する方法があります。

誓約書への署名を求められた側の注意点

不倫相手の配偶者から誓約書への署名を求められた場合は、その場で署名せず、内容を確認してから判断することが重要です。
一度署名した誓約書は、合意として効力を持ち、後から内容を覆すことは困難です。

特に、次の点は署名する前に確認する必要があります。

  • 事実と異なる内容(不倫の期間や回数など)が書かれていないか
  • 違約金の額が過大でないか、違反1回ごとに発生する定めになっていないか
  • 退職や転居など、応じる義務のない約束が含まれていないか
  • 慰謝料についてどのように扱われているか(清算条項があるか、別途請求される余地が残されているか)

慰謝料の金額が妥当かどうかの判断については、以下の記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

不倫の誓約書は手書きでなければ効力がありませんか?

手書きでも、パソコンで作成して印刷したものでも、効力に違いはありません。

ただし、本人が内容を了承したことを示すため、署名は本人の自筆とし、作成日を記載しておくことが重要です。

不倫相手が誓約書への署名を拒否した場合、どうすればよいですか?

誓約書への署名を強制することはできません。
署名を拒否された場合でも、不貞行為の証拠があれば慰謝料を請求することはでき、その交渉の中で接触禁止などを取り決めた示談書を作成する方法があります。

不倫相手に誓約書を書かせた後で、慰謝料を請求できますか?

誓約書に清算条項が入っていなければ、原則として慰謝料を請求できます。

清算条項が入っている場合は、すでに解決済みであると反論されるおそれがあるため、誓約書の文言を確認する必要があります。

違約金はいくらまで定めることができますか?

違約金の額に法律上の上限はありませんが、著しく高額な違約金は、公序良俗に反するとして、相当な額を超える部分が無効とされる可能性があります。
不倫の慰謝料として裁判で認められる金額の水準を踏まえて、相当な額を定めることが大切です。

肉体関係のない浮気でも、誓約書を書かせることはできますか?

当事者が合意すれば、肉体関係がない場合でも、今後連絡を取らないことなどを約束する誓約書を作ることはできます。

ただし、肉体関係がない場合は、慰謝料の請求が認められる範囲が限られるため、違約金の額などは慎重に定める必要があります。

配偶者に書かせた誓約書は、後から取り消されることはありますか?

夫婦間の契約をいつでも取り消せるとしていた旧民法754条は、令和6年の民法改正で削除され、令和8年4月1日に施行されました。
施行日以降に作成した夫婦間の誓約書は、ほかの契約と同じように効力を持ちます。

まとめ

  • 誓約書や念書は、表題にかかわらず、当事者の合意として法的な効力を持つ。
  • 夫婦間の契約の取消権(旧民法754条)は令和6年の民法改正で削除され、配偶者に書かせる誓約書もほかの契約と同じように効力を持つ。
  • 離婚や親権についての事前の約束、著しく過大な財産上の約束、退職の約束などは、そのとおりの効力が認められるとは限らない。
  • 脅して書かせた誓約書は、強迫として取り消される可能性がある。
  • 違約金は損害賠償額の予定と推定されるため、金額の決め方によっては請求できる額が限られる。著しく高額な違約金は、相当な額を超える部分が無効とされる可能性がある。
  • 不倫相手に書かせる誓約書に清算条項を入れると、後から慰謝料を請求できなくなるおそれがある。慰謝料も含めて解決する場合は示談書を作る。

当事務所では、不倫の慰謝料を請求したい方からのご相談と、慰謝料を請求された方からのご相談の両方をお受けしています。
誓約書は、書き方によって、違約金を請求できるかどうかや、後から慰謝料を請求できるかどうかが変わります。
誓約書を作成しようとしている場合や、誓約書への署名を求められている場合は、当事務所にご相談ください。
署名をする前、させる前に、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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