【この記事の結論・要約】
- 自分が実際に体験したことと、それに基づく感想を書いた口コミは、事業者にとって不都合な内容でも、それだけで違法になるものではありません。問題になるのは、事実と異なる具体的な記載や、不正・犯罪を示す記載、人格を攻撃する記載です。
- 「〜だと思う」という感想の形で書いていても、全体として特定の事実を示していると判断され、開示や損害賠償が認められた裁判例があります。
- 事業者からは、売上の減少などを理由に高額な金額を示されることがあります。しかし、請求額がそのまま認められるとは限らず、権利侵害の有無と損害額の両方を争う余地があります。
はじめに
飲食店や美容室、病院などについて口コミを書いたところ、店側から「名誉毀損だ」「営業妨害で訴える」と連絡を受けることがあります。
連絡の方法は、口コミへの返信、電話やメール、弁護士からの書面、プロバイダからの意見照会書など様々です。
どの段階の連絡なのかによって、検討すべきことや期限も変わります。
この記事では、口コミを書いた側の立場から、どのような口コミが法的に問題とされるのか、事業者からの請求にどう向き合えばよいのかを解説します。
事業者から届く連絡の種類
口コミを書いた人に届く連絡には、法的な手続ではないものから、裁判所を通じたものまであります。
まずは、届いた連絡がどれにあたるかを確認してください。
| 連絡の形 | 誰から届くか | 法的な位置づけ |
|---|---|---|
| 口コミへの返信 | 店舗の運営者(口コミサイト上の返信) | 公開の場での反論。法的な手続ではない |
| 電話・メール・SNSのメッセージ | 店舗の運営者や担当者 | 削除や謝罪の要望。法的な手続ではない |
| 弁護士名の書面(内容証明郵便など) | 事業者の代理人弁護士 | 削除、謝罪、損害賠償などの請求。裁判の外での交渉 |
| 意見照会書 | インターネット接続業者(プロバイダ)など | 発信者情報開示請求の手続の途中で、開示に同意するかを尋ねるもの |
| 訴状 | 裁判所 | 損害賠償などを求める民事訴訟 |
店舗からの返信や電話は、それ自体に法的な効力はありません。
他方で、弁護士名の書面や意見照会書、訴状には回答の期限や手続上の意味があります。
意見照会書が届いた場合と、訴状が届いた場合については、それぞれ以下の記事で解説しています。


正当な口コミと違法な口コミ
名誉毀損の判断の基本
民事上の名誉毀損は、具体的な事実を示したり、意見や論評を述べたりすることで、相手の社会的な評価を低下させた場合に問題となります(民法709条、710条)。
法人や個人事業主も、名誉毀損の被害者になります。
ただし、社会的な評価を低下させる内容であっても、公共の利害に関する事柄について、公益を図る目的で書かれたものであれば、責任を負わない場合があります。
事実を示した場合は、その重要な部分が真実であるか、真実と信じたことに相当の理由があることが求められます。
意見や論評については、最高裁平成9年9月9日判決(民集51巻8号3804頁)が、前提とした事実の重要な部分が真実であること等に加えて、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないことを、責任を負わない条件として示しています。
名誉毀損の要件については、以下の記事で詳しく解説しています。

実際の体験に基づく感想や評価
事業者が一般の利用者に向けて提供している商品やサービスの評価は、利用を考えている人が判断の材料にする情報です。
店舗にとって不都合な評価であっても、口コミとして書くことがすべて違法になるわけではありません。
例えば、次のような口コミは、自分が体験した事実と、それに基づく感想を書いたものです。
- 予約の時間から30分以上待たされた
- 注文した料理が冷めていた
- 説明が少なく、自分には合わないと感じた
- 価格に見合った内容ではないと思った
こうした記載は、内容が事実のとおりであり、表現が感想や評価の範囲にとどまっていれば、直ちに違法になるものではありません。
問題になりやすい記載
一方で、次のような記載は、名誉毀損などとして問題にされやすい内容です。
| 記載の種類 | 例 |
|---|---|
| 事実と異なる具体的な記載 | 実際には受けていない対応を書く、金額や日時を事実と違うように書く |
| 不正や犯罪を示す記載 | 「詐欺」「偽物を売っている」「産地を偽装している」 |
| 裏付けのない記載 | 「保健所の指導を受けたらしい」「従業員に給料を払っていない」 |
| 人格を攻撃する記載 | 店長や従業員の人格をおとしめる表現 |
| うわさ・伝聞の形をとった記載 | 「知人から聞いた話では」「〜という噂がある」 |
うわさや伝聞の形で書いた場合でも、責任を免れるとは限りません。
前述の最高裁平成9年9月9日判決は、伝聞や推論の形で間接的に事実を主張するものも、事実を示すものにあたる場合があるとしています。
感想の形で書いても事実の摘示とされる場合
「〜だと思う」「〜としか思えない」と、感想の形で書いたから大丈夫というわけではありません。
東京地裁令和5年10月16日判決は、歯科診療所についてGoogleマップに投稿された口コミが問題となった事案です。
口コミには「普通に医療ミスだと思う」「ぼったくりとしか思えない」といった表現がありましたが、判決は、投稿全体を見れば、診療所の医療上の措置や対応について特定の事実を示すものであると判断し、発信者情報の開示を認めました。
口コミが事実を示したものか、意見や感想を述べたものかは、個々の言葉だけでなく、一般の読者が普通に読んだときに投稿全体からどのような印象を受けるかで判断されます。
口コミについて責任が認められた裁判例
法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」には、口コミやそれに近い投稿について名誉権の侵害が認められた裁判例が掲載されています。
| 判決 | 媒体と投稿者 | 投稿の内容(一部) | 請求額 | 認容額 |
|---|---|---|---|---|
| 東京地裁令和4年10月31日判決 | 地図サイトのレビュー。投稿者は第三者 | 「人を貶めるようなヤ○ザの様な人格の店長です」「要注意」など | 100万円 | 10万円 |
| 東京地裁令和5年2月10日判決 | 地図サイトのレビュー。投稿者は取引のあった人物 | サービスの内容と料金が見合わない、威圧的な要求を受けたという趣旨の記載など | 110万円 | 10万円 |
| 東京地裁令和5年3月2日判決 | 動画(SNS)。投稿者は商品の購入者 | 購入したアクセサリーが偽物である、初心者を欺いているといった記載など(6回) | 400万円 | 30万円 |
※請求額と認容額は、報告書の別表で慰謝料として記載された金額です。
いずれも原告は事業を営む法人等です。
いずれの事案も、口コミを書いた側に責任が認められています。
他方で、認められた金額は請求額を大きく下回っています。
星だけの評価は問題になるか
文章を書かずに星1つだけを付けた場合、どのような事実を示したのかが読み取れないため、名誉毀損の要件である事実の摘示にあたると判断されることは考えにくいところです。
ただし、星の評価に文章が付いている場合は、文章とあわせて全体の内容が判断されます。
また、一人で複数のアカウントを使って低い評価を繰り返し付けるような行為は、名誉毀損とは別に、業務妨害として問題とされる可能性があります。
業務妨害罪や信用毀損罪については、以下の記事で解説しています。

事業者からの請求の特徴
法人も慰謝料にあたる損害を請求できる
法人には精神的な苦痛はありませんが、最高裁昭和39年1月28日判決(民集18巻1号136頁)は、法人の名誉が侵害された場合に、金銭で評価できる無形の損害について民法710条により賠償を求めることができるとしています。
そのため、事業者からの請求でも、「慰謝料」や「無形損害」として金額が示されることがあります。
売上の減少を理由に高額な金額が示されることがある
口コミをめぐる事業者からの請求では、慰謝料に加えて、売上の減少、予約のキャンセル、対応にかかった人件費、投稿者を特定するためにかかった費用などが上乗せされることがあります。
その結果、数百万円の支払いを求められることもあります。
しかし、裁判で認められている金額は、請求額とは差があります。
前述の法務省の報告書で、主にインターネット上の権利侵害を扱った裁判例のうち、被害者が法人・団体(報道機関を除く)である16件の慰謝料の額は、平均値39.1万円、中央値30.0万円、最大値100万円でした。
一方で、報告書は、被害者が法人である場合には事業への影響やそのおそれを考慮したとみられる裁判例が目立つとも指摘しています。
例えば、店舗や取引先に投稿を見た人からの問い合わせがあり、営業に一定の影響が及んだと推認した例があります(前述の東京地裁令和5年3月2日判決)。
売上の減少を損害として認めてもらうのは容易ではない
売上は、季節、景気、近隣の競合店、店舗側の事情など、様々な要因で増減します。
口コミによって売上が減ったと主張するには、その口コミが原因で売上が減ったこと(因果関係)と、その金額を、事業者の側で示す必要があります。
この点について、東京地裁令和4年12月7日判決は、次のように述べています(前述の法務省の報告書の脚注による)。
慰謝料の額は、原告(法人)が被った無形損害を金銭的に評価するほか、財産的損害の額が確定できない場合にそのような事情があることを考慮して算定することができるが(いわゆる慰謝料の補完的機能)、その額を確定することができる財産的損害を直接考慮することまではでき(ない)
東京地裁令和4年12月7日判決(法務省民事局「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」脚注16より)
金額を確定できる財産的な損害は、慰謝料とは別に主張して立証する必要があります。
売上の減少を損害として請求されている場合は、その根拠が示されているかを確認することが重要です。
請求額を争う視点
事業者から請求を受けた場合、請求の内容をそのまま受け入れる前に、次の点を検討します。
| 検討する点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 権利侵害にあたるか | 記載が事実か、感想や評価の範囲にとどまっているか |
| 記載が真実か | 実際の体験を書いたものであれば、来店や利用の事実、やり取りの内容を示せるか |
| 損害との結び付き | 売上の減少が口コミによるものといえるか、その根拠は示されているか |
| 投稿の影響の大きさ | 口コミの閲覧数や掲載されていた期間、口コミ全体の件数の中での位置づけ |
| 投稿後の事情 | 削除したか、謝罪したか |
| 調査費用 | 投稿者の特定にかかった費用の請求が妥当か |
記載が真実であることを示すには、来店や利用の事実を裏付ける資料が必要になります。
レシートや領収書、予約確認のメール、店舗とのやり取りの記録、当時撮影した写真などは、手元に残しておいてください。
投稿者を特定するためにかかった調査費用について、前述の法務省の報告書では、請求があった35件のうち、全部が認められたものが28.6%、一部が認められたものが60.0%でした。
請求された全額が当然に認められるわけではありません。
慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。

「削除しなければ訴える」と言われた場合
店舗から口コミの削除を求められた場合、削除は自分で行うことができます。
削除すれば、それ以上掲載が続くことによる損害の拡大は止まります。
ただし、削除したからといって、それまでの掲載による責任がなくなるわけではありません。
削除した後に、損害賠償を請求されることもあります。
削除する前に、自分が書いた口コミの全文、投稿日、表示されていた状態を、スクリーンショットなどで保存しておいてください。
後に請求を受けた場合、どのような表現だったのかを正確に確認できないと、反論ができなくなります。
削除の要求に加えて、次のようなことを求められる場合もあります。
- 謝罪文の提出や口コミサイトへの掲載
- 金銭の支払い
- 今後その店舗についての口コミを書かない旨の誓約
- 念書や合意書への署名
これらは、削除とは別に、応じるべきかどうかを個別に検討する必要があります。
特に、金額や条件が書かれた書面に署名すると、後でその内容を争うことが難しくなります。
口コミへの返信で反論された場合も、返信欄などで言い返すことは控えてください。
新たな投稿の内容によっては、それが別の問題になります。
店が投稿者を知っている場合
口コミの内容や投稿の時期から、予約の記録や会員情報と照らし合わせて、店舗が投稿者に直接連絡してくることがあります。
電話や対面でのやり取りで注意すること
店舗からの連絡に応じる法的な義務はありません。
ただし、店舗の推測が当たっている場合、連絡を無視しても、弁護士名の書面や法的な手続に進むことがあります。
電話や対面で、その場で事実関係を認めたり、謝罪文や念書に署名したりすることは避けてください。
そのときのやり取りや書面は、後の交渉や裁判で証拠として扱われます。
他方で、事実と異なる回答をすると、後に投稿者であることが明らかになった場合に、交渉や裁判で不利に扱われるおそれがあります。
回答する前に、弁護士に相談することをお勧めします。
自分が書いていない口コミについて連絡を受けた場合
店舗の推測が誤っていて、自分が書いていない口コミについて連絡を受けることもあります。
その場合は、自分が書いたものではない旨を伝えれば足ります。
顧客情報の利用について
個人情報保護法は、事業者が、本人の同意を得ずに、あらかじめ特定した利用目的の範囲を超えて個人情報を取り扱うことを原則として禁止しています(同法18条1項)。
予約のために取得した連絡先を、口コミの投稿者に連絡するために使うことが、この規制との関係で許されるかは問題となりえます。
もっとも、同条3項には例外も定められており、個別の事情によって判断が分かれると考えられます。
従業員の名前を書いていた場合
口コミに店長や従業員の名前を書き、その人について否定的な内容を書いていた場合は、店舗を運営する事業者だけでなく、名前を書かれた従業員本人からも請求を受ける可能性があります。
従業員は、個人として名誉権や名誉感情の侵害を主張することができます。
事業者からの請求と従業員からの請求は、それぞれ別に検討する必要があります。
口コミに従業員の名前を書かれた側の対応については、以下の記事で解説しています。

刑事事件になる可能性
口コミの内容によっては、民事の請求とは別に、名誉毀損罪(刑法230条1項)、侮辱罪(同法231条)、信用毀損罪・業務妨害罪(同法233条)として、事業者から刑事告訴を受けることもあります。
警察から連絡が来た場合については、以下の記事で解説しています。

書面が届いた段階ごとの対応
事業者からの請求が法的な手続に進んだ場合、段階ごとに検討すべきことが異なります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 意見照会書が届いた | 開示に同意するかどうかを回答する。期限内の回答が必要 |
| 開示された後に請求を受けた | 慰謝料や調査費用の請求に対して、金額や条件を交渉する |
| 訴状が届いた | 答弁書を期限までに提出し、裁判で争う点を整理する |
開示請求をされた側の手続の全体の流れについては、以下の記事で解説しています。

開示された後に請求を受けた場合の対応については、以下の記事で解説しています。

弁護士に依頼する場合にできること
口コミについて事業者から請求を受けた場合、弁護士に依頼すると、次のような対応が可能です。
- 口コミのどの部分が問題とされうるか、責任を負う可能性がどの程度あるかの見通しを立てる
- 請求額の根拠を確認し、減額や支払い方法について交渉する
- 事業者との連絡の窓口を弁護士にし、本人が店舗と直接やり取りしなくて済むようにする
- 示談書の内容を確認し、清算条項や刑事告訴をしない旨の条項などを検討する
- 意見照会書への回答や、訴訟になった場合の対応を行う
口コミを書いた側には、事業者に比べて情報が少なく、示された金額が妥当なのか判断することが難しいという事情があります。
請求に応じる前に、内容を確認することが大切です。
よくある質問(FAQ)
- 「まずい」「二度と行かない」と書いただけでも訴えられますか
-
自分の体験に基づく感想や評価にとどまる記載であれば、それだけで違法になるものではありません。
ただし、ほかの記載とあわせて、事実と異なる内容や不正を示す内容が含まれている場合は、全体として判断されます。
- 口コミを削除すれば、請求されなくなりますか
-
削除すれば掲載による損害の拡大は止まりますが、それまでの掲載について責任がなくなるわけではありません。
削除する前に、口コミの全文や投稿日を保存しておいてください。 - 店から電話があり、口コミを書いたのはあなたかと聞かれました。答える必要はありますか
-
店舗からの問い合わせに答える法的な義務はありません。
ただし、事実と異なる回答をすると、後で不利に扱われるおそれがあります。
その場で認めたり書面に署名したりせず、弁護士に相談してから対応を決めることをお勧めします。 - 営業妨害だとして数百万円を請求されました。支払わなければなりませんか
-
請求額がそのまま認められるとは限りません。
売上の減少を損害とするには、事業者の側で口コミとの因果関係と金額を示す必要があります。
法務省の報告書でも、法人が被害者である裁判例で認められた慰謝料の額は、請求額を大きく下回るものがみられます。 - 星1つの評価を付けただけで責任を問われますか
-
文章のない星の評価だけでは、どのような事実を示したのかが読み取れないため、名誉毀損と判断されることは考えにくいところです。
- 実際の体験を書いたのに名誉毀損だと言われました。どうすればよいですか
-
記載が事実であれば、そのことを示すことで責任を争うことができます。
レシートや予約確認のメール、当時の写真など、来店や利用の事実を裏付ける資料を残しておいてください。
表現が感想の範囲にとどまっているかも、あわせて検討が必要です。
まとめ
- 実際の体験に基づく感想や評価は、それだけで違法になるものではない
- 事実と異なる具体的な記載、不正や犯罪を示す記載、人格を攻撃する記載は問題とされやすい
- 感想の形で書いても、全体として特定の事実を示すと判断されることがある
- 売上の減少を理由とする高額な請求でも、因果関係と金額は事業者の側が示す必要がある
- 削除しても過去の掲載についての責任は残るため、削除の前に口コミの全文を保存しておく
- 店舗とのやり取りで、その場で認めたり書面に署名したりしない
口コミをめぐる請求では、口コミのどの部分が問題になるのか、請求額に根拠があるのかを分けて検討することで、対応の方針が見えてきます。
当事務所では、口コミを書いたことについて事業者から請求を受けた方からのご相談にも対応しています。
店舗や代理人弁護士から連絡を受けた方は、当事務所にご相談ください。
意見照会書や訴状には回答の期限があります。
お早めにご相談ください。
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