名誉毀損で訴えられたら|訴状が届いた後の対応と裁判の流れ

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 裁判所から訴状が届いたら、答弁書の提出期限と第1回期日を最初に確認してください。答弁書を出さずに欠席すると、相手の主張を認めたものとみなされ、請求どおりの判決が出るおそれがあります。
  2. 訴訟では、投稿が権利侵害にあたるか、請求された金額が妥当か、そもそも自分の投稿かといった点を争うことができます。請求額がそのまま認められるとは限りません。
  3. 訴訟の途中で和解により終わることもあります。判決が確定した後に支払わなければ、給与や預金の差押えに進む可能性があります。

はじめに

インターネット上の投稿について、ある日突然、裁判所から書類が届くことがあります。

裁判の経験がない方にとって、訴状に書かれた内容や、いつまでに何をすればよいのかを読み取ることは容易ではありません。
しかし、訴訟には期限があり、対応しないまま期日を迎えると、取り返しのつかない結果になることがあります。

この記事では、名誉毀損などを理由に訴えられた場合に、訴状が届いてから判決やその後までどのように進むのか、各段階で何をすべきかを解説します。

「訴えられた」には二つの意味がある

民事の訴え刑事告訴
何を求めるものか損害賠償(お金の支払い)や投稿の削除処罰
どこから連絡が来るか裁判所から訴状が届く警察や検察庁から連絡が来る
相手方被害者(原告)国(検察官)
結果支払いを命じる判決、和解不起訴、罰金、拘禁刑など

この記事で扱うのは、裁判所から訴状が届いた場合、つまり民事の訴えです。
民事と刑事は別の手続であり、両方が並行して進むこともあります。

警察から連絡が来た場合については、以下の記事で解説しています。

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訴状はどのように届くか

特別送達という郵便で届く

訴状は、裁判所から「特別送達」と表示された封筒で、郵便局員から直接手渡されます。
普通郵便のように郵便受けに入れられることはありません。

不在の場合は不在票が入り、一定の期間、郵便局で保管されます。

同封される書類

書類内容
訴状原告が何を請求し、その理由は何かを記載したもの
証拠の写し原告が提出した証拠。「甲第1号証」などの番号が付いている
口頭弁論期日呼出状第1回の期日の日時と法廷
答弁書催告状答弁書の提出を求める書面。提出期限が記載されている
答弁書の書式同封されていることがある

受け取らなくても手続は進む

受け取りを拒んだり、保管期間を過ぎて返送されたりしても、それで訴訟が止まるわけではありません。

就業場所への送達や、書留郵便に付する送達(民事訴訟法107条)など、別の方法で送達が行われ、手続が進む場合があります。
書類の内容を知らないまま期日が過ぎれば、反論の機会を失うことになります。

まず確認すること

確認する項目

  • 裁判所の名前と事件番号(「令和○年(ワ)第○号」など)
  • 第1回口頭弁論期日の日時
  • 答弁書の提出期限
  • 請求の趣旨(いくらの支払いを求められているか、削除や謝罪広告も求められているか)
  • どの投稿が対象とされているか
  • 原告に代理人の弁護士が就いているか

請求の趣旨には、金銭の支払いのほかに、投稿の削除や謝罪広告の掲載が含まれていることがあります。
謝罪広告については、以下の記事で解説しています。

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裁判所を装った書面に注意する

裁判所や公的機関を装い、金銭の支払いを求める書面が送られてくることがあります。

本物の訴状は、特別送達で手渡されます。
はがきや普通郵便で届いた書面、記載された電話番号への連絡や指定口座への振込みを求める書面は、疑ってかかる必要があります。

不安があれば、書面に記載された番号ではなく、自分で調べた裁判所の代表番号に問い合わせ、事件番号を伝えて確認してください。

答弁書を出さずに欠席した場合

この点が最も重要です。

相手の主張を認めたものとみなされる

民事訴訟法159条1項は、次のとおり定めています。

「当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。」

同条3項は、この規定を当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合にも準用しています。

答弁書を出さず、期日にも出頭しなければ、訴状に書かれた事実を認めたものとして扱われます。
その結果、原告の請求どおりの判決が出るおそれがあります。

請求額が過大でもそのまま認められ得る

法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」によれば、インターネット上の権利侵害について認められた慰謝料の中央値は30.0万円でした。
他方、訴状では、それを大きく上回る金額が請求されることがあります。

争えば減額される可能性のある金額であっても、欠席すれば、その金額のまま判決が出ることがあります。

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判決が確定すると差押えに進み得る

判決が確定した後に支払わなければ、原告は強制執行を申し立てることができます。
給与や預金が差し押さえられる可能性があり、給与の場合は勤務先に裁判所からの通知が届きます。

答弁書の出し方

第1回期日は答弁書を出せば欠席できる

第1回の期日は、被告の都合を聞かずに指定されます。
そのため、都合がつかないこともあります。

民事訴訟法158条により、最初の期日に出頭しなくても、提出した答弁書に記載した事項は陳述したものとみなされます。
答弁書を期限までに提出しておけば、第1回の期日に欠席しても、欠席したことだけで不利な判決が出ることはありません。

ただし、この扱いは原則として最初の期日に限られます。
地方裁判所では、2回目以降の期日に欠席を続ければ、主張していないものとして扱われるおそれがあります。

答弁書に書くこと

項目内容
請求の趣旨に対する答弁「原告の請求を棄却する」など、請求を認めるか争うか
請求の原因に対する認否訴状に書かれた事実の一つひとつについて、認める・否認する・知らない(不知)を明らかにする
被告の主張争う理由(権利侵害にあたらない、損害額が過大である等)

期限までに詳しい反論を準備できない場合は、請求の棄却を求め、詳しい主張は追って行う旨を記載した答弁書を、まず提出する方法があります。
何も出さないことと比べて、その後の手続に大きな違いが生じます。

認否で注意すること

認めた事実は、後から撤回することが難しくなります。

投稿したこと自体は認めるとしても、その投稿が誰のことを指しているか、どのような意味に読めるか、相手の社会的評価を低下させたかといった点は、別に争う余地があります。
訴状の記載をまとめて認めるのではなく、事実ごとに検討する必要があります。

どの裁判所で行われるか

簡易裁判所と地方裁判所

請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超えれば地方裁判所が担当します(裁判所法33条1項1号)。

簡易裁判所では、続行期日にも答弁書や準備書面の陳述が擬制される扱いがあるなど(民事訴訟法277条)、手続が簡略化されています。

遠方の裁判所で訴えられた場合

損害賠償の訴えは、被告の住所地のほか、不法行為があった地や、金銭を支払うべき場所(原則として原告の住所地)を管轄する裁判所にも提起できます(民事訴訟法4条、5条1号・9号)。
そのため、原告の住所地の裁判所で訴えられることがあります。

当事者間の衡平を図るため必要があるときは、他の裁判所への移送を申し立てることができます(民事訴訟法17条)。
もっとも、申立てが認められるとは限りません。

出頭せずに手続を進められる場合

裁判所が相当と認めるときは、ウェブ会議や電話会議の方法によって期日や手続に参加できる制度があります。
遠方の裁判所であっても、毎回出頭しなければならないとは限りません。

訴訟で争う点

訴えられたからといって、請求がそのまま認められるわけではありません。
主な争点は次のとおりです。

権利侵害にあたるか

争点主張の例
同定可能性投稿を読んだ人が、原告のことだと分からない
社会的評価の低下投稿の内容が、原告の社会的評価を低下させるものではない
意見・論評事実を示したものではなく、意見や論評にとどまる
真実性・相当性公共の利害に関する事実で、公益目的があり、真実である、または真実と信じる相当の理由があった

それぞれの判断の枠組みは、以下の記事で解説しています。

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損害額が妥当か

権利侵害が認められる場合でも、請求された金額がそのまま認められるとは限りません。

  • 慰謝料の額が、同種の事案と比べて過大でないか
  • 投稿者の特定に要した費用として請求されている額に、対象外の投稿に関する費用が含まれていないか
  • 投稿の回数や閲覧された範囲が、どの程度であったか
  • 投稿を削除した、謝罪したなどの事後の対応があったか

前掲の法務省の調査報告書では、投稿後に謝罪をしたことを減額の方向で考慮した裁判例と、謝罪をしていないことを増額の方向で考慮した裁判例が紹介されています。

自分の投稿ではない場合

発信者情報開示請求で開示されるのは、回線の契約者の情報です。
家族が投稿していた場合など、契約者と投稿者が異なることがあります。

この場合、契約者であるというだけで賠償責任を負うわけではありません。
回線を使える人の範囲や投稿された時間帯の状況など、具体的な事情を示して争うことになります。

反論のための資料

争点ごとに、次のような資料を準備することになります。

  • 対象とされた投稿の全文と、その前後のやり取り
  • 投稿がどの範囲の人に見られる状態だったか(フォロワー数、公開範囲、閲覧数など)
  • 投稿を削除した日時や、相手に謝罪した記録
  • 投稿の内容が事実であることを示す資料
  • 相手から受けていた書き込みがあれば、その記録

投稿の前後のやり取りは、投稿がどのような意味で書かれたかを示すうえで重要です。
手元に記録が残っていない場合でも、相手が提出した証拠の中に含まれていることがあります。

相手からも中傷されていた場合

言い合いの中で書き込んだ場合

相手から先に攻撃的な書き込みをされ、それに応じる形で投稿した場合には、その経緯が、違法性の判断や慰謝料の額を判断する際に考慮されることがあります。

ただし、相手が先に書き込んだからといって、自分の投稿の責任がなくなるとは限りません。
どのようなやり取りがあったかを、時系列で示す資料が必要になります。

反訴を起こす

相手の書き込みが自分に対する権利侵害にあたる場合には、同じ訴訟の中で、相手に損害賠償を求める反訴を起こすことができます(民事訴訟法146条)。

もっとも、相手の書き込みについて自分が請求するには、その書き込みが権利侵害にあたることを、こちらが主張し立証する必要があります。
反訴を起こすかどうかは、相手の書き込みの内容と、保存している記録を踏まえて判断することになります。

第1回期日の後の進み方

書面による主張と反論

第1回の期日の後は、双方が準備書面という書面で主張と反論を重ね、証拠を提出していきます。
法廷で口頭のやり取りが長く続くのではなく、提出した書面の内容を確認する形で期日が進みます。

期日と期日の間に、次回までに提出する書面の期限が定められます。
この期限を守らなければ、主張の機会を失うことがあります。

争点を整理する手続

争点が多い事件では、法廷ではなく別の部屋や、ウェブ会議の方法で、争点を整理するための手続が行われることがあります。
この段階で、裁判所から和解の可能性について打診されることもあります。

本人尋問

争点が整理された後、必要があれば、当事者本人や証人に対する尋問が行われます。
投稿した経緯や意図、投稿の意味について、法廷で質問を受けることになります。

尋問の期日は、本人が出頭することが前提になります。
尋問の後に判決が言い渡されることもあれば、その前後に和解が成立することもあります。

和解で終わる場合

訴訟上の和解

訴訟の途中で、裁判所から和解を勧められることがあります。
和解が成立すれば、判決を待たずに訴訟は終わります。

和解の内容を記載した和解調書は、確定判決と同じ効力を持ちます(民事訴訟法267条)。
和解で約束した支払いをしなければ、判決の場合と同じく強制執行を受ける可能性があります。

和解に入れる内容

  • 支払う金額と支払方法(分割払いを含む)
  • 対象となった投稿の削除
  • 今後同様の投稿をしないこと
  • 和解の内容を第三者に口外しないこと
  • この件について、和解で定めたもの以外に債権債務がないことの確認(清算条項)

清算条項がなければ、後日、同じ件について別の請求を受ける余地が残ります。

刑事告訴がされている場合

民事の訴訟と並行して、刑事告訴がされていることがあります。
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、告訴が取り下げられれば起訴されません。

民事の和解で金銭を支払っても、告訴の取扱いについて合意していなければ、刑事の手続は続きます。
和解の内容を決める際には、刑事の手続についても併せて検討する必要があります。

判決とその後

控訴の期限

判決に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴することができます(民事訴訟法285条)。
この期間を過ぎると、判決は確定します。

支払わなかった場合

判決が確定した後、原告は強制執行を申し立てることができます。

給与が差し押さえられた場合、原則として手取り額の4分の1までが差押えの対象になります(民事執行法152条1項)。
預金口座が差し押さえられることもあります。

一括で支払えない場合は、判決の後であっても、原告と分割払いについて交渉する余地があります。

訴訟費用

訴訟費用は、原則として敗訴した側が負担します(民事訴訟法61条)。
ここでいう訴訟費用は、訴状に貼る印紙代や郵便切手代などであり、相手が依頼した弁護士の費用全額を負担するわけではありません。

もっとも、名誉毀損などの不法行為に基づく請求では、弁護士費用の一部が損害として認められることがあります。

期間の目安

第1回の期日の後は、おおむね1か月から2か月に1回の間隔で期日が開かれます。

和解で終わる場合は数か月で終わることもありますが、判決まで進めば1年程度、あるいはそれ以上かかることがあります。

訴えられる前の段階

訴状が届く前に、意見照会書や請求書が届いていたはずです。
手続全体の流れは、以下の記事で解説しています。

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請求書が届いた段階での対応については、以下の記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

訴状を無視するとどうなりますか。

答弁書を出さずに期日にも出頭しなければ、訴状に書かれた事実を認めたものとみなされ、原告の請求どおりの判決が出るおそれがあります。
判決が確定した後に支払わなければ、給与や預金の差押えに進む可能性があります。

第1回の期日に行けません。

答弁書を期限までに提出しておけば、第1回の期日に欠席しても、答弁書に記載した事項は陳述したものとみなされます。
詳しい反論が間に合わない場合は、請求の棄却を求め、詳しい主張は追って行う旨の答弁書をまず提出する方法があります。

請求額が高すぎます。全額払わなければなりませんか。

請求された金額がそのまま認められるとは限りません。
慰謝料の額が同種の事案と比べて過大でないか、特定に要した費用に対象外の投稿の分が含まれていないかなどを争うことができます。

ただし、欠席すれば請求どおりの判決が出るおそれがあります。

遠方の裁判所で訴えられました。毎回行かなければなりませんか。

裁判所が相当と認めるときは、ウェブ会議や電話会議の方法で期日や手続に参加できる制度があります。
また、当事者間の衡平を図るため必要があるときは、他の裁判所への移送を申し立てることもできます。

相手も自分を中傷していました。

相手の書き込みに応じる形で投稿した経緯は、違法性や慰謝料の額の判断で考慮されることがあります。
また、相手の書き込みが権利侵害にあたる場合は、同じ訴訟の中で反訴を起こすこともできます。

和解した後に刑事事件になることはありますか。

民事の和解で金銭を支払っても、刑事告訴の取扱いについて合意していなければ、刑事の手続は続きます。
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であるため、告訴が取り下げられれば起訴されません。

まとめ

この記事の要点は次のとおりです。

  • 訴状が届いたら、答弁書の提出期限と第1回期日を最初に確認する
  • 答弁書を出さずに欠席すれば、請求どおりの判決が出るおそれがある
  • 答弁書を出しておけば、第1回の期日は欠席しても陳述したものとみなされる
  • 権利侵害にあたるか、損害額が妥当か、自分の投稿かを争うことができる
  • 和解調書は確定判決と同じ効力を持ち、清算条項や刑事告訴の取扱いを含めて検討する
  • 判決が確定した後に支払わなければ、給与や預金の差押えに進む可能性がある

訴訟では、最初の答弁書の内容がその後の進み方に影響します。
認めるべき点と争うべき点を整理したうえで、期限内に対応することが求められます。

当事務所では、インターネット上の投稿について訴えられた方からのご相談にも対応しています。
訴状が届いた方は、当事務所にご相談ください。

答弁書には提出期限があります。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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