【この記事の結論・要約】
- 内容証明郵便は、どのような文書を送ったかを郵便局が証明するものです。届いたからといって、書かれた請求が正しいと認められたことにはなりませんし、支払う義務が直ちに生じるわけでもありません。
- 受け取らずに返送させても、手続を止めることはできません。受け取らなかった場合でも、書面が届いたものと扱われることがあります。
- 回答書は、後の交渉や裁判で証拠になります。差出人が誰か、何を求められているかを確認したうえで、認める点と争う点を整理してから回答することが大切です。
はじめに
インターネット上の投稿について、相手方や相手方の弁護士から、内容証明郵便が届くことがあります。
「名誉毀損にあたる」「期限までに回答がなければ法的措置をとる」と書かれていれば、どう対応すればよいか迷うのは当然です。
内容証明郵便は、裁判所からの書類とは違い、それ自体に強制力はありません。
しかし、対応を誤ると、訴訟や刑事告訴に進んだり、不利な内容の合意をしてしまったりすることがあります。
この記事では、投稿について名誉毀損などを理由とする内容証明郵便が届いた方に向けて、書面の意味、受け取らない場合や無視した場合の扱い、回答書を出す際の考え方を解説します。
内容証明郵便とは
郵便局が証明するのは「文書の内容」
内容証明郵便について、郵便法48条1項は次のように定めています。
内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。
郵便法48条1項
ここでいう「会社」は日本郵便株式会社です。
内容証明郵便には配達証明(郵便法47条)を付けることができ、配達証明が付いていれば、いつ相手に届いたかも証明できます。
つまり、内容証明郵便によって証明されるのは「誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったか」であり、文書に書かれた請求が正しいかどうかではありません。
届いただけで支払う義務が生じるわけではない
内容証明郵便で損害賠償を求められても、その金額を支払う義務が直ちに生じるわけではありません。
支払う義務があるかどうか、いくら支払うべきかは、最終的には裁判で判断されます。
他方で、内容証明郵便を送ってくる相手方は、交渉で解決できなければ訴訟や刑事告訴に進むことを考えている場合があります。
強制力がないからといって、軽く考えてよい書面ではありません。
届いたときに確認すること
内容証明郵便が届いたら、まず次の点を確認してください。
| 確認する項目 | 確認の視点 |
|---|---|
| 差出人 | 本人か、弁護士か、それ以外の者か |
| 対象とされている投稿 | どの投稿か。投稿日時やURL、投稿の文言が特定されているか |
| 求められていること | 削除、謝罪、損害賠償、今後投稿しない旨の誓約など |
| 法的な根拠 | 名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、業務妨害など、何を理由としているか |
| 回答の期限 | いつまでに、どの方法で回答を求めているか |
| 期限後の予告 | 訴訟、刑事告訴、発信者情報開示請求など、何をすると書かれているか |
書面に書かれた投稿が本当に自分のものか、書面の引用が正確かも確認が必要です。
自分の投稿であっても、書面では一部だけが切り取られていたり、前後の文脈が省かれていたりすることがあります。
請求されている金額の内訳や、金額が高く設定されやすい理由については、以下の記事で解説しています。

差出人によって変わる点
弁護士が代理人として送ってきた場合
書面に「〇〇の代理人弁護士」と書かれている場合、相手方は弁護士に交渉を依頼しています。
この場合、以後の連絡は代理人の弁護士宛てに行うことになり、相手方本人に直接連絡することは避けるべきです。
弁護士が代理人についているということは、交渉で解決しなければ訴訟に進むことも視野に入れていると考えておく必要があります。
相手方本人が送ってきた場合
本人の名義で送られてきた場合、回答は本人宛てに行います。
本人とのやり取りでは、感情的な応酬になりやすく、新たなやり取りの内容が別の問題を生むこともあります。
回答の内容は、書面で慎重に検討してください。
行政書士の名義で送られてきた場合
行政書士は、依頼を受けて内容証明郵便などの書面を作成することができます。
他方で、行政書士が相手方の代理人として示談交渉を行うことは、弁護士法72条との関係で認められていません。
行政書士の名義で書面が届いた場合でも、交渉の相手方は差出人である本人です。
回答や交渉は、本人を相手に行うことになります。
差出人が弁護士かどうか確認したい場合
弁護士を名乗る書面であっても、弁護士の名前を使った架空の請求である可能性もあります。
日本弁護士連合会のウェブサイトには弁護士を検索できるページがあり、書面に書かれた弁護士の登録の有無や所属事務所を確認することができます。
書面に書かれた電話番号や振込先に連絡する前に、登録されている事務所の連絡先と一致するかを確認してください。
受け取らない・無視するとどうなるか
受け取らなくても届いたものとされることがある
内容証明郵便は、受取人が不在であれば不在配達通知書が投函され、一定の保管期間内に受け取られなければ差出人に返送されます。
受取を拒否することもできます。
しかし、受け取らなかったからといって、書面が届かなかったことになるとは限りません。
民法97条1項は、意思表示は相手方に到達した時から効力を生じるとし、同条2項は次のように定めています。
相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
民法97条2項
この規定が設けられる前の判例ですが、最高裁平成10年6月11日判決(民集52巻4号1034頁)は、内容証明郵便が受け取られずに保管期間が過ぎて差出人に返送された事案で、次の事情を挙げて、遅くとも保管期間が満了した時点で受取人に到達したと判断しました。
- 受取人が、不在配達通知書の記載などから差出人を知り、郵便物の内容を十分に推測できたこと
- 受取人に受け取る意思があれば、受取方法を指定するなどして、さしたる労力や困難を伴わずに受け取ることができたこと
差出人が相手方の弁護士であることが分かり、投稿に関する請求だと推測できる状況で受け取らなかった場合には、届いたものと扱われる可能性があります。
無視しても請求を認めたことにはならない
内容証明郵便に回答しなかったからといって、書かれた請求を認めたことになるわけではありません。
この点は、裁判所から届いた訴状に答弁書を出さずに欠席した場合とは異なります。
ただし、回答がなければ、相手方は交渉での解決は難しいと判断し、訴訟や刑事告訴に進むことがあります。
書面に書かれた回答期限には法的な拘束力はありませんが、期限を過ぎても何の連絡もしなければ、次の手続に進む判断材料になります。
訴状が届いた場合の対応については、以下の記事で解説しています。

時効との関係
損害賠償請求権の時効
不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法724条)。
投稿から時間が経っていても、被害者が投稿者を知った時期が遅ければ、時効はまだ完成していないことがあります。
インターネット上の投稿の時効については、以下の記事で解説しています。

内容証明郵便による請求は「催告」にあたる
内容証明郵便で損害賠償を求めることは、民法上の「催告」にあたります。
民法150条1項は、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないと定めています。
時効の完成が近い時期に内容証明郵便が届いた場合、相手方はこの6か月の間に訴訟を起こすことを考えている可能性があります。
なお、催告によって時効の完成が猶予されている間に再び催告をしても、さらに猶予されることはありません(同条2項)。
遅延損害金
不法行為による損害賠償の債務は、不法行為の時から遅滞に陥ると解されています(最高裁昭和37年9月4日判決・民集16巻9号1834頁)。
そのため、相手方は、投稿の時から支払済みまで、法定利率(民法404条)による遅延損害金をあわせて請求してくることがあります。
開示請求を経ずに届く場合
投稿者が匿名であれば、被害者は発信者情報開示請求によって投稿者を特定し、そのうえで請求をすることになります。
この場合、内容証明郵便が届く前に、プロバイダなどから意見照会書が届くことがあります。
他方で、次のような場合には、開示請求の手続を経ずに、いきなり内容証明郵便が届くこともあります。
- 実名や顔写真を出しているアカウントで投稿していた場合
- 知人、元交際相手、同じ趣味のコミュニティの相手など、互いに相手を知っている場合
- 職場や取引先の関係者についての投稿で、内容から投稿者が推測されている場合
この場合でも、相手方が投稿者を推測しているだけで、確実な裏付けがあるとは限りません。
自分が投稿していないのであれば、その旨を回答することになります。
開示請求をされた側の手続の全体の流れについては、以下の記事で解説しています。

勤務先や実家に届いた場合
内容証明郵便が、自宅ではなく勤務先や実家に送られてくることもあります。
勤務先で同僚が受け取ったり、家族が先に開封したりして、投稿のことが周囲に知られてしまう場合があります。
相手方が自宅の住所を知りながら、あえて勤務先に送り、請求の内容を職場の人に知らせるような送り方をした場合には、それ自体が名誉毀損やプライバシー侵害として問題となる余地があります。
もっとも、そのことで投稿についての責任がなくなるわけではありません。
送り先についての問題は、請求への対応とは分けて検討する必要があります。
回答書の考え方
回答の選択肢
内容証明郵便への回答には、大きく分けて次のような選択肢があります。
| 回答の方向 | どのような場合か |
|---|---|
| 請求を認めて条件を交渉する | 投稿が権利侵害にあたることは争わず、金額や支払方法、示談の条件を話し合う |
| 一部を認め、一部を争う | 投稿は認めるが、権利侵害にあたらない部分がある、金額が過大であるなどと主張する |
| 請求を否認する | 自分の投稿ではない、投稿は真実である、権利侵害にあたらないなどと主張する |
| 検討のため期限の延長を求める | 弁護士に相談しているなど、回答に時間が必要な場合に、回答の時期を伝える |
期限までに方針が決まらない場合でも、何も連絡しないよりは、回答の時期を伝えておく方が、相手方がすぐに次の手続に進むことを避けやすくなります。
回答書は証拠として残る
回答書は、相手方の手元に残り、後の交渉や裁判で証拠として提出されることがあります。
回答書で事実を認めたり、謝罪の文言を書いたりすれば、裁判でその内容を前提に判断される可能性があります。
特に注意が必要なのは、次のような書き方です。
- 対象とされたすべての投稿について、内容を確認しないまま一括して認める
- 「すべて私の責任です」「請求には応じます」など、範囲を限定しない表現を使う
- 相手方の人格や請求の動機を非難するなど、感情的な反論を書く
- 事実と異なる弁解を書く
謝罪をすることが、慰謝料の額を判断する際に考慮されることもあります。
謝罪の要否や書き方は、認める範囲とあわせて検討する必要があります。
相手方に直接連絡しない
電話やSNSのメッセージで相手方に直接連絡して事情を説明したり、許しを求めたりすることは避けてください。
代理人の弁護士がついている場合はもちろん、本人名義の書面であっても、口頭でのやり取りは内容が残りにくく、後で言った言わないの争いになりやすいためです。
相手方への連絡は、書面で行うか、弁護士を通じて行うのが適切です。
求められている内容ごとの検討
| 求められていること | 検討する点 |
|---|---|
| 投稿の削除 | 削除しても過去の掲載についての責任はなくならない。削除する前に、投稿の全文と投稿日を保存しておく |
| 謝罪文の提出・掲載 | どの範囲の投稿について、どのような文言で謝罪するか。掲載を求められている場合は、掲載する場所と期間 |
| 損害賠償の支払い | 金額の根拠、特定にかかった費用の扱い、一括か分割か |
| 今後投稿しない旨の誓約 | 対象となる範囲(相手方についての投稿すべてか、特定の内容か)、違反した場合の違約金の有無と金額 |
| 刑事告訴をしない、または取り下げること | 示談書に、刑事告訴をしない旨や、既にした告訴を取り下げる旨を入れるかどうか |
これらは、ひとつに応じれば他もすべて応じなければならないものではありません。
示談をする場合は、合意した内容以外に請求をしないことを確認する清算条項を入れるかどうかも重要です。
口コミについて事業者から請求を受けている場合については、以下の記事で解説しています。

刑事告訴がされている場合や、警察から連絡が来た場合については、以下の記事で解説しています。

不当な要求や架空請求の場合
内容証明郵便の中には、「支払わなければ勤務先や家族に知らせる」「期限までに振り込まなければ逮捕される」といった、脅すような文言が書かれたものや、根拠の示されない高額な金額を求めるものもあります。
権利の行使として請求すること自体は正当であっても、その方法によっては違法となる場合があります。
また、相手方を知らない、投稿にも覚えがないのに金銭を求められている場合は、架空請求の可能性もあります。
弁護士に依頼する場合にできること
内容証明郵便が届いた段階で弁護士に依頼すると、次のような対応が可能です。
- 対象とされた投稿が権利侵害にあたるか、責任を負う可能性がどの程度あるかの見通しを立てる
- 認める点と争う点を整理し、回答書を作成する
- 相手方との連絡の窓口を弁護士にし、本人が直接やり取りしなくて済むようにする
- 金額や条件を交渉し、示談書の内容を確認する
- 交渉がまとまらず訴訟になった場合や、刑事告訴がされた場合に対応する
内容証明郵便の段階は、裁判所を通じた手続に進む前の段階です。
この段階で適切に対応できれば、訴訟や刑事事件に進まずに解決できる場合もあります。
よくある質問(FAQ)
- 内容証明郵便を受け取らなければ、請求されずに済みますか
-
受け取らなくても、相手方は訴訟などの手続をとることができます。
また、差出人や内容を推測できる状況で受け取らなかった場合には、書面が届いたものと扱われることがあります。 - 回答の期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか
-
書面に書かれた期限に法的な拘束力はありません。
ただし、期限を過ぎると相手方が次の手続に進むことがあるため、できるだけ早く回答するか、回答の時期を伝えてください。
- 家族が先に受け取り、開封してしまいました
-
請求の相手方が本人であれば、家族が受け取ったことで家族に支払う義務が生じるわけではありません。
ただし、未成年者の投稿など、親の責任が問題になる場合もあります。
- 自分で回答書を書いて送ってもよいですか
-
自分で回答することもできます。
ただし、回答書は後の交渉や裁判で証拠になるため、認める範囲や表現を慎重に検討する必要があります。送る前に弁護士に相談することをお勧めします。
- 内容証明郵便で回答しなければいけませんか
-
回答の方法に決まりはありません。
普通郵便やメールで回答することもできますが、回答した日付と内容を証明できるようにしておくため、内容証明郵便を使うこともあります。 - 書かれている投稿に身に覚えがありません
-
自分の投稿でなければ、その旨を回答することになります。
事実と異なることを認めたり、相手方の求めに応じて謝罪文に署名したりしないでください。
まとめ
- 内容証明郵便は文書の内容を証明するもので、請求が正しいことを証明するものではない
- 届いただけで支払う義務が生じるわけではないが、訴訟や刑事告訴の前段階として送られてくる書面である
- 差出人が弁護士か、本人か、行政書士かによって、回答の相手方が変わる
- 受け取らなくても、届いたものと扱われることがある
- 内容証明郵便による請求は催告にあたり、時効の完成が6か月猶予される
- 回答書は証拠として残るため、認める点と争う点を整理してから回答する
内容証明郵便が届いた段階は、相手方がまだ交渉での解決を考えている段階です。
この段階の対応によって、その後の進み方が変わります。
当事務所では、インターネット上の投稿について内容証明郵便が届いた方からのご相談にも対応しています。
書面への回答に迷っている方は、当事務所にご相談ください。
書面には回答の期限が定められていることがあります。
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