【この記事の結論・要約】
- 警察を名乗る電話には、警察官をかたる詐欺の可能性もあります。いったん電話を切り、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直して確認します。
- 逮捕されていない段階の呼び出しは任意ですが、応じないことや、相手とのやり取りを消すことは、逮捕の判断で不利に働くおそれがあります。
- 電話を受けた後は、出頭する前に弁護士に相談し、口座を渡した経緯を整理したうえで取調べに臨むことが重要です。
はじめに
口座を売ったり貸したりした後、しばらくしてから警察から電話が来ることがあります。
「あなたの口座が詐欺に使われている」「話を聞きたいので警察署に来てほしい」と言われた場合、逮捕されるのか、家族や勤務先に知られるのか、どのように対応すればよいのかが問題になります。
この記事では、警察から電話が来るきっかけ、その電話が本物の警察からのものか確かめる方法、呼び出しの法的な意味、逮捕される可能性、呼び出しから処分までの流れ、電話を受けたときにすべきこととしてはいけないことを説明します。
口座売買で成立する罪や罰則については、以下の記事で解説しています。

警察から電話が来るきっかけ
口座を売った人に警察から連絡が来るきっかけには、主に次のようなものがあります。
- 売った口座が特殊詐欺などの振込先に使われ、被害者が警察に届け出た
- 金融機関が不自然な入出金に気づいて口座を凍結し、疑わしい取引として届け出た(犯罪収益移転防止法8条)
- 口座を買い取った業者や犯罪グループが摘発され、押収された資料から名義人が分かった
- 売った口座で現金を引き出していた出し子が逮捕された
口座を売ってから警察の連絡が来るまでの期間は、事件によってさまざまです。
数日で連絡が来ることもあれば、口座が別の犯罪に使われたことをきっかけに、時間がたってから連絡が来ることもあります。
金融機関から口座の利用停止の連絡があった場合や、他の金融機関の口座まで止められた場合は、すでに捜査が始まっている可能性があります。
その電話が本物の警察か確かめる
警察官をかたる詐欺
口座を売った人に限らず、警察官を名乗る電話には注意が必要です。
警察庁によれば、令和7年に、警察官などを名乗って捜査名目で現金などをだまし取る、いわゆるニセ警察詐欺の被害は11,014件、被害額は約1,005億円にのぼりました。
この手口では、「あなたの口座が詐欺に使われている」「マネー・ローンダリングの疑いがある」「このままでは逮捕される」などと告げて不安をあおります。
そのうえで、SNSのビデオ通話に誘導して警察手帳や逮捕状の画像を見せ、「潔白を証明するため」などとして送金を求めます。
実在する警察署の電話番号を偽装してかけてくることもあります。
口座を売ってしまい、警察から連絡が来るかもしれないと不安を抱えている人は、こうした電話を本物だと信じやすい立場にあります。
警察がしないこと
栃木県警察は、警察官がSNSで捜査の話をしたり、警察手帳や逮捕状の画像を送ったりすることはなく、捜査のためにインターネットバンキングの開設や送金を求めることもないと注意を呼びかけています。
電話で次のようなことを求められた場合は、詐欺を疑うべきです。
- お金の振込みや送金、インターネットバンキングの開設
- LINEなどのSNSでのやり取りやビデオ通話
- キャッシュカードや暗証番号を渡すこと
- 「誰にも話さないように」という口止め
かけ直して確認する方法
警察を名乗る電話を受けたときは、その場で詳しい話をせず、相手の所属する警察署、部署、氏名を聞いて、いったん電話を切ります。
そのうえで、着信した番号ではなく、警察署のウェブサイトなどで自分で調べた代表番号にかけ直し、その部署にその警察官がいるか、自分に用件があるかを確認します。
本物の警察からの連絡であれば、かけ直して確認することで不利になることはありません。
警察からの呼び出しの法的な意味
任意の出頭
逮捕されていない人に対する警察の呼び出しは、法律上は任意のものです。
刑事訴訟法198条1項は、次のように定めています。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
刑事訴訟法198条1項
呼び出しに応じなかったことだけで処罰されることはありません。
ただし、後に説明するとおり、正当な理由なく呼び出しに応じないことは、逮捕の判断で不利に働くおそれがあります。
参考人として呼ばれる場合と被疑者として呼ばれる場合
口座が犯罪に使われた段階では、警察は、口座の名義人が口座を売ったのか、盗まれたり、だまし取られたりしたのかを把握していないことがあります。
この場合、最初は事情を知る参考人として話を聞かれることもあります。
もっとも、話を聞く中で口座を売ったことが分かれば、その時点から犯罪収益移転防止法違反などの被疑者として扱われます。
参考人として呼ばれた場合でも、自分が罪に問われる立場にあることを前提に対応する必要があります。
日時や場所の調整
呼び出しの日時に都合がつかない場合は、別の日時を相談することができます。
遠方の警察から連絡が来た場合には、取調べの方法や場所について、担当の警察官と相談できる場合があります。
いずれの場合も、無視するのではなく、連絡を取って調整することが重要です。
逮捕される可能性
逮捕の要件
逮捕状により逮捕するためには、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることが必要です(刑事訴訟法199条1項)。
また、裁判官は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなど、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならないとされています(同条2項、刑事訴訟規則143条の3)。
そのため、口座を売ったことが疑われていても、住居や仕事が定まっていて、呼び出しに応じて事実を説明している場合には、逮捕されずに捜査が進むこと(在宅事件)もあります。
逮捕の可能性が高まる事情
次のような事情がある場合は、逮捕の可能性が高まると考えられます。
- 呼び出しに応じない、連絡がつかない、住居が定まっていない
- 複数の口座を売っていた、繰り返し売っていた
- 売る目的で口座を開設しており、詐欺罪が問題になる
- 口座を買い取った相手や、特殊詐欺のグループと連絡を取り続けている
- 相手とのやり取りを消すなど、証拠を隠そうとしていると疑われる
逮捕されると、最大で23日間、身体を拘束される可能性があります。
逮捕後の流れや接見禁止については、以下の記事で解説しています。

呼び出しを受けてから処分までの流れ
事情聴取と供述調書
警察署では、口座を開設した時期、売った相手と知り合ったきっかけ、やり取りの内容、受け取った報酬などについて質問されます。
聞かれた内容は供述調書にまとめられ、内容を確認したうえで署名押印を求められます。
取調べの前には、自分の意思に反して供述する必要がないこと(黙秘権)が告げられます(刑事訴訟法198条2項)。
また、供述調書の内容が自分の話と違う場合には、訂正を求めることができ、署名押印を拒むこともできます(同条4項・5項)。
署名押印した供述調書は、後の裁判で証拠として使われることがあります。

携帯電話の任意提出
売った相手とのやり取りを確認するため、携帯電話の提出を求められることがあります。
任意の提出を断ることはできますが、その場合には、裁判官の令状に基づいて差し押さえられる可能性もあります。
検察官への送致と処分
警察の捜査が終わると、事件は検察官に送られます。
逮捕されていない場合は、書類や証拠だけが送られるため、いわゆる「書類送検」と呼ばれます。
その後、検察官から呼び出しを受けて取調べを受け、起訴するかどうかが決まります。
処分には、不起訴、略式命令による罰金、公判請求があります。
処分の見通しや不起訴になるために考慮される事情については、以下の記事で解説しています。

電話を受けたときにすべきこと・してはいけないこと
やり取りを消さずに保存する
口座を売った相手とのSNSやメッセージアプリのやり取り、募集の画面、報酬の振込記録などは、消さずに保存しておきます。
口座を渡した経緯や、相手の目的をどこまで知っていたかを説明する材料になるためです。
不安になってやり取りを消してしまうと、証拠を隠そうとしたと受け取られ、逮捕の判断で不利に働くおそれがあります。
すでに消してしまった場合は、そのことも含めて弁護士に相談してください。
とっさに嘘をついてしまった場合
警察からの電話に動揺して、「口座は売っていない」「なくした」などと事実と異なる説明をしてしまうこともあります。
その場合でも、後の取調べで事実を説明することはできます。
ただし、説明が途中で変わった理由も問われることになるため、どのように説明するかは、出頭する前に弁護士と相談しておくべきです。
売った相手からの連絡には応じない
口座を売った相手から、追加で口座を作るよう求められたり、警察に話さないよう口止めされたりすることがあります。
こうした連絡には応じないでください。
個人情報を握られて脅されている場合は、そのことも警察や弁護士に伝えます。
家族や勤務先に知られるか
逮捕されずに捜査が進む場合、警察から家族や勤務先に連絡が行くとは限りません。
もっとも、自宅に警察官が訪れたり、自宅の捜索が行われたりした場合には、同居の家族に知られることになります。
逮捕された場合は、仕事を休まざるを得なくなるため、勤務先に知られる可能性が高くなります。
また、口座の凍結によって給与の受取口座が使えなくなり、勤務先に事情を説明しなければならなくなることもあります。
本人が未成年の場合は、警察から保護者に連絡が入ることがあります。
少年の事件の流れについては、以下の記事で解説しています。

弁護士に相談するタイミングとできること
出頭する前に相談する
警察から電話を受けたら、出頭する前に弁護士に相談することをお勧めします。
最初の取調べで作られる供述調書は、その後の処分に大きく影響します。
口座を開設した目的、相手の目的をどこまで知っていたか、報酬を受け取ったかなどを整理しておくことで、事実と異なる内容の調書が作られることを防ぐことができます。
弁護士ができること
- 取調べで聞かれる内容の整理と、答え方の助言
- 警察署への同行と、取調べの前後の助言
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す意見書の提出
- 検察官への不起訴を求める意見書の提出
- 逮捕された場合の接見と、早期の釈放に向けた活動
弁護士が取調室に同席して取調べに立ち会うことは、現在の実務では認められていません。
そのため、取調べの前に十分な打合せをしておくことが重要になります。
自首との関係
捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を減軽することができます(刑法42条1項)。
ただし、警察から電話が来た段階では、口座の名義人として捜査機関に把握されているため、自首は成立しないと考えられます。
それでも、自分から事実を申し出て捜査に協力することは、処分の判断で考慮され得る事情です。
よくある質問(FAQ)
- 警察からの呼び出しを断ることはできますか。
-
逮捕されていなければ、法律上は出頭を拒むことができます(刑事訴訟法198条1項)。
ただし、正当な理由なく呼び出しに応じないことは、逃亡や証拠隠滅のおそれの判断に影響し、逮捕の可能性を高めるおそれがあります。
- 遠方の警察から連絡が来ました。その警察署まで行く必要がありますか。
-
取調べの方法や場所について、担当の警察官と相談できる場合があります。
遠方であることを理由に無視すると逮捕の判断で不利になるおそれがあるため、連絡を取って調整することが重要です。 - 口座売買は初犯でも逮捕されますか。
-
初犯でも逮捕される可能性はあります。
呼び出しに応じない、複数の口座を売っていた、売る目的で口座を開設して詐欺罪が問題になる、相手とのやり取りを消したといった事情があると、逮捕の可能性が高まります。 - 警察からの電話で、とっさに嘘をついてしまいました。
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後の取調べで事実を説明することはできます。
ただし、説明が変わった理由も問われるため、出頭する前に弁護士に相談し、口座を渡した経緯を整理してから取調べに臨むべきです。
- 警察を名乗る電話が本物かどうか、どう確かめればよいですか。
-
所属と氏名を聞いていったん電話を切り、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直して確認します。
警察官がSNSで捜査の話をしたり、送金を求めたりすることはなく、そうした要求があれば詐欺を疑うべきです。 - 警察から連絡が来たことは、家族に知られますか。
-
逮捕されずに捜査が進む場合、警察から家族に連絡が行くとは限りません。
ただし、自宅への訪問や捜索、口座の凍結による生活への影響などから家族に知られることがあり、本人が未成年の場合は保護者に連絡が入ることがあります。
まとめ
- 口座を売った人への警察の連絡は、口座が犯罪に使われた後の被害届、金融機関の届出、買い手側の摘発などをきっかけに来る
- 警察を名乗る電話には警察官をかたる詐欺もあるため、自分で調べた代表番号にかけ直して確認する。警察が送金やSNSでのやり取りを求めることはない
- 逮捕されていない段階の呼び出しは任意だが、応じないことは逮捕の判断で不利に働くおそれがある
- 呼び出しに応じて事実を説明していれば在宅で捜査が進むこともあるが、口座の数や詐欺罪の有無、証拠を消す行為などによって逮捕されることもある
- 電話を受けたら、やり取りを保存し、売った相手からの連絡には応じない
- 最初の取調べで作られる供述調書は処分に大きく影響するため、出頭する前に弁護士に相談するべきである
当事務所では、口座を売ってしまい警察から連絡を受けた方からのご相談、取調べへの対応の助言、警察署への同行、検察官への意見書の提出などをお受けしています。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。
出頭する前であれば、取れる手段は広がります。
お早めにご相談ください。
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