不倫慰謝料の時効は3年、いつから数えて何年前まで請求できるか

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 不倫の慰謝料を請求する権利は、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年、または不倫の時から20年で、時効によって消滅します(民法724条)。不倫が続いていた場合も、知った時から、それまでの分の時効が進みます。
  2. 配偶者に対する請求は、婚姻中は時効が完成せず、離婚から6か月が経つまでは時効が完成しません(民法159条)。一方、不倫相手に対しては、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできません。
  3. 時効は、内容証明郵便による請求や訴訟の提起などによって完成を止めることができます。請求された側は、時効を主張(援用)しなければその効果は生じず、時効の完成後に支払を約束すると、時効を主張できなくなることがあります。

はじめに

配偶者の不倫を何年も前から知っていた場合や、離婚した後になって不倫が発覚した場合、今からでも慰謝料を請求できるのかが問題になります。
反対に、何年も前の不倫について慰謝料を請求された側にとっては、時効を主張できるかが問題になります。

なお、現在の刑法には不倫そのものを処罰する規定はなく、不倫は犯罪ではありません。
そのため、不倫について問題になる「時効」は、刑事上の時効ではなく、慰謝料を請求する権利が消滅する時効(消滅時効)です。

本稿では、不倫の慰謝料の時効の期間、時効をいつから数えるか、配偶者に対する請求と不倫相手に対する請求での違い、時効の完成を止める方法について解説します。
あわせて、慰謝料を請求された側から見た時効の注意点も取り上げます。

不倫慰謝料の時効は「3年」と「20年」

民法724条の定め

不倫の慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償です。
不法行為に基づく損害賠償を請求する権利の時効について、民法724条は次のように定めています。

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

つまり、不倫の慰謝料は、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年が経つか、不倫があった時から20年が経つか、いずれか早い方で時効にかかります。
20年の期間は、令和2年4月1日に施行された改正民法により、時効であることが条文上明確になりました。

「10年前の浮気」「3年前の浮気」はどうなるか

時効の期間は、不倫があった時からではなく、不倫の事実と不倫相手を知った時から数えるのが原則です。
そのため、10年前の不倫であっても、それを最近知ったのであれば、知った時から3年以内であり、かつ不倫の時から20年以内であれば、時効は完成していません。

反対に、3年前の不倫であっても、その当時に不倫の事実と不倫相手を知っていたのであれば、3年が経った時点で時効が完成している可能性があります。
何年前の不倫かではなく、いつ知ったかが重要になります。

5年の時効は適用されない

民法724条の2は、人の生命または身体を害する不法行為について、3年の期間を5年とする特則を定めています。
不倫の慰謝料は、精神的苦痛についての損害賠償であり、人の生命または身体を害する不法行為には当たらないため、この特則は適用されません。

いつから数えるか(起算点)

「加害者を知った時」とは

3年の期間は、「損害及び加害者を知った時」から数えます。
不倫の場合、不倫の事実を知っただけでなく、不倫相手が誰であるかを知った時から時効が進むことになります。

「加害者を知った時」の意味について、最高裁昭和48年11月16日判決(昭和45年(オ)第628号・民集27巻10号1374頁)は、次のように述べています。

民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」とは、同条で時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に鑑みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知つた時を意味するものと解するのが相当であり、被害者が不法行為の当時加害者の住所氏名を的確に知らず、しかも当時の状況においてこれに対する賠償請求権を行使することが事実上不可能な場合においては、その状況が止み、被害者が加害者の住所氏名を確認したとき、初めて「加害者ヲ知リタル時」にあたるものというべきである。

この判決は、逮捕されている間に警察官から不法行為を受けた被害者が、加害者の姓や職業は知っていたものの、名前や住所を知らなかった事案についてのものです。
不倫の場面でも、不倫相手の存在は知っていたものの、氏名や住所がわからず、請求することが事実上できなかった場合には、氏名や住所を確認した時から時効が進むと考えられます。
ただし、どの程度の情報があれば「知った」といえるかは、個別の事情によって判断されます。

不倫が続いている場合の数え方

不倫が長期間続いている場合、関係が終わった時から時効を数えればよいのかが問題になります。
最高裁平成6年1月20日判決(平成3年(オ)第403号・判例時報1503号75頁)は、夫と20年以上同棲を続けた女性に対し、妻が慰謝料を請求した事案です。
原審は、同棲関係が終了した時から時効が進むと判断しましたが、最高裁はこれを是認せず、次のように述べました。

夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。けだし、右の場合に一方の配偶者が被る精神的苦痛は、同せい関係が解消されるまでの間、これを不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく、一方の配偶者は、同せい関係を知った時点で、第三者に慰謝料の支払を求めることを妨げられるものではないからである。

つまり、不倫が続いていても、不倫の事実と不倫相手を知った時点で、それまでの分の慰謝料について時効が進み始めます。
不倫を知ってから3年以上経ってから請求した場合、それより前の分は時効にかかり、請求できるのは直近3年以内の分に限られる可能性があります。
不倫を知った後は、関係が終わるのを待たずに、早めに請求を検討する必要があります。

離婚後に不倫が発覚した場合

離婚した後になって、婚姻中の不倫が発覚することがあります。
この場合も、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年以内であり、かつ不倫の時から20年以内であれば、不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、不倫が始まる前から婚姻関係が破綻していた場合は、慰謝料の請求自体が認められないことがあるため、当時の夫婦関係の状況もあわせて確認する必要があります。

配偶者への請求と不倫相手への請求で扱いが違う

配偶者に対する請求は、婚姻中は時効が完成しない

不倫をした配偶者に対する慰謝料の請求には、夫婦の間の権利についての特則があります。
民法159条は、次のように定めています。

夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

そのため、配偶者の不倫を知ってから3年以上経っていても、婚姻を続けている間は、配偶者に対する慰謝料の請求権について時効は完成しません。
離婚した場合も、離婚から6か月が経つまでは時効が完成しません。
この特則は夫婦の間の権利についてのものであり、不倫相手に対する請求には適用されません。

離婚に伴う慰謝料は、離婚が成立した時から数える

不倫が原因で離婚に至った場合、配偶者に対しては、不倫そのものについての慰謝料とは別に、離婚せざるを得なくなったことについての慰謝料(離婚慰謝料)を請求することが考えられます。
離婚慰謝料は、離婚が成立して初めて損害が生じるものであるため、離婚が成立した時から時効が進むと考えられます。

不倫相手に対しては、原則として離婚慰謝料を請求できない

不倫を知ってから3年以上経った後に離婚した場合、不倫相手に対して、離婚慰謝料として請求できないかが問題になります。

最高裁平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号・民集73巻2号187頁)は、夫が、平成22年5月頃に妻の不倫を知り、妻が不倫関係を解消して同居を続けた後、平成27年2月に離婚した事案です。
夫は、不倫相手に対し、離婚に伴う慰謝料を請求しました。
最高裁は、次のように述べて、この請求を認めませんでした。

以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

ここでいう「特段の事情」とは、不倫相手が、単に不貞行為をしたにとどまらず、夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に不当な干渉をするなどして、夫婦を離婚せざるを得ない状態に至らせた場合を指します。
不倫相手に対しては、不倫を知った時から3年以内に、不貞行為そのものについての慰謝料を請求しておく必要があります。

時効の完成を止める方法

時効が近づいている場合は、時効の完成を止める手続をとる必要があります。
現在の民法では、時効の完成を一定期間止めることを「完成猶予」、それまで進んだ期間をリセットして新たに時効を進め直すことを「更新」といいます。

内容証明郵便などによる請求(催告)

相手に慰謝料を請求すると(催告)、その時から6か月間は時効が完成しません(民法150条1項)。
請求したことを証明できるよう、内容証明郵便で請求するのが確実です。
ただし、催告による完成猶予の間にもう一度催告をしても、さらに期間が延びることはありません(同条2項)。
6か月の間に、訴訟の提起などの手続をとる必要があります。

訴訟の提起(裁判上の請求)

訴訟を起こすと、訴訟が続いている間は時効が完成せず(民法147条1項)、判決が確定すると時効が更新されます(同条2項)。
確定した判決で認められた権利の時効は、10年になります(民法169条1項)。

協議を行う旨の書面による合意

相手と、慰謝料について協議を行うことを書面で合意した場合も、一定期間、時効が完成しません(民法151条)。
話合いで解決できる見込みがあるものの、時効が迫っている場合に使える方法です。

相手が支払義務を認めること(承認)

相手が、慰謝料を支払う義務があることを認めた場合、その時から新たに時効が進みます(民法152条1項)。
支払を約束する書面への署名や、一部の支払も、承認に当たります。

請求された側から見た時効

時効は主張(援用)しなければ効果が生じない

時効の期間が過ぎても、それだけで慰謝料の支払義務が自動的に消えるわけではありません。
時効によって支払義務を免れるには、時効の利益を受けることを相手に伝える必要があります(援用、民法145条)。
援用は、相手からの請求に対する回答書などで、時効を援用する旨を明確に伝える方法で行います。

時効の完成後に支払を約束すると、時効を主張できなくなることがある

注意が必要なのは、時効が完成した後に、支払を約束したり、一部を支払ったりした場合です。
最高裁昭和41年4月20日大法廷判決(昭和37年(オ)第1316号・民集20巻4号702頁)は、次のように述べています。

(中略)債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。

この判決は不倫の事案についてのものではありませんが、不倫の慰謝料でも同じ考え方が当てはまります。
時効が完成しているかもしれない時期に請求を受けた場合は、謝罪や支払の約束をする前に、時効が完成しているかどうかを確認する必要があります。

時効が近い時期に請求を受けた場合

請求する側は、時効が近いことを理由に、内容証明郵便を送ってくることがあります。
この場合、内容証明郵便が届いた時から6か月の間に訴訟を起こされる可能性があります。

内容証明郵便が届いた場合の対応については、以下の記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

浮気や不倫は何年で時効になりますか?

不倫の慰謝料を請求する権利は、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年、または不倫の時から20年のいずれか早い方で、時効によって消滅します(民法724条)。
不倫そのものは犯罪ではないため、刑事上の時効はありません。

10年前の浮気を最近知りました。慰謝料は請求できますか?

3年の期間は不倫を知った時から数えるため、最近知ったのであれば、不倫の時から20年以内である限り、時効は完成していません。

ただし、時間が経つほど不倫の証拠を集めることが難しくなるため、早めに証拠の確保を検討する必要があります。

離婚後に不倫が発覚しました。慰謝料を請求できますか?

不倫の事実と不倫相手を知った時から3年以内であれば、不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
元配偶者に対する請求は、離婚から6か月が経つまでは時効が完成しないという特則もあります(民法159条)。

不倫相手の名前しかわからない場合も、時効は進みますか?

最高裁は、「加害者を知った時」とは、加害者に対する請求が事実上可能な程度に知った時を意味すると判断しています。
名前しかわからず、住所などを調べる手段もない状況であれば、時効が進んでいないと判断される可能性がありますが、個別の事情によって結論が変わります。

慰謝料の時効が過ぎていても、離婚はできますか?

慰謝料の時効と、離婚を求めることができるかどうかは別の問題です。
不貞行為は裁判上の離婚原因(民法770条1項1号)であり、離婚を求めることについては、慰謝料のような時効の定めはありません。

婚約中の浮気にも時効はありますか?

婚約中の浮気は、婚約の不当破棄などを理由に慰謝料を請求する場面になり、請求の根拠によって時効の期間が異なる可能性があります。
不法行為に基づいて請求する場合は、婚約者の浮気と相手を知った時から3年が基準になります。

まとめ

  • 不倫の慰謝料は、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年、または不倫の時から20年のいずれか早い方で時効にかかる(民法724条)。
  • 「加害者を知った時」とは、請求が事実上可能な程度に知った時をいう(最高裁昭和48年11月16日判決)。
  • 不倫が続いていても、知った時からそれまでの分の時効が進む(最高裁平成6年1月20日判決)。
  • 配偶者に対する請求は、婚姻中は時効が完成せず、離婚から6か月が経つまでは時効が完成しない(民法159条)。
  • 不倫相手に対しては、特段の事情がない限り離婚慰謝料を請求できないため、知った時から3年以内に不貞慰謝料を請求しておく必要がある(最高裁平成31年2月19日判決)。
  • 時効の完成は、催告、訴訟の提起、協議の合意、承認によって止めることができる。
  • 請求された側は時効を援用する必要があり、時効の完成後に支払を約束すると、援用できなくなることがある(最高裁昭和41年4月20日判決)。

当事務所では、不倫の慰謝料を請求したい方からのご相談と、慰謝料を請求された方からのご相談の両方をお受けしています。
時効が完成しているかどうかは、不倫と不倫相手をいつ知ったか、相手が配偶者か不倫相手か、これまでにどのようなやり取りがあったかによって変わります。
時効が迫っている場合や、何年も前の不倫について請求を受けた場合は、当事務所にご相談ください。
時効の期限が過ぎる前に、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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