【この記事の結論・要約】
- 20歳未満の少年の事件は、捜査が終わると原則としてすべて家庭裁判所に送られ、刑罰ではなく、立ち直りのための保護処分が検討されます。
- 18歳・19歳の特定少年は、原則として検察官に送り返される事件の範囲が広がり、起訴されれば実名報道も解禁されるなど、17歳以下とは扱いが異なります。
- 特殊詐欺の受け子として関与した少年でも、関与の程度や件数、保護観察中かどうか、家庭の状況によって、保護観察から少年院送致、刑事裁判まで処分が分かれます。
はじめに
高校生や、18歳・19歳の子どもが逮捕されたと知らされたとき、親としては、成人と同じように裁判を受けて刑務所に入るのか、学校や就職はどうなるのか、何も分からないまま不安を抱えることになります。
20歳未満の少年の事件は、少年法に基づいて、成人の刑事事件とは異なる手続で扱われます。
一方で、令和4年4月に施行された改正少年法により、18歳・19歳の少年は「特定少年」として、17歳以下とは異なる扱いを受けることになりました。
この記事では、少年事件の手続の流れと家庭裁判所の処分、特定少年の特例を説明したうえで、闇バイトで特殊詐欺の受け子として関与した少年が、実際にどのような処分を受けているかを裁判例をもとに紹介します。
少年事件の対象と「特定少年」
少年法は、20歳に満たない者を「少年」と定めています(少年法2条1項)。
少年の事件は、年齢によって扱いが異なります。
| 年齢 | 区分 | 主な扱い |
|---|---|---|
| 14歳未満 | 触法少年 | 刑事責任を問われない。児童相談所の手続が中心になる |
| 14歳〜17歳 | 少年 | 家庭裁判所に送られ、保護処分が中心になる |
| 18歳・19歳 | 特定少年 | 家庭裁判所に送られるが、原則逆送の範囲の拡大など特例がある |
令和4年4月の改正で、民法の成年年齢が18歳に引き下げられたことにあわせ、18歳・19歳は、引き続き少年法の対象としつつも、17歳以下とは異なる特例が設けられました(法務省「少年法が変わります!」1)。
未成年が逮捕されたときの流れ
捜査の段階
少年であっても、捜査の段階では、成人と同じように逮捕され、警察や検察官の取調べを受けます。
ただし、少年を勾留するのは、やむを得ない場合に限られます(少年法48条1項)。
検察官は、勾留の請求に代えて、少年鑑別所などに収容する観護の措置を請求することもできます(少年法43条1項)。
もっとも、特殊詐欺のように共犯者が多い事件では、成人と同じように勾留されることもあります。
逮捕から勾留が決まるまでの最長72時間は、家族は面会できません。
この間に本人と面会できるのは弁護士だけです。

すべての事件が家庭裁判所に送られる
成人の事件では、検察官が起訴するかどうかを判断し、起訴しないこと(不起訴)もあります。
これに対して少年の事件では、捜査の結果、犯罪の嫌疑があれば、検察官は事件を家庭裁判所に送らなければなりません(少年法42条1項)。
これを全件送致主義といいます。
つまり、少年の事件では、検察官の判断で不起訴となって手続が終わることはなく、処分は家庭裁判所が決めることになります。
観護措置と少年鑑別所
家庭裁判所は、事件を受け取ると、必要に応じて少年を少年鑑別所に収容する観護措置をとります(少年法17条1項2号)。
収容の期間は原則2週間で、更新されることがあり、通常は4週間程度、一定の場合には最長8週間となります(同条3項・4項)。
少年鑑別所では、専門の職員が面接や心理検査を行い、少年の性格や非行の原因を調べます。
その結果は、家庭裁判所の処分の判断に使われます。
家庭裁判所調査官の調査と審判
家庭裁判所の調査官は、少年本人や保護者と面接し、家庭環境や学校・職場での生活、交友関係などを調べます。
調査の結果は、処分についての意見とともに裁判官に報告されます。
その後、裁判官が少年と保護者を呼んで審判を開き、処分を決めます。
審判は非公開で行われます(少年法22条2項)。
付添人
少年事件で少年を支援する弁護士を付添人といいます(少年法10条1項)。
付添人は、非行事実についての主張をするほか、家庭環境や学校・職場との関係を調整し、少年が社会の中で立ち直れる態勢を整えて、家庭裁判所に示す役割を担います。
家庭裁判所の処分
家庭裁判所の主な処分は次のとおりです。
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 審判不開始・不処分 | 審判を開かない、または審判を開いたうえで処分をしない |
| 保護観察 | 社会の中で生活しながら、保護観察官や保護司の指導・監督を受ける(少年法24条1項1号) |
| 児童自立支援施設・児童養護施設送致 | 施設で生活しながら指導を受ける(同項2号) |
| 少年院送致 | 少年院に収容され、矯正教育を受ける(同項3号) |
| 検察官送致(逆送) | 刑事処分が相当として、事件を検察官に送り返す(少年法20条)。逆送されると起訴され、成人と同じ刑事裁判を受けることになる |
処分をすぐに決めずに、一定期間、家庭裁判所調査官の観察に付し、その間の生活の様子を見て最終的な処分を決める試験観察という制度もあります(少年法25条)。
家庭裁判所は、非行の内容だけでなく、少年の性格や家庭環境などから見て、再び非行に及ぶおそれがどの程度あるか、社会の中で立ち直ることができるかという「要保護性」を重視して処分を決めます。
特定少年の特例
原則逆送の対象が広がった
17歳以下の少年の場合、原則として検察官に送り返される(原則逆送)のは、16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた事件に限られます(少年法20条2項)。
これに対し、18歳・19歳の特定少年については、これに加えて、死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑にあたる罪の事件も原則逆送の対象になりました(少年法62条2項)。
たとえば、強盗罪(5年以上の拘禁刑)や、組織的な詐欺として組織的犯罪処罰法の組織的詐欺罪(1年以上の有期拘禁刑)に問われる場合は、この対象にあたると考えられます。
原則逆送の対象でない事件でも、家庭裁判所が刑事処分を相当と認めれば、特定少年の事件は逆送されます(少年法62条1項)。
保護処分は犯情の重さの範囲内
特定少年に保護処分をする場合は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で、6か月の保護観察、2年の保護観察、少年院送致のいずれかを選びます(少年法64条1項)。
少年院送致の場合は、3年以下の範囲で収容する期間が定められます(同条3項)。
逆送された後は成人とほぼ同じ扱い
特定少年が逆送されて起訴された場合、刑事裁判では原則として20歳以上の者と同じように扱われます。
17歳以下の少年に認められる不定期刑などの特例は、特定少年には原則として適用されません(少年法67条)。
起訴されれば実名報道が解禁される
少年の事件については、本人を推測できるような報道(推知報道)が禁止されています(少年法61条)。
しかし、特定少年が逆送されて起訴された場合は、この禁止が解除され、実名で報道される可能性があります(少年法68条)。
前科・資格への影響
家庭裁判所の保護処分は刑罰ではないため、保護観察や少年院送致となっても、前科にはなりません。
一方、逆送されて刑事裁判で有罪となれば、前科がつきます。
17歳以下のときに犯した罪で刑に処せられた場合は、資格の取得などを制限する法律の適用が緩和される特例がありますが(少年法60条)、特定少年のときに犯した罪にはこの特例が適用されず、20歳以上の者と同じ制限を受けることになります。
将来の就職や資格の取得を考えると、逆送されるかどうかは、本人の人生に大きく影響します。
学校や勤務先への影響
逮捕や少年鑑別所への収容によって、一定期間、学校や職場に通えなくなります。
学校や勤務先に事件のことが伝わるかどうか、伝わった場合にどのような扱いを受けるかは、事件の内容や学校・勤務先の規則によって異なります。
少年事件では、本人が戻る学校や職場があることが、社会の中で立ち直れる環境として家庭裁判所に評価されることがあります。
学校や勤務先への連絡の仕方は、付添人と相談しながら慎重に判断してください。
特殊詐欺の受け子として逮捕された少年
検挙の状況
令和7年に特殊詐欺で検挙された2,338人のうち、少年は468人(20.0%)で、そのうち353人が受け子でした。
受け子全体(1,379人)で見ると、約4人に1人が少年です(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」2)。
詐欺・窃盗と原則逆送
受け子として現金を受け取った場合は詐欺罪、キャッシュカードをすり替えた場合は窃盗罪となるのが一般的です。
詐欺罪と窃盗罪は、いずれも法定刑の短期が1年に満たないため、特定少年であっても原則逆送の対象にはなりません。
ただし、組織的詐欺罪に問われる場合は原則逆送の対象になり得ます。
また、原則逆送の対象でなくても、刑事処分が相当と判断されれば逆送されます。
実際の処分の例
特殊詐欺の受け子として関与した少年について、家庭裁判所や高等裁判所が示した判断を3件紹介します。
いずれも受け子として関与した少年ですが、処分は大きく分かれています。
一つ目は、当時17歳の高校生が、オレオレ詐欺の受け子として被害者から400万円を受け取った事件です。
家庭裁判所は第1種少年院送致としましたが、東京高等裁判所は、少年がすぐに逮捕されて被害金が被害者に還付されていること、共犯者の中では末端に位置すること、前歴が審判不開始の1件だけで、母親と同居して高校に通うなど保護環境に大きな問題がないことを指摘しました。
そして、オレオレ詐欺に関与した非行は軽視できないものの、「常に施設内処遇が必要であるとはいえない」として、少年院送致は著しく不当であると判断し、決定を取り消しました(東京高裁平成28年6月15日決定・判タ1437号144頁)。
差戻し後、少年は保護観察となっています。
二つ目は、同じような特殊詐欺で保護観察中だった19歳の特定少年が、再び受け子として高齢者からキャッシュカードを窃取した事件です。
家庭裁判所は、次のように述べました。
少年が、受け子という共犯者間では末端、従属的な立場であったことを踏まえても、少年の責任は軽視できない。加えて、少年は、本件時、同種事案による保護観察中であったのであるから、少年の規範意識は相当に鈍麻しているものといわざるを得ず、少年に対して厳しい非難を向けざるを得ない。
東京家裁令和4年6月15日決定・判タ1509号253頁
そのうえで、保護観察を経ても問題が改善されていないとして、第1種少年院に送致し、収容期間を3年間と定めています。
三つ目は、犯行当時18歳の特定少年が、警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを盗み、それを使ってATMから現金を引き出すなどした事件です。
被害総額は1,800万円余りで、被害回復の見込みはなく、短期間に実質的にみて7件の同様の行為に及んでいました。
家庭裁判所は、次のように述べて、事件を検察官に送致(逆送)しました。
以上からすれば、少年の責任はかなり重いといわざるを得ないのであって、保護処分が許容される余地は狭い。
鳥取家裁令和4年9月26日決定・判タ1509号248頁
この少年には、別の非行による保護観察の前歴が2回ありました。
家庭裁判所は、少年が余罪も含めて事実を認めていることや、父のもとで働ける環境があることを考慮しても、保護処分による改善更生は容易ではないとしています。
処分を分ける事情
3件を比べると、処分を分けた事情として、次のような点が見えてきます。
- 関与した件数と被害額、被害が回復されているか
- 共犯者の中での立場と、報酬の額
- 前歴や保護観察歴の有無、保護観察中の再犯かどうか
- 家庭で本人を監督できる態勢があるか、学校や仕事に通える環境があるか
- 本人が自分の問題にどの程度向き合っているか
特殊詐欺の受け子であれば、必ず少年院に送られたり、刑事裁判になったりするわけではありません。
一方で、件数が多く被害額が大きい場合や、保護観察中に再び関与した場合には、厳しい処分が選ばれています。
親にできること
付添人を選び、早い段階から準備する
家庭裁判所の処分は、事件の内容だけでなく、少年を社会の中で立ち直らせることができるかという観点から決まります。
付添人となる弁護士と協力して、少年が戻る家庭や学校、職場の環境を整え、それを家庭裁判所に具体的に示すことが重要です。
家庭環境の見直し
少年が闇バイトに関わった背景には、お金の使い方や交友関係、家族との関係など、さまざまな事情があることもあります。
裁判例でも、親が子どもにお金を無心されて応じてきたことや、指導が行き届いていなかったことが、処分の判断で考慮されています。
親として、これまでの接し方を振り返り、今後どのように本人を監督していくかを具体的に考えることが求められます。
SNSの利用の見直しや、お金の管理の方法、犯行グループとの連絡を断つための手段なども含めて、付添人と相談してください。
被害弁償
被害の回復は、処分の判断で考慮される事情の一つです。
少年本人に資力がない場合、親が援助することもあります。
ただし、少年に責任能力があれば、賠償の責任を負うのは原則として少年本人であり、親が当然に支払義務を負うわけではありません。
本人が「知らなかった」と言っている場合
紹介した東京高裁の事件でも、少年は詐欺の故意を否認していましたが、高等裁判所は、報酬の額や指示の内容、逃走したことなどから、詐欺の故意を認めています。
故意の有無の考え方は、少年であっても成人と同じです。

よくある質問(FAQ)
- 高校生の息子が受け子で逮捕されました。成人と同じように裁判を受けるのですか。
-
17歳以下の少年の事件は、捜査が終わると原則として家庭裁判所に送られ、保護観察や少年院送致などの保護処分が検討されます。
ただし、家庭裁判所が刑事処分を相当と判断すれば、検察官に送り返されて刑事裁判を受けることもあります。
- 特定少年とは何ですか。
-
18歳・19歳の少年のことで、令和4年4月施行の改正少年法で設けられた区分です。
家庭裁判所に送られる点は17歳以下と同じですが、原則として検察官に送り返される事件の範囲が広がり、起訴されれば実名報道が解禁されるなどの特例があります。
- 受け子で逮捕されたら、必ず少年院に送られますか。
-
必ず少年院に送られるわけではありません。
受け子の少年について、少年院送致を著しく不当として取り消し、保護観察となった例がある一方、保護観察中の再犯で少年院送致となった例や、被害額が大きく件数も多いとして検察官に送致された例もあります。
- 逆送とは何ですか。
-
家庭裁判所が、保護処分ではなく刑事処分が相当と判断して、事件を検察官に送り返すことです。
逆送されると検察官が起訴し、成人と同じ刑事裁判を受けることになります。 - 少年鑑別所にはどのくらいの期間入りますか。
-
観護措置による収容の期間は原則2週間で、更新されることがあり、通常は4週間程度です。
一定の場合には最長8週間まで延長されることがあります。 - 親として何をすればよいですか。
-
付添人となる弁護士と協力して、本人が戻る家庭や学校、職場の環境を整え、今後どのように監督していくかを具体的に示すことが重要です。
被害弁償を援助するかどうかも、付添人と相談して判断してください。
まとめ
- 20歳未満の少年の事件は、捜査が終わると原則としてすべて家庭裁判所に送られ、検察官の判断で不起訴となって終わることはない
- 家庭裁判所は、非行の内容と要保護性を踏まえて、不処分、保護観察、少年院送致、検察官送致などの処分を決める
- 18歳・19歳の特定少年は、原則逆送の対象が広がり、逆送後は成人とほぼ同じ扱いを受け、起訴されれば実名報道も解禁される
- 特殊詐欺の受け子として関与した少年でも、関与の程度や件数、被害の回復、保護観察中かどうか、家庭の監督態勢によって、保護観察、少年院送致、逆送と処分が分かれている
- 親は、付添人となる弁護士と協力して、本人が立ち直れる環境を整え、家庭裁判所に具体的に示すことが重要である
当事務所では、未成年のお子さんが逮捕された事件について、逮捕直後の接見、取調べへの対応の助言、家庭裁判所での付添人としての活動、被害者との示談交渉などをお受けしています。
特殊詐欺の受け子として関与してしまった事件についてもご相談いただけます。
少年事件では、家庭裁判所に送られる前の段階から、環境を整える準備を始めることが大切です。
お早めにご相談ください。
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