家族が特殊詐欺で逮捕されたら|最初にすべきこととしてはいけないこと

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間は、家族は面会できず、本人と話せるのは弁護士だけです。
  2. 特殊詐欺の事件では、接見禁止や再逮捕によって身柄の拘束が長引きやすく、最初の数日の対応がその後の見通しを左右します。
  3. 本人の持ち物の処分や、犯行グループ・被害者への連絡など、家族がしてはいけないこともあります。

はじめに

ある日突然、警察から「息子さんを詐欺の疑いで逮捕しました」と電話がかかってくる。
闇バイトに応募した子どもや配偶者が、特殊詐欺の受け子や出し子として逮捕されたという知らせは、家族にとって何の前触れもなく届くことがあります。

何が起きたのか分からないまま、面会もできず、本人の話も聞けない。
どこに相談すればよいのか、何をすべきで、何をしてはいけないのか。
この記事では、家族が特殊詐欺で逮捕されたときに、家族が最初に確認すること、逮捕直後の72時間にできること、特殊詐欺の事件で知っておくべきこと、家族がしてはいけないこととしておくべきことを、順に説明します。

警察から連絡が来たら確認すること

家族が逮捕されると、警察から連絡が来ることがあります。
ただし、本人が家族への連絡を望まない場合や、成人している場合には、連絡が来ないこともあります。

連絡を受けたら、次の点を確認して書き留めておいてください。

  • 本人が留置されている警察署の名前と電話番号
  • 逮捕された容疑(罪名)と、逮捕された日時
  • 担当の警察官の部署と名前
  • 本人の体調や、持病の薬が必要かどうか

電話口では、事件の詳しい内容は教えてもらえないことがあります。
警察としても、捜査の途中で事件の内容を明かすことはできないからです。

その後、裁判官が勾留を決めると、弁護人がいない場合には、本人が指定した家族に勾留されたことが通知されます(刑事訴訟法207条1項、79条)。

逮捕直後の72時間に家族ができること

家族は面会できない

逮捕されてから勾留が決まるまでの最長72時間(警察での48時間と、検察官が勾留を請求するまでの24時間)は、家族は本人と面会できません。
この間に本人と面会できるのは、弁護士だけです。

本人は、何の準備もないまま、警察や検察官の取調べを受けることになります。
この段階の供述は、その後の処分に大きく影響することがあります。

勾留が決まった後も、特殊詐欺の事件では、家族との面会や手紙のやり取りを禁じる接見禁止が付く判断につながりやすくなります。
接見禁止については、以下の記事で詳しく解説しています。

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弁護士を呼ぶ方法

逮捕された人のために弁護士を付ける方法は、主に次の3つです。

方法内容利用できる時期
私選弁護人家族が弁護士を選んで依頼する。家族は本人とは独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条2項)逮捕の直後から
当番弁護士弁護士会に連絡すると、弁護士が一度、本人と面会に来る。初回の面会に費用はかからない逮捕の直後から
被疑者国選弁護人本人が請求し、一定の資力要件を満たす場合に、国が費用を負担して弁護人を付ける(刑事訴訟法37条の2)勾留が決まった後から

被疑者国選弁護人は、勾留が決まってからでなければ付きません。
逮捕直後の72時間のうちに弁護士が本人と面会し、取調べへの対応を助言したり、勾留を避けるための意見書を検察官や裁判官に出したりするには、私選弁護人に依頼するか、当番弁護士を呼ぶ必要があります。

当番弁護士は、本人が警察官に「当番弁護士を呼んでほしい」と伝えるか、家族が弁護士会に連絡することで呼ぶことができます(日本弁護士連合会「逮捕されたとき」)。
ただし、当番弁護士は一度面会に来る制度であり、その後も引き続き弁護を依頼するかどうかは、改めて決めることになります。

弁護士に依頼するときに確認すること

私選弁護人を探す際は、次のような点を確認しておくと、その後のやり取りがしやすくなります。

  • いつ本人との面会(接見)に行けるか
  • 特殊詐欺の事件を扱った経験があるか
  • 接見の後、家族にどのような形で報告してもらえるか
  • 弁護士費用の内訳と、追加の費用が生じる場合の条件

弁護士が本人と面会すれば、本人の様子や事件の概要、本人から家族への伝言を知ることができます。
家族が本人の状況を知る最初の手段にもなります。

特殊詐欺の事件で家族が知っておくべきこと

身柄の拘束が長引きやすい

特殊詐欺は、被害者ごとに別の犯罪が成立します。
そのため、ある事件で勾留された後、別の被害者に対する事件で再逮捕されることがあります。
再逮捕のたびに、最長23日間の身柄拘束が繰り返され、判決までに数か月以上かかることもあります。

再逮捕されると接見禁止も改めて判断されるため、いったん家族と面会できるようになっても、再び会えなくなることがあります。

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半数以上が実刑になっている

法務省法務総合研究所が令和3年版犯罪白書で公表した特別調査1によれば、特殊詐欺の受け子・出し子として有罪になった人の54.9%が、執行猶予の付かない実刑でした。

同じ調査では、認定された事件が1件なら全部実刑は34.7%でしたが、2件で72.1%、3件で92.3%に上がっています。
家族にとっては厳しい数字ですが、どの事件がどこまで起訴されるかによって、見通しが大きく変わることも示しています。

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未成年も含まれる

令和7年に特殊詐欺で検挙された2,338人のうち、受け子が1,379人、出し子が301人でした2。
検挙された少年は468人で、そのうち353人が受け子です(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」)。
SNSの募集に応じた若者が、報酬も受け取らないまま捕まることもあります。

家族がしてはいけないこと

本人のスマートフォンや部屋の物を処分する

本人の部屋に残されたスマートフォン、メモ、他人名義のキャッシュカードや書類などは、事件の証拠になり得ます。
家族がこれらを捨てたり隠したりすると、証拠隠滅罪(刑法104条)にあたる可能性があります。

親族が犯人の利益のために証拠を隠滅した場合は、刑を免除することができるとされていますが(刑法105条)、罪が成立しなくなるわけではありません。
また、家族が証拠を処分したことが分かれば、本人についても証拠隠滅のおそれがあると判断され、勾留や接見禁止、保釈の判断で不利になりかねません。

本人のために何かを処分したり隠したりしようとは考えず、そのままにしておいてください。

犯行グループや共犯者に連絡する

本人の携帯電話に残っていた連絡先などから、犯行グループや共犯者に連絡を取ろうとするのは避けてください。
口裏合わせを疑われるおそれがあるうえ、家族自身が危険に巻き込まれる可能性もあります。

被害者に直接連絡する

被害者に謝罪したい、弁償したいという気持ちがあっても、家族が被害者に直接連絡することは避けてください。
被害者に働きかけて供述を変えさせようとしていると疑われるおそれがあります。

被害者への謝罪や弁償は、弁護人を通じて行います。
被害者の連絡先は、弁護人が検察官を通じて被害者の了解を得た場合に限り、弁護人に知らされます。

本人を責め立てる

家族として、本人を強く責めたくなる気持ちは当然です。
しかし、身柄を拘束された本人は、先の見えない不安の中で取調べを受けています。
本人の更生に向けて協力する姿勢を見せてあげることが重要です。

家族がしておくべきこと

勤務先や学校への対応

本人が勤務先や学校に行けなくなるため、欠勤や欠席の連絡が必要になります。
逮捕されたことをそのまま伝えるかどうか、どのように伝えるかは、事件の見通しや勤務先の規定によって判断が分かれます。
事実と異なる説明をすると、後で問題になることもあるため、弁護人と相談してから連絡することをお勧めします。

差し入れ

接見禁止が付いていても、衣類や現金などは差し入れることができる扱いとされています。
留置施設ごとに受け付ける物に決まりがあるため、送る前に警察署の留置係に確認してください。
現金を差し入れておけば、本人は施設の中で日用品を購入できます。

被害弁償の資金を援助するかどうかの検討

被害者への弁償は、処分を判断するうえで重要な事情になります。
しかし、受け子や出し子の中には、報酬を受け取っていない人もおり、本人に弁償の資力がないことがあります。
法務省の調査3では、報酬を受け取った、または受け取る約束をしていた受け子・出し子のうち、56.1%は約束のみで、実際には受け取っていませんでした。

本人が成人であれば、家族に弁償の法的な義務はありません。
援助するかどうかは、余罪の見通しや、援助によって処分がどの程度変わるかを弁護人と確認したうえで判断してください。

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身元引受人になる準備

保釈を求める場合や、執行猶予を求める場合には、家族が身元引受人となり、本人を監督する態勢があることを示すことが重要になります。
本人の住む場所、仕事や学校、生活の立て直しの見通しなどを、家族で話し合っておいてください。

勾留理由開示で本人の顔を見る

接見禁止が付いて面会できない場合でも、勾留理由開示の手続を請求すれば、公開の法廷で本人の顔を見ることができます(刑事訴訟法82条)。
裁判官が勾留の理由を説明する手続で、本人も出廷します。
会話はできませんが、本人の様子を直接確かめる機会になります。

家宅捜索が行われる場合

本人が実家で暮らしている場合、逮捕とあわせて、あるいは逮捕の後に、実家の家宅捜索が行われることがあります。
本人の部屋を中心に、スマートフォンやパソコン、手帳、衣類などが押収されます。

人の住居で捜索をするときは、住居主などを立ち会わせなければならないとされています(刑事訴訟法222条1項、114条2項)。
家族が立ち会う場合は、捜索差押許可状の内容を確認し、何が押収されたかを記録した押収品目録を受け取っておいてください。

捜索に抵抗したり、物を隠したりすることは避けてください。

犯行グループから家族に接触があった場合

闇バイトの犯行グループは、応募の際に本人から身分証や住所、家族の情報を送らせていることがあります。
本人が逮捕された後、グループの側から家族に連絡が来たり、自宅周辺に不審な人物が現れたりすることもあり得ます。

不審な連絡や接触があった場合は、応じずに、すぐに警察と弁護人に知らせてください。
警察相談専用電話(#9110)でも相談を受け付けています。
政府は、闇バイトに関与して脅迫を受けるなどして悩んでいる場合には警察に相談するよう呼びかけ、警察は相談を受けた人やその家族を確実に保護するとしています(政府広報オンライン)。

報道への対応

特殊詐欺の事件では、逮捕の事実が実名で報道されることがあります。
報道機関から家族に取材の申入れがあることもあります。

取材に応じる義務はありません。
事件の内容について家族が話すと、本人の供述と食い違ったり、捜査や公判に影響したりするおそれがあるため、応じないか、弁護人に相談してから対応を決めてください。
インターネット上の書き込みへの対応も、事件が落ち着いてから弁護人と相談するのが安全です。

本人が「知らなかった」と言っている場合

弁護人を通じて、本人が「詐欺だとは知らなかった」「荷物を受け取るだけのバイトだと思っていた」と話していると聞くこともあるでしょう。

詐欺の故意がなければ詐欺罪は成立しません。
ただし、故意には「詐欺かもしれない」という認識も含まれ、最高裁判所は、名宛人になりすまして荷物を受け取るといった客観的な事情から、詐欺の可能性を認識していたことを推認しています。

家族としては、本人の言葉を信じたい気持ちと、事実と向き合ってほしい気持ちの間で揺れることになります。
故意を争うかどうかは、取調べでの供述や身柄拘束の長期化も含めて判断する必要があるため、弁護人とよく相談してください。

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本人が未成年の場合

本人が20歳未満の少年であっても、捜査の段階では成人と同じように逮捕や勾留が行われることがあります。
捜査が終わると、事件は家庭裁判所に送られ、少年院送致や保護観察などの処分が検討されます。

少年事件では、家庭環境や親の監督の態勢が処分の判断で重視されます。
親としてどのように本人と向き合い、今後どのように監督していくかを、弁護人(家庭裁判所に送られた後は付添人)と一緒に考えることが大切です。

よくある質問(FAQ)

息子が特殊詐欺で逮捕されたと警察から連絡がありました。すぐに面会できますか。

逮捕から勾留が決まるまでの最長72時間は、家族は面会できません。
この間に本人と面会できるのは弁護士だけです。

勾留が決まった後も、特殊詐欺の事件では接見禁止が付いて面会できないことがあります。

国選弁護人が付くまで待っていてもよいですか。

被疑者国選弁護人は勾留が決まった後でなければ付かないため、逮捕直後の取調べへの助言や、勾留を避けるための働きかけはできません。

その段階から弁護士を付けるには、私選弁護人に依頼するか、当番弁護士を呼ぶ必要があります。

本人の部屋にあるスマートフォンや書類を処分してもよいですか。

処分しないでください。

事件の証拠を捨てたり隠したりすると、証拠隠滅罪にあたる可能性があり、本人の勾留や保釈の判断でも不利になりかねません。

被害者に謝りたいのですが、家族から直接連絡してもよいですか。

直接の連絡は避けてください。
被害者への働きかけを疑われるおそれがあるため、謝罪や弁償は弁護人を通じて行います。

成人した息子の被害弁償を、親が支払う義務はありますか。

本人が成人であれば、親に支払う法的な義務はありません。
援助するかどうかは任意ですが、余罪の見通しなどを弁護人と確認したうえで判断してください。

犯行グループから家に連絡が来ました。どうすればよいですか。

応じずに、すぐに警察と弁護人に知らせてください。
警察相談専用電話(#9110)でも相談を受け付けています。

まとめ

  • 警察から連絡が来たら、留置先の警察署、容疑、担当者を確認して記録しておく
  • 逮捕直後の最長72時間は家族は面会できず、本人と話せるのは弁護士だけである。被疑者国選弁護人は勾留決定後にしか付かない
  • 特殊詐欺の事件では、接見禁止や再逮捕によって身柄拘束が長引きやすく、受け子・出し子の半数以上が実刑になっている
  • 本人の持ち物の処分、犯行グループや被害者への連絡は避ける。証拠を処分すると証拠隠滅罪の問題が生じ、本人の処分にも不利に働く
  • 勤務先への連絡、差し入れ、被害弁償の援助の検討、身元引受人の準備は、弁護人と相談しながら進める
  • 犯行グループから接触があった場合は、応じずに警察と弁護人に知らせる

当事務所では、特殊詐欺で逮捕された方の接見、取調べへの対応の助言、勾留を避けるための意見書の提出、接見禁止の一部解除の申立て、被害者との示談交渉など、逮捕直後から判決までの対応をお受けしています。
ご家族からのご相談もお受けしています。

逮捕直後の72時間は、弁護士だけが本人と面会できる期間です。
ご家族が逮捕された場合は、お早めにご相談ください。

刑事弁護の弁護士費用や対応の流れについてはこちらから

当事務所の弁護士へのご相談等はこちらから

  1. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_5_3_4.html ↩︎
  2. https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf ↩︎
  3. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_5_3_2.html ↩︎

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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