【この記事の結論・要約】
- その場で捕まらなかった万引きでも、防犯カメラの映像などから人物が特定され、警察から呼び出しを受けたり、後日逮捕されたりする場合があります。窃盗罪の公訴時効は7年です。
- 警察からの呼び出しを無視すると、逮捕される可能性を高めることになります。取調べでは、黙秘権や供述調書の訂正を求める権利があります。
- 警察から連絡が来る前であれば、店舗への被害弁償・示談の申入れや自首といった手段をとることができます。どの手段をとるかで、その後の進み方が変わります。
はじめに
万引きをしたものの、その場では店員に呼び止められなかった。
数日たってから、警察から電話があり、警察署に来るよう言われた。
このような状況で、逮捕されるのか、どう対応すべきかが問題になります。
窃盗罪は、現行犯でなくても、後から犯人が特定されれば、逮捕状にもとづいて逮捕することができる犯罪です。
一方で、後から発覚した事件のすべてで逮捕されるわけではなく、呼び出しを受けて在宅のまま捜査が進む場合もあります。
この記事では、その場で捕まらなかった万引きが発覚するきっかけ、発覚した後の流れ、警察から呼び出しを受けたときの対応、まだ連絡が来ていない段階でできることを解説します。
その場で捕まらなかった万引きが後から発覚するきっかけ
防犯カメラの映像と棚卸し
店舗が被害に気づくきっかけには、棚卸しで在庫の数が合わないこと、商品の空き箱やタグが店内で見つかること、店員が不審な動きを目撃していたことなどがあります。
被害に気づいた店舗は、防犯カメラの映像を確認し、警察に被害届を出します。
警察は、店内や周辺の防犯カメラの映像、ポイントカードやクレジットカードの利用履歴、駐車場に停めた車両のナンバーなどから、人物の特定を進めます。
同じ店舗で繰り返していた場合
同じ店舗で万引きを繰り返していると、店舗が過去の映像をさかのぼって確認し、人物を把握している場合があります。
その場合、次に来店したときに店員や保安員に呼び止められ、過去の分も含めて警察に通報されることがあります。
1件の事件で警察に呼ばれた際に、映像の確認によって他の日の万引きが明らかになり、余罪として扱われる場合もあります。
セルフレジでの読み取り漏れ
セルフレジで一部の商品を読み取らずに持ち帰った場合も、後日、映像や会計の記録から発覚することがあります。
刑法第38条第1項は、故意がない行為は罰しないと定めています。
本当に読み取りを忘れていた場合には、窃盗罪は成立しません。
もっとも、故意があったかどうかは、本人の説明だけでなく、読み取らなかった商品の数や金額、商品を袋に入れる際の動き、同じことを繰り返していないかといった客観的な事情から判断されます。
実際には意図的だったにもかかわらず、読み取りを忘れたと説明することは、否認として扱われ、処分が重くなる方向に働く場合があります。
本当に意図していなかった場合には、店舗から連絡を受けた時点で代金を支払う意思を示し、警察での説明が事実と異なる内容で記録されないよう注意することが重要です。
公訴時効は7年
窃盗罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。
この期間が過ぎるまでは、起訴される可能性が残り、捜査の対象になり得ます。
犯人が国外にいる期間は、時効の進行が停止します(同法第255条第1項)。
警察から連絡が来るまでの期間に決まりはありません。
被害届が出された時期や、映像の確認と人物の特定にかかる時間によって変わり、数か月以上たってから連絡が来る場合もあります。
発覚した後の流れ
警察から電話で呼び出しを受ける場合
人物が特定されると、警察から電話などで連絡があり、警察署に来て話を聞かせてほしいと求められる場合があります。
これは、逮捕せずに行う任意の取調べのための呼び出しです。
刑事訴訟法第198条第1項は、この取調べについて次のとおり定めています。
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
刑事訴訟法第198条第1項
逮捕されていない段階では、出頭を拒むことも、取調べの途中で帰ることも、法律上は可能です。
ただし、呼び出しに応じないことは、次に述べるとおり、逮捕の判断に影響します。
逮捕状による後日逮捕
警察は、裁判官から逮捕状の発付を受けて、後日、本人を逮捕することがあります(刑事訴訟法第199条第1項)。
この場合、事前の連絡なく、早朝に自宅を訪ねて逮捕する形がとられる場合があります。
逮捕に合わせて、自宅の捜索が行われ、被害品や当日着ていた衣服などが押収されることもあります(同法第218条第1項、第220条第1項)。
後日逮捕されやすくなる事情
逮捕するかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかという観点から判断されます。
万引きの事件では、次のような事情があると、在宅のまま捜査を進めるのではなく、逮捕が選ばれる可能性が高くなります。
- 警察からの呼び出しに応じない、または連絡がつかない
- 住居が定まっていない
- 被害額が大きい、または転売目的が疑われる
- 余罪が多数疑われる
- 同じ種類の前科・前歴がある
- 複数人で犯行に及んでおり、口裏を合わせるおそれがある
- 店員を振り切って逃げた
以下の記事で、逮捕の要件と逮捕されやすいケースを解説しています。

在宅事件として進む場合
呼び出しに応じて取調べを受け、逮捕されなかった場合は、在宅事件として捜査が進みます。
警察は、取調べや裏付けの捜査を終えると、書類と証拠を検察官に送ります(いわゆる書類送検)。
その後、検察庁から呼び出しを受け、検察官による取調べを経て、不起訴、略式起訴による罰金、公判請求のいずれかの処分が決まります。
在宅事件には時間の制限がないため、警察での取調べから検察庁の呼び出しまで数か月かかる場合もあります。
以下の記事で、逮捕された後の流れと、処分の種類と分かれ目を解説しています。

警察から呼び出しを受けたときの対応
呼び出しを無視せず、日程を調整する
警察からの電話に出られなかった場合や、指定された日に都合がつかない場合には、折り返し連絡をして日程を調整します。
連絡を取らないまま放置すると、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕状が請求される可能性を高めることになります。
電話の相手が本当に警察官かどうか不安がある場合には、相手の所属する警察署と担当者の名前を聞き、警察署の代表番号にかけ直して確認する方法があります。
出頭する前に弁護士に相談し、取調べで何を聞かれるか、どう答えるかを確認しておくことができます。
弁護士が警察に連絡し、出頭の日程を調整することもあります。
取調べで聞かれることと黙秘権
取調べでは、主に次のような事項を聞かれます。
- 万引きをした日時、店舗、商品と金額
- 商品を隠した方法と、店を出るまでの行動
- 万引きをした理由
- 盗んだ商品をどうしたか(使った、捨てた、売ったなど)
- 同じ店舗や他の店舗での万引きの有無
- 仕事、家族、生活の状況
取調べの際には、自己の意思に反して供述する必要がないことが告げられます(刑事訴訟法第198条第2項)。
答えたくない質問には答えないことができます。
特に、余罪について聞かれた場合に、記憶があいまいなまま推測で回数や金額を答えると、事実と異なる内容が記録として残るおそれがあります。
何をどこまで話すかは、取調べの前に弁護士と確認しておくことが重要です。
供述調書の確認と訂正の申立て
取調べで話した内容は、警察官が供述調書にまとめます。
供述調書の確認について、刑事訴訟法第198条第4項・第5項は次のとおり定めています。
前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
刑事訴訟法第198条第4項、第5項
供述調書は、警察官が話の内容を文章にしたものであり、本人の言葉どおりに書かれるとは限りません。
読み聞かせを受けた内容が自分の話と違う場合には、訂正を求めることができ、納得できない場合には署名押印を拒むこともできます。
署名押印をした供述調書は、後の処分や裁判で証拠として使われます。
内容を確認しないまま署名をすることは避けてください。
「買うつもりだった」「忘れていた」と説明する場合
代金を支払うつもりだった、会計を忘れていたという説明は、故意がなかったという主張にあたります。
事実としてそのとおりであれば、その説明をすることになります。
一方で、防犯カメラの映像に商品をかばんに隠す様子などが映っている場合には、映像と説明が合わず、否認していると評価されます。
否認は、証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕の判断に影響し、反省していないとして処分の判断にも影響する場合があります。
事実を認めるか争うかは、その後の手続の進み方を大きく左右します。
どのように説明するかは、取調べを受ける前に弁護士と相談して決めることをお勧めします。
まだ警察から連絡が来ていない段階でできること
万引きをしてしまい、まだ警察から連絡が来ていない段階では、とれる手段がいくつかあります。
どの手段を選ぶかによって、事件がどのように進むかが変わります。
自分で店舗に謝罪・弁償に行く場合の注意点
自分で店舗に出向いて謝罪し、代金を支払いたいと考える方もいます。
この方法には、次のような点に注意が必要です。
- 店舗が、謝罪に来た時点で警察に通報する場合がある
- 店舗の方針として、本人からの謝罪や代金の受取りに応じない場合がある
- その場で話した内容が、後に店舗の担当者の証言などとして捜査で使われる場合がある
- 代金を支払っても、書面が残っていなければ、被害弁償をした事実を後で示すことが難しくなる
謝罪の気持ちを示すこと自体は、処分の判断において有利な事情になり得ます。
ただし、どのような形で申し入れるかによって結果が変わるため、店舗に連絡する前に弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士を通じて店舗に被害弁償・示談を申し入れる
弁護士が代理人として店舗に連絡し、謝罪と被害弁償、示談を申し入れる方法があります。
示談が成立し、店舗が被害届を出さないことや処罰を求めないことに合意すれば、刑事事件として扱われずに終わる可能性があります。
すでに被害届が出されている場合には、示談が成立しても捜査は続きます。
それでも、被害弁償や示談が成立していることは、逮捕の必要性や、不起訴になるかどうかの判断において考慮されます。
一方で、店舗に申入れをすれば、店舗は誰が万引きをしたかを知ることになります。
店舗が申入れに応じず、警察に届け出る場合もあるため、申入れと併せて、次に述べる自首を検討することもあります。
店舗が示談にも代金の受取りにも応じない場合の手段については、以下の記事で解説しています。

自首の要件と効果
刑法第42条第1項は、自首について次のとおり定めています。
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
刑法第42条第1項
自首とは、自ら警察などの捜査機関に出向いて自分の犯罪事実を申告し、その処分を委ねることをいいます。
自首が成立すれば、裁判所は刑を減軽することができます。
自首が成立するのは、「捜査機関に発覚する前」に申告した場合に限られます。
この文言は、平成7年の刑法改正で表記が改められる前は「未タ官ニ発覚セサル前」とされていました。
その意味について、最高裁判所は次のとおり判示しています。
刑法第四二條第一項の「未タ官ニ発覺セサル前」とは犯罪の事実が全く官に発覺しない場合は勿論犯罪の事実は発覺していても犯人の何人たるかが発覺していない場合をも包含するのであるが犯罪事実及び犯人の何人なるかが官に判明しているが犯人の所在だけが判明しない場合を包含しないものと解すべきである。
最高裁判所第二小法廷昭和24年5月14日判決(刑集3巻6号721頁)
犯罪の事実が捜査機関に知られていても、犯人が誰であるかが知られていない段階で申告すれば、自首にあたります。
これに対し、犯人が誰であるかがすでに分かっており、所在が分からないだけの場合には、自首にあたりません。
この事件では、被告人は犯行の2日後に警察署に出頭していましたが、それより前に、犯行と犯人が誰であるかが警察に判明していたため、自首は認められませんでした。
すでに警察が人物を特定している段階で出向いた場合は、法律上の自首ではなく、出頭として扱われます。
出頭であっても、自ら申し出たことは、反省を示す事情として処分の判断で考慮されます。
自首や出頭をしたことは、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す事情にもなり、在宅事件として扱われる可能性を高める事情になり得ます。
もっとも、自首をすれば必ず逮捕されないというわけではありません。
弁護士が同行し、逮捕の必要がないことを示す資料を併せて提出する方法もあります。
してはいけないこと
発覚をおそれて次のような行動をとると、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断され、逮捕される可能性を高めることになります。
- 店舗に対し、警察に届け出ないよう求めたり、防犯カメラの映像の消去を求めたりする
- 一緒に万引きをした人と、説明の内容を打ち合わせる
- 盗んだ商品を転売する
- 警察から連絡が来た後に、電話番号を変えたり、転居して連絡を絶ったりする
店舗に対して警察に届け出ないよう強く求めれば、それ自体が別の問題を生むことにもなります。
店舗との連絡は、弁護士を通じて行うことをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
- 万引きの後日逮捕は、いつまであり得ますか。
-
窃盗罪の公訴時効は7年であり、この期間が過ぎるまでは、後日逮捕や警察からの呼び出しの可能性が残ります(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。
警察から連絡が来るまでの期間に決まりはなく、数か月以上たってから連絡が来る場合もあります。 - 一度だけの万引きでも、後日逮捕されますか。
-
一度だけでも、被害届が出され、防犯カメラの映像などから人物が特定されれば、警察から呼び出しを受ける可能性があります。
逮捕されるかどうかは、回数だけでなく、呼び出しに応じるか、身元がはっきりしているか、被害額や余罪の有無といった事情によって決まります。 - 警察からの電話に出なかったらどうなりますか。
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電話に出られなかっただけで直ちに逮捕されるわけではありませんが、連絡を取らないまま放置すると、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕状が請求される可能性を高めることになります。
都合がつかない場合は、折り返し連絡をして日程を調整してください。 - セルフレジで読み取りを忘れただけでも罪になりますか。
-
本当に読み取りを忘れていた場合には、故意がないため窃盗罪は成立しません(刑法第38条第1項)。
ただし、故意の有無は、読み取らなかった商品の数や金額、袋に入れる際の動き、同じことを繰り返していないかといった事情から判断されます。 - 自首すれば逮捕されませんか。
-
自首をすれば必ず逮捕されないというわけではありません。
もっとも、自ら申告したことは、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す事情になり、在宅事件として扱われる可能性を高める事情になり得ます。
自首が成立すれば、裁判所は刑を減軽することができます(刑法第42条第1項)。 - 自分で店に謝りに行ったほうがよいですか。
-
謝罪の気持ちを示すことは有利な事情になり得ますが、店舗がその場で警察に通報する場合や、本人からの謝罪に応じない場合があります。
代金を支払っても書面が残らなければ、弁償の事実を後で示すことが難しくなるため、店舗に連絡する前に弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- その場で捕まらなかった万引きも、防犯カメラの映像などから後日発覚する場合がある
- 窃盗罪の公訴時効は7年であり、その間は捜査の対象になり得る
- 発覚した後は、警察から呼び出しを受けて在宅で捜査が進む場合と、逮捕状により後日逮捕される場合がある
- 呼び出しを無視すると、逮捕される可能性を高めることになる
- 取調べでは黙秘権があり、供述調書の訂正を求め、署名押印を拒むこともできる
- 警察から連絡が来る前であれば、弁護士を通じた被害弁償・示談の申入れや自首を検討できる
当事務所では、万引き・窃盗事件について、警察から呼び出しを受けた段階や、まだ連絡が来ていない段階からのご相談に対応しています。
店舗への被害弁償・示談の申入れ、自首や出頭への同行、取調べへの対応について、事案に応じた進め方をご説明します。
万引きをしてしまい、今後の対応にお悩みの方は、当事務所にご相談ください。
警察から連絡が来る前と後とでは、とれる手段が変わります。
お早めにご相談ください。
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