受け子で「詐欺だと知らなかった」は通用するか|故意の判断を解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 荷物や現金の中身が詐欺の被害品だと知らなかった場合、詐欺の故意がなければ詐欺罪は成立しません。
  2. ただし、故意には「詐欺かもしれない」という認識も含まれ、最高裁判所は、受け取り方の不自然さや報酬などの客観的な事情から、この認識を推認しています。
  3. 高裁で故意が否定されて無罪となった事件も、最高裁で逆転有罪となっており、「知らなかった」と争うかどうかは、取調べへの対応を含めて慎重に判断する必要があります。

はじめに

SNSやインターネットの掲示板で「荷物を受け取るだけ」「ATMでお金を下ろすだけ」といった仕事に応じ、後になって、それが特殊詐欺の受け子や出し子だったと知らされることがあります。
「詐欺だとは知らなかったのに罪になるのか」という点は、逮捕された本人や家族にとって切実な問題です。

犯罪は、罪を犯す意思、つまり故意がなければ成立しないのが原則です。
しかし、特殊詐欺の受け子については、「中身は知らなかった」という主張が裁判でたびたび争われ、最高裁判所が故意を認める判断を重ねてきました。

この記事では、詐欺罪の故意とは何かを説明したうえで、最高裁判所がどのような事情から受け子の故意を認めたのか、高裁で無罪とされた事件がなぜ覆されたのかを、判決の内容に即して整理します。
そのうえで、「知らなかった」と主張する場合に注意すべき点を説明します。

詐欺罪の「故意」とは何か

故意がなければ罪は成立しない

刑法は、故意のない行為は原則として処罰しないと定めています。

罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

刑法38条1項

詐欺罪には、過失による場合を処罰する特別の規定はありません。
そのため、受け子が、受け取った荷物や現金が人をだまして送らせたものだと認識していなければ、詐欺罪は成立しません。

「詐欺かもしれない」という認識でも足りる

ただし、故意は「これは詐欺だ」とはっきり分かっている場合に限られません。
「詐欺かもしれない」と認識しながら、それでもかまわないと考えて行為に及んだ場合も、故意があると評価されます。
これを未必の故意といいます。

一方で、「何か悪いことに関わっているかもしれない」という漠然とした認識だけで、詐欺の故意が認められるわけではありません。
後に紹介する最高裁判所の判決も、詐欺にあたる可能性の認識があったかどうかを問題にしています。

内心は客観的な事情から推認される

人が何を考えていたかは、外から直接確かめることができません。
そのため裁判では、本人がどのような経緯で仕事を引き受け、どのような指示を受け、どのような方法で荷物を受け取り、報酬をいくら受け取っていたかといった客観的な事情から、故意があったかどうかを推認します。

本人が「知らなかった」と供述していても、客観的な事情から詐欺の可能性を認識していたと推認でき、その推認を覆す事情がなければ、故意は認められます。

また、特殊詐欺の受け子は、電話で被害者をだましたかけ子などと直接話したことがない場合も多くあります。
それでも、詐欺の可能性を認識しながら役割を引き受けていれば、共犯者との共謀も認められ、詐欺罪の共同正犯として処罰されます。

最高裁は何を根拠に故意を認めたか

受け子の故意については、最高裁判所が平成30年と令和元年に、相次いで判断を示しています。
いずれも、荷物を宅配便で送らせる手口の事件で、高裁が故意を否定して無罪とした判断を、最高裁判所が覆したものです。

マンションの空室で荷物を受け取った事案

一つ目は、知人からの指示を受け、マンションの空室で名宛人になりすまして宅配便を受け取り、回収役に渡していた受け子の事件です。
被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同じような受け取りを約20回繰り返し、1回につき約1万円の報酬などを受け取っていました。
被告人は、何らかの犯罪に加担している認識はあったものの、荷物の中身は拳銃や薬物だと思っていたと主張していました。

最高裁判所は、次のように述べて詐欺の故意を認めました。

以上の事実は,荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり,本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず,それ自体から,被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものというべきである。

最高裁判所第三小法廷平成30年12月11日判決・刑集72巻6号672頁

そのうえで、被告人は荷物の中身を確認したわけでもなく、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないとして、故意と共謀を認めています。

自宅で荷物を受け取った事案

二つ目は、知人の暴力団組員から、自宅で荷物を受け取ってバイク便に渡す仕事に誘われた受け子の事件です。
被告人は、荷物1個につき5,000円から1万円の報酬を約束され、他人の運転免許証の写しや連絡用のプリペイド式携帯電話を渡されたうえで、筆跡を変えて受取人の名前を書く、荷物は絶対に開けないといった指示を受けていました。
そして、他人宛ての荷物を複数回受け取り、約5分後に来たバイク便の男に渡していました。

最高裁判所は、次のように述べています。

被告人は,Aの依頼を受けて,自宅に配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り,直ちに回収役に渡す仕事を複数回繰り返し,多額の報酬を受領している。以上の事実だけでも,Aが依頼した仕事が,詐欺等の犯罪に基づいて送付された荷物を受け取るものであることを十分に想起させるものであり,被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させる。

最高裁判所第二小法廷平成30年12月14日判決・刑集72巻6号737頁

この事件では、被告人は捜査段階から、荷物の中身について「現金とは思わなかった」「金地金や宝石類、他人名義の預金通帳などの可能性を考えた」と供述する一方で、詐欺の被害品である可能性を認識していたという趣旨の供述もしていました。
最高裁判所は、この供述の信用性を疑わせる事情はないとして、故意を認めています。

宅配ボックスから荷物を取り出した事案

三つ目は、マンションの集合郵便受けの投入口から他人宛ての不在連絡票を抜き取り、そこに書かれた暗証番号を使って宅配ボックスから荷物を取り出し、回収役に渡した受け子の事件です。
この事件で問題になった受け取りは2回で、上の二つの事件と比べると回数は多くありません。

高裁は、このような事情だけでは詐欺の故意を推認できず、以前から同じような取り出しを繰り返していた、別のマンションでも同じことをしていたといった事実が加わらなければならないとして、この部分を無罪としていました。

これに対し最高裁判所は、他人の郵便受けから不在連絡票を取り出すという受け取り方が著しく不自然であることなどから、依頼者が居住者ではないのに居住者宛ての荷物を受け取ろうとしていると被告人が認識していたと推認できるとしたうえで、次のように述べました。

以上によれば,被告人は,送り主は本件マンションに居住する名宛人が荷物を受け取るなどと誤信して荷物を送付したものであって,自己が受け取る荷物が詐欺に基づいて送付されたものである可能性を認識していたことも推認できるというべきである。

最高裁判所第二小法廷令和元年9月27日判決・刑集73巻4号47頁

最高裁判所は、高裁が必要だとした「受け取りの繰り返し」などの事実について、故意を推認するのに不可欠なものとはいえないとしています。
また、「居住者から荷物の受け取りを頼まれたと思っていた」という被告人の供述は、受け取り方法などに照らして信用できないとしました。

3つの判決に共通する判断の枠組み

三つの判決を並べると、次のようになります。

事案故意を推認した主な事情本人の主張
空室で受け取り(平成30年12月11日)名宛人へのなりすまし、回収役への引渡し、約20回の繰り返し、1回約1万円の報酬、犯罪への加担の自認中身は拳銃や薬物だと思っていた
自宅で受け取り(平成30年12月14日)名宛人へのなりすまし、直後に回収役へ引渡し、複数回の繰り返し、多額の報酬、他人の免許証の写しや専用の携帯電話の受領現金とは思わなかった(ただし詐欺の可能性の認識を認める供述もあった)
宅配ボックスから取り出し(令和元年9月27日)他人の郵便受けから不在連絡票を抜き取るという著しく不自然な受け取り方、回収役への引渡し居住者から受け取りを頼まれたと思っていた

共通しているのは、まず、名宛人になりすまして荷物を受け取り、すぐに回収役に渡すといった客観的な事情から「詐欺の可能性を認識していた」ことを推認し、次に、その認識を否定するような事情があるかを検討するという判断の流れです。
本人が「知らなかった」と述べるだけでは、この推認は覆りません。
認識を否定する具体的な事情が必要になります。

高裁では無罪とされていた

三つの最高裁判決は、いずれも高裁の無罪判決を覆したものです。
つまり、同じ事実関係について、裁判官の判断が分かれていたことになります。
高裁がどのような理由で故意を否定したのかは、「知らなかった」という主張がどこで争われるのかを知るうえで参考になります。

手口が広く知られていたかを重視した判断

空室で受け取った事案について、高裁は、次のように述べて故意を否定していました。

被告人が,同様の形態の行為を繰り返していたからといって,自らが受け取った荷物の中身が詐取金である可能性を当然に認識していたはずとの根拠にはならない。

福岡高裁宮崎支部平成28年11月10日判決

高裁は、繰り返し受け取っていたことから詐欺の可能性の認識を推認するには、空室を利用して現金を送らせる手口が社会に広く知られ、知らない方がおかしいといえる状況が必要だと考えました。
そして、被告人が知っていたのは、何らかの犯罪に組織的に加わっていることまでであり、それが詐欺だとまでは認識していなかった可能性があるとしたのです。

しかし最高裁判所は、先に引用したとおり、手口が報道などで広く知られていたかどうかにかかわらず、受け取りの状況そのものから詐欺の可能性の認識を推認できると判断しました。

捜査段階の供述の信用性を疑った判断

自宅で受け取った事案について、高裁は、被告人の捜査段階の自白は、詐欺に関連付けた答えを得るために誘導的にされた検察官の質問に対する答えとして引き出されたもので、受け取った時点の実際の内心を述べたものか疑わしいとして、無罪としていました(東京高裁平成28年10月14日判決)。

最高裁判所は、被告人の供述全体をみても自白の信用性を疑わせる事情はないとして、この判断を退けています。
この事件は、取調べで何をどのように話したかが、故意の判断を大きく左右することを示しています。

一度の事件ごとに認識を検討した判断

宅配ボックスから取り出した事案について、高裁は、同じ被告人が別の日に起こした詐欺未遂事件では故意を認めながら、その前の事件については、その時点で存在した事情だけでは故意を推認するのに合理的な疑いが残るとして無罪としていました(東京高裁平成30年7月20日判決)。

最高裁判所は、事後的な事情を含めて故意を推認できる場合もあるとしたうえで、受け取り方の不自然さから故意を認めています。

ここから読み取れること

三つの事件は、いずれも最終的に故意が認められました。
受け子が名宛人になりすまして荷物を受け取り、回収役に渡していたという事情がある場合、「中身は知らなかった」という主張だけで無罪となることは難しいのが現状です。

他方で、高裁の判断が分かれたことが示すように、故意の有無は、仕事を引き受けた経緯、受けていた指示の内容、受け取り方、報酬、捜査段階の供述といった個々の事情によって左右されます。
故意を争う余地があるかどうかは、事件ごとの事実関係を具体的に検討しなければ判断できません。

出し子の場合

ATMから現金を引き出す出し子についても、同じように「何の詐欺かは知らなかった」という主張が争われます。

令和7年に最高裁判所が判断した事件では、インターネットの掲示板で知り合った者から、暗証番号が書かれた他人名義のキャッシュカードを受け取り、平日の日中にATMの近くで待機し、電話の指示があればすぐに現金を引き出すよう依頼された出し子が問題になりました。
報酬は、引き出した現金50万円につき1万円とされていました。

この事件の詐欺は、被害者に「還付金を受け取れる」とうそを言い、振込送金の操作だと気付かせないままATMを操作させて送金させる手口で、刑法上は電子計算機使用詐欺罪にあたります。
高裁は、被告人がこの詐欺の内容をまったく把握していなかったなどとして、電子計算機使用詐欺罪の共謀を否定し、この部分を無罪としていました。

最高裁判所は、次のように述べて共謀を認めています。

以上の事実関係は、被告人の引き出す現金が詐欺等の犯罪に基づいて被告人の所持するキャッシュカードに係る預貯金口座に振込送金されたものであることを十分に想起させ、本件のような態様の電子計算機使用詐欺も、被告人が想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていたといえるから、被告人は、そのような電子計算機使用詐欺に関与するものである可能性を認識していたと推認できる。

最高裁判所第三小法廷令和7年7月11日判決・刑集79巻5号199頁

この判決には、出し子において、実行犯の行う犯罪行為が電子計算機使用詐欺罪にあたるかどうかまで認識する必要はないとする補足意見が付されています。
つまり出し子は、具体的な手口や罪名まで知らなかったとしても、特殊詐欺などの犯罪で得られた金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば、責任を問われる可能性があります。

途中で詐欺だと気づいた場合

気づいた後も関与を続けた場合

最初は詐欺だと思っていなかったとしても、途中で詐欺かもしれないと気づいた後に受け取りを続ければ、その後の受け取りについては故意が認められます。

また、同じような受け取りを繰り返していたこと自体が、詐欺の可能性を認識していたことを推認させる事情になります。
先に紹介した最高裁判決でも、受け取りを繰り返していたことが故意を推認する事情の一つとされています。

だまされたふり作戦が始まった後に加わった場合

被害者が途中でうそに気づき、警察と協力して、だまされたふりをしたまま空の荷物を送る捜査手法があります。
これを「だまされたふり作戦」といいます。

被告人は、被害者がすでにだまされたふり作戦を始めた後に、それを知らないまま、報酬の約束を受けて荷物の受け取りを引き受け、空の荷物を受け取りました。
第一審は、被告人が加わった時点では詐欺の結果が生じる危険がなくなっていたとして無罪としましたが(福岡地裁平成28年9月12日判決)、高裁は有罪とし、最高裁判所も次のように判断しました。

だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人は,その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷平成29年12月11日決定・刑集71巻10号535頁

この事件でも、被告人が「詐欺の被害金を受け取る役割である可能性を認識しつつ」受け取りを引き受けたことが前提とされています。
故意が必要であることは変わりませんが、被害者がだまされていなかったからといって、罪が成立しなくなるわけではありません。

「知らなかった」と主張するときの注意点

取調べでの供述が結果を左右する

自宅で受け取った事案で見たとおり、捜査段階で「詐欺かもしれないと思った」という趣旨の供述をすると、後から「本当は知らなかった」と主張しても、その供述が故意を認める根拠として使われることがあります。

被疑者には、自分の意思に反して供述しない権利(黙秘権)が保障されています(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。
また、取調べの内容をまとめた供述調書は、内容に誤りがあれば訂正を求めることができ、署名や押印を拒むこともできます(刑事訴訟法198条4項・5項)。

逮捕された直後は、状況が分からないまま、捜査官の質問に合わせて答えてしまいがちです。
故意を争う可能性がある場合は、どのように取調べに臨むかを、できるだけ早い段階で弁護人と相談しておくことが重要です。

否認することの負担

故意を争い、容疑を否認すると、身柄拘束が長引く可能性が高くなります。
共犯者と口裏を合わせるおそれがあるとして、家族との面会や手紙のやり取りを禁じる接見禁止が付きやすくなり、起訴された後の保釈も認められにくくなります。

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また、否認したまま有罪になれば、反省していないと評価され、量刑で不利に扱われることもあります。
否認するかどうかは、こうした負担も踏まえて判断する必要があります。

故意を争うか、認めて処分の軽減を目指すか

故意を争う余地があるかどうかは、次のような事情を具体的に検討して判断します。

  • どのような募集に、どのような説明を受けて応じたか
  • 受け取りの方法や指示の内容に、不自然な点がどの程度あったか
  • 何回関与したか、報酬をいくら受け取っていたか
  • 指示役とのメッセージなど、当時の認識を示す客観的な証拠が残っているか
  • 逮捕後の取調べで、どのような供述をしているか

故意を争うのが難しい事情がある場合は、事実を認めたうえで、被害弁償や家族による監督の態勢を整え、処分の軽減を目指すことになります。
特殊詐欺では、認定される事件の数が実刑か執行猶予かを大きく左右するため、余罪の見通しも踏まえて方針を決める必要があります。

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「騙されて受け子にされた」事情はどう扱われるか

闇バイトの募集では、仕事の内容をはっきり説明しないまま応募させ、身分証の画像などを送らせた後で、実際の仕事を指示するという手口が見られます。

このように、当初は詐欺だと知らずに応募したという事情があっても、実際に受け取りをした時点で詐欺の可能性を認識していれば、故意は認められます。
ただし、関与に至った経緯は、量刑を判断する際に考慮される事情になり得ます。
身分証を送らせて「家族に危害を加える」などと脅し、抜けられなくしていた場合も同様です。

こうした経緯を示すには、募集の画面やメッセージのやり取りなどの記録が重要です。
削除せずに残しておくことが大切です。

本人が未成年の場合

受け子として検挙される人には少年も含まれます。
令和7年に特殊詐欺で検挙された少年は468人で、そのうち353人が受け子でした(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」)。

少年の事件は、捜査の後に家庭裁判所へ送られ、少年院送致や保護観察などの処分が検討されます。
故意の有無についての考え方は成人の場合と同じで、少年だから「知らなかった」が認められやすいというわけではありません。

よくある質問(FAQ)

受け子をしてしまいましたが、詐欺だとは本当に知りませんでした。それでも罪になりますか。

詐欺の故意がなければ詐欺罪は成立しません。

ただし、故意には「詐欺かもしれない」という認識も含まれ、名宛人になりすまして荷物を受け取り、すぐに回収役に渡していたといった事情があれば、最高裁判所の判例に照らして、詐欺の可能性を認識していたと推認されやすくなります。

荷物の中身は薬物や拳銃だと思っていました。詐欺の故意は否定されますか。

否定されるとは限りません。

中身は拳銃や薬物だと思っていたと主張した受け子について、最高裁判所は、受け取り方や報酬などの事情から詐欺の可能性を認識していたことが強く推認されるとして、故意を認めています(最高裁判所平成30年12月11日判決)。

受け取ったのは1、2回だけです。回数が少なければ故意は否定されますか。

回数が少ないことだけで故意が否定されるわけではありません。

宅配ボックスから2回荷物を取り出した事件で、最高裁判所は、受け取りの繰り返しは故意を推認するのに不可欠ではないとし、受け取り方の不自然さから故意を認めています。

取調べで「詐欺かもしれないと思った」と話してしまいました。今から否定できますか。

後から供述を変えることはできますが、捜査段階の供述は裁判で重視されやすく、自白の信用性を疑った高裁判決が最高裁判所で覆された例もあります。
どのような状況で供述したかを弁護人に詳しく伝え、今後の取調べへの対応を相談してください。

出し子として現金を引き出しましたが、どんな詐欺かは知りませんでした。罪になりますか。

罪になる可能性があります。

最高裁判所は、特殊詐欺などの犯罪で得られた金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば、具体的な手口や罪名まで知らなくても、電子計算機使用詐欺の共謀が認められるとしています(最高裁判所令和7年7月11日判決)。

被害者がだまされたふりをしていた場合でも、受け子は罪になりますか。

罪になります。

最高裁判所は、だまされたふり作戦が始まったことを知らずに受け取りに関与した受け子について、詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとしています(最高裁判所平成29年12月11日決定)。

まとめ

  • 詐欺の故意がなければ詐欺罪は成立しないが、故意には「詐欺かもしれない」という未必の認識も含まれる
  • 最高裁判所は、名宛人へのなりすまし、不自然な受け取り方、回収役への引渡し、報酬などの客観的な事情から詐欺の可能性の認識を推認し、それを否定する事情がなければ故意を認めている
  • 高裁で故意が否定されて無罪となった事件も、最高裁判所で相次いで覆されており、「知らなかった」という主張だけで無罪となることは難しい
  • 出し子は、具体的な手口や罪名を知らなくても、犯罪で得られた金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば責任を問われ得る
  • 捜査段階の供述は故意の判断を大きく左右するため、故意を争うかどうかは、否認による身柄拘束の負担や余罪の見通しも含めて、弁護人と相談して判断する必要がある

当事務所では、特殊詐欺の受け子・出し子として逮捕された方の接見、取調べへの対応の助言、故意を争う事件の弁護、被害者との示談交渉など、捜査の段階から判決までの対応をお受けしています。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。

故意を争うかどうかは、逮捕直後の取調べでの対応によって大きく左右されます。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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