情状証人・身元引受人とは|家族が裁判で求められる役割と準備

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 刑事事件の身元引受人は、釈放された本人を引き受けて監督することを約束する人で、保証人のような金銭上の責任を負うわけではありません。
  2. 情状証人は、刑事裁判で本人の更生を支える態勢などを証言する人で、主に家族が担う役割です。
  3. どちらも、具体的な監督の計画を示せるかどうかが、釈放や保釈、執行猶予の判断に影響します。

はじめに

家族が逮捕されると、弁護士から「身元引受人になってほしい」「裁判で情状証人として証言してほしい」と頼まれることがあります。
しかし、身元引受人になると何か責任を負うのか、法廷で何を聞かれるのか、分からないことばかりで不安に感じることもあるでしょう。

この記事では、刑事事件の身元引受人と情状証人について、それぞれの役割、求められる場面、法的な責任の有無を説明します。
そのうえで、情状証人の尋問の流れと準備、特殊詐欺の事件で家族に求められる監督の内容を整理します。

刑事事件の身元引受人とは

介護施設などの身元引受人との違い

「身元引受人」という言葉は、介護施設への入居や入院、就職の際にも使われます。
こうした場面の身元引受人は、費用の支払いの保証や、緊急時の対応などを求められることがあります。

これに対して、刑事事件の身元引受人は、逮捕・勾留されている本人が釈放された後に、本人を引き受けて生活を見守り、捜査や裁判の呼び出しに応じさせることを約束する人をいいます。

身元引受人が求められる場面

刑事事件で身元引受人が求められるのは、主に次のような場面です。

  • 逮捕された後、勾留を請求しないよう、または勾留を認めないよう、検察官や裁判官に求める場合
  • 起訴された後、保釈を請求する場合
  • 身柄を拘束されずに捜査が進む在宅事件で、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す場合
  • 裁判で、執行猶予を求める事情として、社会に戻った後の監督の態勢を示す場合
  • 少年事件で、家庭裁判所に、家庭での監督の態勢を示す場合

いずれの場面でも、身元引受人がいることは、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいこと、社会の中で立ち直れる環境があることを示す事情として考慮されます。

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身元引受書の内容

身元引受人になる場合は、「身元引受書」という書面を作成し、弁護人を通じて検察官や裁判所に提出します。
身元引受書には、一般に次のような内容を記載します。

  • 身元引受人の氏名、住所、連絡先、職業と、本人との関係
  • 本人を引き受けて監督すること
  • 捜査機関や裁判所からの呼び出しに必ず応じさせること
  • 事件の関係者(被害者、共犯者など)と接触させないこと
  • 具体的な監督の方法(同居する、毎日連絡を取る、など)

あわせて、身元引受人の身分証の写しや、同居することを示す住民票などを添付することもあります。

法的な責任はあるか

身元引受人になっても、本人が起こした事件について、身元引受人が刑事上の責任を負うことはありません。
また、本人の借金や被害弁償の支払いを保証する保証人とは異なり、金銭を支払う法的な義務を負うものでもありません。

ただし、身元引受人として約束した監督ができず、本人が逃亡したり、再び事件を起こしたりすれば、その後の手続で身元引受人の約束が信用されなくなります。
引き受けるのであれば、実際に監督できる内容を約束することが大切です。

なお、令和6年5月からは、保釈の際に、裁判所が被告人を監督する「監督者」を選任する制度が設けられました。
監督者は、被告人の出頭を確保するための監督義務を負い、監督保証金を納めます。
監督の義務を怠れば、監督保証金が没取されることがあり、通常の身元引受人とは責任の重さが異なります(刑事訴訟法98条の4以下)。

身元引受人になれる人

家族が中心になる

身元引受人になるのは、本人の親、配偶者、兄弟姉妹など、本人と生活をともにしている家族が中心です。
家族がいない場合や、家族が引き受けられない場合は、雇用主や、本人をよく知る知人がなることもあります。

同居しているかどうかが重視される

身元引受人が本人と同居していれば、日常的に本人の生活を見守ることができ、監督の実効性が高いと評価されます。
遠方に住む家族が身元引受人になる場合は、本人を自分の住居に引き取る、毎日決まった時間に連絡を取るなど、離れていても監督できる方法を具体的に示す必要があります。

本人の生活を把握できない人や、事件の関係者にあたる人は、身元引受人としての信用が低く評価されます。

情状証人とは

情状とは何か

刑事裁判では、有罪かどうかを判断した後、どのような刑を科すか(量刑)を判断します。
量刑では、犯罪の内容だけでなく、本人の反省の程度、被害弁償の状況、社会に戻った後の環境など、さまざまな事情が考慮されます。
こうした量刑を判断するための事情を「情状」といいます。

情状証人の役割

情状証人は、本人に有利な情状を裁判で証言する証人です。
主に次のような点を証言します。

  • 本人との関係と、本人の普段の人柄
  • 事件を知ったときの気持ちと、事件後の本人の様子
  • 被害弁償への協力の状況
  • 社会に戻った後に、本人をどのように監督していくか

情状証人の証言は、裁判官が執行猶予を付けるかどうか、刑期をどの程度にするかを判断するうえで考慮される事情の一つです。
とくに、社会に戻った後の監督の態勢が具体的であれば、再び犯罪をするおそれが小さいと評価されやすくなります。

宣誓と偽証罪

情状証人も証人であるため、証言の前に、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを宣誓します(刑事訴訟法154条)。
宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば、偽証罪にあたります(刑法169条)。

本人をかばいたい気持ちから、事実と異なることを証言してはいけません。
分からないことは分からないと答え、事実に基づいて証言することが大切です。

情状証人の尋問の流れ

尋問の順序

情状証人の尋問は、一般に次の順序で行われます。

  • 弁護人による質問(主尋問):証人を請求した弁護人が、本人との関係や今後の監督の計画などを質問する
  • 検察官による質問(反対尋問):検察官が、証言の内容の信用性や、監督の実効性について質問する
  • 裁判官による質問(補充尋問):裁判官が、確認したい点について質問する

情状証人の尋問は、1回の公判期日の中で行われます。

聞かれることの例

弁護人からは、次のような質問が想定されます。

  • 本人とはどのような関係ですか
  • 事件のことを知ったとき、どう思いましたか
  • 面会したとき、本人はどのような様子でしたか
  • 被害弁償について、どのように協力しましたか
  • 本人が社会に戻ったら、どのように生活させますか

検察官からは、次のような厳しい質問を受けることもあります。

  • これまで、本人の行動に気づかなかったのですか
  • 以前にも同じように監督すると約束したことがあるのではないですか
  • 仕事をしながら、本当に毎日監督できるのですか

こうした質問にも、嘘をついたりせず、これまで気づけなかったことを認めたうえで、今後の具体的な監督の方法を答えることが大切です。

情状証人として準備すること

弁護人との打合せ

尋問の前に、弁護人と打合せを行い、どのような質問をするか、どのように答えるかを確認します。
検察官からの質問も想定して準備しておくと、当日落ち着いて答えることができます。

ただし、答えを丸暗記する必要はありません。
暗記した文章を読み上げるような証言は、かえって信用性を疑われることがあります。
自分の言葉で、事実と気持ちを伝えることが大切です。

監督の計画を具体的にする

「しっかり見守ります」という抽象的な約束では、裁判官を説得することはできません。
誰が、どこで、どのように本人の生活を見守るのかを、具体的に考えておく必要があります。

たとえば、同居して生活を共にすること、帰宅時間を決めること、収入と支出を家族が確認すること、仕事の確保に協力すること、定期的に家族で話し合いの場を持つことなどです。

服装や話し方

法廷には、清潔感のある落ち着いた服装で出席してください。
スーツである必要はありませんが、華美な服装は避けたほうがよいでしょう。
証言の際は、質問をよく聞き、はっきりと答えることを心がけてください。

情状証人になれない、なりたくない場合

家族の事情で情状証人として出廷できない場合や、法廷で証言することに強い不安がある場合は、弁護人に相談してください。
家族以外に、雇用主や本人をよく知る人が情状証人になることもあります。

法廷での証言の代わりに、本人の監督を約束する書面(上申書)や、寛大な処分を求める書面(嘆願書)を作成し、弁護人が証拠として提出することもあります。
ただし、書面は検察官が証拠とすることに同意しなければ、証拠として採用されない場合があります。

特殊詐欺の事件で求められる監督の内容

特殊詐欺の受け子や出し子として関与した本人の監督では、一般的な監督に加えて、次のような点を具体的に示すことが求められます。

犯行グループとの関係を断つ

闇バイトの犯行グループは、匿名性の高いアプリで連絡を取り、応募の際に送らせた身分証などで本人を脅していることがあります。
社会に戻った後に、グループから再び接触されるおそれがあります。

スマートフォンを買い替えて電話番号やアカウントを変える、使っていたアプリを削除する、グループから連絡があった場合はすぐに家族と警察に知らせることを約束させるといった具体的な対策を示すことが重要です。

お金の管理

闇バイトに応募した背景に、借金や生活費の不足があることもあります。
家族が収入と支出を確認する、借金があれば整理の方法を考えるなど、お金の問題を解決する計画を示すことも考えられます。

仕事や学校

社会に戻った後に、仕事や学校に通える環境があることは、再び犯罪に関わらない環境があることを示す重要な事情です。
家族が就職先を探す、雇用主に事情を説明して雇用の継続を求めるなどの協力をすることもあります。

特殊詐欺の量刑では、関与した件数や被害弁償の状況に加えて、こうした監督の態勢が執行猶予の判断で考慮されます。

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本人が未成年の場合は、家庭裁判所で保護者として家庭環境や監督の態勢を問われることになります。

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よくある質問(FAQ)

刑事事件の身元引受人になると、何か責任を負いますか。

本人の事件について刑事上の責任を負うことはなく、保証人のように金銭を支払う法的な義務もありません。
ただし、約束した監督ができなければ、その後の手続で信用されなくなるため、実際に監督できる内容を約束することが大切です。

身元引受人は誰でもなれますか。

法律上の資格はありませんが、本人の親や配偶者など、本人と同居して生活を見守れる家族が望ましいとされます。
家族が引き受けられない場合は、雇用主や知人がなることもあります。

情状証人とは何ですか。

刑事裁判で、本人の人柄や事件後の反省、社会に戻った後の監督の態勢など、量刑で考慮される有利な事情を証言する証人です。
主に家族が務め、その証言は執行猶予の判断などで考慮されます。

情状証人は法廷でどんなことを聞かれますか。

弁護人からは本人との関係や今後の監督の計画を、検察官からは監督の実効性などを質問されます。
裁判官から直接質問されることもあります。

情状証人で嘘をつくとどうなりますか。

情状証人は証言の前に宣誓するため、虚偽の証言をすれば偽証罪にあたります。
本人をかばいたい気持ちがあっても、事実に基づいて証言してください。

法廷で証言するのが不安です。証言しないといけませんか。

証言は義務ではないため、弁護人に相談してください。
家族以外の人が証言することや、上申書や嘆願書などの書面を提出することで代える方法もあります。

まとめ

  • 刑事事件の身元引受人は、釈放された本人を引き受けて監督することを約束する人であり、介護施設などの身元引受人とは役割が異なる
  • 身元引受人は、勾留や保釈、在宅事件、執行猶予の判断、少年事件などで、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことや立ち直りの環境があることを示す
  • 身元引受人は刑事上の責任や金銭を支払う法的な義務を負わないが、保釈の監督者に選任された場合は監督保証金の没取などの責任がある
  • 情状証人は、本人に有利な情状を裁判で証言する証人であり、宣誓したうえで証言するため、虚偽の証言は偽証罪にあたる
  • 身元引受人・情状証人のいずれも、同居や生活の管理など、具体的な監督の計画を示すことが重要である
  • 特殊詐欺の事件では、犯行グループとの関係を断つこと、お金の管理、仕事や学校の環境を具体的に示すことが求められる

当事務所では、逮捕された方の接見や刑事弁護に加えて、身元引受人や情状証人となるご家族との打合せ、身元引受書の作成、尋問の準備などをお受けしています。
特殊詐欺の事件についてもご相談いただけます。

身元引受人や情状証人の準備は、釈放や保釈、執行猶予の判断に影響します。
お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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