この記事の結論・要約
- 「ネットストーカー」は法律上の用語ではありません。オンライン上の行為であっても、ストーカー規制法の「つきまとい等」の類型に当てはまるかどうかで判断されます。
- メッセージの繰り返しの送信、監視していると告げる行為、面会の要求、名誉を害する投稿などは、類型に当てはまり得ます。一方、閲覧やフォローのみの行為は、当てはめが難しい場合があります。
- 相手が匿名の場合、発信者情報開示請求により特定する方法がありますが、この手続は投稿等によって権利が侵害されたことが明らかであることが要件とされています。閲覧やフォローが繰り返されているだけでは、利用できないことがあります。
はじめに
SNSの投稿をすべて見られている、ブロックしても別のアカウントから閲覧される、鍵付きのアカウントにフォロー申請が繰り返し届く。
こうした状況について、「ネットストーカー」という言葉で相談を受けることがあります。
もっとも、この言葉は法律上の用語ではありません。
そのため、「ネットストーカーだから違法である」という判断にはなりません。
オンライン上の行為であっても、ストーカー規制法の類型に当てはまるかどうかを個別に検討することになります。
この記事では、オンライン上の行為が規制の対象となる場合とならない場合を整理したうえで、相手が匿名である場合にできること、および警察や弁護士に相談する際の進め方について説明します。
ネットストーカーは法律上の用語ではない
規制法に「ネットストーカー」という区分はない
ストーカー規制法は、オンライン上の行為とそれ以外の行為を区別していません。
同法が規制の対象としているのは、第2条第1項に列挙された8つの類型の「つきまとい等」と、同条第3項の「位置情報無承諾取得等」です。
オンライン上の行為も、これらの類型のいずれかに当てはまる場合に規制の対象となります。
判断は類型への当てはめによる
したがって、「オンライン上の行為だから軽い」「直接会っていないから対象外だ」という判断にはなりません。
逆に、「執拗で不快だから対象になる」という判断にもなりません。
行為の内容が類型に当てはまるかどうか、および目的の要件を満たすかどうかで結論が決まります。
なお、同法が規制するのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる行為に限られます。

オンライン上の行為が規制の対象になる場合
類型ごとに、オンライン上でどのような行為が当てはまり得るかを整理します。
メッセージを繰り返し送る行為
ストーカー規制法第2条第1項第5号は、無言電話のほか、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけ、文書を送付し、または電子メールの送信等をする行為を規制しています。
同条第2項により、SNSのメッセージ機能を用いた送信や、ブログ・SNSへのコメントの書き込みも、この「電子メールの送信等」に含まれます。
要件となるのは、無言電話である場合を除き、拒まれたにもかかわらず連続して行われることです。
連絡を望まない旨を伝えた記録が残っているかどうかが、後の手続で問題になります。
監視していると告げる行為
同項第2号は、行動を監視していると思わせるような事項を告げ、または知り得る状態に置く行為を規制しています。
オンライン上では、この類型が問題になる場面が多くあります。
投稿していない行動について言及する、投稿した場所や時間帯を指摘する、外出先を知っているかのような内容を書き込むといった行為です。
直接メッセージを送らず、自分のアカウントで投稿する形であっても、相手がそれを見ることが想定される場合には「知り得る状態に置く」に当たる余地があります。
面会や交際を求める行為
同項第3号は、面会、交際その他の義務のないことを要求する行為を規制しています。
メッセージで会うことを求める、返信を求める、フォローを返すよう求めるといった行為が該当し得ます。
一度断った後も同じ要求が続いている場合は、特にそうです。
名誉を害する投稿
同項第7号は、名誉を害する事項を告げ、または知り得る状態に置く行為を規制しています。
SNSや掲示板への投稿がこれに当たる場合があります。
あわせて、名誉毀損罪や侮辱罪に当たる可能性、および民事上の損害賠償請求の対象となる可能性もあります。
性的な画像等を送りつける行為
同項第8号は、性的羞恥心を害する事項を告げ、もしくは知り得る状態に置き、または性的羞恥心を害する文書・画像等を送付し、もしくは知り得る状態に置く行為を規制しています。
交際中に撮影した画像を公開すると告げる行為や、実際に公開する行為については、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律による対応も考えられます。

「見ているだけ」の行為は対象になるか
相談として多く、かつ判断が難しいのがこの点です。
投稿を見ているだけ、フォローしているだけという行為は、メッセージの送信を伴わないため、前記の類型に当てはめることが難しい場合があります。
公開されている投稿を閲覧する行為自体は、通常、他人が行っても違法とはなりません。
不快に感じることと、法律上の規制の対象となることは別の問題です。
投稿から居場所を特定される問題
投稿から場所が分かる仕組み
写真に写り込んだ建物、看板、電車の路線、窓からの景色などから、撮影場所が推測されることがあります。
投稿の時間帯が一定している場合、生活の範囲が推測されることもあります。
特定された結果、自宅や勤務先の付近での待ち伏せに発展した事案もあります。
この段階に至れば、オンライン上の問題ではなく、第1号のつきまといや待ち伏せの問題になります。
位置情報の無断取得との関係
ストーカー規制法は、相手の承諾を得ずに位置情報を取得する行為、およびそのための機器を取り付ける行為も規制の対象としています。
令和7年12月30日からは、いわゆる紛失防止タグを用いた行為も対象に加えられました。
オンライン上の行為と併せて、持ち物に機器を取り付けられている可能性がある場合には、この点も確認してください。
相手が匿名の場合にできること・できないこと
開示請求には権利の侵害が必要
相手が匿名のアカウントである場合、氏名や住所が分からないため、弁護士から警告を行うことも、警察に相手を伝えることもできません。
この場合、発信者情報開示請求により相手を特定する手続が考えられます。
もっとも、この手続は、投稿等によって自分の権利が侵害されたことが明らかである場合に認められるものです。
「相手が誰か知りたい」というだけでは認められません。
開示請求ができる場合と難しい場合
行為の内容によって、次のように分かれます。
- 認められる可能性がある行為:名誉を害する投稿、私的な画像の公開、個人情報の公開、性的な内容の投稿
- 認められることが難しい行為:投稿の閲覧のみ、フォローやフォロー申請の繰り返し、投稿への反応のみ、DMでのメッセージ
つまり、「見られているだけで気味が悪い」という段階では、相手を特定することが難しいのが実情です。
メッセージが繰り返し届いている場合については、その内容によって判断が分かれます。
ご相談の際に、届いている内容をお示しください。
特定できない場合にできること
相手を特定できない段階でも、次の対応が考えられます。
- 行為の内容と日時を記録し、経過を残しておく
- アカウントの公開範囲や、閲覧履歴が表示される機能の設定を見直す
- 投稿から場所が推測されないよう、内容を見直す
- 警察に相談し、経過を記録として残しておく
行為が別の類型に発展した段階で、取り得る手段が変わります。
その時点で慌てて資料を探すことにならないよう、記録は継続してください。
費用の水準が変わる点
開示請求を要する事案では、弁護士費用の水準が異なります。
当事務所の場合、相手方への警告を内容とするプランと、発信者情報開示請求のプランは別の体系です。
相手が匿名である事案では、特定の手続を経てから警告に進むことになるため、費用と期間の見通しが変わります。

警察に相談する場合
相談先
ストーカー被害の相談は、警察署の生活安全課が窓口となります。
インターネット上の行為については、サイバー犯罪に関する相談窓口が設けられている場合もあります。
緊急性がない場合、警察相談専用電話(#9110)も利用できます。
用意しておく資料
画面を保存したものと、行為の日時を整理した一覧を用意してください。
画面を保存する際は、本文だけでなく、アカウント名、投稿日時、URLが分かる範囲を含めてください。
投稿は削除されることがあるため、気付いた時点で保存することが重要です。

対応してもらえない場合
類型に当てはまらないと判断された場合や、相手が特定できないことを理由に、対応が得られないことがあります。
この場合でも、行為の内容によっては他の犯罪に当たる可能性があり、また民事上の対応が考えられます。

弁護士に依頼する場合
相手が判明している場合
相手の氏名と住所が分かっている場合、弁護士が依頼者の代理人として、連絡および接触を中止するよう求める書面を送付します。
アカウントは匿名でも、やり取りの内容から相手が誰か分かっている事案は少なくありません。
心当たりがある場合は、その旨をお伝えください。

投稿の削除を求める場合
名誉を害する投稿や私的な画像が公開されている場合、投稿の削除を求める手続があります。
相手を特定しなくても、プラットフォームに対して請求することができます。

どの対応が適しているかの検討
オンライン上の事案では、削除、特定、警告、警察への相談という複数の手段があり、どの順序で進めるかによって結果が変わります。
たとえば、投稿を先に削除すると、その投稿を根拠とする特定が難しくなることがあります。
ご相談の際に、行為の内容と希望される結果をお伺いしたうえで、進め方をご説明します。

よくある質問(FAQ)
- 見ているだけでもストーカーになりますか。
-
公開されている投稿を閲覧する行為自体は、通常、ストーカー規制法の類型に当てはまりません。
閲覧に加えてメッセージの送信や投稿への言及がある場合には、別の類型に当てはまる可能性があります。 - ブロックしても別のアカウントから見に来る場合はどうすればよいですか。
-
アカウント名、閲覧された日時、同一人物と判断した理由を記録してください。
閲覧自体を止めることは困難ですが、ブロックという明確な拒絶を経てもなお手段を変えて接触を続けている事実は、その後の手続において意味を持ちます。あわせて、アカウントの公開範囲や、閲覧履歴が表示される機能の設定を見直すことも検討してください。
- 相手が誰か分からなくても対応できますか。
-
相手を特定する手続として発信者情報開示請求がありますが、これは投稿等によって権利が侵害されたことが明らかである場合に認められるものです。
名誉を害する投稿や私的な画像の公開があれば要件を満たし得ますが、閲覧やフォローが繰り返されているだけの場合には、この手続を利用できないことがあります。特定できない場合でも、記録を残しておくこと、設定を見直すこと、警察に相談して経過を記録に残しておくことは可能です。
- 相手を特定するにはどのくらい費用がかかりますか。
-
相手方への警告を内容とするプランとは別の費用体系となります。
当事務所の発信者情報開示請求の費用は、こちらのページに記載しています。相手が匿名である事案では、特定の手続を経てから警告に進むことになるため、費用と期間の見通しが変わる点にご留意ください。
- 警察のどこに相談すればよいですか。
-
ストーカー被害の相談は、警察署の生活安全課が窓口となります。
インターネット上の行為については、サイバー犯罪に関する相談窓口が設けられている場合もあります。
緊急性がない場合、警察相談専用電話(#9110)も利用できます。画面を保存したものと、行為の日時を整理した一覧を持参してください。
- 実際に会ったことがない相手でも規制の対象になりますか。
-
対象となり得ます。
ストーカー規制法は、行為者と相手方が面識のあることを要件としていません。もっとも、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われることが要件とされているため、この点が問題になることがあります。
目的は、これまでのやり取りの内容や行為の態様といった外形的な事情から判断されます。
まとめ
- 「ネットストーカー」は法律上の用語ではなく、オンライン上の行為もストーカー規制法の類型に当てはまるかどうかで判断されます
- メッセージの繰り返しの送信、監視していると告げる行為、面会の要求、名誉を害する投稿、性的な画像等の送付は、類型に当てはまり得ます
- 発信者情報開示請求は、投稿等によって権利が侵害されたことが明らかである場合に認められるものであり、閲覧やフォローが繰り返されているだけでは利用できないことがあります
- 相手を特定できない段階でも、記録を残すこと、設定を見直すこと、警察に相談して経過を残すことはできます
- 削除、特定、警告、警察への相談のどの順序で進めるかによって結果が変わるため、進め方の検討が必要です
当事務所は、インターネット上の権利侵害への対応を主力分野として取り扱っており、削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求に対応しています。あわせて、しつこい連絡やつきまといについても、相手方への警告から警察への対応、裁判手続まで、事案に応じてお受けしています。
投稿は削除されることがあり、通信の記録にも保存期間があります。時間の経過とともに対応が難しくなりますので、お早めにご相談ください。
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