この記事の結論・要約
- 警察に相談したからといって、直ちに相手への警告や検挙に至るわけではありません。相談の内容を記録として残すにとどめる対応もあり得ます。
- もっとも、令和7年12月30日からは、被害者からの申出がない場合でも、警察の判断で警告を行うことができるようになりました。被害者の意向と警察の判断が一致しない場合があり得ます。
- 相談は原則として住所地を管轄する警察署の生活安全課が窓口です。いつ、誰から、どのような行為があったかを整理した資料を持参してください。
はじめに
しつこい連絡やつきまといが続いている場合、警察への相談が対応の一つとなります。
しかし、相談をためらう方は少なくありません。
その理由として多いのが、相談した結果、自分が望まない形で事が進むのではないかという不安です。
相手に警告が行われ、それを知った相手が逆上するのではないか、職場や家族に知られるのではないか、といった懸念から、相談を先送りにする例があります。
一方で、行為が続いている間に記録は失われ、事実関係の説明も難しくなります。
相談すべきかどうかを判断するためには、相談した場合に実際に何が起きるのかを知っておく必要があります。
この記事では、警察に相談した場合の流れ、聞かれること、相談後に取り得る措置、そして被害者の意向がどこまで反映されるのかについて説明します。
なお、警察庁の統計によれば、令和6年中のストーカー事案の相談等の件数は19,567件で、依然として高い水準にあります。
相談する前に知っておきたいこと
相談したからといって直ちに警告や検挙に至るわけではない
警察に相談したことが、そのまま相手への警告や検挙につながるわけではありません。
相談を受けた警察は、行為の内容、経緯、証拠の状況を聴取したうえで、どの措置を取るかを検討します。
行為の内容によっては、当面は相談の内容を記録として残し、状況の変化を待つという対応が取られることもあります。
相談の履歴を残しておくこと自体に意味があります。
後に行為が悪化した場合、それまでの経緯が記録として残っていることで、対応が進みやすくなるためです。
令和7年12月からは警察の判断で警告が行われる場合がある
もっとも、被害者の意向と警察の判断が一致しない場合があり得る点には注意が必要です。
ストーカー規制法に基づく警告は、従来、被害者からの申出があった場合に行われるものでした。
しかし、令和7年12月30日からは、被害者からの申出がない場合でも、警察本部長等の職権により警告を行うことができるようになりました。
これは、被害者が申出をためらう事案においても警察が対応できるようにするための改正です。
相談をためらう理由が、まさに相手の反応への不安である場合が少なくないためです。
したがって、「相談だけして、相手には何も伝えないでほしい」という希望が、必ずしもそのとおりになるとは限りません。
相談の際には、自分の希望と、それを望む理由(相手の言動から逆上が予想される、勤務先に知られたくないなど)を具体的に伝えてください。
警察がどの措置を取るかを判断するうえで、これらの事情も考慮されます。
相手に相談したことが伝わるかどうか
相談の段階では、相手に連絡が行くことはありません。
一方、警告や禁止命令等の措置が取られる場合には、相手に対して警察から連絡が行われます。
その際、被害者が相談したことは事実上相手に伝わることになります。
相手の氏名や住所が判明していない場合、警察が捜査により相手を特定することがあります。
この過程で、相手の勤務先や関係者に接触が及ぶこともあります。
なお、被害者の住所等の情報については、住民基本台帳事務における支援措置により、相手が住民票の写し等を取得することを制限できる場合があります。
相談の際に、この制度についても確認してください。
どこに相談するか
警察署の生活安全課
ストーカー被害の相談は、警察署の生活安全課が窓口となります。
都道府県警によっては、人身安全対策に関する専門の部署が置かれている場合があります。
訪問の前に電話で問い合わせ、担当部署と来署の日時を確認しておくと、待ち時間を減らせます。
警察相談専用電話(#9110)
緊急性はないものの相談したいという場合、警察相談専用電話(#9110)を利用できます。
事件性の有無が分からない段階でも相談でき、内容に応じて担当部署を案内してもらえます。
警察署に行くべきかどうかを判断できない場合の入口として利用できます。
なお、身体の安全に関わる緊急の状況では、110番に通報してください。
交番ではなく警察署に相談する
交番でも相談自体は可能ですが、ストーカー事案の対応は生活安全課が担当します。
交番で相談した場合、改めて警察署での聴取が必要になることが多く、二度手間になります。
資料を持参して警察署に相談するほうが、対応は進みやすくなります。
管轄は原則として住所地を管轄する警察署
相談は、原則として被害者の住所地を管轄する警察署が受け付けます。
勤務先の付近で行為が行われている場合など、複数の警察署が関係することもありますが、まずは住所地を管轄する警察署に相談してください。
相談の際に聞かれることと持参するもの
聞かれること
主に次の事項を聞かれます。
- 被害の具体的な内容(いつ、どこで、どのような行為があったか)
- 相手の氏名、住所、連絡先など、相手を特定するための情報
- 相手との関係(交際していた、職場が同じ、面識がないなど)
- 相談者自身の氏名、住所、勤務先などの情報
- 相手に対してどのような対応を希望するか
特に重要なのが、行為の日時と内容を時系列で整理したものです。
記憶に頼って説明すると、時期が前後したり、回数が曖昧になったりします。
持参する資料
次の資料を持参してください。
- メッセージの画面(送信元の表示を含む)
- 着信の履歴
- 届いた郵便物、手紙、物品
- 待ち伏せをされた日時と場所の記録
- 相手に対して連絡を望まない旨を伝えたやり取り
- 相手を特定できる情報(氏名、住所、勤務先、車のナンバーなど)
相手に対して連絡を拒む意思を伝えたやり取りは、特に重要です。
ストーカー規制法において、電話やメッセージの送信といった類型は、無言電話である場合を除き、拒まれたにもかかわらず連続して行われることが要件とされているためです。
相談の内容は記録として残る
相談を受けた警察は、相談の内容を記録します。
この記録は、後に行為が悪化した場合の経緯を示す資料となります。
その時点で措置が取られなかったとしても、相談したこと自体が無駄になるわけではありません。
相談後に警察が取り得る措置
相談を受けた警察が取り得る措置には、次のものがあります。
それぞれ、被害者の申出が必要かどうかが異なります。
口頭による指導
行為の内容が軽微である場合や、相手が行為を認めて中止する意向を示している場合などに、口頭で指導が行われることがあります。
文書による警告
ストーカー規制法に基づき、つきまとい等をした者に対し、さらに反復して当該行為をしてはならない旨を警告するものです。
前記のとおり、令和7年12月30日からは、被害者からの申出がない場合でも、職権により行うことができるようになりました。
警告に法的な強制力はなく、違反しても直ちに罰則が科されるものではありません。
もっとも、警察が正式に対応したことが記録として残るため、その後の措置につながる意味があります。
禁止命令等
都道府県公安委員会が、つきまとい等をしてはならないこと等を命ずるものです。
禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合には、罰則の対象となります。
この点で、警告よりも強い効果を持ちます。
ストーカー行為罪等としての検挙
行為が「ストーカー行為」に当たる場合、犯罪として捜査が行われます。
ストーカー行為をした者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。
禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に処せられます。
また、行為の内容によっては、住居侵入罪、脅迫罪、器物損壊罪などとして捜査が行われることもあります。
被害者への援助
ストーカー規制法は、警察による援助の制度を定めています。
被害を防止するための措置の教示、警告の実施の申出について必要な事項の教示、被害の防止に資する物品の教示または貸出しなどが含まれます。
令和7年12月30日からは、被害者を雇用する者および被害者が就学する学校の長が、被害者に対する援助を行う努力義務の主体に加えられています。
勤務先や学校を通じた対応を求めやすくなりました。
さらに、令和8年3月10日からは、警察本部長等が、ストーカー行為等をするおそれがある者に情報を提供するおそれがある者に対し、情報提供を行わないよう求めることができるようになっています。
対応してもらえない場合があります
相談しても、期待した対応が得られないことがあります。
ストーカー規制法の要件を満たさないと判断される場合、行為を裏付ける資料が不足していると判断される場合などです。
特に、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的が認められないと判断された場合、同法による対応は難しくなります。
この場合でも、行為の内容によっては他の犯罪に当たる可能性があり、また民事上の対応が考えられます。
【ブログカード挿入位置】警察に相談しても動いてもらえないと言われたとき(C-2・未公開)
警察以外の相談先
公的な相談窓口
警察のほか、各都道府県の男女共同参画センター、女性相談支援センター、法テラスなどが相談を受け付けています。
これらの窓口は、相談に応じ、必要に応じて他の機関を案内するものであり、相手に対して直接何らかの措置を取るものではありません。
弁護士に相談する場合
弁護士に依頼した場合、依頼者の代理人として、相手に対し連絡および接触を中止するよう求める書面を送付することができます。
相手の氏名と住所が分かっている場合は内容証明郵便により送付し、分かっていない場合は電話番号を用いて連絡し、氏名と住所を確認したうえで警告を行う方法があります。
警察による対応と弁護士による対応は、いずれか一方を選ぶものではありません。
両方を並行して進めることができます。
弁護士に依頼する利点として、警察への相談に同行し、事実関係を整理した書面を作成したうえで申出を行えるという点があります。
相談の内容を整理して伝えることで、対応が進みやすくなることがあります。

よくある質問(FAQ)
- 相談だけして、相手への警告はしないでもらうことはできますか。
-
相談の段階では、相手に連絡が行くことはありません。
もっとも、令和7年12月30日からは、被害者からの申出がない場合でも警察の判断で警告を行うことができるようになっています。
そのため、警告を行わないという希望が必ずそのとおりになるとは限りません。警告を望まない理由がある場合は、その理由を具体的に伝えてください。
警察がどの措置を取るかを判断するうえで考慮されます。 - 相談したことが相手に伝わることはありますか。
-
相談のみの段階では伝わりません。
警告や禁止命令等の措置が取られる場合には、警察から相手に連絡が行われるため、事実上伝わることになります。
相手の氏名や住所が判明していない場合、特定のための捜査の過程で、相手の関係者に接触が及ぶこともあります。 - 相談したら被害届を出さなければなりませんか。
-
相談と被害届の提出は別のものです。
相談した結果、被害届の提出を勧められることはありますが、提出するかどうかは被害者が判断します。
なお、ストーカー行為罪は告訴がなくても起訴できる犯罪とされています。 - 交番でも相談できますか。
-
相談自体は可能ですが、ストーカー事案の対応は警察署の生活安全課が担当します。
交番で相談した場合、改めて警察署での聴取が必要になることが多いため、資料を持参して警察署に相談するほうが対応は進みやすくなります。
- 家族が代わりに相談してもよいですか。
-
家族が相談すること自体は可能です。
もっとも、行為の内容や経緯を正確に説明する必要があるため、最終的には被害者本人からの聴取が必要になります。
被害者本人が相談に行くことが難しい事情がある場合は、その旨を伝えてください。 - 警察に相談する前に弁護士に依頼していてもよいですか。
-
問題ありません。
弁護士に依頼したうえで警察に相談すること、警察に相談したうえで弁護士に依頼することのいずれも可能です。
弁護士が警察への相談に同行し、事実関係を整理した書面を作成することもできます。
まとめ
- 警察に相談したからといって、直ちに相手への警告や検挙に至るわけではありません。相談の内容を記録として残すにとどめる対応もあり得ます
- 令和7年12月30日からは、被害者からの申出がない場合でも、警察の判断で警告を行うことができるようになりました
- 相談は原則として住所地を管轄する警察署の生活安全課が窓口です。緊急性がない場合、警察相談専用電話(#9110)も利用できます
- いつ、誰から、どのような行為があったかを時系列で整理した資料と、連絡を拒む意思を伝えたやり取りを持参してください
- 相談後の措置には、口頭による指導、文書による警告、禁止命令等、検挙、援助があります
- 要件を満たさないと判断されて対応が得られない場合もあり、その場合は別の対応を検討することになります
当事務所は、刑事事件および男女間の紛争を取り扱っており、しつこい連絡やつきまといについても、相手方への警告から警察への対応、裁判手続まで、事案に応じてお受けしています。警察への相談に同行し、事実関係を整理した書面を作成したうえで申出を行うこともできます。
行為が継続している事案では、時間の経過とともに記録が失われ、事実関係の立証が困難になることがあります。
早期にご相談ください。
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