この記事の結論・要約
- 弁護士が行う警告は、相手方に対し、依頼者への連絡および接触を中止するよう求めるものです。相手方の氏名と住所が分かっている場合は内容証明郵便により書面を送付し、分かっていない場合は電話により連絡する方法があります。
- 自分で書面を送る場合、差出人として自分の住所を記載することになります。相手方が住所を把握していない事案では、警告のために住所を伝える結果になりかねません。弁護士が代理人として送る場合、記載するのは事務所の所在地です。
- 弁護士による警告そのものに罰則の裏付けはありません。相手方が応じない場合には、警察への対応や裁判手続に進むことになります。
はじめに
しつこい連絡やつきまといが続いている場合の対応として、弁護士から相手方に連絡を取り、行為の中止を求めるという方法があります。
もっとも、書面を送ること自体は自分でもできます。
内容証明郵便は個人でも差し出せますし、書式を紹介しているところも少なくありません。
それにもかかわらず弁護士に依頼する意味はどこにあるのか、という疑問は当然です。
この記事では、弁護士が行う警告の内容、弁護士名で送ることによって何が変わるのか、自分で送る場合との違い、そして弁護士による警告の限界について説明します。
弁護士が行う警告
書面による警告
相手方の氏名と住所が判明している場合、弁護士が依頼者の代理人として、連絡および接触を中止するよう求める書面を作成し、内容証明郵便により送付します。
書面には、これまでにどのような行為があったか、依頼者がそれを望んでいないこと、今後の連絡および接触を中止すべきことを記載します。
電話による警告
相手方の氏名または住所が判明していない事案でも、電話番号が分かっていれば、弁護士から相手方に連絡し、氏名および住所を確認したうえで、その場で警告を行うことができます。
また、電話番号から氏名や住所を調査できる場合があります。
元交際相手や知人の事案では氏名と住所が分かっていることが多い一方、一度会っただけの相手や、連絡先しか知らない相手の場合、書面を送ることができません。
この方法は、そうした事案において選択肢となります。
もっとも、通話の内容は書面に比べて記録として残りにくいため、氏名および住所が判明した場合には、改めて書面を送付することもあります。
内容証明郵便を用いる理由
内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に対し、どのような内容の文書を差し出したかを郵便局が証明する制度です。
通常の郵便で送った場合、相手方が「そのような書面は受け取っていない」「内容が違う」と主張したときに、こちらから示すことができません。
内容証明郵便を用いるのは、警告を行った事実とその内容を、後から確認できる形にしておくためです。
あわせて配達証明を付けることで、相手方に配達された日も証明されます。
弁護士名で送ることで変わる点
相手が受け取る印象
当事者間のやり取りでは応じなかった相手が、弁護士名の書面を受け取って行為をやめる例があります。
これは、行為が個人間の問題ではなく、法的な問題として取り扱われる段階に至ったことを認識させるためです。
行為を続ければ、警察への相談や裁判手続に進む可能性があることが、書面の存在自体から伝わります。
もっとも、相手方の状況によって反応は異なります。すべての事案で行為が止まるものではありません。
自分の住所や連絡先を相手に知られない
見落とされやすい点です。
内容証明郵便を差し出す際には、差出人の氏名と住所を記載する必要があります。
自分で送る場合、記載するのは自分の住所です。
相手方が既に住所を把握している事案であれば問題は生じません。
しかし、転居した後の事案や、そもそも住所を知られていない事案では、警告のために自分の住所を相手方に伝える結果になりかねません。
弁護士が代理人として送付する場合、書面に記載するのは事務所の所在地です。
依頼者の現住所および連絡先を記載することはありません。
拒絶の意思を示した記録が残る
ストーカー規制法において、電話、文書の送付、電子メールやメッセージの送信といった類型は、無言電話である場合を除き、拒まれたにもかかわらず連続して行われることが要件とされています。
そのため、拒絶の意思を明確に示したことを示せるかどうかが、その後の手続において問題になります。
内容証明郵便による警告は、いつ、どのような内容を伝えたかが記録として残るため、この点を示す資料になります。

その後の手続につながる
警告に応じない相手方に対しては、警察への対応や裁判手続に進むことになります。
弁護士に依頼している場合、これらの移行を同じ代理人が続けて行うことができます。
事実関係を改めて説明し直す必要がなく、それまでに整理した資料と、警告を行った経緯をそのまま用いることができます。
自分で送る場合・行政書士に依頼する場合との違い
警告書の送付については、自分で作成して送る方法、行政書士に書面の作成を依頼する方法、弁護士に依頼する方法があります。それぞれ性質が異なります。
自分で作成して送る場合
費用は郵便料金のみで済みます。
一方で、前記のとおり自分の住所を記載することになります。
また、相手方から返答や反論があった場合、自分で対応することになります。
やり取りが再開すること自体が、望まない結果につながることもあります。
書き方によっては、後述するように別の問題が生じるおそれもあります。
行政書士に依頼する場合
行政書士は、依頼を受けて権利義務に関する書類を作成することを業務としています。
書面の作成を依頼することはできます。
もっとも、紛争性のある事案において、依頼者の代理人として相手方と交渉することは、行政書士の業務の範囲外とされています。
したがって、相手方から返答があった場合の対応は、依頼者自身が行うことになります。
また、その後に警察への対応や裁判手続に進む場合には、改めて弁護士に依頼することになります。
弁護士に依頼する場合
弁護士は、依頼者の代理人として、書面の作成および送付に加え、相手方からの返答への対応、警察への対応、裁判手続まで、継続して行うことができます。
費用は、上記の2つの方法より高くなります。
どこまでの対応を必要とするかによって、どの方法が適しているかは変わります。
なお、当事務所の費用については、こちらのページに記載しています。
書面に書いてはいけないこと
自分で書面を作成する場合に、特に注意を要する点です。
感情的な表現
相手方を非難する表現や、感情を述べる記載は避けてください。
相手方の反発を招き、かえって行為を激化させる原因になります。
また、後にこの書面が資料として用いられる場合、感情的な記載があることで、事実関係の説明としての信頼性が下がることもあります。
書面に記載すべきは、事実と、行為の中止を求めることのみです。
脅迫と受け取られ得る表現
「行為を続けるなら刑事告訴する」といった記載を勧める資料がありますが、書き方には注意が必要です。
正当な権利の行使として法的手続を取る旨を告知すること自体は、直ちに問題となるものではありません。
もっとも、権利の行使とはいえない内容を告げた場合や、告知の態様が相当な範囲を超える場合には、脅迫罪などの問題が生じ得ます。
たとえば、相手方の勤務先や家族に知らせると告げる、金銭を支払わなければ公表すると告げるといった記載は、避けるべきです。
名誉等を害する表現
相手方の社会的評価を低下させる事実を記載する場合、その書面が第三者の目に触れる可能性を考慮する必要があります。
相手方本人にのみ宛てた書面であれば、通常は問題となりませんが、勤務先に宛てて送る、同居している家族が開封する可能性がある、といった事情がある場合には注意を要します。
また、第三者の目に触れない場合であっても、名誉感情侵害(侮辱)の問題は生じ得ます。
相手を侮辱するような表現は避けてください。
事実と異なる記載
行為の回数や日時を、記憶に基づいて断定的に記載することは避けてください。
記載した内容と実際の経過が食い違うと、相手方から反論の材料とされます。
また、後に警察や裁判所に対して説明する際、この書面との整合が問題になります。
確実に示せる事実に絞って記載するのが基本です。
弁護士による警告の限界
罰則の裏付けはない
弁護士による警告は、法律上の制度に基づくものではありません。
相手方が無視した場合、それ自体を理由に処罰されることはありません。
この点は、違反すれば罰則の対象となる禁止命令等とは異なります。
もっとも、警告を受けた後も行為を続けたという経緯は、拒絶されていることを認識しながら行為を継続していた事実として、その後の手続において意味を持ちます。
相手が受け取らない場合
内容証明郵便は、相手方が受け取らなければ差出人に返送されます。
不在により受け取られない場合、受取自体を拒否される場合があります。
この場合でも、送付した事実と内容は記録として残ります。
また、受取を拒否したという事情自体が、経緯を示す資料になります。
あわせて普通郵便でも送付するなど、内容が相手方に届く可能性を高める方法を取ることもあります。
かえって行為を激化させる可能性
相手方のこれまでの言動によっては、警告が反発を招き、行為が激しくなることがあります。
この可能性を否定することはできません。
そのため、依頼をお受けする前に、警告を行うことがその事案に適しているかを検討する必要があります。
警告が適さない事案
次のような事案では、警告を先行させることが適切でない場合があります。
- 自宅への侵入、物の損壊、暴力を伴う言動があった場合
- 相手方が凶器に言及している場合
- これまでの言動から、逆上が強く予想される場合
- 行為が急速に激しくなっている場合
身体の安全に関わる状況であれば、警察への相談を優先してください。
当事務所では、依頼をお受けする前に事案の内容を確認し、警告が適切でないと判断した場合には、警察への相談を先行させるなど、別の対応をご提案します。

警告の後にどうなるか
行為が止まった場合
連絡や接触がなくなった場合、状況を確認したうえで終了します。
もっとも、しばらく間を置いてから行為が再開する例があります。
警告を行った書面と、それまでの記録は保管しておいてください。
相手から連絡があった場合
相手方から弁護士に対して連絡があることがあります。
反論、釈明、謝罪など、内容はさまざまです。
いずれの場合も、依頼者が直接対応する必要はありません。
対応の範囲は依頼の内容によって異なりますので、契約の際にご確認ください。
行為が続く場合
警察への相談、警告または禁止命令等の申出、接近禁止の仮処分、刑事告訴、損害賠償請求といった手続を検討することになります。
どの手続によるかは、行為の内容、証拠の状況、相手方の資力等を踏まえて判断します。

よくある質問(FAQ)
- 相手の住所が分からなくても依頼できますか。
-
電話番号が分かっていれば、お受けできる場合があります。
弁護士から相手方に連絡したり、氏名および住所を調査したうえで警告を行う方法があります。
連絡の手段が一切ない場合には、まず相手方を特定する手続が必要となり、対応の内容と費用が異なります。 - 相手に自分の住所が伝わることはありませんか。
-
弁護士が代理人として送付する書面には、事務所の所在地を記載します。
依頼者の現住所および連絡先を記載することはありません。ただし、相手方が既に住所を把握している場合、書面の送付によってその状況が変わるものではありません。
- 警告書を送ったことが家族や職場に知られませんか。
-
当事務所からご家族や勤務先に連絡することはありません。
書類の郵送方法についてご希望がある場合は、あらかじめお申し付けください。なお、相手方が第三者に伝える可能性を完全に防ぐことはできません。
- 相手が弁護士を立ててきた場合はどうなりますか。
-
以後のやり取りは、弁護士同士で行うことになります。
依頼者が直接対応する必要はありません。もっとも、やり取りが継続する場合、当初の依頼の範囲を超えることがあります。
対応の範囲と費用については、その時点で改めてご説明します。 - 警察に相談してからでも依頼できますか。
-
お受けできます。
警察に相談したうえで弁護士に依頼すること、弁護士に依頼したうえで警察に相談することのいずれも可能です。
警察の対応が得られなかった事案についても、弁護士による警告は行うことができます。 - 相手が未成年の場合でも警告書を送れますか。
-
送ることができます。
この場合、親権者に対しても通知を行うかどうかを、事案の内容に応じて検討します。
なお、ストーカー規制法に、行為者の年齢による適用の除外はありません。
未成年者による行為であっても、警察による警告や禁止命令等の対象となり得ます。
まとめ
- 弁護士が行う警告には、内容証明郵便による書面の送付と、電話による連絡があります。相手方の氏名や住所が分からない事案でも、電話番号が判明していれば対応できる場合があります
- 自分で書面を送る場合、差出人として自分の住所を記載することになります。相手方が住所を把握していない事案では、警告のために住所を伝える結果になりかねません
- 行政書士に書面の作成を依頼することはできますが、紛争性のある事案で代理人として相手方と交渉することは業務の範囲外とされています
- 書面には、感情的な表現、脅迫と受け取られ得る表現、名誉を害する表現、事実と異なる記載を入れないでください
- 弁護士による警告そのものに罰則の裏付けはありません。相手方が応じない場合には、警察への対応や裁判手続に進むことになります
- 身体の安全に関わる状況では、警告より警察への相談を優先してください
当事務所は、刑事事件および男女間の紛争を取り扱っており、しつこい連絡やつきまといについても、相手方への警告から警察への対応、裁判手続まで、事案に応じてお受けしています。
依頼をお受けする前に、警告を行うことがその事案に適しているかを検討します。
行為が継続している事案では、時間の経過とともに記録が失われ、事実関係の立証が困難になることがあります。早期にご相談ください。
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