【この記事の結論・要約】
- 受け子とは、特殊詐欺で被害者から現金やキャッシュカードなどを受け取る役割のことで、特殊詐欺で検挙される人の約6割を占めます。
- 受け取り方によって、詐欺罪になる場合と窃盗罪になる場合があります。
- 被害者と直接会わない手口でも、また何も受け取る前に捕まった場合でも、罪が成立することがあります。
はじめに
「荷物を受け取るだけ」「書類を預かるだけ」といった仕事が、SNSなどで高額の報酬をうたって募集されています。
その多くは、特殊詐欺の「受け子」を集めるためのものです。
この記事では、受け子とは何か、特殊詐欺の中でどのような役割を担うのかを説明したうえで、受け子の主な手口と、手口によって成立する罪がどう変わるのかを、最高裁判所の判例をもとに整理します。
受け子とは
特殊詐欺の中での役割
特殊詐欺は、複数の人が役割を分担して行う犯罪です。
主な役割は次のとおりです。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 指示役・主犯 | 犯行を計画し、各役割の人に指示を出す |
| かけ子 | 被害者に電話をかけ、うそを言ってだます |
| 受け子 | 被害者から現金やキャッシュカードなどを受け取る |
| 出し子 | 受け子が受け取ったキャッシュカードなどを使って、ATMから現金を引き出す |
| 回収役・運搬役 | 受け子や出し子から現金などを回収し、上位の者に届ける |
| 見張り役 | 受け子や出し子の周囲を見張る |
| リクルーター | SNSなどで受け子や出し子を集める |
受け子は、被害者の前に姿を現して現金などを受け取る役割であり、犯行グループの中で最も捕まりやすい立場にあります。
検挙される人の約6割が受け子
警察庁の統計1によれば、令和7年に特殊詐欺で検挙された2,338人のうち、受け子は1,379人で、全体の59.0%を占めました。
出し子(301人)とあわせると71.9%になります。
一方で、主犯は69人にとどまります(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」)。
受け子として検挙された1,379人のうち353人は少年で、受け子の約4人に1人が20歳未満でした。
受け子の主な手口
被害金の受け取り方の内訳
令和7年の特殊詐欺の認知件数は27,832件でした。
被害者がお金などを渡した方法で分けると、振込型が16,894件で約6割を占め、次いで現金手交型が4,058件(14.6%)、キャッシュカード手交型・窃取型が11.3%、電子マネー型が5.7%となっています(警察庁・前掲)。
このうち、受け子が被害者と直接会うのは、主に現金手交型とキャッシュカード手交型・窃取型です。
振込型や電子マネー型では受け子は登場しませんが、振り込まれたお金を引き出す出し子が関わります。
また、警察官をかたって捜査の名目で現金などをだまし取る「ニセ警察詐欺」が急増しており、令和7年は11,014件と、特殊詐欺全体の39.6%を占めました(警察庁・前掲)。
受け子が警察官や捜査関係者になりすまして被害者宅を訪れる手口も見られます。
現金を直接受け取る
かけ子が、息子や孫、警察官、銀行員などを名乗って被害者に電話をかけ、「お金が必要になった」「捜査のために現金を確認する」などとうそを言います。
その後、受け子が、本人の代理人や上司、警察官などを装って被害者の自宅や駅などに現れ、現金を受け取ります。
現金のほか、金の延べ棒(金地金)や宝飾品を受け取る手口もあります。
警察庁によれば、令和7年に金地金をだまし取られた被害は163件、被害額は58.2億円で、受け子が被害者の自宅で回収する手口が大半を占めるとされています(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」広報資料)。
キャッシュカードを受け取る
かけ子が、警察官や金融機関の職員、役所の職員などを名乗り、「キャッシュカードが不正に使われている」「新しいカードに交換する必要がある」などとうそを言います。
その後、受け子が被害者宅を訪れ、キャッシュカードと暗証番号を書いたメモを受け取ります。
受け取ったカードは出し子に渡され、ATMで現金が引き出されます。
キャッシュカードをすり替える
キャッシュカードを受け取る手口と似ていますが、受け子は被害者に「カードを封筒に入れて保管してください」などと指示し、被害者が目を離した隙に、カードの入った封筒を、偽物のカードを入れた封筒とすり替えて持ち去ります。
被害者は、カードが手元に残っていると思い込んでいるため、すぐには被害に気づきません。
この手口は、警察庁の統計では「キャッシュカード詐欺盗」として分類されています。
空室や宅配ボックスで荷物を受け取る
被害者と直接会わない手口もあります。
かけ子が被害者に、指定した住所に現金を宅配便などで送らせ、受け子が、その住所のマンションの空室や宅配ボックスで荷物を受け取ります。
受け子は、名宛人になりすまして荷物を受け取り、すぐに回収役に渡します。
受け子が名乗る身分
受け子は、被害者に怪しまれないよう、かけ子の話に合わせた身分を名乗ります。
警察官、金融機関や金融庁の職員、役所の職員、弁護士、息子の会社の上司や同僚などです。
指示役から、スーツなどの服装や、偽の名刺、身分証のようなものを用意するよう指示されることもあります。
受け子自身は、かけ子が被害者にどのようなうそを言ったのかを詳しく知らされていないこともあります。
しかし、他人になりすまして現金などを受け取る以上、自分の行為が詐欺に関わっている可能性は十分に考えられるものです。
手口によって成立する罪が変わる理由
被害者が「渡した」か、「持ち去られた」か
受け子に成立する罪は、手口によって詐欺罪(刑法246条1項)になる場合と、窃盗罪(刑法235条)になる場合があります。
詐欺罪は、人をだまして、だまされた相手に財物を渡させる犯罪です。
被害者が、うそを信じて、自分の意思で現金やキャッシュカードを渡したのであれば、詐欺罪が成立します。
これに対して窃盗罪は、相手の意思に反して財物を持ち去る犯罪です。
キャッシュカードをすり替える手口では、被害者はカードを渡すつもりはなく、自分で保管しているつもりでいます。
受け子は、被害者が渡していないカードを、隙をみて持ち去っています。
そのため、詐欺罪ではなく窃盗罪が成立することになります。
手口と罪名の整理
| 手口 | 主に成立する罪 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 現金・金地金などを直接受け取る | 詐欺罪 | 10年以下の拘禁刑 |
| キャッシュカードを受け取る | 詐欺罪 | 10年以下の拘禁刑 |
| キャッシュカードをすり替える | 窃盗罪 | 10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 空室・宅配ボックスで荷物を受け取る | 詐欺罪 | 10年以下の拘禁刑 |
このほか、犯行グループが組織的に詐欺を行ったと認められる場合には、組織的犯罪処罰法の組織的詐欺罪が問題になることもあります。
特殊詐欺で役割ごとに成立する罪の全体像は、以下の記事で解説しています。

受け取った物を運んだだけの場合
受け子から現金やキャッシュカードを受け取り、上位の者に届ける回収役や運搬役も、詐欺の計画を知りながら役割を分担していれば、詐欺罪などの共同正犯として処罰される可能性があります。
自分は被害者と会っていない、受け取った物を運んだだけだという事情があっても、罪を免れるとは限りません。
犯罪が始まる時点
受け子が被害者に会う前や、何かを受け取る前に逮捕された場合でも、罪が成立することがあります。
犯罪の実行が始まった(実行の着手があった)と評価されれば、結果が生じていなくても未遂罪が成立するからです(刑法43条)。
現金を受け取る手口の場合
最高裁判所は、警察官を名乗る者が被害者に「銀行に今すぐ行って全部下ろした方がいいですよ」などと電話でうそを言い、その後、警察官になりすました受け子が被害者宅に向かう途中で逮捕された事件について、次のように述べて詐欺未遂罪の成立を認めています。
このような事実関係の下においては,本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階において,被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても,詐欺罪の実行の着手があったと認められる。
最高裁判所第一小法廷平成30年3月22日判決・刑集72巻1号82頁
つまり、かけ子が被害者にうそを伝えた段階で、すでに詐欺の実行が始まっているとされることがあります。
受け子が被害者宅に着く前に捕まっても、詐欺未遂罪の責任を問われ得ます。
すり替えの手口の場合
キャッシュカードをすり替える手口について、最高裁判所は、金融庁の職員になりすました受け子が被害者宅まで約140メートルの路上まで来たところで犯行をやめた事件で、次のように述べて窃盗未遂罪の成立を認めています。
本件うそが述べられ,被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では,窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。
最高裁判所第三小法廷令和4年2月14日決定・刑集76巻2号101頁
この事件では、受け子は被害者に会ってすらいませんでしたが、窃盗未遂罪が成立するとされました。

被害者と会わない受け子でも罪になる
空室や宅配ボックスで荷物を受け取る受け子は、被害者と会うことも、電話で話すこともありません。
それでも、詐欺の可能性を認識しながら受け取っていれば、詐欺罪の共同正犯として処罰されます。
最高裁判所は、マンションの空室で名宛人になりすまして荷物を受け取り、回収役に渡すことを約20回繰り返していた受け子について、詐欺の故意と共謀を認めています(最高裁判所第三小法廷平成30年12月11日判決・刑集72巻6号672頁)。
また、マンションの集合郵便受けから他人宛ての不在連絡票を抜き取り、宅配ボックスから荷物を取り出して回収役に渡した受け子についても、受け取り方が著しく不自然であることなどから、詐欺の故意を認めています(最高裁判所第二小法廷令和元年9月27日判決・刑集73巻4号47頁)。
「中身は知らなかった」「詐欺だとは思わなかった」という主張がどのように判断されているかは、以下の記事で解説しています。

受け子になってしまうきっかけ
SNSでの募集と知人からの紹介
令和7年に受け子などとして検挙された人について、受け子などになったきっかけを見ると、SNSからの応募が37.9%、知人などからの紹介が37.1%でした(警察庁・前掲)。
SNSでは、「高額バイト」「即日現金」「荷物を受け取るだけ」といった言葉で募集が行われます。
応募すると、匿名性の高いアプリに誘導され、身分証の画像や住所、家族の情報を送るよう求められます。
その後で実際の仕事内容を指示され、断ろうとすると「家族に危害を加える」などと脅されることもあります。
約束された報酬は支払われないことも多い
法務省法務総合研究所が令和3年版犯罪白書で公表した特別調査によれば、報酬を受け取った、または受け取る約束をしていた受け子・出し子のうち、56.1%は約束のみで、実際には報酬を受け取っていませんでした。
報酬額が100万円以上だった受け子・出し子は2.4%にとどまります。
高額の報酬をうたう募集であっても、実際には報酬を受け取れないまま捕まり、被害者への賠償責任だけを負うことになりかねません。

受け子の募集を見分けるために
次のような特徴がある募集は、受け子を集めるためのものである可能性が高いと考えられます。
- 「荷物を受け取るだけ」「書類を預かるだけ」など、簡単な作業で高額の報酬をうたっている
- 仕事の内容や依頼主の会社名、所在地をはっきり説明しない
- 応募すると、匿名性の高いメッセージアプリに誘導される
- 仕事を始める前に、身分証の画像や住所、家族の連絡先を送るよう求められる
- 他人の名前で荷物を受け取る、受け取った物をすぐに別の人に渡す、といった指示がある
こうした募集に応じてしまい、身分証などを送ってしまった場合でも、実行に加わる前であれば、関与をやめることができます。
脅されて抜けられないと感じている場合は、警察や弁護士に相談してください。
一度加わると、別の役割を任されることもある
受け子として加わった人が、その後、出し子や回収役、新たな受け子を集めるリクルーターなどの役割を任されることもあります。
関与した事件や役割が増えるほど、処分は重くなります。
受け子として関与してしまったら
受け子として関与してしまった場合、量刑の見通しは、関与した事件の数や被害額、被害弁償の状況などによって大きく変わります。
法務省の調査では、受け子・出し子として有罪となった人の54.9%が全部実刑でしたが、認定された事件が1件にとどまれば全部実刑は34.7%でした。

まだ逮捕されていない場合は、犯行グループからの新たな指示に応じず、メッセージなどの記録を消さずに残したうえで、弁護士に相談して自首や出頭を検討することが重要です。
脅されている場合は、警察相談専用電話(#9110)でも相談を受け付けています。
受け子が未成年の場合は、成人とは異なり、家庭裁判所での手続によって処分が決まります。

家族が受け子として逮捕された場合の対応は、以下の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)
- 受け子とは何ですか。
-
特殊詐欺で、被害者から現金やキャッシュカード、金地金などを受け取る役割のことです。
かけ子が電話でうそを言って被害者をだまし、受け子が被害者の前に現れたり、空室などで荷物を受け取ったりします。 - 受け子と出し子はどう違いますか。
-
受け子は被害者から現金やキャッシュカードを受け取る役割で、出し子は受け取ったキャッシュカードや振り込まれたお金を使ってATMから現金を引き出す役割です。
受け子には主に詐欺罪、出し子には主に窃盗罪が成立します。 - 受け子は何の罪になりますか。
-
現金やキャッシュカードを被害者から渡してもらう手口では詐欺罪、キャッシュカードを偽物とすり替えて持ち去る手口では窃盗罪が成立するのが一般的です。
法定刑はいずれも10年以下の拘禁刑で、窃盗罪には50万円以下の罰金刑もあります。 - 被害者に会う前に捕まった場合でも罪になりますか。
-
罪になる場合があります。
最高裁判所は、かけ子が被害者にうそを伝えた後、受け子が被害者宅に向かう途中で逮捕された事件で詐欺未遂罪を認め、すり替えの手口で被害者宅付近まで行った受け子にも窃盗未遂罪を認めています。
- 荷物を受け取るだけのバイトでも受け子になりますか。
-
名宛人になりすまして荷物を受け取り、すぐに別の人に渡すような仕事は、特殊詐欺の受け子である可能性が高いといえます。
最高裁判所は、こうした受け取りを繰り返していた人について、詐欺の可能性を認識していたとして詐欺罪の成立を認めています。 - 受け子の報酬は本当にもらえるのですか。
-
法務省の調査では、報酬を受け取った、または約束していた受け子・出し子のうち56.1%は、実際には報酬を受け取っていませんでした。
報酬を受け取っていなくても、被害者への賠償責任は被害の全額について負うことになります。
まとめ
- 受け子とは、特殊詐欺で被害者から現金やキャッシュカードなどを受け取る役割であり、令和7年の特殊詐欺の検挙人員の59.0%を占める
- 手口には、現金や金地金を直接受け取るもの、キャッシュカードを受け取るもの、キャッシュカードをすり替えるもの、空室や宅配ボックスで荷物を受け取るものなどがある
- 被害者がだまされて自ら渡した場合は詐欺罪、すり替えて持ち去った場合は窃盗罪が成立する
- かけ子がうそを伝えた段階や、受け子が被害者宅付近まで行った段階で実行の着手が認められ、受け取る前に捕まっても未遂罪が成立することがある
- 被害者と会わない受け子でも、詐欺の可能性を認識していれば詐欺罪の共同正犯として処罰される
- 約束された報酬が実際には支払われないことも多く、関与してしまった場合は、早い段階で弁護士に相談することが重要である
当事務所では、受け子として関与してしまった方からの自首や出頭についてのご相談、逮捕された方の接見、取調べへの対応の助言、被害者との示談交渉などをお受けしています。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。
受け子として関与してしまった場合、逮捕の前か後かによって取れる手段が変わります。
お早めにご相談ください。
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