【この記事の結論・要約】
- 信用毀損罪は、虚偽の内容を広めて人の経済的な評価を害する行為を処罰するものです。最高裁は、商品の品質に対する社会的な信頼も「信用」に含まれるとしています。
- 名誉毀損罪と違い、書かれた内容が虚偽であることが必要です。他方、親告罪ではないため、告訴期間の制限を受けません。
- インターネット掲示板への虚偽の犯行予告について、偽計業務妨害罪の成立を認めた裁判例があります。事業者が被害を受けた場合、名誉毀損と併せて検討する意味があります。
はじめに
店舗や会社について、事実と異なる書き込みがされることがあります。
「商品に異物が入っていた」「無資格の者が施術している」「倒産寸前だ」といった内容であれば、客足や取引に直接影響します。
こうした書き込みについては、名誉毀損とは別に、信用毀損罪や業務妨害罪が問題になります。
この記事では、それぞれがどのような場合に成立するのか、名誉毀損とどう違うのか、事業者としてどう対応するかを解説します。
信用毀損罪と業務妨害罪
条文
刑法233条は、次のとおり定めています。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法234条は、次のとおり定めています。
(威力業務妨害)
第二百三十四条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
3つの罪
| 罪 | 行為 | 結果 |
|---|---|---|
| 信用毀損罪 | 虚偽の風説の流布、偽計 | 人の信用を害する |
| 偽計業務妨害罪 | 虚偽の風説の流布、偽計 | 人の業務を妨害する |
| 威力業務妨害罪 | 威力 | 人の業務を妨害する |
同じ書き込みが、信用毀損罪と業務妨害罪の両方にあたることもあります。
「信用」の意味
支払能力に限られない
かつての大審院の判例は、「信用」を、人の支払能力や支払意思に対する社会的な信頼に限っていました。
この理解によれば、「あの会社は資金繰りが苦しい」という内容は対象になっても、「あの店の商品は不衛生だ」という内容は対象になりません。
商品の品質に対する信頼も含まれる
最高裁平成15年3月11日第三小法廷判決(刑集57巻3号293頁)は、この判例を変更しました。
コンビニエンスストアで購入した紙パック入りのオレンジジュースに家庭用洗剤を注入したうえで、異物が混入していたと警察官に虚偽の申告をし、報道機関に報道させた事案です。
同判決は、次のとおり判示しました。
「刑法233条が定める信用毀損罪は、経済的な側面における人の社会的な評価を保護するものであり、同条にいう「信用」は、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当である」
事案の構造
この事案で注目すべきは、被告人が自ら異物を混入させたうえで、被害を受けたかのように装って申告している点です。
実際には存在しない品質上の問題を作り出し、それを報道によって広めました。
申告を受けた警察も、報道した機関も、虚偽であることを知りませんでした。
第三者の手を通じて広まった場合でも、虚偽を作り出した者の行為として信用毀損罪が成立しています。
インターネット上でも、虚偽の投稿がまとめサイトや報道に取り上げられて広まるという流れは起こり得ます。
口コミへの影響
この判決からすれば、商品やサービスの品質について虚偽の内容を広める行為も、信用毀損罪の対象になります。
「料理に虫が入っていた」「期限切れの食材を使っている」「施術で火傷をした」といった書き込みが事実と異なれば、この罪が問題になり得ます。
虚偽の風説を流布すること
虚偽であることが必要
信用毀損罪は、内容が虚偽であることを要件としています。
書かれた内容が事実であれば、どれほど事業に悪影響を及ぼすものであっても、この罪は成立しません。
被害を受けた側は、内容が事実と異なることを示す必要があります。
流布
流布とは、不特定または多数の人に伝わるようにすることをいいます。
インターネット上の書き込みは、不特定多数の人が閲覧できる状態に置かれるものです。
口コミサイト、掲示板、SNSへの投稿は、この要件を満たしやすい行為です。
偽計
偽計とは、人をだましたり、錯誤や不知を利用したりすることをいいます。
虚偽の予約を大量に入れる、虚偽の注文をする、虚偽の苦情を繰り返すといった行為がこれにあたります。
名誉毀損との違い
事業者が被害を受けた場合、どちらで構成するかが問題になります。
| 名誉毀損罪 | 信用毀損罪 | |
|---|---|---|
| 条文 | 刑法230条 | 刑法233条 |
| 保護するもの | 社会的評価全般 | 経済的な側面での評価 |
| 内容の真偽 | 真実でも成立し得る | 虚偽であることが必要 |
| 親告罪か | 親告罪 | 親告罪ではない |
| 告訴期間 | 犯人を知った日から6か月 | 制限なし |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
真実であっても成立するか
名誉毀損罪は、摘示した事実の有無にかかわらず成立します。
公共の利害に関する事実であり、目的が公益を図ることにあり、真実であることが証明された場合に限って処罰されません。
これに対し、信用毀損罪は虚偽であることが要件です。
内容が真実かどうか分からない場合、名誉毀損のほうが構成しやすい面があります。

期間の制約
名誉毀損罪は親告罪であり、告訴は犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります。
信用毀損罪と業務妨害罪は親告罪ではないため、この制限を受けません。
投稿者を特定するまでに時間がかかった場合や、民事の交渉を先に進めていた場合に、この違いが意味を持ちます。
両方を検討する
同じ書き込みについて、名誉毀損と信用毀損の両方にあたる場合があります。
内容が虚偽であることを示せる部分は信用毀損として、真偽が明らかでない部分は名誉毀損として、それぞれ検討することになります。

業務妨害罪
偽計業務妨害と威力業務妨害
| 類型 | インターネット上の例 |
|---|---|
| 偽計業務妨害 | 虚偽の犯行予告、虚偽の予約や注文、虚偽の苦情の繰返し |
| 威力業務妨害 | 爆破予告、危害を加える旨の予告 |
威力とは、人の意思を制圧するような勢力をいいます。
爆破予告のように、相手を畏怖させて業務を止めさせる行為がこれにあたります。
事業者が受ける偽計の例
インターネットを通じて事業者が受ける偽計には、次のようなものがあります。
| 行為 | 妨げられる業務 |
|---|---|
| 架空の名義で大量の予約を入れ、来店しない | 席の確保、仕入れ、人員の配置 |
| 他人になりすまして注文し、受け取らない | 商品の製造、発送 |
| 保健所や警察に虚偽の通報をする | 立入検査への対応、営業の中断 |
| 事実と異なる苦情を繰り返し送る | 苦情への対応、調査 |
| 虚偽の内容で低い評価を多数投稿する | 新規の顧客の獲得 |
いずれも、事業者が虚偽であることを見抜けないまま対応を強いられる点で共通しています。
どの行為がどの罪にあたるかは、個別の事情によって判断されます。
掲示板への書き込みで成立した例
東京高裁平成21年3月12日判決(高刑集62巻1号21頁)は、そのような意図がないのにインターネット掲示板に殺人事件の実行を予告した事案について、偽計業務妨害罪の成立を認めました。
書き込みを見た人からの通報を受けて、警察官が駅構内や周辺への出動と警戒を強いられ、本来の業務が妨げられたという事案です。
同判決は、掲示板への書き込みについて、次のとおり述べています。
「インターネット掲示板を通じての間接的通報も直接的110番通報と同視できる。」
書き込んだ人が直接警察に連絡していなくても、掲示板を通じて通報がされることで、業務が妨げられたと評価されています。
事業者が対象となる場合
同じ構造は、事業者が対象とされた場合にも生じます。
店舗への爆破予告や、特定の施設に危害を加えるという書き込みがされれば、営業の中止、警備の強化、来店者への説明といった対応を強いられます。
本来の営業ができなくなれば、業務が妨害されたことになります。
口コミが問題になる場合
体験にもとづく投稿との区別
口コミの多くは、利用した人の感想や評価です。
「味が好みでなかった」「接客が冷たく感じた」といった内容は、評価にとどまります。
真偽を判断できる事柄ではないため、信用毀損罪は問題になりません。
虚偽であることを示せる内容
他方、客観的な事実として述べられている内容であれば、虚偽であることを示せる場合があります。
| 書き込みの例 | 虚偽を示す資料 |
|---|---|
| 料理に異物が入っていた | その日の提供記録、衛生管理の記録 |
| 無資格の者が施術している | 資格の登録証 |
| 食中毒が出た | 保健所からの指導の有無 |
| 倒産寸前だ | 決算書、取引の状況 |
| その日は営業していなかった | 営業日の記録、売上の記録 |
こうした資料を示せるかどうかが、信用毀損として構成できるかの分かれ目になります。
来店の事実そのものを確認する
書き込みに日時や注文の内容が書かれていれば、その日にそのような来店や注文があったかを記録と照らし合わせることができます。
来店の事実自体が確認できなければ、体験にもとづく投稿であるという前提が崩れます。
刑事告訴
親告罪ではないことの意味
信用毀損罪と業務妨害罪は、被害者の告訴がなくても起訴できます。
もっとも、告訴を行うことで、処罰を求める意思を明確に示せます。
捜査を求めるのであれば、告訴状を整えて提出することになります。
公訴時効
告訴期間の制限はありませんが、公訴時効はあります。
信用毀損罪と業務妨害罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。
行為の時から進むため、投稿から3年が経過すると起訴できなくなります。
示談と処分
名誉毀損罪であれば、告訴が取り下げられると起訴されません。
信用毀損罪や業務妨害罪では、告訴を取り下げても起訴される可能性は残ります。
示談が成立したことは処分の判断で考慮されますが、それだけで手続が終わるわけではありません。

民事上の責任
事業者にとっては、損害の回復が本来の目的であることが多いと考えられます。
刑法の罪と民事の請求の関係
信用毀損罪や業務妨害罪は、刑法に定められた罪です。
損害賠償を求める民事の手続では、これらの罪名がそのまま請求の根拠になるわけではありません。
民事では、民法709条の不法行為として、どの権利や利益が侵害されたかを主張することになります。
| 民事での構成 | 内容 |
|---|---|
| 法人の名誉毀損 | 社会的評価の低下。経済的な側面での評価も含まれる |
| 営業上の利益の侵害 | 業務が妨げられたことによる損害 |
| 不正競争防止法上の営業誹謗 | 競争関係にある者が、虚偽の事実を告知・流布して営業上の信用を害した場合 |
多くの場面では、法人の名誉毀損として構成することになります。
刑法上は信用毀損罪にあたる行為であっても、民事では社会的評価の低下として主張するという関係です。
競合する事業者による書き込み
投稿者が同業の事業者であった場合には、不正競争防止法が問題になります。
同法は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為を不正競争としています(不正競争防止法2条1項21号)。
この場合、損害賠償のほか、行為の差止めを求めることもできます。
もっとも、投稿者が同業者であることは、特定してみなければ分かりません。
推測だけで同業者を名指しすることは避けてください。
謝罪広告などの措置
名誉を毀損された場合には、損害賠償とは別に、名誉を回復するのに適当な処分を求めることができます(民法723条)。
もっとも、裁判所が命じる例は限られています。

法人の無形の損害
法人には精神的な苦痛がありませんが、社会的評価が低下したことによる無形の損害について賠償が認められます。
法務省民事局が令和8年4月に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」に掲載された裁判例の中には、障害者福祉施設を運営する法人に対する掲示板への5件の投稿について、1件につき20万円程度を目安として合計100万円を認めたものがあります(東京地裁令和4年12月7日判決)。

売上の減少を損害として求める場合
書き込みの後に売上が減少したとしても、それがそのまま損害として認められるわけではありません。
売上は、季節、景気、競合店の出店など、さまざまな事情で変わります。
書き込みによって減少したといえるかという因果関係を示す必要があり、この立証は容易ではありません。
前掲の東京地裁令和4年12月7日判決も、金額を確定できる財産的な損害については、無形の損害とは別に主張して立証する必要があるとしています。
示すための資料
- 書き込みの前後の売上や来店数の推移
- 予約のキャンセルや取引の中止があった場合、その理由が分かる記録
- 顧客や取引先から書き込みについて問い合わせを受けた記録
- 対応のために要した費用(説明のための人員、警備の強化など)
書き込みを理由とするキャンセルや問い合わせの記録は、因果関係を示す資料になります。
日々の記録を残しておくことが、後の請求に影響します。
事業者としての対応の流れ
- 書き込みの内容、URL、投稿日時を保存する
- 内容が事実と異なることを示す資料を整える
- 削除を求めるか、投稿者の特定を求めるかを決める
- 特定できた場合、損害賠償の請求と刑事告訴を検討する
投稿者の特定
匿名の書き込みであれば、発信者情報開示請求によって投稿者を特定する必要があります。
アクセスプロバイダの通信記録の保存期間は一般に3か月から6か月程度で、裁判手続による特定には3か月から9か月程度かかります。
刑事の告訴期間に制限がないとしても、特定そのものには時間の制約があります。

反論の投稿をする前に
口コミサイトには、事業者が返信できる機能を備えたものがあります。
事実と異なることを説明する返信は有効な場合がありますが、投稿者を推測して名指しする、感情的に反論するといった対応は、かえって事業者側の評価を下げることにつながります。
返信の内容は、法的な対応を検討した後に決めることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
- 名誉毀損と信用毀損はどう違いますか。
-
名誉毀損罪は社会的評価全般を保護し、内容が真実であっても成立し得ます。
信用毀損罪は経済的な側面での評価を保護し、内容が虚偽であることが必要です。また、名誉毀損罪は親告罪ですが、信用毀損罪は親告罪ではないため告訴期間の制限を受けません。
- 「料理がまずい」という口コミは信用毀損になりますか。
-
なりません。
味の感想は評価にとどまり、真偽を判断できる事柄ではないためです。
他方、「料理に異物が入っていた」「期限切れの食材を使っている」といった客観的な事実として述べられた内容が虚偽であれば、信用毀損罪が問題になり得ます。 - 商品の品質について書かれた場合も対象になりますか。
-
対象になります。
最高裁は、信用毀損罪にいう「信用」は支払能力や支払意思に対する信頼に限られず、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むとしています。
- 店舗への爆破予告が書き込まれました。
-
威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪が問題になります。
インターネット掲示板への虚偽の犯行予告について、偽計業務妨害罪の成立を認めた裁判例があります。
身の安全に関わる内容であれば、まず警察に相談してください。 - 売上が減った分を請求できますか。
-
請求できる場合がありますが、書き込みによって売上が減少したという因果関係を示す必要があり、立証は容易ではありません。
書き込みを理由とするキャンセルや問い合わせの記録があれば、因果関係を示す資料になります。
- 損害賠償を求める場合も「信用毀損」を理由にするのですか。
-
信用毀損罪は刑法に定められた罪であり、民事の請求では、民法709条の不法行為として法人の名誉毀損や営業上の利益の侵害を主張することになります。
刑法上は信用毀損罪にあたる行為であっても、民事では社会的評価の低下として構成する関係です。 - 同業者が書き込んだようです。
-
投稿者が競争関係にある事業者であれば、不正競争防止法の営業誹謗が問題になり、損害賠償のほか行為の差止めを求められる場合があります。
ただし、同業者であることは投稿者を特定してみなければ分かりません。
推測だけで名指しすることは避けてください。 - 書き込みから時間が経っていますが、告訴できますか。
-
信用毀損罪と業務妨害罪は親告罪ではないため、告訴期間の制限はありません。
ただし、公訴時効は3年であり、行為の時から進みます。また、投稿者を特定するには通信記録が残っている必要があり、時間が経つほど特定が難しくなります。
まとめ
この記事の要点は次のとおりです。
- 信用毀損罪は、虚偽の内容を広めて経済的な側面での評価を害する行為を処罰する
- 最高裁は、商品の品質に対する社会的な信頼も「信用」に含まれるとした
- 名誉毀損罪と違い、内容が虚偽であることが必要である
- 親告罪ではないため、告訴期間の制限を受けない
- 掲示板への虚偽の犯行予告について、偽計業務妨害罪の成立を認めた裁判例がある
- 売上の減少を損害として求めるには、因果関係を示す資料が必要になる
事業者が被害を受けた場合、名誉毀損と信用毀損のどちらで構成するかによって、必要な資料も期間の制約も変わります。
書き込みの内容に即して、両方を検討することになります。
当事務所では、インターネット上の書き込みについて、削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴のいずれにも対応しています。
店舗や会社に関する書き込みでお困りの方は、当事務所にご相談ください。
投稿者の特定には通信記録の保存期間という時間的な制約があります。
お早めにご相談ください。
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