出し子とは?成立する罪と、詐欺の内容を知らなくても罪になる理由

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 出し子とは、特殊詐欺の被害金を、他人名義のキャッシュカードなどを使ってATMから引き出す役割のことです。
  2. ATMから引き出す行為には窃盗罪が成立し、被害者に振り込ませる手口の詐欺では、電子計算機使用詐欺罪の共犯にもなり得ます。
  3. 詐欺の具体的な手口を知らなくても、犯罪で得られたお金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば、責任を問われます。

はじめに

「キャッシュカードでお金を下ろすだけ」「ATMの近くで待機して、連絡が来たら引き出す」。
こうした仕事が、インターネットの掲示板やSNSで、高額の報酬をうたって募集されています。
その多くは、特殊詐欺の「出し子」を集めるためのものです。

出し子は、被害者と会うことも、電話で話すこともありません。
そのため、自分は詐欺をしていない、罪は軽いはずだと考える人もいます。
この記事では、出し子とは何か、どのような罪が成立するのか、詐欺の内容を知らなくても責任を問われるのはなぜかを、令和7年の最高裁判所の判決をもとに説明します。

出し子とは

特殊詐欺の中での役割

特殊詐欺は、指示役、かけ子、受け子、出し子、回収役などが役割を分担して行う犯罪です。
このうち出し子は、被害者からだまし取ったキャッシュカードや、被害者に振り込ませた口座のキャッシュカードを使って、ATMから現金を引き出す役割を担います。

受け子が被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る役割であるのに対し、出し子は、その後に現金を手に入れる段階を担います。
引き出した現金は、指示に従って回収役に渡したり、コインロッカーに入れたりします。

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検挙の状況

警察庁の統計1によれば、令和7年に特殊詐欺で検挙された2,338人のうち、出し子は301人(12.9%)でした。
受け子(1,379人)とあわせると、検挙人員全体の71.9%を占めます(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」)。

同じ年に検挙された外国人は239人で、検挙人員全体の10.2%でした。
埼玉県警察は、日本語学校に通う留学生や技能実習生が出し子のアルバイトに誘われているとして、注意を呼びかけています。

出し子の主な手口

受け子が受け取ったキャッシュカードで引き出す

かけ子が警察官や金融機関の職員などを名乗って被害者をだまし、受け子が被害者からキャッシュカードと暗証番号を受け取ったり、すり替えたりします。
出し子は、そのキャッシュカードを使って、ATMから現金を引き出します。
被害者が気づいて口座を止める前に引き出すため、受け子がカードを手に入れてから短時間のうちに引き出すよう指示されます。

被害者に振り込ませた口座から引き出す

かけ子が被害者に、「還付金を受け取れる」「未払いの料金がある」などとうそを言い、犯行グループが管理する口座にお金を振り込ませます。
この口座には、他人から買い取ったり借りたりした口座が使われることがあり、出し子は、その口座のキャッシュカードを渡されて、振り込まれたお金を引き出します。

このような手口では、出し子は指定された時間にATMの近くで待機し、振込が確認された直後に、電話などの指示で引き出すよう求められます。

別の口座に送金する

ATMから現金を引き出すのではなく、振り込まれたお金を、さらに別の口座に送金するよう指示されることもあります。
被害金の流れを分かりにくくし、口座が凍結される前にお金を移すためです。

口座を提供した人の責任

出し子が使うキャッシュカードの口座は、もともと別の人の名義の口座です。
お金に困って自分の口座を売ったり、「口座を貸すだけ」と言われて通帳やキャッシュカードを渡したりした人も、犯罪収益移転防止法違反などの罪に問われます。
令和8年7月10日からは、口座の売買などに対する罰則が引き上げられました。

口座を渡した人が、それが特殊詐欺に使われることを認識していれば、詐欺の共犯として責任を問われる可能性もあります。

ATMから引き出す行為が窃盗罪になる理由

被害者は銀行

出し子がATMから現金を引き出す行為には、詐欺罪ではなく、窃盗罪(刑法235条)が成立すると考えられています。

ATMの中にある現金は、金融機関が管理しています。
金融機関は、キャッシュカードを、正当な預金者が自分の預金を引き出すために使うことを前提に発行しています。
出し子は、払い戻しを受ける正当な権限がないのに、他人名義のキャッシュカードを使って、金融機関の意思に反してATMから現金を持ち去っています。
そのため、ATMの現金を管理する金融機関を被害者とする窃盗罪が成立します。

後に紹介する令和7年の最高裁判所の判決でも、出し子が「正当な払戻権限がない他人名義のキャッシュカード」を使って現金を引き出した行為について、窃盗罪が認定されています。

機械はだまされない

詐欺罪は、人をだまして、だまされた人に財物を渡させる犯罪です。
ATMは機械であり、だまされることはありません。
そのため、ATMから現金を引き出す行為は、詐欺罪ではなく窃盗罪として扱われます。

法定刑

窃盗罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
罰金刑の定めがある点で、10年以下の拘禁刑のみが定められた詐欺罪と異なります。
ただし、特殊詐欺の一部として関与した事件で、罰金にとどまることは考えにくいでしょう。

振込型の詐欺と電子計算機使用詐欺罪

被害者にATMを操作させる手口

還付金詐欺では、かけ子が金融機関の職員などを装って、「ATMで手続をすれば還付金を受け取れる」と被害者に電話で指示し、実際には振込送金の操作であることに気づかせないまま、犯行グループの口座に送金させます。

この場合、被害者は、お金を振り込むつもりがないまま、機械を操作させられています。
そのため、通常の詐欺罪ではなく、電子計算機に虚偽の情報を与えて財産上の利益を得る、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が成立するとされています。
法定刑は10年以下の拘禁刑です。

出し子にも共謀を認めた最高裁判決

では、かけ子が被害者をだましている内容を知らされていない出し子にも、電子計算機使用詐欺罪の責任を問えるのでしょうか。
この点について、最高裁判所は、令和7年7月11日、出し子について初めての判断を示しました。

この事件の被告人は、インターネット上の掲示板で知り合った者から、ATMから現金を引き出す「仕事」の依頼を受け、暗証番号が書かれた他人名義のキャッシュカード複数枚を受け取りました。
平日の午前9時頃からATMの近くで待機し、電話の指示があればすぐに現金を引き出すこと、報酬は引き出した現金50万円につき1万円であることなどを伝えられていました。
被告人は、還付金詐欺の被害者9人がATMを操作して送金させられた合計約773万円について、送金の直後に、26回にわたって合計約723万円を引き出していました。

第一審は、窃盗罪に加えて電子計算機使用詐欺罪の共謀を認め、懲役4年としました(青森地裁八戸支部令和5年3月24日判決)。
これに対し控訴審は、被告人が詐欺の手口をまったく知らなかったことなどを理由に、電子計算機使用詐欺罪については無罪とし、懲役3年6月としていました(仙台高裁令和6年1月30日判決)。

最高裁判所は、次のように述べて控訴審の判断を覆し、懲役4年とした第一審判決を維持しました。

以上の事実関係は、被告人の引き出す現金が詐欺等の犯罪に基づいて被告人の所持するキャッシュカードに係る預貯金口座に振込送金されたものであることを十分に想起させ、本件のような態様の電子計算機使用詐欺も、被告人が想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていたといえるから、被告人は、そのような電子計算機使用詐欺に関与するものである可能性を認識していたと推認できる。

最高裁判所第三小法廷令和7年7月11日判決・刑集79巻5号199頁

最高裁判所は、被告人が、送金が行われる当日の朝からATMの近くで待機し、送金から短時間のうちに現金を引き出していたことから、詐欺グループとの間で暗黙のうちに意思を通じ合っていたと評価できるとしました。
そして、被告人の役割は、詐欺による利益をすぐに現金として確保するという犯行の目的を達成するうえで「極めて重要なもの」だとしています。

手口や罪名まで知る必要はない

この判決には、裁判長による補足意見が付されています。
補足意見は、出し子が、実行犯の行う犯罪行為が電子計算機使用詐欺罪の構成要件にあてはまるかどうかまで認識する必要はないとしています。

つまり出し子は、詐欺の具体的な手口や罪名を知らなくても、自分の仕事が特殊詐欺などの犯罪で得られたお金を引き出すものかもしれないと認識していれば、詐欺の共犯としての責任を問われ得ます。

「詐欺だとは知らなかった」という主張がどのように判断されるかは、受け子の場合も含めて、以下の記事で解説しています。

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引き出した現金を運んだだけの場合

出し子から現金を受け取り、上位の者に届ける回収役や運搬役も、最初から詐欺の計画を知って役割を分担していれば、詐欺罪や窃盗罪の共同正犯として処罰される可能性があります。

一方、出し子による引き出しが終わった後になって初めて関わり、盗まれたお金だと知りながら運んだという場合には、詐欺や窃盗の共犯ではなく、盗品等運搬罪(刑法256条2項)が問題になることもあります。
どの罪が成立するかは、いつ、どのような認識で関わったかによって異なります。

出し子が捕まるきっかけ

出し子は、ATMを使う以上、引き出しの日時や場所、使われたキャッシュカードの記録が必ず残ります。
ATMには防犯カメラも設置されています。
金融機関や警察が、不自然な引き出しを繰り返す人物を警戒していることもあります。

「出し子は捕まらない」といった書き込みも見られますが、根拠はありません。
その場で捕まらなくても、ATMの記録や防犯カメラの映像、共犯者のスマートフォンの解析などから、後日逮捕されることがあります。

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出し子の量刑

法務省法務総合研究所が令和3年版犯罪白書で公表した特別調査2によれば、受け子・出し子として有罪になった人の54.9%が全部実刑でした。
認定された事件が1件にとどまれば全部実刑は34.7%でしたが、2件で72.1%、3件で92.3%に上がっています。

出し子は、1枚のキャッシュカードで何回も引き出したり、複数の被害者のカードを使ったりすることがあり、関与した事件の数が増えやすい役割です。
令和7年の最高裁判決の事件でも、引き出しは26回に及んでいました。

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報酬を受け取っていたとしても、それは被害額のごく一部です。
しかし、被害者に対しては、関与した事件の被害全額について賠償の責任を負います。

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よくある質問(FAQ)

出し子とは何ですか。

特殊詐欺で、被害者からだまし取ったキャッシュカードや、被害者に振り込ませた口座のキャッシュカードを使って、ATMから現金を引き出す役割のことです。
引き出した現金は、指示に従って回収役などに渡します。

出し子は何の罪になりますか。

ATMから現金を引き出す行為には、ATMの現金を管理する金融機関を被害者とする窃盗罪が成立します。
被害者にATMを操作させて送金させる手口の詐欺では、電子計算機使用詐欺罪の共犯にもなり得ます。

出し子は被害者と会っていないのに、詐欺の罪にもなるのですか。

なり得ます。

最高裁判所は、ATMの近くで待機し、送金の直後に引き出していた出し子について、詐欺グループとの共謀を認め、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めています(最高裁判所令和7年7月11日判決)。

どんな詐欺か知らずに引き出しただけでも罪になりますか。

罪になる可能性があります。

最高裁判所の補足意見は、出し子が具体的な手口や罪名まで認識する必要はないとしており、犯罪で得られたお金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば、責任を問われる可能性があります。

出し子の刑罰はどのくらいですか。

窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、電子計算機使用詐欺罪は10年以下の拘禁刑です。

法務省の調査では、受け子・出し子として有罪になった人の54.9%が全部実刑で、関与した件数が増えるほど実刑の割合が高くなっています。

引き出した現金を運んだだけでも罪になりますか。

最初から計画を知って役割を分担していれば、詐欺罪や窃盗罪の共同正犯になる可能性があります。

引き出しが終わった後に初めて関わり、盗まれたお金だと知りながら運んだ場合は、盗品等運搬罪が問題になることもあります。

まとめ

  • 出し子とは、特殊詐欺の被害金を他人名義のキャッシュカードなどを使ってATMから引き出す役割であり、令和7年は301人が検挙された
  • ATMから引き出す行為は、ATMの現金を管理する金融機関の意思に反して現金を持ち去るものとして、窃盗罪が成立する
  • 被害者にATMを操作させて送金させる手口の詐欺では、出し子にも電子計算機使用詐欺罪の共謀が認められた最高裁判決がある
  • 出し子は、詐欺の具体的な手口や罪名を知らなくても、犯罪で得られたお金を引き出す仕事かもしれないと認識していれば、責任を問われ得る
  • 出し子は引き出しの回数が増えやすく、関与した事件の数が増えるほど実刑の割合が高くなる

当事務所では、出し子として関与してしまった方からの自首や出頭についてのご相談、逮捕された方の接見、取調べへの対応の助言、被害者との示談交渉などをお受けしています。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。

出し子として関与してしまった場合、逮捕の前か後かによって取れる手段が変わります。
お早めにご相談ください。

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  1. https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf ↩︎
  2. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_5_3_4.html ↩︎

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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