同人誌・同人ゲーム・音声作品のトレント利用で請求を受けた方へ|商業作品との違いを弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 同人誌・同人ゲーム・音声作品も、著作物として商業作品と同様に保護されています。トレントでの共有は著作権侵害となり、開示請求・損害賠償請求の対象となり得ます。「同人だから請求されることはない」という理解は誤りです。
  2. 同人作品の権利者は、企業ではなく作家個人やサークルであることが多く、請求の名義や交渉の相手方の性格が、商業作品の場合と異なり得ます。見慣れない名義の書面でも、詐欺と即断せず、対象作品名・通信日時で確認してください。
  3. 損害額の算定は、その作品の販売価格・流通の実態に即して検証すべきものです。「同人だから権利がない」も誤りですが、「請求されたとおりに支払うしかない」も誤りです。金額の根拠の精査と交渉の余地があります。

はじめに

「トレントで同人誌のまとめファイルをダウンロードしていたら、意見照会書が届いた。商業誌ではないのに、請求されることがあるのか」 「同人ゲームの件で、聞いたことのない個人名義の請求書面が届いた。企業からではないが、本物なのか」

トレント(BitTorrent)で流通しているファイルには、商業作品だけでなく、同人誌・同人ゲーム・音声作品といった同人流通の作品も含まれています。
そして、これらの作品の無断共有も、商業作品と同じく著作権侵害であり、開示請求や損害賠償請求の対象となり得ます。
実際に、同人作品を対象とする請求への対応を掲げる例も見られます。

同人作品の類型には、商業作品と異なる特徴があります。
権利者が企業ではなく個人・サークルであることが多いこと。
作品の価格や流通の規模がさまざまであり、損害額の算定の検証が特に重要になること。
そして、二次創作作品の場合の権利関係です。

本記事では、同人作品の類型に固有の論点を解説します。
示談金の相場・裁判所の算定・減額交渉、複数請求を前提とした示談の設計は、それぞれ別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

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同人作品も、著作権で保護されている

著作権法が保護する著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであり、商業出版されたか、企業が制作したか、どこで販売されたかは、保護の要件ではありません。
個人が創作した同人誌も、サークルが制作した同人ゲームも、音声作品も、創作的な表現である以上、著作物として保護されます。

したがって、これらの作品を権利者に無断でトレントで共有すれば、商業作品の場合とまったく同じく、公衆送信権(送信可能化権)の侵害となります。
トレントの仕組み上、ダウンロードが同時にアップロードを伴うことも、他のジャンルと変わりません。

「同人作品は権利意識が緩い」「請求までは来ない」という認識で利用していた方もいるかもしれませんが、権利行使をするかどうかは権利者の判断であり、同人作品であることは、請求を受けない理由にはなりません。

権利者が個人・サークルであることの意味

同人作品の類型で特徴的なのが、権利者の性格です。

商業作品の権利者は企業であり、その請求は代理人弁護士を通じた組織的・定型的なものが中心です。
これに対し、同人作品の著作権は、作品を創作した作家個人や、制作したサークルに帰属しているのが通常です。
このため、請求の名義は、個人名、サークル名、またはその代理人(弁護士等)となり得ます。

受け取る側の注意点は、次の2点です。

第一に、見慣れない名義でも詐欺と即断しないことです。
企業名ではなく個人名・サークル名の書面は不審に見えますが、同人作品の権利構造上、あり得る形です。
判断の基準は名義だけでなく、書面に記載された対象作品名・通信日時とご自身の利用の照合です。
なお、正規の意見照会書は金銭の支払いを求めるものではなく、金銭の振込を直ちに要求する書面は詐欺を疑うべきです。

第二に、交渉の相手方の性格が異なり得ることです。
企業の定型的な請求と異なり、個人の権利者の場合、自らの作品を違法流通させられたことへの被害感情や、個別の意向が交渉に反映されやすいこともあり得ます。
定型的な相場観だけを前提とした交渉が通用するとは限らず、相手方の立場を踏まえた丁寧な交渉の設計が必要になります。

損害額の考え方|作品の実態に即した検証

損害賠償の場面でよく主張されるのは、作品のダウンロード数に販売価格を乗じる形の損害額です。

同人作品の場合、この算定の検証が特に重要になります。
同人作品の販売価格や流通規模は作品によってさまざまであり、少部数・小規模の流通の作品もあれば、多数の販売実績を持つ人気作品もあります。
主張されている損害額が、その作品の実際の価格・販売実態・あなたの関与の期間や規模に即したものかどうかは、よく精査しなければなりません。

そして、権利者側の主張額と、裁判所が実際に認める損害額は別物です。
裁判所が実際の関与期間等に基づいて損害を大幅に限定した裁判例もあります。
同人作品の請求だからといって特別なルールがあるわけではなく、金額の根拠を確認しないまま言い値で応じる必要はありません(裁判所の算定の枠組みと減額交渉の材料は、別の記事で詳しく解説しています。)。

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二次創作作品の場合

同人作品には、オリジナル作品のほかに、既存の商業作品を題材とした二次創作作品が多く含まれます。
「二次創作の同人誌なのだから、そもそも権利侵害にならないのではないか」という疑問を持つ方がいますが、この理解には注意が必要です。

二次創作作品であっても、その作者が新たに創作した表現の部分については、著作権が成立し得ます。
二次創作作品が原作との関係で問題を含み得ることと、第三者がその作品を無断で複製・共有してよいかどうかは、別の問題です。
「二次創作だから誰でも自由に共有できる」という理屈は成り立ちません。

権利関係の細部は事案によって異なり得ますが、受け取る側の実務的な結論としては、二次創作作品に関する請求であることは、請求を無視してよい理由にはならない、と理解してください。
請求の法的な根拠に疑問がある場合には、その検討自体が交渉の材料になり得ますので、自己判断で放置せず、書面を持ってご相談ください。

対応の基本は共通

回答期限内の対応、複数の権利者からの請求を前提とした設計、示談の進め方については、ジャンルを問わず共通の考え方が当てはまります。

なお、トレントの利用が同人作品と商業作品の両方に及んでいた場合、それぞれの権利者から別々に請求が届き得ます。
目の前の1通だけでなく、利用の全体像を踏まえた設計が必要である点は、他のジャンルと同じです。

よくある質問(FAQ)

サークル名や個人名から請求の書面が届きました。本物ですか?

同人作品の著作権は作家個人やサークルに帰属しているのが通常であり、個人名・サークル名やその代理人の名義で請求が届くこと自体は不自然ではありません。
差出人の名義だけでなく、書面に記載された対象作品名・通信日時とご自身の利用を照合してください。

金銭の振込を直ちに要求する書面は詐欺を疑うべきです。
判断がつかない場合は、書面一式を持ってご相談ください。

同人作品は数百円〜数千円程度なのに、高額を請求されました。おかしくないですか?

損害額の主張は、ダウンロード数に販売価格を乗じる形などで行われるため、作品単価が低くても主張額が大きくなることはあります。
ただし、その算定が作品の実際の販売実態やあなたの関与の期間・規模に即しているかは不明であり、主張額がそのまま認められるわけではありません。

金額の根拠を確認した上で交渉すべきですので、応じる前にご相談ください。

二次創作の同人誌なら、著作権侵害にならないのではないですか?

そうとは言えません。

二次創作作品でも、作者が創作した表現部分には著作権が成立し得ます。
二次創作作品が原作との関係で問題を含み得ることと、第三者がその作品を無断で共有してよいかは別の問題であり、請求を無視してよい理由にはなりません。

請求の根拠に疑問がある場合は、その検討を含めてご相談ください。

商業作品と同人作品の両方の請求が届きました。

権利者が異なる以上、それぞれ別の請求として対応することになります。

示談の効力は権利者ごとであり、全体の利用状況と資金の枠を踏まえて、各請求への対応を一体で設計する必要があります。
複数請求への設計の考え方は、関連記事で解説しています。

請求された金額を支払えません。

減額交渉、分割払いの交渉、複数請求を見込んだ総額の設計など、支払能力に応じた解決の組み立てがあります。
借入れによる一括払いは避けるべきです。

支払いが難しい場合の対応を解説した記事をご覧の上、早めにご相談ください。

家族に知られたくありません。

弁護士が窓口となることで、権利者側からの連絡が自宅に届く状態は解消できます。
対象がアダルト系の同人作品である場合も含め、ご家族に知られたくない方向けの進め方を解説した記事をご覧ください。

まとめ

同人誌・同人ゲーム・音声作品のトレント利用に関する請求の固有のポイントは、①同人作品も著作物として保護されており、「同人だから請求されない」という理解は誤りであること、②権利者が個人・サークルであることが多く、請求の名義や交渉の相手方の性格が商業作品と異なり得ること、③損害額の算定は作品の販売実態とあなたの関与に即して検証すべきものであり、言い値で応じる必要はないこと、の3点です。

同人作品の請求は、権利者の個別性が高い分、定型的な対応が通用しにくい類型でもあります。
当事務所では、同人作品を含むトレントの開示請求・損害賠償請求について、書面の確認から金額の検証、示談交渉まで一貫して対応しています。
見慣れない名義の書面が届いた段階で、放置する前にまずはご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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