アニメ・ゲームのトレント利用で開示請求された方へ|「知らない会社」から通知が届く理由を弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. アニメの権利は製作委員会方式のもとで複数の会社に分かれて帰属していることが多く、請求の差出人が作品名とは結びつかない会社名になることがあります。「知らない会社からの通知=詐欺」と誤解して放置しないことが、まず重要です。
  2. 放送直後・公開中の作品ほど権利者側の監視が活発とされており、また、全話パックなどの一括ファイルは、1回の利用でも多数話分の侵害と評価され得ます。「1ファイルだから1件」とは限りません。
  3. アニメ・ゲームは学生など若い方の利用が多いジャンルです。賠償の問題に、支払能力と家族への相談という問題が重なるため、金額の交渉だけでなく、誰が対応の主体となり、どう資金を組み立てるかを含めた設計が必要です。

はじめに

「トレントでアニメをダウンロードしていたら、意見照会書が届いた。ただ、書かれている会社名に見覚えがない。作品は知っているのに、この会社は何なのか」 「発売されたばかりのゲームを落としてしまった。損害賠償はいくらになるのか」

トレント(BitTorrent)に関する開示請求はアダルトビデオの類型が最も多いものの、アニメ・漫画・音楽・映画・ゲームといった一般の作品についても、意見照会書が届いたというご相談は実際にあります。

アニメ・ゲームの類型には、他のジャンルと異なる特徴があります。
権利の帰属が複雑で、請求者が「知らない会社」になりやすいこと。
一括ファイルの利用により、侵害の規模が本人の感覚より大きく評価され得ること。
そして、利用者に学生など若い方が多いことです。

本記事では、アニメ・ゲームの類型に固有の論点を解説します。
示談金の相場・裁判所の損害額の算定・減額交渉の材料、複数請求を前提とした示談の設計(個別和解・包括和解)は、それぞれ別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

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アニメ・ゲームでも開示請求は行われている

「トレントで請求されるのはAVだけ」という認識は誤りです。

アニメや漫画の利用を対象とする意見照会書が届いたというご相談・事例の報告は実際にあり、音楽(レコード会社の作品)や漫画についても、権利者による開示請求の報告があります。
ゲームについても、プログラムや映像・音楽を含む著作物として同様に保護されており、権利行使の対象となり得ます。

また、劇場公開中の映画や放送・配信直後のアニメ、発売直後のゲームなど、権利者にとって商業的価値の高い時期にある作品ほど、監視が活発に行われているとされています。
「新作を早く手に入れたい」という動機での利用が、最も検知されやすい利用でもあるのです。

対象がアニメ・ゲームであっても、トレントの仕組み上、ダウンロードは同時にアップロード(送信可能化)を伴い、公衆送信権の侵害として損害賠償の対象になるという構造は、他のジャンルと変わりません。

請求者が「知らない会社」になる理由

この類型で最も多い戸惑いが、「作品は知っているが、差出人の会社を知らない」というものです。
これには、権利の帰属の構造上の理由があります。

アニメ:製作委員会方式

日本のアニメの多くは、複数の会社(出版社、映像会社、広告代理店、制作会社など)が共同で出資する製作委員会方式で作られています。
作品の著作権は、この枠組みに参加する会社に帰属し、権利行使は、そのうちの窓口となる会社の名義で行われるのが通常です。

その結果、視聴者に馴染みのあるテレビ局や制作スタジオの名前ではなく、出資会社や映像パッケージの発売元など、作品名からは想起しにくい会社名で請求が届くことになります。

ゲーム:開発と販売の分離、海外の権利者

ゲームでは、開発会社(デベロッパー)と販売会社(パブリッシャー)が別である場合が多く、権利行使は販売会社側から行われることがあります。
また、海外のゲームであれば、海外の会社やその日本法人・代理人の名義で通知が届くこともあり得ます。

確認の方法

見知らぬ会社名の書面が届いたら、社名ではなく、書面に記載された対象作品名と通信日時を確認してください。
あなた(またはご家族)の利用と照合できれば、その請求が実体のあるものかどうかを判断できます。
正規の意見照会書は金銭の支払いを求めるものではなく、金銭の振込を要求する書面は詐欺を疑うべきです。
判断がつかない場合は、書面一式を持ってご相談ください。

アニメ・ゲーム特有の侵害の評価

全話パック・一括ファイルの問題

アニメのトレントファイルには、1話ごとのファイルだけでなく、1クール全話や複数シーズンをまとめた、いわゆる全話パックの形で流通しているものがあります。

一括ファイルを1回ダウンロードした場合でも、そこに含まれる各話・各作品ごとに著作権侵害が成立し得るため、本人の感覚では「1回使っただけ」でも、権利者側からは多数話分の侵害として損害が主張され得ます。
ファイルの数と侵害の数は、一致するとは限らないのです。

ゲームの損害の主張

ゲームは1本あたりの販売価格が数千円から1万円前後と、映像作品より高額な場合が多く、ダウンロード数に販売単価を乗じる形の損害の主張は、その分大きくなりやすい傾向があります。
発売直後の作品であれば、なおさらです。

もっとも、いずれの場合も、権利者側の主張する損害額がそのまま認められるわけではありません。
裁判所が実際の関与期間等に基づいて損害を大幅に限定した裁判例もあり、主張の規模に圧倒されて言い値で応じる前に、金額の根拠を精査する必要があります(裁判所の算定と減額交渉の材料は、別の記事で詳しく解説しています。)。

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学生・若い方が当事者の場合

アニメ・ゲームの類型は、学生をはじめとする若い方の利用が多いという特徴があります。
当事者が若い場合、賠償の問題に次の2つの問題が重なります。

第一に、対応の主体です。利用者が18歳未満(未成年)であれば、示談は親権者が関与して進めることになり、親の監督義務の問題も関わります。
18歳以上の学生であれば、法律上は本人が当事者ですが、現実には資金や判断の面で家族の協力をどうするかという問題が生じます。
子どもの利用が発覚した親御さんの対応は、別の記事で詳しく解説しています(※C-2スポークへリンク)。

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第二に、支払能力です。アルバイト収入しかない、貯蓄がないという状況で数十万円の請求を受けた場合でも、減額交渉、分割払いの交渉、複数請求を見込んだ総額の設計といった、支払能力に応じた解決の組み立てがあります。
借金をして一括で払うという判断をする前に、必ず選択肢を確認してください。

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対応の基本は共通|関連記事のご案内

回答期限内の対応、複数の権利者からの請求を前提とした設計、示談の枠組み(個別和解・包括和解)と相場・交渉については、ジャンルを問わず共通の考え方が当てはまります。
実務上、アニメ・漫画などの複数作品をまとめた包括的な示談による解決も行われており、当事務所でも取扱いがあります。

よくある質問(FAQ)

作品には覚えがありますが、聞いたことのない会社から通知が届きました。本物ですか?

アニメは製作委員会方式のもとで権利が複数の会社に帰属していることが多く、権利行使の窓口となる会社の名義で通知が届くため、作品名と社名が結びつかないことは珍しくありません。
差出人の社名ではなく、記載された対象作品名・通信日時とご自身の利用を照合してください。

正規の意見照会書は金銭の支払いを求めるものではありません。
判断がつかない場合はご相談ください。

全話パックを1回ダウンロードしただけです。侵害は1件ですか?

1件とは限りません。

一括ファイルに含まれる各話・各作品ごとに著作権侵害が成立し得るため、権利者側からは多数話分の侵害として損害が主張されることがあります。
もっとも、主張額がそのまま認められるわけではなく、金額については別途の検討が必要です。

ゲームの体験版や無料配布版でも請求されますか?

権利者自身が公式に無料配布しているファイルを、その配布方法に従って入手すること自体は、著作権侵害にはなりません。

ただし、公式配布を装った違法アップロードのファイルも流通しており、「無料で落とせた=適法」ではありません。
製品版・有料作品を権利者に無断で共有していれば、侵害となります。

ご自身がダウンロードしたものが何だったかを、書面の記載と照らして確認してください。

学生で、請求された金額を支払えません。

減額交渉や分割払いの交渉、複数請求を見込んだ総額の設計など、支払能力に応じた解決の組み立てがあります。
借入れによる一括払いは避けるべきです。

親に相談するかどうかの判断も含めて、支払いが難しい場合の対応を解説した記事をご覧の上、早めにご相談ください。

アニメの権利者とAVメーカーの両方から請求が届きました。

トレントの利用がジャンルをまたいでいた場合、それぞれの権利者から別々に請求が届きます。

示談の効力は権利者ごとであり、まとめて一度に解決されるものではないため、全体の利用状況と資金の枠を踏まえて、各請求への対応を一体で設計する必要があります。
複数請求への設計の考え方は、関連記事で解説しています。

海外の会社名義で請求が届きました。無視してよいですか?

無視はお勧めできません。

海外のゲーム会社や映画会社が、日本法人や日本の代理人弁護士を通じて権利行使を行っている可能性があります。
差出人が海外の会社であるからといって、請求が無効であるとは限りません。

書面の内容を確認した上で、対応方針をご相談ください。

まとめ

アニメ・ゲームのトレント利用に関する請求の固有のポイントは、①製作委員会方式などの権利構造により、請求者が作品名と結びつかない「知らない会社」になりやすく、詐欺と誤解して放置しないこと、②全話パックの利用や高価格のゲームでは、本人の感覚より侵害の規模が大きく評価され得ること、③学生など若い当事者の場合、対応の主体と支払能力を含めた設計が必要になること、の3点です。

いずれの場合も、権利者側の主張額がそのまま確定するわけではなく、金額の根拠の精査と交渉の余地があります。
当事務所では、アニメ・ゲーム・漫画・音楽を含むトレントの開示請求・損害賠償請求について、書面の確認から示談交渉、複数請求への一貫対応まで対応しています。
差出人に見覚えがない書面でも、放置する前にまずはご相談ください。

トレントに関するご相談はこちらから

弊所の弁護士へのご相談等はこちらから

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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