【この記事の結論・要約】
- ソフトバンクのトレント案件は、裁判所の開示命令申立てを経ているケースがほとんどとされ、意見照会書には申立書類が同封されるとされています。不同意と回答しても開示に至る可能性が高い前提で、開示後の示談交渉まで見据えた方針を、最初の段階から立てておく必要があります。
- 2025年秋頃から、意見照会を経ないまま「開示命令が発令された旨の通知書」が届くケースが報告されています。この通知が届いた場合、契約者の氏名・住所はすでに開示された(または開示が間近の)段階にあり、権利者側からの連絡に備えた準備を直ちに始める必要があります。
- ソフトバンクのログ保存期間は非公開ですが、2年以上前の通信が照会の対象となった例が多数報告されています。直近の利用だけでなく、過去数年分の利用の全体像を整理し、複数の請求が届く可能性を織り込んだ方針を立てることが重要です。
はじめに
「ソフトバンクから『発信者情報開示に係る意見照会書』が届いた。トレントを使った心当たりがある」 「意見照会書は届いていないのに、いきなり『開示命令が発令された旨の通知書』という書類が届いた。どういうことなのか」
ソフトバンクは、SoftBank光やSoftBank Air、携帯電話回線を提供する大手通信事業者であり、トレント(BitTorrent)の著作権侵害に関する書類の差出人として、実務上、相談件数の特に多いプロバイダの一つとされています。
ソフトバンクのケースには、裁判所の手続を経た照会がほとんどとされること、近時は意見照会を経ないまま開示命令の通知が届く例が報告されていることなど、他のプロバイダと異なる特徴があります。
本記事では、ソフトバンクから書類が届いた場合に固有の実務を解説します。意見照会書そのものの意味や回答の判断基準については、別の記事をご参照ください。


ソフトバンクから書類が届くのは、どの契約か
ソフトバンク名義の書類は、次のような契約について届き得ます。
- SoftBank光(プロバイダはYahoo!BB)を契約している場合
- SoftBank Air(ホームルーター)を契約している場合
- ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOなど、ソフトバンクのスマートフォン回線の契約(スマートフォンのテザリング経由でトレントを利用した場合を含みます)
「固定回線は契約していないのに届いた」という方は、スマートフォンのテザリングや、モバイル回線経由での利用が対象となっている可能性があります。
書面に記載された通信日時・IPアドレスと、ご自身(またはご家族)の利用状況を照らし合わせて確認してください。
なお、ソフトバンクの意見照会書は、ソフトバンク本体からではなく、同社が対応を委任している法律事務所の名義・封筒で届く場合があるとされています。
見慣れない法律事務所名の封筒であっても、直ちに詐欺と決めつけず、書面の内容(対象の通信、回答書の同封の有無、金銭の要求の有無)を確認してください。
本物の意見照会書は回答書の提出を求めるものであり、金銭の支払いを求めるものではありません。
書面の確認|申立書類の同封
ソフトバンクのトレント案件では、そのほとんどが裁判所の発信者情報開示命令申立てを経たケースであるとされています。
意見照会書には、権利者側が裁判所に提出した「発信者情報開示命令申立書兼消去禁止命令申立書」などの申立書類が同封されるとされており、そこに対象ファイル名や通信日時などの情報が記載されています。
裁判所の手続を経ている場合、不同意と回答しても、最終的に開示命令が発令されるケースが大半とされています。
したがって、ソフトバンクのケースでは、「不同意で開示を防げるか」よりも、「開示された後の示談交渉にどう備えるか」を軸に、最初の段階から方針を立てることが現実的です。
手続ルート別の帰結と不同意回答後の流れは、別の記事で解説しています。


回答期限(2週間)と対応
ソフトバンクの意見照会書の回答期限は、受領日から2週間以内とされています。
また、期限内に回答できない場合には、その理由を連絡するものとされています。
2週間という期間は、事実関係の確認、回答方針の検討、回答書の作成を行うには長くありません。
期限に間に合いそうにない場合でも、放置して期限を徒過させるのではなく、期限の取扱いについて連絡・相談することが重要です。
弁護士に依頼した場合には、弁護士がプロバイダ側への連絡を代行し、回答書の作成を進めます。
意見照会がないまま「開示命令が発令された旨の通知書」が届いた場合
2025年秋頃から、ソフトバンクの契約者について、意見照会書が届かないまま、「開示命令が発令された旨の通知書」がいきなり届くケースが報告されています。
この通知は、裁判所がソフトバンクに対して契約者情報の開示を命じたことを知らせるものです。
つまり、この書類が届いた時点で、あなたの氏名・住所はすでに権利者側に開示された、または開示が間近の段階にあります。
なお、発信者情報の開示にあたっては、法律上、原則として発信者への意見聴取が必要とされており(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)、意見照会を経ない運用については疑問も指摘されています。
もっとも、契約者の立場で今優先すべきは、運用の当否の議論ではなく、開示後の局面への備えです。
この通知が届いた場合、次の展開は、権利者側の代理人弁護士からの損害賠償や示談に関する連絡です。
意見照会の段階を経ていない分、心の準備も情報の整理もないまま、いきなり交渉局面に入ることになります。
通知が届いた時点で、①過去の利用の全体像の整理、②示談の資金と方針の検討、③弁護士への相談を、直ちに始めてください。
開示された後の流れと準備については、別の記事で詳しく解説しています。

ソフトバンクの手続の特徴(実務上の傾向)
契約者以外の利用者からの回答の取扱い
ソフトバンクは、契約者以外の者からの回答は受領しない運用をとっているとされています。
これはNTTドコモと同様の取扱いであり、契約者以外の利用者の意見も照会したい旨の記載が置かれる場合があるとされるKDDIとは対照的です。


ご家族が利用していたケースでは、回答書の提出者はあくまで契約者本人となるため、利用者に関する事情をどこまで記載するかという回答書の設計が必要になります。
家族が利用していた場合の考え方は、別の記事で詳しく解説しています。

ログの保存期間
ソフトバンクは、通信記録(ログ)の保存期間を公開していません。
もっとも、トレントの事案では、2年以上前の通信がソフトバンクからの照会の対象となった例が多数報告されており、2年程度はログが保存されている可能性があります。
これは、契約者にとって次の2つの意味を持ちます。
第一に、「利用したのはずっと前だから、もう請求は来ないだろう」という見込みは成り立ちにくいこと。
第二に、複数の作品・複数の権利者からの照会が、長期間にわたって時間差で届き得ることです。
ソフトバンクのケースでは、目の前の1通だけでなく、過去数年分の利用の全体像を整理した上で、今後の請求の可能性を織り込んだ全体の方針を立てることが特に重要になります(資金面の設計を含めた考え方は、別の記事をご参照ください。)。

回答の判断と、その後の流れ
同意・不同意の判断基準、不同意と回答した後の手続の進み方、開示後の示談交渉と金額の考え方、損害賠償請求権の時効については、プロバイダを問わず共通ですので、それぞれ次の記事をご参照ください。
ソフトバンクのケースは、裁判所の手続を経ているものがほとんどとされる以上、開示後の展開までを見据えた設計が最初から必要です。書類が届いた段階で、早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
- 意見照会書が届かないまま、いきなり「開示命令が発令された旨の通知書」が届きました。手続としておかしくないのですか?
-
法律上、発信者情報の開示にあたっては原則として発信者への意見聴取が必要とされており、意見照会を経ない運用には疑問も指摘されています。
もっとも、通知が届いた時点で開示は完了しているか間近の段階にあり、次に来るのは権利者側からの連絡です。
運用の当否にかかわらず、示談交渉への備えを直ちに始めることをお勧めします。
書類一式を持って、お早めにご相談ください。 - 見知らぬ法律事務所名義の封筒で届きました。本物ですか?
-
ソフトバンクは、意見照会書の送付などの対応を法律事務所に委任している場合があるとされており、法律事務所名義の封筒で届くこと自体は不自然ではありません。
本物の意見照会書は回答書の提出を求めるものであり、金銭の支払いを求めるものではありません。
金銭の振込を要求する書面は詐欺を疑ってください。
判断がつかない場合は、書面一式を持参してのご相談も可能です。 - ワイモバイルやLINEMOの契約でも届くのですか?
-
届き得ます。
ワイモバイル・LINEMOはソフトバンクの回線ブランドであり、スマートフォン回線を通じた通信(テザリングによるパソコンの接続を含みます)が対象となっている可能性があります。
書面に記載された通信日時の利用状況を確認してください。 - ソフトバンクを解約すれば、手続は止まりますか?
-
止まりません。
照会の対象は通信をした時点の契約者であり、解約後もソフトバンクは一定期間、通信記録と契約者情報を保有しています。
解約・引っ越し後に書類が届いた場合の対応は、別の記事で解説しています。 - 家族が使っていた場合、家族の名義で回答できますか?
-
ソフトバンクは契約者以外の者からの回答は受領しない運用をとっているとされており、回答書の提出者は契約者本人となります。
実際の利用者が家族である事情を回答書にどう記載するかは慎重な判断を要しますので、提出前にご相談ください。 - ソフトバンクのログは、いつまで残っているのですか?
-
保存期間は公開されていません。
ただし、2年以上前の通信が照会の対象となった例が多数報告されており、2年程度は保存されている可能性があります。
過去の利用について、長期間にわたり時間差で照会が届く可能性を前提に、方針を立てる必要があります。 - 回答期限(2週間)に間に合いそうにありません。どうすればよいですか?
-
放置して期限を徒過させることは避けてください。
ソフトバンクの書面には、期限内に回答できない場合はその理由を連絡するものとされています。
期限の取扱いの連絡・相談も含めて、弁護士が対応を代行できますので、間に合わないと思った時点でご相談ください。
まとめ
ソフトバンクから書類が届いた場合の固有のポイントは、①裁判所の申立てを経たケースがほとんどとされ、開示後の示談まで見据えた方針が最初から必要であること、②意見照会を経ないまま開示命令の通知が届く例が報告されており、その場合は即時に交渉への備えを始める必要があること、③ログ保存期間は非公開ながら2年以上前の照会例が多数報告されており、複数請求を織り込んだ全体設計が必要であること、の3点です。
スマートフォン回線(ワイモバイル・LINEMO含む)の契約でも届き得ること、法律事務所名義の封筒で届く場合があること、解約しても手続は止まらないことも、あわせて押さえてください。
当事務所では、ソフトバンクからの意見照会書・開示命令の通知について、書面の確認から回答書の作成、開示後の示談交渉まで一貫して対応しています。
特に開示命令の通知が届いた方は、権利者側からの連絡が届く前の準備が重要ですので、お早めにご相談ください。
トレントに関するご相談はこちらから
弊所の弁護士へのご相談等はこちらから