【この記事の結論・要約】
- 保釈は、起訴された後に保証金を納めることを条件として、判決まで身柄の拘束を解く制度です。起訴される前の段階では利用できません。
- 保釈金の額は、事件の内容や本人の資力に応じて裁判所が決め、保釈の条件を守っていれば、判決の後に返還されます。
- 特殊詐欺の事件では、追起訴が見込まれる間や、容疑を否認している場合に保釈が認められにくく、請求する時期の見極めが重要です。
はじめに
家族が逮捕されて起訴された後、「保釈」という言葉を耳にすることがあります。
保釈が認められれば、判決までの間、自宅に戻って生活することができます。
一方で、保釈はいつでも請求できるわけではなく、請求すれば必ず認められるものでもありません。
保釈金をどれくらい用意すればよいのか、返ってくるのかといった点も、家族にとって切実な問題です。
この記事では、保釈とは何か、保釈が認められる条件、保釈金の決まり方と返還、手続の流れ、保釈中に守るべきことを説明します。
そのうえで、特殊詐欺の事件で保釈が認められにくい理由と、保釈を認めてもらうための準備を整理します。
保釈とは
起訴された後に限られる
保釈とは、勾留されている被告人について、保証金を納めることを条件に、勾留の執行を停止して身柄の拘束を解く制度です(刑事訴訟法88条以下)。
保釈は、起訴された後の「被告人」についての制度です。
起訴される前の「被疑者」の段階では、保釈は認められていません(刑事訴訟法207条1項ただし書)。
起訴前に身柄の拘束を解くには、勾留の決定に対する準抗告などの手続によることになります。
起訴されると、被疑者としての勾留は、そのまま被告人としての勾留に切り替わって続きます。
起訴によって自動的に釈放されるわけではないため、身柄の拘束を解くには保釈の請求が必要です。
誰が請求できるか
保釈を請求できるのは、勾留されている被告人本人、弁護人のほか、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹です(刑事訴訟法88条1項)。
家族も請求できますが、裁判所とのやり取りや必要な書類の準備が必要になるため、弁護人がいる場合は弁護人が請求することになります。
保釈が認められる条件
権利保釈
保釈の請求があったときは、次のいずれかにあたる場合を除いて、裁判所は保釈を許さなければなりません(刑事訴訟法89条)。
これを権利保釈といいます。
- 死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑にあたる罪を犯したものであるとき
- 前に死刑、無期または長期10年を超える拘禁刑にあたる罪で有罪の宣告を受けたことがあるとき
- 常習として長期3年以上の拘禁刑にあたる罪を犯したものであるとき
- 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 被害者や事件の関係者などの身体や財産に害を加えたり、畏怖させたりする行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 氏名または住居が分からないとき
とくに、4つ目の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」は判断の幅が広く、共犯者がいる事件や否認している事件では、これを理由に権利保釈が認められないことがあります。
裁量保釈
権利保釈の例外にあたる場合でも、裁判所は、保釈を許すことが適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(刑事訴訟法90条)。
これを裁量保釈といいます。
裁量保釈では、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度のほか、身柄の拘束が続くことによって被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度などが考慮されます。
統計で見る保釈の状況
令和7年版犯罪白書1によれば、令和6年の地方裁判所の通常第一審で、勾留された被告人のうち保釈された人の割合(保釈率)は32.3%でした。
平成15年の12.7%から上昇傾向にありますが、勾留された人の3人に2人以上は、判決まで保釈されていないことになります。
また、日本弁護士連合会が司法統計をもとに示しているところでは、令和6年の地方裁判所の通常第一審で、第1回公判期日の前に保釈された人の割合は、自白事件で26.7%、否認事件で12.0%でした(日本弁護士連合会「統計から見える日本の刑事司法」2)。
容疑を否認している場合は、保釈が認められにくい傾向がはっきり表れています。
保釈金(保釈保証金)
金額の決め方
保釈を許す場合、裁判所は保証金の額を定めます。
保証金の額は、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産を考慮して、被告人の出頭を保証するのに足りる相当な金額でなければならないとされています(刑事訴訟法93条1項・2項)。
つまり、保証金は「これを没取されたら困る」と被告人に感じさせるための金額であり、本人や家族の資力によって大きく変わります。
同じような事件でも、収入や資産が多い人ほど高額になります。
金額の目安
一般的な事件で150万円から300万円程度とされることが多く見られますが、これはあくまで目安です。
事件の重さや被告人の資力によっては、これを大きく超えることもあります。
保証金は、原則として現金で一括して納める必要があります。
裁判所の許可を得て、有価証券や、被告人以外の人が差し出す保証書で代えることもできます(刑事訴訟法94条2項・3項)。
判決の後に返還される
保釈の条件を守り、公判期日にきちんと出頭していれば、保証金は判決の後に全額返還されます。
有罪判決で実刑となった場合でも、没取されていなければ返還されます。
これに対し、正当な理由なく公判期日に出頭しなかったり、逃亡したり、罪証を隠滅しようとしたり、保釈の条件に違反したりした場合には、保釈が取り消され、保証金の全部または一部が没取されることがあります(刑事訴訟法96条)。
保証金を用意できない場合
保証金をすぐに用意できない場合は、保釈保証金の立替えを行う団体の制度や、弁護士の協同組合が発行する保釈保証書を利用する方法があります。
それぞれ利用の条件や手数料があるため、弁護人と相談して検討してください。
保釈の手続と期間
請求から釈放まで
保釈の手続は、おおむね次のように進みます。
- 弁護人などが裁判所に保釈請求書を提出する。身元引受書などの資料もあわせて提出する
- 裁判所が検察官の意見を聴く(刑事訴訟法92条1項)
- 裁判官が弁護人と面談するなどしたうえで、保釈を許すかどうかを判断する
- 保釈が許されれば、保証金を裁判所に納める
- 納付が確認されると、被告人が釈放される
請求から判断までは、数日程度かかることがあります。
保証金を納付した当日に釈放されることもあります。
保釈が認められなかった場合
保釈の請求が退けられた場合は、その決定に対して不服を申し立てることができます。
第1回公判期日の前は準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)、その後は抗告(刑事訴訟法420条2項)によります。
また、事情が変わった後に、改めて保釈を請求することもできます。
保釈中に守ること
保釈の条件
保釈を許す際には、住居の制限など、適当と認める条件を付けることができます(刑事訴訟法93条3項)。
一般的には、次のような条件が付けられます。
- 指定された住居に住むこと
- 召喚を受けたときは、公判期日に出頭すること
- 逃げ隠れしたり、証拠を隠滅したりしないこと
- 事件の関係者(被害者、共犯者など)と接触しないこと
- 旅行や長期間の外出をする場合は、事前に裁判所の許可を受けること
特殊詐欺の事件では、共犯者や犯行グループとの連絡を一切しないことが、とくに重要な条件になります。
令和5年の刑事訴訟法改正
保釈中の被告人の逃亡を防止するため、令和5年に刑事訴訟法が改正され、次のような制度が設けられました。
- 保釈中の被告人が、召喚を受けたのに正当な理由なく公判期日に出頭しないときは、2年以下の拘禁刑に処する罰則の新設(刑事訴訟法278条の2。令和5年11月15日施行)
- 裁判所が、被告人を監督する監督者を選任し、監督者に監督保証金を納めさせる監督者制度(令和6年5月15日施行)
- 国外への逃亡を防止するため、被告人に位置測定端末(GPS端末)の装着を命じる制度(令和10年5月16日までに施行予定)
公判期日に出頭しなかった場合、保証金の没取にとどまらず、それ自体が新たな犯罪となります。
保釈中は、裁判所からの連絡に確実に対応できるようにしておく必要があります。
特殊詐欺で保釈が認められにくい理由
追起訴が見込まれる間
特殊詐欺では、被害者ごとに別の事件が成立するため、最初の事件で起訴された後も、別の事件で再逮捕や追起訴が続くことがあります。
追起訴が予定されている間は、余罪について証拠を隠滅するおそれがあると判断されやすく、保釈は認められにくくなります。
また、保釈が認められても、別の事件で再逮捕されれば、再び身柄を拘束されることになります。
そのため、追起訴がすべて終わり、起訴される事件の範囲が固まった段階で、保釈を請求するのが現実的です。

共犯者や被害者が多い
特殊詐欺は、指示役、かけ子、受け子、出し子などが関わる組織的な犯罪です。
共犯者の中にはまだ捕まっていない者がいることもあり、保釈すれば共犯者と口裏を合わせたり、証拠を処分させたりするおそれがあると判断されやすくなります。
被害者が複数いる事件では、被害者に接触して供述を変えさせるおそれがあるかどうかも問題になります。
組織的詐欺罪で起訴された場合
犯行グループが組織的に詐欺を行ったとして、組織的犯罪処罰法の組織的詐欺罪で起訴された場合、その法定刑は1年以上の有期拘禁刑です。
短期1年以上の拘禁刑にあたる罪であるため、権利保釈は認められず、裁量保釈によるしかなくなります。
容疑を否認している場合
先に見たとおり、第1回公判期日の前の保釈率は、否認事件では12.0%と、自白事件の半分以下にとどまります。
「詐欺だとは知らなかった」と故意を争っている場合は、証拠隠滅のおそれがあると判断されやすく、保釈が認められにくくなります。
故意を争うかどうかは、保釈が認められにくくなることも含めて判断する必要があります。

保釈を認めてもらうための準備
身元引受人と住居
保釈を請求する際には、家族などが身元引受人となり、被告人の生活を監督することを約束する書面(身元引受書)を提出します。
保釈後に住む場所を確保し、身元引受人と同居するなど、監督の態勢が具体的であるほど、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを示しやすくなります。
共犯者との関係を断つ
スマートフォンを家族が預かる、犯行グループとの連絡に使っていたアカウントを削除する(ただし、捜査で必要なデータは押収されていることが前提です)など、共犯者との関係を断つための具体的な措置を示すことも考えられます。
被害弁償の状況
被害弁償や示談が進んでいることは、被害者に働きかけるおそれが小さいことを示す事情にもなり得ます。

身柄拘束が続くことの不利益
仕事を失うおそれ、学業への影響、家族の介護や育児、健康上の問題など、身柄の拘束が続くことで生じる具体的な不利益を示すことは、裁量保釈の判断で考慮されます。
よくある質問(FAQ)
- 逮捕された直後に保釈を請求できますか。
-
できません。
保釈は起訴された後の被告人についての制度で、起訴される前の段階では認められていません。
起訴前に身柄の拘束を解くには、勾留の決定に対する準抗告などの手続によります。 - 保釈金の相場はいくらですか。
-
一般的な事件では150万円から300万円程度とする解説が多く見られます。
実際の金額は、事件の内容や本人・家族の資力などを考慮して裁判所が決めます。 - 保釈金は返ってきますか。
-
保釈の条件を守り、公判期日に出頭していれば、判決の後に全額返還されます。
実刑判決となった場合でも、没取されていなければ返還されます。 - 家族が保釈を請求することはできますか。
-
配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は保釈を請求できます。
ただし、裁判所とのやり取りや書類の準備が必要になるため、弁護人がいる場合は弁護人に任せるのが確実です。 - 特殊詐欺で起訴されましたが、保釈は認められますか。
-
認められる可能性はありますが、追起訴が見込まれる間や否認している場合は認められにくくなります。
起訴される事件の範囲が固まった段階で、身元引受人や住居を整えたうえで請求するのが現実的です。 - 保釈中に裁判に出なかったらどうなりますか。
-
保釈が取り消され、保証金が没取されることがあります。
さらに、令和5年の改正により、正当な理由なく公判期日に出頭しないこと自体が、2年以下の拘禁刑にあたる犯罪とされました。
まとめ
- 保釈は起訴後の被告人について、保証金の納付を条件に身柄の拘束を解く制度であり、起訴前の被疑者には認められていない
- 権利保釈の例外にあたる場合でも、裁判所の判断で裁量保釈が認められることがある。令和6年の地裁の保釈率は32.3%で、第1回公判期日前の保釈率は否認事件で12.0%にとどまる
- 保釈金は事件の内容や被告人の資力を考慮して裁判所が決め、条件を守れば判決後に返還されるが、条件に違反すれば没取されることがある
- 令和5年の改正で、保釈中の公判期日への不出頭が犯罪とされ、監督者制度などが設けられた
- 特殊詐欺では、追起訴が見込まれる間や否認している場合に保釈が認められにくく、起訴される事件の範囲が固まった段階での請求が現実的である
- 身元引受人と住居の確保、共犯者との関係の遮断、被害弁償の状況などを具体的に示すことが、保釈を認めてもらうための準備になる
当事務所では、起訴された方の保釈の請求、保釈が認められなかった場合の準抗告や抗告、身元引受人となるご家族との打合せなど、保釈に関する対応をお受けしています。
特殊詐欺の事件についてもご相談いただけます。
保釈は、請求の時期と準備の内容によって結果が変わることがあります。
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