【この記事の結論・要約】
- 電話で警察に呼び出された段階では、あなたはまだ逮捕されていません。まずは焦らず落ち着いて、確認すべき基本事項を確実にメモしてください。
- 任意の呼出しである以上、法律上絶対に応じなければならない義務はありません。しかし、ただ断り続けることが必ずしもご自身にとって有利になるとは限りません。
- 単に「断るか・応じるか」の二択ではなく、「しかるべき準備を整えてから応じる」という選択肢が有効です。出頭する前に、まずは弁護士へご相談ください。
はじめに
風俗店やメンズエステの利用をめぐって、ある日突然、警察から次のような電話がかかってくることがあります。
- 「〇〇警察署の者ですが、少しお話を聞きたいので、ご都合のよい日に警察署まで来ていただけますか」
- 「〇〇という店舗の件で、確認したいことがありまして連絡しました」
警察からの突然の連絡に強いショックと動揺を受け、電話で何を話されたのか正確に覚えていないという方も少なくありません。
混乱したまま言われるがままに日程だけを約束してしまい、どのような件で取調べを受けるのかも分からないまま出頭日を迎えてしまう、という状況に陥りがちです。
この記事では、まだ逮捕されていない段階、すなわち「任意出頭の呼出し」を受けた段階での適切な対応方法について詳しく解説します。
なお、ご自身の過去の行為がどのような罪に問われる可能性があるのかについては、以下の記事で解説しています。

まず、電話で確認しておくこと
警察から電話を受けた際は、以下の事項を必ず確認してください。
焦らず手元にメモを取りながら話を聞くことを強くお勧めします。
- 相手の所属と氏名(警察署名、担当部署名、担当捜査官の氏名)
- 折り返しの連絡先(警察署の代表番号か、直通の電話番号か)
- どのような件についての照会なのか(いつ、どの店舗に関する事案か)
- 自分がどのような立場として呼ばれているのか(犯罪の疑いがある「被疑者」なのか、参考情報を提供する「参考人」なのか)
また、その場の電話で出頭日程を即決する必要はありません。
「予定を確認したうえで、こちらから折り返しご連絡します」と伝えて電話を切って構いません。
折り返しの連絡先さえ聞いておけば、後から冷静に確認し直すことができます。
動揺した状態のまま会話を続けるよりも、一度電話を終えて気持ちを落ち着かせてから対応するほうがはるかに確実です。
なお、警察官を名乗る人物からの連絡が、実は警察を騙る不審な電話である可能性もゼロではありません。
確認のため、控えた警察署の「代表番号」に自ら掛け直して担当者を呼び出してもらう方法をとると、より確実です。
電話が来た段階で、逮捕されているわけではない
まず正しく認識していただきたいのは、電話で呼び出されたということは、現時点では逮捕されていないということです。
捜査機関があらかじめ対象者に電話をかけて事前日程を調整したうえで逮捕する、ということは通常あり得ません。
したがって、現時点では「直ちに身柄を拘束(逮捕)してまで捜査を進める必要性・緊急性はない」と警察が判断していると考えられます。
もっとも、その後の捜査経過や対応によって警察側の判断が変わる可能性はありますので、「電話連絡だったから完全に安心だ」と言い切れるわけではありません。
任意の呼出しは断れるのか
刑事訴訟法198条1項では、捜査機関が犯罪捜査において必要があるときは被疑者の出頭を求めて取り調べることができると規定されている一方で、被疑者は、逮捕または勾留されている場合を除いて、出頭を拒み、または出頭後いつでも退去することができると定められています。
つまり、警察からの任意の呼出しに応じること自体には、法律上の強制義務はありません。
しかし、呼出しを無条件に断り続けることがご自身にとって有利に働くとは限りません。
正当な理由なく任意での取調べを拒否し続けた場合、捜査機関側は「任意の手続では捜査を進められない」と判断するに至ります。
これは結果として、裁判所から逮捕状を取得して「逮捕」へ踏み切る大きな要因となり得ます。
その一方で、仕事や家庭の都合にあわせた日程変更を求めることは当然に認められています。
「仕事の都合上、今週は難しいため来週以降にしてほしい」といった調整を申し入れることに何ら問題はありません。
したがって、本当に検討すべきなのは「単に拒否するか・すぐ応じるか」ではなく、「弁護士としかるべき準備を整えてから出頭に応じる」という選択です。
出頭する前に知っておくべきこと
出頭する前に、取調べにおけるご自身の権利と法律上のルールを知っておくことが不可欠です。
取り調べで供述を強要されることはありません
刑事訴訟法198条2項により、捜査官は取調べの開始に際して、あらかじめ「自己の意思に反して供述をする必要がない旨(黙秘権)」を告げなければならないと定められています。
答えたくない質問に対して、無理に答える義務はありません。
話した内容はすべて「供述調書」という形で書面化されます
取調べでの会話はその場限りのものではなく、捜査官によって文章にまとめられ、今後の裁判や処分を決定づける強力な証拠として扱われます。
調書の内容が事実と異なる場合、訂正を求めることができます
刑事訴訟法198条4項では、完成した調書を閲覧させ、または読み聞かせて内容に誤りがないかを確認し、修正や追加・削除の申立てがあったときは、その内容を調書に記載しなければならないと規定されています。
自分の意図と異なる表現があれば、妥協せず訂正を求めてください。
内容に納得できない場合、署名押印を拒否できます
刑事訴訟法198条5項では、調書内容に誤りがないことを確認した際に署名押印を求められると定められていますが、内容に不服がある場合、署名押印を拒絶する権利が認められています。
自分の言い分と異なる調書に対して、署名押印をする義務は一切ありません。
これらはすべて法律で保障された当然の権利です。
ただし、実際の取調べの場で「どのように回答し、どう振る舞うのが最適か」は事案ごとに全く異なります。
一律に「すべて黙秘すればよい」「絶対に署名してはいけない」と言い切れるものではありません。
各罪名の成立要件や、その後の詳しい刑事手続の流れについては、以下の記事で解説しています。


話す前に、事実関係を整理しておく
警察へ出頭するまでの間に、当時の客観的な事実関係をご自身の中でしっかり整理しておくことが重要です。
記憶が曖昧な状態で取調べを受けると、取調べのたびに説明がブレて食い違いが生じてしまいます。
その食い違いが「供述の信用性がない」「嘘をついている」と判断される材料として不利に扱われるおそれがあります。
事前に整理しておくべき主な項目は以下の通りです。
- いつ、どの店舗を利用したか(予約経路や日時)
- 入店から退店までの詳細な時系列(何がどの順番で起きたか)
- 相手(セラピストや店側)とのやり取りの具体的会話内容
- 退店後、店舗側から連絡があったか。どのような要求をされたか
- 相手に金銭を支払ったか。誓約書などの書類に署名・捺印したか
とりわけ重要なのは、「店舗側から不当な金銭請求や脅迫を受けていた経緯があるか」という点です。
風俗店やメンズエステが絡むトラブルでは、ご自身が事案の当事者であると同時に、店舗側から恐喝を受けていた被害者的な側面を兼ねているケースが少なくありません。
相手方や店舗が先に警察へ被害届を出している場合、警察は相手方の主張を前提として話を進めてきますが、金銭要求があったという事実は事案全体の悪質性や背景を判断するうえで非常に重要な意味を持ちます。
予約時のメッセージやり取り、請求を受けた際の録音データ、振込や出金の記録などは、絶対に削除せず大切に保存・バックアップしておいてください。

弁護士に相談できるか
出頭日を迎える前に弁護士へ相談することができます。
あらかじめ事実関係を法的に整理し、警察から想定される質問内容や、それに対する適切な回答方法をシミュレーションしたうえで出頭することができます。
何を聞かれるかわからないまま丸腰で警察署へ行くのとでは、結果に雲泥の差が生じます。
一方で、取調べを行う室内に弁護士が同席することは、現在の日本の刑事実務上、原則として認められていません。
取調べ自体は、ご本人が単身で捜査官と対峙して受けることになります。
だからこそ、出頭する前の事前の打ち合わせとアドバイスが極めて重要になるのです。
また、取調べの休憩時間や終了直後に弁護士へ電話連絡を入れ、取調べの進捗や状況を確認しながら今後の対応を一緒に判断していくことも可能です。
なお、逮捕・勾留された際に無料で一度利用できる「当番弁護士制度」は、すでに身柄を拘束されている方を対象とした制度です。
任意の呼出しを受けた段階では当番弁護士制度を利用できませんので、この段階で相談したい場合はご自身で法律事務所へ直接連絡をとっていただく必要があります。
家族や勤務先に知られるのか
任意の呼出しに応じた段階で、警察が直ちに勤務先へ連絡を入れるとは限りません。
連絡の有無は捜査上の必要性に応じて個別に判断されるものであり、必ず会社に連絡がいくと決まっているわけではありません。
もっとも、途中で逮捕に踏み切られた場合は状況が一変します。
逮捕されて身柄を拘束されれば長期間出勤できなくなりますし、家宅捜索や捜査の過程で勤務先へ確認が入るリスクが一気に高まります。
したがって、周りに事件を知られるリスクを最小限に抑えるという観点からも、任意の段階という早いタイミングで適切な対応をとることに大きな意味があります。

取調べ後、何が起こり得るか
任意の取調べを受けた後の刑事手続の展開は、事案の内容や捜査結果によって以下のように分かれます。
- 書類送検(在宅事件)される:身柄を拘束されないまま、事件の書類と証拠が検察官へ送られます。その後、担当検察官が起訴・不起訴の処分を判断します。
- 逮捕(身柄事件へ移行)される:取調べの経過や証拠の状況によっては、途中で逮捕状が執行され身柄を拘束される可能性があります。
- 立件されないまま捜査が終了する:事件性が認められない、あるいは証拠不十分などの理由で、それ以上手続が進まずに終了する場合もあります。
いずれの経過をたどる場合であっても、被害を主張している相手方との間で示談が成立しているかどうかが、最終的な処分内容(起訴か不起訴か)を大きく左右します。
特に「不同意わいせつ罪」や「不同意性交等罪」には法律上、罰金刑の規定が存在しないため、起訴されてしまうと原則として公開の法廷で裁判を受けることになります。
一方で、示談成立などにより「不起訴処分」を獲得できれば、前科がつくのを防ぐことができます。
示談交渉の働きかけは、捜査が本格化して事件が固定化する前の早い段階であればあるほど選択肢が広がります。
ご自身で直接相手方に連絡を取ろうとすることはトラブルを悪化させるため避け、必ず弁護士を介して安全に進めてください。

よくある質問(FAQ)
- 警察からの電話を無視し続けたら、どうなりますか?
-
任意の呼出しに応じる法律上の義務はないため、電話に出なかったり出頭しなかったりすること自体で直ちに罰せられることはありません。
しかし、警察から「任意での捜査には応じない人物だ」と判断されると、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみなされ、逮捕状を請求される大きな要因となります。
日程の調整には柔軟に応じてもらえますので、無視するのではなく、弁護士と準備を整えてから応じることをお勧めします。 - 警察署へ出頭したら、そのまま逮捕されてしまうのでしょうか?
-
任意出頭に応じたからといって、必ずその場で逮捕されるわけではありません。
最初から逮捕する方針であれば、事前にお電話で日程を調整するような手順を踏むことは通常ないためです。ただし、取調べの中での発言内容や態度の変化によっては、その場で逮捕に切り替わる可能性も否定できません。
不安な場合は出頭前に弁護士へ見通しをご相談ください。 - 取調べに一人で行くのが不安です。弁護士に付き添ってもらえますか?
-
現在の日本の法制度・実務上、取調べの部屋の中に弁護士が同席することは原則として認められていません。
そのため、実際の取調べはご自身でお一人で対応していただくことになります。だからこそ、出頭する前に弁護士と綿密な打合せを行い、取調べの想定問答や対応策を頭に入れておくことが極めて重要になります。
- 取調べでは一切何も話さない(完黙する)ほうがよいのでしょうか?
-
憲法および刑事訴訟法上、ご自身の意思に反して供述を強要されることはなく、黙秘権が保障されています(同条198条2項)。
しかし、どんな事案でも一律に「何も話さないのが正解」とは限りません。
ご自身の主張や認識をハッキリ主張したほうが有利になる局面も多く存在します。どこまで話し、どこを主張すべきかは、事前に弁護士と事実関係を整理したうえで判断すべきポイントです。
- 警察から会社や勤務先へ連絡がいってしまうことはありますか?
-
任意の呼出しを受けている段階で、警察が直ちに勤務先へ連絡を入れるケースは限られています。
ただし、事件が拡大して逮捕されたり、勤務先での事実確認が必要と判断されたりした場合は連絡がいくリスクが高まります。職場への発覚を防ぐためにも、早い段階で専門家へご相談ください。
まとめ
警察から任意の呼出しを受けた場合についての重要ポイントを改めて整理します。
- 電話で呼び出された段階では逮捕されていない。まずは相手の警察署・部署・氏名・相談内容・ご自身の立場を冷静にメモし、その場で無理に日程を即決しない。
- 任意の呼出しに応じる法律上の義務はない(刑事訴訟法198条1項)。ただし、拒否し続けると逮捕へ踏み切られるリスクが高まるため、しかるべき準備をして応じるのが懸命である。
- 取り調べで不利な供述を強要されることはなく(同条2項)、完成した調書の閲覧・訂正(同条4項)や、納得いかない場合の署名押印拒否(同条5項)が認められている。
- 取調べの場への弁護士の同席は実務上認められていないため、出頭前に弁護士とアドバイスを受けておく「事前準備」が結果を左右する。
- 店側から不当な金銭要求・恐喝を受けていた経緯も事件の全体像を左右する重要な要素となるため、やり取りの録音やメッセージ履歴は消さずに保管しておく。
当事務所では、風俗店トラブルや性犯罪に関する刑事弁護に豊富な経験を有しております。
警察から任意の呼出しを受けた段階での適切な助言から、相手方との示談交渉、店舗側との対交弁護まで一貫してサポートすることが可能です。
警察への出頭日が迫っている方は、ぜひお早めにご相談ください。
刑事弁護についてはこちらから
当事務所の弁護士へのご相談等はこちらから