【この記事の結論・要約】
- 連絡を望まない意思を明確に伝え、その記録を残しておくことが、後の対応のために重要です。ストーカー規制法の連絡に関する類型は、拒まれたにもかかわらず連続して行われることを要件としているためです。
- ブロックや着信拒否には、連絡を止める効果がある一方で、相手の行動が把握できなくなり、記録も残らなくなるという面があります。
- 今の交際相手や友人に対応させることは避けてください。同法は、本人だけでなく社会生活において密接な関係を有する者に対する行為も規制の対象としており、関与した人が新たに対象となるおそれがあります。
はじめに
別れた相手から連絡が繰り返し届き、返信しても止まらない、返信しなくても届き続けるという相談は少なくありません。
交際していた相手であるだけに、強く拒むことをためらったり、話し合えば解決すると考えたりして、対応が遅れることがあります。
もっとも、対応を先延ばしにしている間に、連絡の頻度が増えたり、手段が変わったり、自宅や勤務先への接触に発展したりする例もあります。
また、後にストーカー規制法に基づく対応を求める段階になって、拒絶の意思を示した記録が残っていないために、要件の裏付けに困ることがあります。
この記事では、別れた相手からの連絡が続いている場合に、何を確認し、どのように対応すべきかを説明します。
あわせて、どの段階でストーカー規制法の対象となるのか、弁護士や警察に相談する場合に何ができるのかについても触れます。
連絡が続いているときにまず確認したいこと
対応を考える前に、次の3点を整理してください。
この3点によって、取り得る手段が変わります。
連絡を望まない意思を伝えたことがあるか
「もう連絡しないでほしい」という意思を、相手に対して明確に伝えたことがあるかどうかです。
ストーカー規制法上の「つきまとい」の該当性について、電話や文書の送付、電子メールやメッセージの送信といった類型は、無言電話である場合を除き、拒まれたにもかかわらず連続して行われることが要件とされています。
つまり、拒んだという事実がなければ、この類型に当たらないと判断される可能性があります。
「返事をしなければ伝わるはず」と考えて何も返していない場合、拒絶の意思を示したといえるかどうかが問題になり得ます。
その記録が残っているか
意思を伝えていたとしても、その記録が残っていなければ、後から立証することが難しくなります。
電話で伝えた場合、通話の記録は残っても内容までは残りません。
メッセージで伝えた場合は内容が残りますが、機種変更やアカウントの削除により失われることがあります。
連絡以外の接触があるか
連絡が届くだけなのか、自宅や勤務先の付近で見かける、共通の知人を通じて様子を尋ねられる、といった接触を伴うのかによって、緊急性が異なります。
自宅への訪問や待ち伏せがある場合、対応を検討している間に事態が変わる可能性があります。
この場合は、警察への相談を優先してください。
断り方によって後の対応が変わる
連絡を止めるための最初の行動は、連絡を望まない意思を相手に伝えることです。
もっとも、伝え方によって、後の手続における意味が変わります。
曖昧な断り方では拒絶したことにならない
「今は忙しいから」「また落ち着いたら」といった伝え方は、その場を収めるためには有効なことがありますが、連絡を拒んだものとは受け取られにくく、後の手続で拒絶の意思を示した証拠として用いることが難しくなります。
相手が「拒まれてはいなかった」と主張する余地を残すことにもなります。
伝えるべき内容と伝え方
明確にすべきなのは、今後連絡を望まないという点です。
理由を詳しく説明したり、相手の言い分に反論したりする必要はありません。
むしろ、やり取りが長引く原因になります。
伝える手段としては、内容が残るものを選んでください。
電話で伝えた場合、その内容は記録に残りません。
メッセージで伝えたうえで、その画面を保存しておく方法が確実です。
なお、伝えた後に相手から反論や説得が届いても、応じる必要はありません。
一度明確に伝えていれば、その後の連絡は「拒まれたにもかかわらず」行われたものとして扱われる余地があります。
返信すること自体が問題になるわけではない
拒絶の意思を伝えるために返信したことで、「連絡に応じた」と評価されるのではないかと心配される方がいます。
しかし、連絡を拒む内容の返信は、むしろ拒絶の意思を示した記録になります。
問題になるのは、拒絶とも受け取れる内容と、やり取りを続ける内容が混在している場合です。
伝える内容を一つに絞ることが重要になります。
ブロックや着信拒否をする前に考えたいこと
連絡を止める方法として、ブロックや着信拒否がよく挙げられます。
有効な手段ではありますが、副作用もあります。
ブロックのメリットとデメリット
メリットは、連絡が届かなくなることで、日常生活への影響を直ちに減らせる点です。
相手の言葉を目にしないで済むという意味もあります。
一方で、相手の行動が把握できなくなります。
連絡が来ていないのか、来ているが届いていないのかが分からず、状況が悪化していても気付けないことがあります。
記録が残らなくなる問題
ブロックした後に相手が送信した内容は、こちらに残りません。
そのため、後に警察へ相談する段階になって、ブロック後の行為を裏付ける資料がないという状態になり得ます。
行為が繰り返されていることを示す資料は、手続を進めるうえで重要な意味を持ちます。
また、ブロックや着信拒否のみをもって「拒まれた」といえるかどうかは、事案によって判断が分かれ得ます。
ブロックする前に、拒絶の意思を明確に伝えた記録を残しておくことをお勧めします。
別のアカウントや番号から連絡が来る場合
ブロックした後、別のアカウントや知らない番号から連絡が来ることがあります。
この場合、行為が繰り返されていることが明確になるという側面があります。
手段を変えてまで連絡を続けている事実は、拒絶されていることを認識しながら行為を続けていることを示す資料になり得ます。
届いた連絡は、送信元の表示を含めて保存してください。
同一人物からのものであることを示すために、内容や文体の共通点も含めて記録しておくと有用です。
やらないほうがよい対応
対応の方法によっては、かえって状況を複雑にすることがあります。
今の交際相手や友人に対応させること
現在の交際相手や友人に連絡を代わってもらう、あるいは間に入ってもらうという対応は、避けてください。
また、当事者以外が介入することで、やり取りが感情的になり、事態が拡大することもあります。
なお、ストーカー規制法は、行為の相手方を本人に限っていません。
本人の配偶者、直系または同居の親族、その他社会生活において密接な関係を有する者に対する行為も、規制の対象としています。
裏を返せば、関与させた人が、相手の行為の新たな対象となるおそれがあるということです。
直接会って説得しようとすること
話し合えば分かってもらえると考えて、直接会うことを選ぶ方がいます。
しかし、会うこと自体が、相手にとって面会の要求が受け入れられたという評価につながりかねません。
また、二人だけで会う状況は、安全の面からも避けるべきです。
なお、ストーカー規制法は、面会や交際その他義務のないことを要求する行為を規制の対象としています。
相手を刺激する返信をすること
強い言葉で非難する、相手の家族や勤務先に伝えると告げるといった返信は、感情的な反発を招き、行為が激化する原因になり得ます。
伝えるべきは、連絡を望まないという点のみです。
どの段階でストーカー規制法の対象になるのか
別れた相手からの連絡は、内容と経緯によって、ストーカー規制法の規制の対象となります。
復縁や面会を求める連絡
同法は、面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求する行為を、規制の対象としています(第2条第1項第3号)。
復縁を求める連絡、会って話したいという要求は、これに当たり得ます。
一度断った後も同じ要求が続いている場合は、特にこれに該当すると判断される可能性が高くなります。
拒んだにもかかわらず続く連絡
電話、文書の送付、電子メールやメッセージの送信については、無言電話である場合を除き、拒まれたにもかかわらず連続して行われることが要件とされています(同項第5号)。
メッセージアプリやSNSのメッセージ送信も、この類型に含まれます。
「ストーカー行為」として犯罪になる場合
これらの行為が同一の人に対して繰り返され、一定の要件を満たすと、「ストーカー行為」として犯罪が成立します。
ストーカー行為をした者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。
もっとも、犯罪が成立する前の段階であっても、警察による警告や、公安委員会による禁止命令等の対象となり得ます。
犯罪として立件されるまで何もできないわけではありません。
規制の対象となる行為の類型と、犯罪が成立する要件については、別の記事で整理しています。

元交際相手の事案に特有の問題
交際していた相手であることから生じる問題があります。
住所や勤務先を知られている場合
交際中に自宅を訪れていた、勤務先を伝えていたという事情があると、連絡を絶っても接触の可能性が残ります。
自宅付近での待ち伏せやうろつきは、それ自体が規制の対象となる行為です(第2条第1項第1号)。
この段階に至っている場合、連絡への対応だけでは足りません。
転居を検討される場合、住民基本台帳の閲覧等の制限に関する手続を利用できることがあります。
市区町村の窓口で申出を行うもので、加害者が住民票の写し等を取得することを制限する制度です。
交際中の写真や動画を持たれている場合
交際中に撮影した写真や動画を相手が保持している場合、これを公開すると告げて連絡に応じさせようとする例があります。
性的な内容の画像については、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)により、第三者への提供や公然と陳列する行為が処罰の対象とされています。
また、公開すると告げる行為自体が、脅迫罪に当たる可能性があります。
既に公開されている場合には、削除を求める手続を検討することになります。
金銭の貸し借りが残っている場合
交際中の貸し借りや、同棲していた際の費用の精算が終わっていない場合、金銭の請求を理由とする連絡が続くことがあります。
金銭の請求それ自体は、正当な権利の行使として行われる限り、直ちに違法となるものではありません。
もっとも、請求の名目で連絡が繰り返され、その実質が復縁や接触を求めるものである場合、ストーカー規制法の目的の要件を満たすと判断される余地があります。
判断は、請求の内容、金額、これまでの経緯、連絡の頻度や内容を踏まえて行われます。
金銭の問題が残っている場合、その精算を含めて弁護士に依頼することで、連絡の理由そのものを解消できることがあります。
弁護士に依頼する場合と警察に相談する場合
弁護士による警告
弁護士が依頼者の代理人として、相手に対し、連絡および接触を中止するよう求める書面等にて連絡します。
相手の氏名と住所が分かっている場合は内容証明郵便により送付し、分かっていない場合は電話番号を用いて連絡し、氏名と住所を確認したうえで警告を行う方法があります。
元交際相手の事案では、相手の氏名と住所が判明していることが多く、書面による対応を取りやすい類型といえます。
弁護士による警告そのものに罰則の裏付けはありませんが、行為が法的な問題として扱われる段階に至ったことを相手に認識させることになります。
また、警告を行った事実と内容が記録として残るため、その後に警察へ相談する場合の資料にもなります。
警察への相談
警察に相談した場合、ストーカー規制法に基づく警告や、公安委員会による禁止命令等が検討されます。
相談の際には、いつ、誰から、どのような連絡や接触があったかを整理した資料を持参してください。
なお、相談しても対応してもらえない場合があります。
要件を満たさないと判断される場合や、行為の証拠が不足していると判断される場合です。
費用の目安
弁護士に依頼する場合、対応の内容によって費用が異なります。
書面または電話による警告のみを依頼する方法から、警察への対応、裁判手続まで、段階に応じた依頼が可能です。
当事務所の費用については、ストーカー被害対応のページに記載しています。

よくある質問(FAQ)
- ブロックしたのに別のアカウントから連絡が来る場合はどうすればよいですか。
-
届いた連絡を、送信元の表示を含めて保存してください。
手段を変えて連絡を続けている事実は、拒絶されていることを認識しながら行為を継続していることを示す資料になり得ます。ブロックを繰り返すだけでは根本的な解決にならないため、この段階に至っている場合は、弁護士による警告や警察への相談を検討することをお勧めします。
- 交際中のやり取りは証拠として使えますか。
-
使える場合があります。
交際中のやり取りは、二人の関係や経緯を示す資料となり、行為の目的を判断する際の材料にもなります。
もっとも、相手に有利に働く内容が含まれていることもあるため、提出する範囲は事案に応じて検討することになります。削除せずに保存しておいてください。
- 相手が「話し合いたいだけ」と言っている場合はどうなりますか。
-
相手がどう述べているかによって結論が決まるものではありません。
ストーカー規制法は、面会その他の義務のないことを要求する行為を規制の対象としており、話し合いの要求もこれに当たり得ます。
応じる義務はありません。 - 連絡を無視し続ければ、そのうち止まりますか。
-
確実なことは言えません。
自然に止まる例もあれば、手段を変えて継続する例もあります。
ただし、無視を続けている間は拒絶の意思を示した記録が残らず、また時間の経過とともに初期の記録も失われます。後に手続を進める段階で、要件の裏付けに困ることがあります。
- 相手が遠方に住んでいる場合でも対応できますか。
-
書面による警告は、相手の所在地にかかわらず行うことができます。
警察への相談は、原則として被害者の居住地を管轄する警察署が窓口となります。
裁判手続については、手続の種類によって管轄が異なるため、事案に応じて検討することになります。
まとめ
- 連絡を望まない意思を明確に伝え、その記録を残しておくことが、後の対応の前提になります。
- 曖昧な断り方では連絡を拒んだものと受け取られにくく、相手に「拒まれてはいなかった」と主張する余地を残します
- ブロックや着信拒否には副作用があり、行う前に拒絶の意思を伝えた記録を残しておくことをお勧めします。
- 今の交際相手や友人に対応させることは避けてください。同法は密接な関係を有する者への行為も規制の対象としており、関与した人が新たに対象となるおそれがあります。
- 復縁や面会を求める連絡、拒んだにもかかわらず続く連絡は、ストーカー規制法の規制の対象となり得ます。
- 住所を知られている場合、写真や動画を持たれている場合、金銭の貸し借りが残っている場合には、それぞれ別の対応が必要になります。
当事務所は、刑事事件および男女間の紛争を取り扱っており、しつこい連絡やつきまといについても、相手方への警告から警察への対応、裁判手続まで、事案に応じてお受けしています。
行為が継続している事案では、時間の経過とともに記録が失われ、事実関係の立証が困難になることがあります。
早めにご相談ください。
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