風俗店の美人局を警察に相談してよいか|届出の方法と注意点

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 成人が風俗店やメンズエステを利用したこと自体は犯罪ではなく、それを理由に処罰されることはありません。相談をためらう必要はありません。
  2. 帰らせてもらえない、囲まれているといった状況であれば、迷わず110番通報してください。
  3. それ以外の場合は、何を持って行くかによって対応が変わります。証拠を整理してから相談したほうが、結果につながりやすくなります。

はじめに

風俗店やメンズエステから金銭を要求されている方から、次のようなご相談を受けることがあります。

  • 恐喝だと思うが、風俗店に行ったことを警察に話すのは抵抗がある
  • 自分から触ってしまったので、被害者として扱われないのではないか
  • 相談したことで、かえって自分が捜査の対象になるのではないか
  • 一度相談に行ったが、当事者間のトラブルだと言われて取り合ってもらえなかった

この記事では、警察に相談してよいのかという点に加えて、どのように相談すれば対応してもらいやすいのかを解説します。

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風俗店を利用したことで、あなたが処罰されることはない

成人がメンズエステや風俗店を利用すること自体は、犯罪ではありません。

風俗店で本番行為に至った場合についても、成人同士の行為であれば、客が売春防止法によって処罰されることはありません。
同法3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」と定めていますが、この規定には罰則が置かれていません。

同法が処罰の対象としているのは、公衆の目に触れる方法による勧誘(5条)、売春の周旋(6条)、売春を行う場所の提供(11条)、人に売春をさせる業(12条)など、店側や周旋者の行為です。

したがって、「風俗店に行ったこと自体が犯罪だから、警察には行けない」という前提は誤りです。

ただし、相手が18歳未満であった場合は別です。
対価を伴う性交等は、児童買春処罰法により処罰の対象となります。

自分の行為に責任が生じ得る場合はある

一方で、次の場合には、ご自身に刑事責任が生じ得ます。

  • セラピストやキャストの同意がないまま身体に触れた場合(不同意わいせつ罪)
  • 同意がないまま性交等に至った場合(不同意性交等罪)
  • 相手に無断で撮影していた場合(性的姿態等撮影罪)

この場合、警察への相談の仕方とタイミングに、判断が必要になります。

「相談したら自分が捕まる」というほど単純な話ではありませんが、「何も考えずに行ってよい」というものでもありません。
ご自身の行為について責任が生じ得るかどうかを、先に整理しておく必要があります。

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身の危険がある場合は、迷わず110番通報する

次のような状況であれば、整理を待つ必要はありません。

  • 部屋や事務所から帰らせてもらえない
  • 複数人に囲まれている
  • 暴行を受けている、受けそうな状況にある
  • ATMや消費者金融に同行させられている

通報の際は、現在地(店舗名、建物名、部屋番号。分からない場合は近くの目印)、帰らせてもらえない状況にあること、相手の人数、金銭を要求されていることを伝えてください。

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被害届と刑事告訴はどう違うか

警察への届出には、被害届と刑事告訴があります。この2つは性質が異なります。

被害届刑事告訴
内容犯罪の被害を受けた事実を申告するもの犯罪事実を申告し、あわせて処罰を求める意思を表示するもの
処罰を求める意思含まれない含まれる
受理後の扱い捜査の端緒となる司法警察員は、速やかに書類および証拠物を検察官に送付しなければならない(刑事訴訟法242条)
準備の負担比較的軽い。窓口で作成できることが多い告訴状の作成が必要。証拠の添付も求められる

告訴のほうが、捜査機関に対する働きかけとしては強いものです。
一方で、告訴状の作成には相応の準備が必要であり、証拠が整理されていなければ受理されないこともあります。

相談してもすぐに動いてもらえないことがある

実際に相談に行ったものの、「当事者間の金銭トラブルではないか」と言われて終わったという方がいます。

これには理由があります。

恐喝と、民事上の請求をめぐる争いとは、外形だけでは区別がつきにくいからです。
店側は「規約に違反したので違約金を請求した」「被害を受けたので示談金を求めた」と説明します。
この説明だけを聞けば、金銭の請求をめぐる当事者間の争いに見えます。

つまり、「金銭を要求された」という事実だけを伝えても、恐喝であることは伝わりません。

必要なのは、次の点が分かる材料です。

  • 請求に法的な根拠がないこと、または金額が著しく過大であること
  • 支払わせるために、害悪を告知していること
  • その場での即決を迫り、検討する時間を与えていないこと
  • 同種の行為が反復されていることをうかがわせる事情があること

何を持って行くかによって、対応が変わります。
これが、次の項目につながります。

警察に相談する前に整理しておくこと

相談の前に、次のものを整理してください。

  • 時系列のメモ:いつ、どこで、誰から、どのような言葉で、いくら要求されたのかを、順を追って書き出してください。入店から解放されるまでの流れを、可能な限り具体的に記載します。これが最も重要な資料です。
  • 脅し文句の記録:通話の録音、LINEやメールのメッセージ。「警察に通報する」「会社に連絡する」といった言葉が残っていれば、恐喝の疑いを示す直接の材料になります。
  • 支払いの記録:振込明細、ATMの利用明細、消費者金融からの借入の記録。すでに支払っている場合は、恐喝罪の既遂として扱われ得ます。
  • 書面:示談書、誓約書、借用書の写し。手元にない場合は、記憶している内容をメモに残してください。
  • 店の情報:店名、所在地、予約に使ったサイトやSNSのアカウント、電話番号、振込先の口座名義、名乗った人物の名前。

なお、同じ店について同種の被害を訴える投稿が見つかることがあります。
投稿の内容が事実かどうかは分かりませんので、それ自体を証拠として扱うことはできません。
もっとも、反復性をうかがわせる事情として、参考資料になる場合はあります。

すでに支払ってしまっている場合の対応は、次の記事で解説しています。

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どこに相談するか

緊急の場合は110番

帰らせてもらえない、危害を加えられそうだという状況であれば、迷わず通報してください。

緊急でない場合は、警察相談専用電話「#9110」を利用できる

これは、緊急の事件・事故以外で警察に相談するための全国共通の電話番号です。
電話をかけた地域を管轄する警察本部等の相談窓口につながり、相談内容に応じて担当の部署を案内してもらえます。通話料はかかります。

なお、都道府県によって受付時間や運用が異なる場合がありますので、詳細は各都道府県警察の案内をご確認ください。

警察署の窓口に直接相談することもできます

事案の内容によって担当する部署が異なりますので、事前に電話で連絡し、来署の日時を調整しておくと、当日の対応が円滑になります。

店側が先に被害を申告した場合

注意が必要なのが、店側やセラピスト・キャストが、先に「被害を受けた」と申告する場合です。

先に申告した側が当然に有利になるわけではありません。
捜査機関は、双方の言い分と証拠に基づいて判断します。

もっとも、事実上、後から説明する立場になることは避けられません。
すでに一方の説明を前提とした見方ができあがっている中で、こちらの言い分を示していくことになります。

そのため、店側にそうした動きがある場合は、対応を急ぐ必要があります。具体的には、次のような場合です。

  • 「もう警察に届けた」と告げられている
  • セラピストやキャストが被害を申告する意向を示していると伝えられている
  • 店から連絡が突然途絶えた

この段階では、ご自身の刑事責任への備えと、店の行為に対する被害の申告を、同時に検討する必要があります。

弁護士に相談してから警察に行くという方法

緊急の危険がある場合を除き、先に弁護士に相談したほうが、結果につながりやすくなります。
理由は3つあります。

第一に、証拠の整理が結果を左右するからです。
前述のとおり、「金銭を要求された」という事実だけでは、恐喝であることが伝わりません。
何が争点になるのかを踏まえて資料を整理する必要があります。

第二に、被害届と告訴のどちらを選ぶかという判断があるからです。
手元の証拠の程度によって、適切な選択が変わります。
告訴を選ぶ場合は、告訴状の作成が必要になります。

第三に、ご自身の刑事責任が問題となり得る事案では、届出の内容そのものに判断が必要になるからです。
何をどこまで説明するかによって、その後の展開が変わり得ます。

弁護士が警察署に同行することも可能です。

よくある質問(FAQ)

風俗店に行ったことを警察に話しても大丈夫でしょうか。

成人が風俗店やメンズエステを利用すること自体は犯罪ではありません。
成人同士の行為であれば、客が売春防止法によって処罰されることもありません。
同法3条には罰則が置かれておらず、処罰の対象は勧誘や周旋、場所の提供といった店側の行為であるためです。

利用したことを理由に処罰されることはありませんので、その点を心配する必要はありません。

被害届と刑事告訴のどちらを出せばよいでしょうか。

告訴は、犯罪事実の申告に加えて処罰を求める意思を表示するもので、受理されれば司法警察員は速やかに書類および証拠物を検察官に送付しなければならないとされています(刑事訴訟法242条)。
働きかけとしては強いものですが、告訴状の作成と証拠の整理が必要です。

相談に行きましたが、取り合ってもらえませんでした。

「金銭を要求された」という事実だけでは、恐喝と、請求をめぐる当事者間の争いとの区別がつきません。
請求に根拠がないこと、支払わせるために害悪を告知していることが分かる資料を整理したうえで、改めて相談することを検討してください。

資料の整理の仕方については、弁護士にご相談いただくことも可能です。

店から先に通報されてしまいました。

先に申告した側が当然に有利になるわけではありませんが、後から説明する立場になることは避けられません。
この段階では、ご自身の刑事責任への備えと、店の行為に対する被害の申告を同時に検討する必要があります。

捜査機関から連絡が来る前に、事実関係と証拠を整理しておくことをおすすめします。

警察に相談すると、家族に連絡が行くことはありますか。

被害を申告した方の家族に、警察から当然に連絡が行くわけではありません。
もっとも、事案の内容や手続の進み方によっては、事情聴取などのために連絡が必要になる場面もあり得ます。

ご家族に知られたくないという事情がある場合は、その旨を含めて、あらかじめ弁護士にご相談ください。

まとめ

警察への相談について、ポイントを整理します。

  • 成人が風俗店やメンズエステを利用すること自体は犯罪ではない。成人同士の行為であれば、客が売春防止法によって処罰されることもない。
  • 帰らせてもらえない、囲まれているといった状況であれば、迷わず110番通報する。緊急でない場合は、警察相談専用電話「#9110」を利用できる。
  • 被害届は被害の事実を申告するもの、刑事告訴は処罰を求める意思を表示するもので、性質が異なる。告訴が受理されれば、司法警察員は速やかに書類および証拠物を検察官に送付しなければならない(刑事訴訟法242条)。
  • 「金銭を要求された」という事実だけでは、恐喝であることは伝わらない。時系列のメモ、脅し文句の記録、支払いの記録を整理してから相談する。
  • 店側が先に被害を申告する場合がある。その動きがあるときは、対応を急ぐ必要がある。

当事務所では、風俗店・メンズエステをめぐる金銭要求について、被害の申告に向けた証拠の整理から、ご自身に刑事責任が生じ得る場合の弁護活動まで、一貫してお受けしています。
警察署への同行も可能ですので、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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