【この記事の結論・要約】
- 逮捕されても、会社に必ず知られるわけではなく、直ちにクビになるわけでもありません。発覚の主な原因は、長期の身柄拘束による欠勤と実名報道であり、早期釈放が生活を守る鍵になります。
- 不同意性交等罪には罰金刑がなく、起訴されれば必ず公開の正式裁判(裁判員裁判)になります。他の罪以上に、「不起訴を取れるか」が仕事と生活を左右します。
- 逮捕直後から時間との勝負です。本人は外部と連絡が取れないため、ご家族が一刻も早く弁護士を選任し、身柄解放と示談に着手することが重要です。
はじめに
「夫が不同意性交等罪で逮捕されたと警察から連絡が来た。仕事はどうなるのか、家族の生活はどうなるのか」 「訴えられるかもしれない。逮捕されたら会社にバレて、人生が終わってしまうのではないか」
不同意性交等罪の疑いをかけられたとき、ご本人やご家族が最も恐れるのは、刑罰そのものと並んで、仕事・家族・社会的信用への影響ではないでしょうか。
まずお伝えしたいのは、影響の大きさは、初動の対応によって大きく変わるということです。
逮捕されても会社に知られずに済むケースはありますし、逮捕イコール解雇でもありません。
他方で、対応を誤れば、防げたはずの発覚や解雇、そして前科に至ることもあります。
本記事では、不同意性交等罪で逮捕された場合に、会社・家族・その後の人生にどのような影響が生じうるのか、そしてそれを最小限に抑えるために何ができるのかを、時系列に沿って弁護士が解説します。
逮捕されると何日拘束されるのか(時系列の全体像)
社会生活への影響を考えるうえで、まず「逮捕されるとどれくらい身柄を拘束されるのか」を押さえる必要があります。
逮捕から勾留まで(最大72時間・外部と連絡できない)
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。
つまり、逮捕から最大72時間は、身柄拘束が続きます。
この72時間、ご本人は携帯電話を使えず、原則として家族とも面会できません。
外部と接触できるのは、弁護士だけです。
勾留(原則10日・延長で最大20日)
裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長が認められればさらに10日間、身柄拘束が続きます。
逮捕からの期間を合わせると、起訴・不起訴が決まるまで最大23日間、拘束される可能性があるということです。
なお、「保釈」は起訴された後の制度であり、起訴前のこの段階では利用できません。
起訴前の身柄解放は、勾留を阻止する、あるいは勾留決定を争う(準抗告)という弁護活動によって目指すことになります。
この期間が社会生活への影響の分かれ目
最大23日間の拘束は、会社員であれば約1か月の欠勤を意味します。
後述するとおり、これこそが会社に発覚する最大の原因です。
逆にいえば、勾留を阻止して早期に釈放されれば、社会生活への影響は劇的に小さくなります。
逮捕直後の72時間にどれだけ早く弁護士が動けるかが、この分かれ目を左右します。
会社に知られるのか|発覚の経路と現実
警察が会社に連絡することは原則ない
まず、警察が勤務先に「あなたの社員を逮捕しました」と連絡することは、原則としてありません。
警察にそのような義務はなく、実務上もまれです(身元引受人が職場の上司しかいない場合や、犯罪が会社の業務に関係する場合など、例外的な場面に限られます)。
「逮捕=自動的に会社に通知される」わけではない、という点は正確に押さえてください。
発覚の最大の原因は「長期の欠勤」
実際に会社に知られる最大の原因は、身柄拘束による欠勤です。
逮捕直後はご本人から会社に連絡できないため、無断欠勤の状態になります。
勾留が続けば、欠勤は数週間に及びます。
理由を説明できない長期欠勤は、それ自体が不自然であり、事情を詮索されるうちに発覚に至る、というのが典型的な経路です。
もう一つの経路は「実名報道」
もう一つの経路が、実名報道です。
報道されれば、会社が事件を知ることは避けられません。
報道の基準やリスクについては、後の章で詳しく説明します。
早期釈放が最大の「会社バレ」対策になる理由
以上を裏返せば、会社に知られないための最も有効な手段は、早期の身柄解放です。
勾留を阻止して数日で釈放されれば、欠勤は短期間で済み、有給休暇や体調不良などの説明で対応できる余地が残ります。
在宅のまま捜査が進む形になれば、仕事を続けながら手続きに対応することも可能です。
逮捕直後の弁護活動が、そのまま生活防衛に直結するのです。
会社をクビになるのか|解雇の法的整理
逮捕=即解雇ではない
「逮捕されたらクビになる」と思われがちですが、法的にはそうではありません。
逮捕は、あくまで犯罪の「疑い」による身柄拘束であり、有罪が確定したわけではありません(推定無罪の原則)。
そのため、逮捕されたことだけを理由とする懲戒解雇は、無効と判断される可能性が高いと考えられています。
解雇されうるのはどんな場合か
もっとも、次のような事情があると、就業規則の懲戒事由に該当し、解雇が現実のリスクになります。
- 長期の無断欠勤:勾留による欠勤が長引き、就業規則の無断欠勤の規定に該当する場合
- 会社の信用毀損:実名報道などにより、会社の名誉・信用を著しく傷つけたと評価される場合
- 実刑判決:拘禁刑の実刑判決を受け、就労できなくなった場合
- 業務に関連する犯罪:職務上の地位を利用した犯行など、業務との関連が強い場合
私生活上の犯罪と解雇の限界
一方で、業務と無関係な私生活上の犯罪については、会社秩序への影響が小さい場合、解雇が無効と判断される余地もあります。
「有罪になったら必ず解雇が有効」というわけでもないのです。
ただし、現実には、法的な有効性とは別に、会社から自主退職を促されたり、職場に居づらくなって退職を選んだりするケースは少なくありません。
だからこそ、そもそも「解雇事由に該当する事態(長期欠勤・報道・実刑)を作らない」こと、すなわち早期釈放と不起訴の獲得が重要になります。
会社に何をどう報告するか|自己判断で話しすぎない
欠勤の連絡などで会社とやり取りする際、何をどこまで伝えるかは、非常に難しい問題です。
虚偽の説明は後に問題を大きくしますが、他方で、有罪が確定していない段階で自ら詳細をすべて話してしまうと、社内で処分の手続きが先行して進んでしまうこともあります。
報告義務の有無や範囲は就業規則や状況によって異なるため、会社への伝え方は、自己判断で動く前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
実名報道はされるのか
報道に明確な基準はない
実名で報道されるかどうかに、法律上の基準はありません。
報道するか、実名を出すかは、各報道機関の判断に委ねられています。
一般的な傾向として、公務員や教員、大企業の社員、社会的地位のある方は、報道されやすいといえます。
また、不同意性交等罪は重大な犯罪類型であるため、他の軽微な事件に比べて報道のリスクは相対的に高いと考えておくべきです。
ネット記事は残り続ける
報道への現代的な懸念は、インターネットです。
大手の報道機関の記事は一定期間経過すると削除されることが多いですが、その他の記事などは長期間残り、氏名で検索すれば表示され続けます。
事件が不起訴で終わっても、記事が自動的に消えるわけではありません(削除を求めるには、別途の法的手続きや交渉が必要になります)。
報道への対応
弁護人としては、捜査機関に対して、実名発表を控えるよう求める意見書を提出するなどの対応がありえます。
事案の性質や本人の状況を示すことで一定の配慮が得られる場合もありますが、報道を確実に防げる手段は存在しない、というのが正直なところです。
だからこそ、報道の引き金になりやすい「逮捕・勾留の長期化」自体を避けること、つまり早期の身柄解放が、ここでも重要になります。
前科がつくとどうなるのか
前科がつくのは有罪が確定した場合
前科とは、有罪判決(罰金を含む)が確定した経歴のことです。
逮捕されただけでは前科はつきません。
そして、不起訴処分で終われば、前科はつきません。
資格・職業への影響
前科がつくと、法律上、一定の資格や職業に制限が生じることがあります。
特に重大なのが公務員です。
公務員は、拘禁刑以上の刑(執行猶予付きを含む)が確定すると、欠格条項により失職します。
このほか、弁護士・医師などの士業や、警備員など、前科が欠格事由とされている資格・職業があります(要件は資格ごとに異なります)。
再就職・履歴書・海外渡航への影響
再就職の場面でも、影響は残りえます。
履歴書の賞罰欄に記載を求められた場合や、面接で尋ねられた場合に虚偽を述べると、後に発覚したとき経歴詐称の問題が生じえます。
また、前科があると、渡航先によってはビザの取得に支障が出ることがあります。
不同意性交等罪は「前科の重さ」が特に重い
ここで、本罪特有の重大な点があります。
不同意性交等罪には罰金刑がありません。
つまり、起訴されて有罪になれば、必ず拘禁刑(執行猶予付きを含む)の前科がつくということです。
罰金で終わる可能性がある罪と異なり、前科がつくときは常に重い前科になる。
公務員であれば失職に直結する。
この構造が、次章で述べる「不起訴の決定的な重要性」につながります。
【本罪特有】なぜ「不起訴」が重要なのか
起訴=必ず公開の正式裁判
不同意性交等罪には罰金刑がないため、略式手続(書面審理の罰金)で終わることがありません。
起訴されれば、必ず公開の法廷で正式裁判が開かれます。
また、被害者が怪我をしたり死亡したりした場合は不同意性交等致死傷罪となり、裁判員裁判の対象事件となります。
公開の裁判は、傍聴が可能であり、報道の対象にもなりえます。
裁判が続く間、社会生活への影響は継続します。
執行猶予と実刑の分かれ目
有罪となった場合、言い渡される刑が3年以下の拘禁刑であれば、執行猶予が付く可能性があります。
しかし、不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり、減軽事由がなければ執行猶予の要件を満たさない、実刑が現実的なリスクとなる重い犯罪です。
不起訴の割合と、示談の決定的な重要性
一方で、検察統計によれば、不同意性交等罪(改正前の関連犯罪を含む区分)では、起訴・不起訴の判断がされた人員のうち6割以上が不起訴となっています。
起訴されれば公開の裁判員裁判と重い前科のリスク、不起訴なら前科なし・裁判なし。
この落差の大きさこそが、本罪において「不起訴を取れるか」が非常に重要だといわれる理由です。
そして、不起訴の獲得に最も大きく寄与するのが、被害者との示談です。
示談を含む弁護活動の詳細は、別の記事で解説しています。



家族ができること(逮捕の連絡を受けたら)
逮捕直後、ご本人は外部と連絡が取れません。
だからこそ、ご家族の初動が決定的に重要です。
一刻も早く弁護士を選任する
最初にすべきことは、弁護士への依頼です。
逮捕直後の72時間、家族でも原則面会できませんが、弁護士は逮捕直後から本人と接見できます。
弁護士が接見することで、本人の状況を把握してご家族に伝え、取調べへの対応を助言し、勾留を阻止するための活動を直ちに開始できます。
勾留されるかどうかは逮捕から72時間以内に決まるため、この段階での着手が早いほど、早期釈放の可能性は高まります。
会社への欠勤連絡(伝え方は弁護士と相談してから)
本人が出勤できない以上、会社への欠勤連絡はご家族が行うことになる場合が多いです。
ただし、前述のとおり、何をどう伝えるかは慎重な判断を要します。
動揺したまま事情をすべて話してしまう前に、弁護士に伝え方を相談してください。
身元引受・差し入れ・示談金の準備
ご家族には、このほかにも重要な役割があります。
身元引受人として本人を監督する旨を示すことは、勾留阻止や早期釈放の材料になります。
留置場への衣類や現金の差し入れは、本人の支えになります。
また、示談による解決を目指す場合には、示談金の準備が必要になります。
家族への法的な不利益はない
なお、家族が逮捕されたことによって、ご家族自身に法律上の不利益(連帯責任など)が生じることはありません。
ただし、報道された場合の事実上の影響など、備えるべきことはあります。
ご家族自身も一人で抱え込まず、弁護士に相談しながら対応を進めてください。
影響を最小限に抑えるための弁護活動
ここまで見てきたとおり、会社・家族・人生への影響を最小限に抑える道筋は明確です。
- 早期の身柄解放:勾留の阻止、勾留決定への準抗告により、欠勤の長期化と発覚を防ぎます。
- 示談交渉:被害者との示談を成立させ、不起訴処分の獲得を目指します。前科を防ぐ最重要の活動です。
- 報道への対応:事案に応じて、実名発表への配慮を求める意見書の提出などを行います。
- 会社対応の助言:欠勤連絡や報告の仕方について、状況に応じた助言を行います。
これらはすべて、時間との勝負です。
逮捕から勾留決定までは72時間しかなく、起訴・不起訴の判断までは最大でも23日間です。動き出しが早いほど、守れるものは多くなります。
よくある質問(FAQ)
- 逮捕されたことは、必ず会社に知られてしまいますか?
-
必ず知られるわけではありません。
警察が会社に連絡することは原則なく、発覚の主な原因は、長期の身柄拘束による欠勤と実名報道です。
早期に釈放され、在宅で捜査が進む形になれば、知られずに解決できる可能性が高まります。 - 逮捕されたら会社をクビになりますか?
-
逮捕されただけで直ちに解雇されるわけではありません。
有罪が確定していない段階での逮捕のみを理由とする懲戒解雇は、無効となる可能性が高いと考えられています。
ただし、長期の無断欠勤や実名報道による会社の信用毀損、実刑判決などがあると、就業規則により解雇されるリスクがあります。 - 実名報道はされますか?
-
明確な基準はなく、報道機関の判断によります。
一般に、公務員や教員、社会的地位のある方は報道されやすい傾向があります。
不同意性交等罪は重大な犯罪として扱われるため、報道のリスクは相応にあります。 - 不起訴になれば、前科はつきませんか?
-
つきません。
前科は有罪判決が確定した場合につくものであり、不起訴処分であれば前科はつきません。
不同意性交等罪には罰金刑がないため、起訴されて有罪となれば拘禁刑(執行猶予付きを含む)の前科となります。だからこそ、不起訴を得られるかが非常に重要です。
- 家族が逮捕されました。まず何をすればいいですか?
-
一刻も早く弁護士に依頼してください。
逮捕直後の72時間は家族でも原則面会できませんが、弁護士は逮捕直後から本人と接見できます。
勾留を阻止できるかはこの72時間で決まります。会社への欠勤連絡の伝え方も、自己判断で話しすぎる前に弁護士に相談することをおすすめします。
- 公務員です。逮捕されたら失職しますか?
-
逮捕された時点で当然に失職するわけではありません。
ただし、拘禁刑以上の刑(執行猶予付きを含む)が確定すると、欠格条項により失職します。
不同意性交等罪は罰金刑がないため、有罪となれば失職に直結します。不起訴の獲得が極めて重要ですので、早期に弁護士にご相談ください。
まとめ
不同意性交等罪で逮捕された場合、会社への発覚、解雇、実名報道、前科と、社会生活への影響は多岐にわたります。
しかし、その影響の大きさは、初動によって大きく変わります。
発覚の最大の原因は長期の身柄拘束であり、早期釈放がそのまま生活防衛になります。
そして、罰金刑のない本罪では、不起訴を取れるかどうかが、公開の裁判員裁判と重い前科のリスクを回避できるかの分かれ目です。
逮捕から勾留決定までは72時間。ご本人が動けない以上、ご家族がいかに早く弁護士を選任できるかが、勝負を決めます。
当事務所では、不同意性交等罪で逮捕された方の早期釈放に向けた活動、被害者との示談交渉による不起訴の獲得、会社対応や報道への対応の助言まで、社会生活を守るための弁護活動に取り組んでいます。
ご本人はもちろん、逮捕の連絡を受けて動揺されているご家族からのご相談もお受けしています。
時間との勝負ですので、お早めにご連絡ください。
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