風俗店で帰してもらえない・ATMに同行させられたら|対処法

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 支払うまで部屋や事務所から帰らせない行為は、逮捕監禁罪にあたり得ます。物理的に閉じ込められている場合に限りません。
  2. 身の危険を感じたら、110番通報してください。風俗店を利用したことを理由に、あなたが処罰されることはありません。
  3. ATMや消費者金融に向かわされている最中でも、通報は可能です。支払いを済ませてしまう前に、その場で止めてください。

いますぐできること

現在、帰らせてもらえない状況にある方は、次のとおり対応してください。

  • 110番通報してください:風俗店やメンズエステを利用したこと自体は犯罪ではありません。通報をためらう理由はありません。
  • 通報できる状況にない場合は、その場を離れる口実をつくってください:「トイレに行く」「駐車場に財布を取りに行く」「コンビニでお金を下ろす」など、いったん相手の視界から離れられる状況を探してください。
  • 支払いと書面への署名は断ってください:「弁護士に相談してから回答します」と伝えてください。その場で示された示談書や借用書に署名してはいけません。
  • スマートフォンを手放さないでください:「預かる」「見せろ」と言われても応じる義務はありません。通報と記録の手段を失うことになります。
  • 家族や知人に、現在地と状況を知らせてください:位置情報を共有できる状態にしておくことも有効です。

その場を離れられた後は、店へ戻る必要はありません。その後の連絡は、弁護士を窓口として対応できます。

はじめに

風俗店やメンズエステで金銭を要求される際、次のような状況に置かれることがあります。

  • 施術後、複数の男性スタッフに囲まれ、支払うまで部屋から出してもらえない
  • 店の事務所や車内に移動させられ、その場で支払いを迫られている
  • 「現金がない」と言うと、近くのATMや消費者金融まで同行させられた
  • 帰ろうとすると、出入口をふさがれた

こうした状況は、単なる金銭の請求ではありません。帰らせない行為そのものが犯罪にあたり得ます。

この記事では、その場で置かれている状況が法的にどう評価されるのか、そして解放された後に何ができるのかを解説します。

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帰らせない行為は逮捕監禁罪にあたる

刑法220条は、不法に人を逮捕し、または監禁した者を、3月以上7年以下の拘禁刑に処すると定めています

ここで重要なのは、この罪が成立するのは、鍵をかけて閉じ込めた場合に限られないという点です。

一定の場所から出ることを著しく困難にすれば、監禁にあたり得ます。
出入口を複数人でふさぐ、「出て行けばどうなるか分かっているのか」と告げる、スマートフォンを取り上げて外部との連絡を断つ、といった方法によって、実際には出て行けない状態を作り出す場合が考えられます。

店側は、後になって「客が自分の意思で残っていた」「帰りたければいつでも帰れた」と主張することがあります。
しかし、脅されて動けなくなっていた状態を、自由な意思に基づく滞在ということはできません。
その場の人数、告げられた言葉、部屋の構造、時間帯といった事情から判断されることになります。

また、逃げようとして引き止められ、その際にけがを負わされた場合には、監禁致傷罪(刑法221条)の問題となります。この場合、傷害の罪と比較して重い刑により処断されます。

ATMや消費者金融への同行

「現金がない」と伝えた際に、ATMや消費者金融まで同行させられるという事案があります。

この場合、どの犯罪が問題になるかは、どのような方法で同行させられたかによって変わります。

車に乗せて移動させられた場合は、走行中の車内から脱出することは困難ですので、その間についても逮捕監禁罪が問題となります。

徒歩で同行させられた場合は、路上を歩いている以上、一定の場所からの脱出を困難にしているとはいえないため、この局面を逮捕監禁罪として評価することは困難です。
もっとも、それによって犯罪が成立しなくなるわけではありません。
脅して、義務のないことを行わせている点が問題になります。
そして、金銭を交付させることが目的である以上、その手段としての脅迫を含めて、恐喝罪の中で評価されることになります。

なお、同行させられる前に部屋や事務所から帰らせてもらえない状態があったのであれば、その間については逮捕監禁罪が問題となります。
同行の局面と、それ以前の局面とを分けて考える必要があります。

場面問題となり得る犯罪
部屋や事務所から帰さないこと逮捕監禁罪(刑法220条)
車に乗せて移動させること逮捕監禁罪(刑法220条)
脅して金銭を交付させること恐喝罪(刑法249条)
反抗できない程度の暴行・脅迫を加えて金銭を奪うこと強盗罪(刑法236条)

恐喝罪と強盗罪の分かれ目は、相手の反抗を抑圧する程度に至っていたかどうかです。
多人数で取り囲む、逃げ道をふさぐ、暴行を加えるといった態様であれば、強盗罪が問題となり得ます。

「自分の足で歩いてATMまで行った」という事情があっても、それだけで犯罪の成立が否定されるわけではありません。
断れない状況が作られていたかどうかが問題になります。

消費者金融で借入をさせられた場合

その場で借入をさせられ、そのお金を渡してしまったという事案があります。
この場合、次の2つの問題を分けて考える必要があります。

貸金業者に対する返済義務

あなたと貸金業者との間の借入契約は、原則として有効に成立します。
店側から強いられて借りたという事情は、貸金業者との関係では主張しにくいものです。
したがって、貸金業者への返済義務は原則として生じます。
借りたお金を渡してしまったからといって、返済を免れることにはなりません。

店側に対する損害賠償

一方で、借入を余儀なくされたこと自体が、店側の行為による損害であるという主張は考えられます。
支払った金額に加え、借入に伴って生じた利息や手数料についても、損害として賠償を求める余地があります。

この点は事案ごとに判断が分かれる部分ですので、借入の記録を保存したうえで、弁護士にご相談ください。

なお、勤務先や家族への連絡をほのめかされている場合の対応については、次の記事で解説しています。

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「私人逮捕だ」と言われた場合

「これは私人逮捕だ」「現行犯だから捕まえられる」と告げられ、その場に留め置かれるという事案があります。

確かに、現行犯人は、誰でも逮捕状なしに逮捕することができます(刑事訴訟法213条)。

しかし、同法214条は、検察官、検察事務官および司法警察職員以外の者が現行犯人を逮捕したときは、直ちに検察官または司法警察職員に引き渡さなければならないと定めています。

つまり、私人が現行犯人を逮捕できるとしても、その後にできることは、直ちに引き渡すことだけです。
引き渡さずにその場に留め置き、金銭を要求することは、私人逮捕として認められた行為ではありません。

したがって、「私人逮捕だ」と言いながら金銭を要求している時点で、その行為は逮捕監禁罪や恐喝罪の問題になります。

「警察を呼びましょう」と伝えてください。
本当に現行犯逮捕をしたつもりであれば、店側は警察を呼ぶことに反対できないはずです。
反対するのであれば、その意図は別のところにあります。

110番通報をためらう必要はない

この場面で最も多いのが、「自分も後ろめたいことをしたのだから、警察は呼べない」という思い込みです。

まず、成人がメンズエステや風俗店を利用すること自体は、犯罪ではありません。

また、成人同士の行為であれば、客が売春防止法によって処罰されることもありません。
同法3条は売春とその相手方となることを禁止していますが、この規定には罰則が置かれていないためです。
処罰の対象となるのは、勧誘、周旋、場所の提供、人に売春をさせる業といった、店側や周旋者の行為です。

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通報の際に伝えるとよいこと

  • 現在地(店舗名、建物名、部屋番号、分からない場合は近くの目印)
  • 帰らせてもらえない状況にあること
  • 相手の人数
  • 金銭を要求されていること

通話の途中で切られてしまった場合でも、110番への発信は記録として残ります。
折り返しの連絡が入ることもあります。

一方で、行為の内容によっては、ご自身に刑事責任が生じ得る場合もあります。
もっとも、それは支払いに応じる理由にはなりません。 その場で金銭を渡しても、後に被害を申告される可能性は残ります。
まずは身の安全を確保することを優先してください。

支払って解放された後にできること

すでに支払って解放された場合でも、できることがあります。

追加の支払いを止める

一度支払った相手は「支払う人物」として認識されており、名目を変えた請求が続く事案が少なくありません。

支払った金銭の返還を求められる場合がある

脅されて行った支払いは、強迫による意思表示として取り消すことができ(民法96条1項)、不当利得の返還(民法703条、704条)や不法行為に基づく損害賠償(民法709条)として請求することになります。
回収の見込みは、支払方法や相手を特定できるかによって変わります。

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被害届の提出を検討する

金銭を要求された点は恐喝罪の問題であり、部屋や事務所から帰らせてもらえなかったのであれば、逮捕監禁罪の問題にもなります。
支払いを済ませていることは、被害届の提出の妨げにはなりません。

残しておくべき記録

この類型では、滞在の状況に関する記録が特に重要になります。

  • 入店した時刻と、解放された時刻
  • どの部屋にいたか、何人に囲まれていたか、出入口の状況
  • 告げられた言葉。可能な限り具体的に
  • 同行させられた場合は、その経路とATM・消費者金融の店舗名
  • ATMの利用明細、借入の契約書類、振込の記録
  • 店とのやり取り(通話の録音、LINE、メールの履歴)
  • スマートフォンの位置情報の履歴

位置情報の履歴は、長時間その場から動けなかったことを示す資料になり得ます。
設定によっては自動的に記録されていますので、消さずに残してください。

記憶は時間とともに薄れます。解放された後、できる限り早い段階でメモに残してください。

弁護士に依頼するとどうなるか

店からの連絡が止まる

受任通知を送付すると、店側はご本人に直接連絡を取ることができなくなります。

被害届の提出や刑事告訴を検討できる

恐喝罪について、また部屋や事務所から帰らせてもらえなかった場合には逮捕監禁罪についても、証拠を整理したうえで警察に相談します。
証拠が不十分なまま相談すると、当事者間の金銭トラブルとして扱われることがあるため、この整理が結果を左右します。

支払義務の有無を整理でき

法的な根拠のない請求は退けたうえで、責任が生じ得る部分については適正な内容で解決を図ります。

刑事責任にも備えられ

店側が警察に被害を申告した場合でも、弁護士であれば弁護人として活動することが可能です。

守秘義務があ

ご相談の内容が、無断で外部に漏れることはありません。ご家族に知られない形で進めることも可能です。

よくある質問(FAQ)

帰らせてもらえないというだけで、警察は動いてくれるのでしょうか。

一定の場所から出ることを著しく困難にする行為は、逮捕監禁罪にあたり得ます。
鍵をかけて閉じ込められている場合に限られません。

現に帰らせてもらえない状況にあるのであれば、110番通報してください。
通報後に状況が変わった場合でも、通報したこと自体が記録として残り、後の対応に役立ちます。

自分の意思で店に行ったのに、監禁と言えるのでしょうか。

自分の意思で入店したことと、その後に帰る自由を奪われたこととは、別の問題です。
逮捕監禁罪で問われるのは、帰ろうとした時点で出て行けない状態が作られていたかどうかです。
入店の経緯によって成立が否定されるものではありません。

ATMまでは自分の足で歩いて行きました。それでも犯罪になるのでしょうか。

徒歩で同行させられた局面そのものを逮捕監禁罪として評価することは困難ですが、脅して義務のないことを行わせている以上、金銭を交付させたことについて恐喝罪の問題となります。
また、同行の前に部屋や事務所から帰らせてもらえない状態があったのであれば、その間については逮捕監禁罪が問題になります。

複数人に囲まれていた、断ったら何をされるか分からない状況だったといった事情が重要になりますので、当時の状況をできる限り具体的に記録してください。

その場で消費者金融から借りさせられました。返済しなければいけませんか。

貸金業者との間の借入契約は原則として有効に成立するため、貸金業者への返済義務は生じます。
店側から強いられたという事情は、貸金業者との関係では主張しにくいのが実情です。

もっとも、借入を余儀なくされたこと自体を損害として、利息や手数料を含めて店側に賠償を求める余地はあります。
借入の記録を保存したうえで、ご相談ください。

「私人逮捕だから」と言われて留め置かれました。そのようなことができるのですか。

現行犯人は誰でも逮捕状なしに逮捕できます(刑事訴訟法213条)。
しかし、私人が逮捕した場合は、直ちに検察官または司法警察職員に引き渡さなければなりません(同法214条)。

引き渡さずにその場に留め置き、金銭を要求することは、私人逮捕として認められた行為ではありません。
その時点で、逮捕監禁罪や恐喝罪の問題になります。

まとめ

風俗店・メンズエステで帰らせてもらえない状況について、ポイントを整理します。

  • 支払うまで部屋や事務所から帰らせない行為は、逮捕監禁罪(刑法220条)にあたり得る。鍵をかけて閉じ込められている場合に限られない。
  • ATMや消費者金融への同行は、車に乗せて移動させられた場合には逮捕監禁罪が、徒歩の場合には金銭の交付を目的とした恐喝罪が問題となる。態様によっては強盗罪が成立し得る。
  • 「私人逮捕だ」と言われても、私人は直ちに警察へ引き渡す義務を負う(刑事訴訟法214条)。引き渡さずに金銭を要求することは認められていない。
  • 消費者金融からの借入について、貸金業者への返済義務は原則として生じる。一方で、借入を余儀なくされたことを損害として、店側に賠償を求める余地がある。
  • 風俗店を利用したことを理由に処罰されることはない。身の危険を感じたら、110番通報してよい。

当事務所では、風俗店・メンズエステをめぐる金銭要求について、被害届の提出や店との交渉から、ご自身に刑事責任が生じ得る場合の弁護活動まで、一貫してお受けしています。解放された後も請求が続いている場合は、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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