【この記事の結論・要約】
- 不同意わいせつ罪は、キス・抱きつき・身体を触る行為などが対象で、罰金刑がなく(6月以上10年以下の拘禁刑)、起訴されれば必ず公開の正式裁判になる重い犯罪です。
- 行為が「性交等」(挿入行為など)に至っていれば、さらに重い不同意性交等罪(5年以上の有期拘禁刑)になります。どちらの罪にあたるかで、手続きも見通しも大きく変わります。
- 勾留リスクの高い類型ですが、統計上は約3分の2が不起訴となっています。被害者との示談を軸とする早期の弁護活動が、前科の回避に直結します。
はじめに
「職場の飲み会の後、部下にキスをしてしまい、被害届を出されたようだ」 「知人の女性の身体を触ったとして、夫が不同意わいせつ罪で逮捕された」
不同意わいせつ罪は、電車内の痴漢だけの犯罪ではありません。
むしろ、職場・飲み会・デートといった、顔見知りの相手との間で問題になるケースが数多くあります。
キスや抱きつきといった行為も対象となり、罰金刑のない重い法定刑が定められているため、逮捕・勾留のリスクも小さくありません。
本記事では、知人間の事案を中心に、不同意わいせつ罪の成立要件、不同意性交等罪とはどこで分かれるのか、逮捕された場合に何が起こるのか、そして不起訴を得るために何をすべきかを、弁護士が解説します。
なお、電車内や路上での痴漢(迷惑防止条例違反との境界が問題になる類型)については、別の記事群で詳しく解説しています。


本記事は、それ以外の場面での不同意わいせつを中心に扱います。
不同意わいせつ罪とは
2023年改正|強制わいせつ・準強制わいせつの統合
不同意わいせつ罪(刑法176条)は、2023年(令和5年)7月13日に施行された改正刑法により、従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が統合されて生まれた犯罪です。
改正の最大のポイントは、処罰の基準が「暴行・脅迫を用いたか」から、「相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態だったか」へと見直されたことです。
これにより、暴行や脅迫がなくても、相手が拒絶しづらい状況でのわいせつ行為が広く処罰の対象となりました。
成立要件|8つの行為・事由
不同意わいせつ罪は、刑法176条1項各号に掲げる行為・事由(またはこれらに類する行為・事由)により、相手を同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて、わいせつな行為をした場合に成立します。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
条文が挙げる8つの事由は、①暴行・脅迫、②心身の障害、③アルコール・薬物の影響、④睡眠その他の意識不明瞭、⑤同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと、⑥予想と異なる事態への恐怖・驚愕、⑦虐待に起因する心理的反応、⑧経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮、です。
各事由の詳細は、別の記事で解説しています。

知人間の事案では、特に③(お酒)、④(泥酔・睡眠)、⑧(職場の上下関係)が問題になりやすいといえます。
「わいせつな行為」の典型例
不同意わいせつ罪の「わいせつな行為」には、次のような行為が含まれるとされています。
- キスをする
- 抱きしめる・抱きつく
- 胸を揉む、臀部や陰部を触る
- 服の中に手を入れて身体を触る
「キスくらいで犯罪になるのか」と思われるかもしれませんが、意に反するキスや抱きつきも、わいせつな行為として処罰の対象になりえます。
誤信・人違いによる場合(2項)
刑法176条2項は、行為がわいせつなものではないと誤信させた場合や、行為者について人違いをさせた場合(またはその誤信・人違いに乗じた場合)にも、不同意わいせつ罪が成立すると定めています。
典型例として挙げられるのが、マッサージや医療行為、施術を装って身体を触るケースです。
「治療に必要だ」と誤信させて性的な部位に触れる行為は、暴行も脅迫もなくても、この2項によって処罰されます。
相手が16歳未満の場合(3項)
相手が16歳未満の場合には、原則として、わいせつな行為への同意があったとしても不同意わいせつ罪が成立します(刑法176条3項。相手が13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年長のときに限ります)。
配偶者・交際相手との間でも成立する
改正法は、婚姻関係の有無にかかわらず犯罪が成立することを明文で定めました。
夫婦や交際関係にあっても、同意のないわいせつな行為は処罰の対象になります。
「付き合っているから」「夫婦だから」という理由で同意が推定されることはありません。
法定刑と「罰金刑がない」ことの意味
6月以上10年以下の拘禁刑
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑です。
罰金なし=起訴されれば必ず公開の正式裁判
重要なのは、罰金刑が定められていないことです。
罰金刑がないため、略式手続(書面審理で罰金を納めて終える手続き)によって解決することができません。
起訴されれば、必ず公開の法廷で正式な裁判が開かれます。
公開の裁判となれば、時間的・精神的な負担はもちろん、社会生活への影響も避けられません。
だからこそ、この罪では「起訴されるかどうか」、すなわち不起訴処分を得られるかが決定的に重要になります。
執行猶予の可能性と実刑リスク
有罪となった場合、言い渡される刑が3年以下の拘禁刑であれば、執行猶予が付く可能性があります。
不同意わいせつ罪の法定刑は下限が6月であるため、事案によっては執行猶予付き判決の余地が相応にあります。
もっとも、行為の悪質性が高い場合、被害者が複数いる場合、同種の前科がある場合などには、実刑となるリスクが現実のものになります。
執行猶予付きであっても、拘禁刑の前科がつくこと自体の重さは変わりません。
前科の影響については、別の記事で解説しています。。

【重要】不同意性交等罪との境界|どこからが「性交等」か
不同意わいせつ罪を考えるうえで避けて通れないのが、より重い不同意性交等罪(刑法177条)との境界です。
どちらの罪にあたるかで、見通しはまったく変わります。
「性交等」の定義
不同意性交等罪の対象となる「性交等」とは、次の行為を指します。
- 性交
- 肛門性交
- 口腔性交
- 膣または肛門に、陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為
これらに該当する行為が同意なく行われれば、不同意わいせつ罪ではなく、不同意性交等罪が成立します。
改正で「挿入行為」が性交等に含まれた
注意すべきは、2023年の改正で、膣・肛門への身体の一部(指など)や物の挿入が「性交等」に加えられたことです。
改正前は、こうした挿入行為は強制わいせつ罪として扱われていました。
しかし現在は、これらは不同意性交等罪にあたります。
つまり、従来であればわいせつ罪の範囲だった行為の一部が、5年以上の有期拘禁刑という格段に重い罪へと引き上げられたのです。
この変更を知らないまま、「わいせつ罪程度だろう」と見通しを立てるのは危険です。
境界の具体例
両罪の境界を整理すると、身体に触れる行為(胸を揉む、陰部を触る、キスをする)は不同意わいせつ罪、挿入を伴う行為や口腔性交は不同意性交等罪、ということになります。
同じ事件の中で、行為がどこまで及んだかによって、適用される罪名が変わります。
罪名がどちらかで見通しが激変する
両罪の違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較項目 | 不同意わいせつ罪 | 不同意性交等罪 |
|---|---|---|
| 法定刑 | 6月以上10年以下の拘禁刑 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 罰金刑 | なし | なし |
| 執行猶予の余地 | 相応にある | 減軽がなければ困難 |
不同意性交等罪は法定刑の下限が5年であるため、減軽事由がなければ執行猶予も付けられません。
どちらの罪で立件されるかは、その後の人生を左右する分岐点です。
罪名は争いうる|評価を尽くす弁護活動
行為がどこまで及んだのか、それが「性交等」にあたるのかは、証拠に基づく事実認定と評価の問題であり、争いうる点です。
不同意性交等罪で立件された事案について、行為の内容を精査し、不同意わいせつ罪にとどまることを主張する弁護活動がありえます。
また、逆方向の境界として、比較的軽微なわいせつ行為については、迷惑防止条例違反にとどまるという主張の余地もあります(この点は、痴漢の記事で詳しく解説しています。)。

条例違反、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪という段階のどこに位置づけられるかを適正に争うことは、弁護活動の重要な柱です。
どんな場面で問題になるか(知人間の典型例)
電車内の痴漢を除くと、不同意わいせつ罪は次のような場面で問題になることが多いといえます。
職場・上司部下の関係で
職場の上司が部下に対してキスをする、身体を触るといった事案です。
上司と部下のような関係では、相手が「拒否すれば仕事上の不利益を受けるかもしれない」と憂慮して拒絶できなかったと評価される可能性があり、8号(経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力)が問題になります。
「その場で嫌がられなかった」ことは、同意の根拠になりません。
飲み会・お酒の場で
飲み会の後、酔った相手にキスをする、身体を触るといった事案です。
相手がアルコールの影響で正常な判断ができない状態であれば、3号・4号により犯罪が成立しえます。
お酒が絡む事案の考え方については、別の記事で詳しく解説しています。

デート・交際関係で
デートや交際関係の中で、「同意があると思って」行為に及んだところ、相手は同意していなかったという事案です。
「同意があったと思っていた」という主張が法的にどう扱われるかについては、別の記事で詳しく解説しています。

逮捕されたらどうなるか|勾留リスクの高さ
逮捕から勾留まで
逮捕されると、48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内に勾留請求するかを判断します。
勾留が認められると原則10日間、延長されればさらに10日間、起訴・不起訴の判断まで最大23日間(逮捕を含む)身柄を拘束される可能性があります。
不同意わいせつは勾留される可能性が相当高い類型
不同意わいせつ罪は、事件の重大性から、逮捕された場合に勾留される可能性が相当高い類型とされています。
被害者と面識がある事案では、被害者への働きかけ(証拠隠滅)のおそれが疑われやすいことも、その一因です。
もっとも、比較的軽微な事案であることや、早期に示談が成立したことなどの事情があれば、勾留されずに釈放されたり、勾留期間の途中で釈放されたりすることもあります。
早期釈放に向けた弁護活動
長期の身柄拘束は、勤務先への発覚など社会生活への影響に直結します。
勾留を阻止する意見書の提出、勾留決定への準抗告、示談の成立による釈放など、早期の身柄解放に向けた弁護活動が重要です(身柄拘束が会社や家族に与える影響と対策については、別の記事で詳しく解説しています。)。

不起訴の可能性と示談の決定的な重要性
統計では約3分の2が不起訴
検察統計によれば、不同意わいせつ罪(改正前の強制わいせつ罪等を含む区分)について、令和6年(2024年)に起訴・不起訴の判断がされた4,579人のうち、起訴されたのは1,544人(起訴率33.7%)、不起訴となったのは3,035人(約66.3%)でした。約3分の2が不起訴となっている計算です。
罰金刑のないこの罪において、不起訴は「前科がつかない」ことを意味します。
この数字は、捜査段階の弁護活動次第で、公開の裁判と前科を回避できる現実的な可能性があることを示しています。
ただし「示談なしの不起訴」は多くない
もっとも、この不起訴は自動的に得られるものではありません。
罪を認めている事案において、被害者との示談が成立しないまま不起訴となることは、多くありません。
実務上、不起訴の獲得は、被害者との示談の成立が軸になります。
示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思(宥恕)を示してくれれば、起訴猶予による不起訴の可能性が大きく高まります。
逆に、示談ができないまま起訴されれば、公開の裁判で刑を争うことになります。
示談交渉は弁護士を通す
示談交渉を本人や家族が行うことは、現実的にできません。
捜査機関は、被害者の連絡先を加害者側に教えることはなく、弁護人に対してのみ伝えるのが通例です。
また、知人間の事案では連絡先を知っていることもありますが、本人が直接接触すれば、威迫や証拠隠滅と評価されて勾留リスクを高めるだけです。
示談は、必ず弁護士を通じて行ってください。
示談金の考え方
不同意わいせつ罪の示談金は、一つの目安として50万〜150万円程度とされることがありますが、行為の態様、被害の程度、当事者の関係性によって大きく変動します。
特に知人間・職場の事案では、被害者の処罰感情や関係悪化の程度により、金額の幅が大きくなる傾向があります。
金額の妥当性を含め、弁護士にご相談ください。
やってはいけないこと(初動の注意)
訴えられた、逮捕されそうだと知ったときに、絶対に避けるべきことがあります。
相手に直接連絡して謝罪や説明をしようとすること、相手とのメッセージなどの記録を削除すること、SNSで反論することは、いずれも状況を悪化させます。
特に知人間の事案では、相手の連絡先を知っているだけに、直接連絡してしまう危険が高いので注意してください(初動でやってはいけないこと・やるべきことの詳細は、別の記事で解説しています。)。

弁護士に依頼するメリット
不同意わいせつ事件を弁護士に依頼することには、次のようなメリットがあります。
- 早期釈放に向けた活動:勾留の阻止や準抗告により、身柄拘束の長期化と社会生活への影響を防ぎます。
- 示談による不起訴の獲得:被害者と直接接触することなく、示談交渉を進めます。
- 罪名の適正な評価の主張:行為の内容を精査し、不同意性交等罪ではなく不同意わいせつ罪にとどまること、あるいは条例違反にとどまることを、証拠に基づいて主張します。
- 取調べへの対応の助言:不利な供述調書を作られないよう、対応を助言します。
- 社会生活への影響の最小化:会社への対応の仕方などについても助言します。
よくある質問(FAQ)
- キスをしただけでも不同意わいせつ罪になりますか?
-
なる可能性があります。
キスや抱きつきも「わいせつな行為」にあたりうるとされており、相手が同意しない意思を形成・表明することが困難な状態で行えば、不同意わいせつ罪が成立しえます。
行為の態様や状況によりますので、弁護士にご相談ください。
- 不同意わいせつ罪と不同意性交等罪は何が違うのですか?
-
行為の内容と刑罰の重さが違います。
性交や口腔性交、身体の一部や物を挿入する行為(性交等)に至っていれば不同意性交等罪(5年以上の有期拘禁刑)、それ以外のわいせつな行為であれば不同意わいせつ罪(6月以上10年以下の拘禁刑)です。
どちらに該当するかで手続きも見通しも大きく変わります。 - 不同意わいせつ罪に罰金はありますか?
-
ありません。
法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑のみで、罰金刑の定めがないため、起訴されれば必ず公開の正式裁判となります。
前科を避けるには、不起訴処分を得ることが極めて重要です。 - 逮捕されたら、必ず勾留されますか?
-
必ずではありませんが、不同意わいせつ罪は勾留される可能性が相当高い類型です。
もっとも、比較的軽微な事案や、早期に示談が成立した場合などには、勾留されずに釈放されたり、勾留期間の途中で釈放されたりすることもあります。早期の弁護活動が重要です。
- 示談すれば不起訴になりますか?
-
必ず不起訴になるとは限りませんが、検察統計上、不同意わいせつ罪(改正前の関連犯罪を含む区分)では約3分の2が不起訴となっており、被害者との示談の成立は不起訴の可能性を大きく高めます。
逆に、罪を認めている事案で示談なしに不起訴となることは多くありません。示談交渉は必ず弁護士を通じて行ってください。
- 相手は職場の部下です。同意していたと思うのですが。
-
上司と部下のような関係では、地位に基づく影響力によって相手が拒絶できなかったと評価される可能性があります(刑法176条1項8号)。
「同意があると思っていた」という主張の法的な扱いについては、別の記事で詳しく解説しています。早めに弁護士にご相談ください。
まとめ
不同意わいせつ罪は、キスや抱きつき、身体を触る行為を広く対象とし、罰金刑のない重い犯罪です。
職場や飲み会、交際関係といった知人間の場面でも問題になり、逮捕されれば勾留のリスクも小さくありません。
また、行為が「性交等」に至っていれば、さらに重い不同意性交等罪となり、見通しは激変します。
一方で、統計上は約3分の2が不起訴となっており、被害者との示談を軸とする捜査段階の弁護活動によって、公開の裁判と前科を回避できる現実的な可能性があります。
鍵は、早く動くことです。
当事務所では、不同意わいせつ事件について、早期釈放に向けた活動、示談交渉による不起訴の獲得、罪名の適正な評価の主張まで対応しています。
逮捕されたご家族のこと、警察からの連絡、被害届を出されたかもしれないという不安。どの段階でも構いませんので、お早めにご相談ください。
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