トレントの開示請求は会社にバレる?勤務先に知られるケースと防ぐ方法を弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. トレントの開示請求とその後の示談交渉は、あなたと権利者側との間の民事上の手続であり、勤務先に通知される仕組みは基本的にありません。意見照会書、権利者側からの通知、訴状は、いずれも契約者の自宅宛てに届きます。
  2. 例外的に職場に知られ得るのは、①会社の回線・社用PCで利用していた場合、②訴訟で敗訴した後も支払わず、給与の差押え(強制執行)に至った場合、③刑事事件に発展した場合、④ご自身の言動から伝わる場合、の4つのルートに整理できます。
  3. このうち②と③は、いずれも請求を放置し続けた先にある事態です。期限内に対応し、示談による解決を進めていれば、通常これらの段階には至りません。職場に知られたくない方にとって、早期の対応が最も確実な防止策になります。

はじめに

「トレントの意見照会書が届いた。示談や裁判になったら、会社に知られてしまうのではないか」 「公務員なので、勤務先に知られたら処分されるのではないかと不安で仕事が手につかない」

トレント(BitTorrent)の開示請求を受けた方から、家族への発覚と並んで多く寄せられるのが、勤務先への影響に関するご不安です。

トレントに関する意見照会や損害賠償請求はあなたと権利者側との間の民事上の問題であり、通常の経過をたどる限り、勤務先に知られることは基本的にありません。
ただし、例外的に職場に伝わり得るルートがいくつか存在し、そのほとんどは放置の結果として生じるものです。

本記事では、勤務先に知られ得るルートを特定した上で、それぞれを防ぐための対応を解説します。

なお、会社の回線や社用PCで利用してしまい、書類が会社宛てに届く(届いた)ケースは、問題の構造が異なります。
その場合は別の記事をご覧ください。

あわせて読みたい
会社の回線・社用PCでトレントを使ってしまった|従業員の責任と会社の対応を弁護士が解説 【この記事の結論・要約】 会社契約の回線での利用であれば、意見照会書は法人(会社)宛てに届きます。損害賠償責任を負うのは実際に利用した従業員本人であり、従業員...

また、ご家族への発覚を防ぎたい方は、別の記事で解説しています。

あわせて読みたい
トレントの開示請求は家族にバレる?発覚する場面と知られずに解決する方法を弁護士が解説 【この記事の結論・要約】 家族に発覚し得る場面は、大きく4つの系統に整理できます。①プロバイダからの追加の意見照会書、②権利者側からの通知書・督促、③訴訟になった...

民事の示談交渉が勤務先に通知されることは、基本的にない

発信者情報開示請求で開示されるのは、プロバイダが保有する契約者の氏名・住所などであり、勤務先の情報ではありません。
開示後に権利者側から届く損害賠償の通知も、訴訟になった場合の訴状も、宛先はあなたの自宅です。
手続のどの段階にも、勤務先へ連絡が行く仕組みは組み込まれていません。

また、権利者側が交渉を有利に進める目的であなたの勤務先に接触することも、通常ありません。
そのような行為は、権利者側にとってもプライバシー侵害等の法的な問題を生じさせ得るものであり、企業として組織的に開示請求を行っている権利者側が、あえて取る行動とは考えにくいためです。

したがって、「開示されたら会社に連絡が行くのではないか」という不安は、手続の構造上、根拠のあるものではありません。
問題は、以下で述べる例外的なルートに限られます。

例外的に職場に知られ得る4つのルート

会社の回線・社用PCで利用していた場合

社内のネットワークや社用PC、会社契約のモバイル回線で利用していた場合、回線の契約者は会社ですから、意見照会書は会社宛てに届きます。
この場合、社内調査などを通じて発覚する可能性が相当程度あります。

このケースは本記事の想定(自宅の回線での利用)とは前提が異なりますので、対応の詳細は別の記事をご覧ください。

あわせて読みたい
会社の回線・社用PCでトレントを使ってしまった|従業員の責任と会社の対応を弁護士が解説 【この記事の結論・要約】 会社契約の回線での利用であれば、意見照会書は法人(会社)宛てに届きます。損害賠償責任を負うのは実際に利用した従業員本人であり、従業員...

訴訟で敗訴し、支払わなかった場合の給与差押え

自宅の回線での利用について、民事の手続で勤務先に連絡が届く実質的に唯一のルートが、給与の差押えです。

訴訟で敗訴して判決が確定した後も支払いをしない場合、権利者側は強制執行として給与の差押えを申し立てることができます。
給与の差押えでは、裁判所から勤務先に対して差押命令が送達されるため、この時点で勤務先は、あなたが金銭債務の支払いを怠っていることを知ることになります。

重要なのは、ここに至るまでの道筋です。
給与差押えは、「意見照会書の放置→開示→請求の放置→訴訟→敗訴→判決確定後も不払い」という経過をすべてたどった先にしかありません
裏を返せば、途中のどこかの段階で対応すれば、このルートは遮断できます。

刑事事件に発展した場合

トレントによる違法アップロードは、著作権法上、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(またはその両方)の対象となり得る行為です(著作権法119条1項)。

民事の請求を放置し続けるなどした結果、権利者側が刑事告訴に踏み切り、捜査の対象となった場合には、民事の手続とは異なる形で職場に影響が及ぶ可能性が出てきます。
捜査への対応による欠勤、事案によっては逮捕・報道といった事態は、勤務先に知られる契機となり得ます。

もっとも、トレントの事案で直ちに刑事事件化することは通常想定されにくく、示談による民事解決が成立すれば、刑事告訴に至るリスクは大きく下がります。
刑事化の防止という観点からも、示談による解決には意味があります。

ご自身の言動から伝わる場合

手続とは無関係に、ご自身の行動から職場に伝わるケースもあります。
職場の同僚への相談、勤務中の社用PCでの本件に関する検索や書類作成、勤務先の目に触れる場所での権利者側との電話などです。

対応そのものは適切に進んでいても、日常の行動から伝わってしまっては意味がありません。
本件に関する調べものや連絡は、私物の端末で、勤務時間外に行うことを徹底してください。

給与差押えに至る道筋と、手前で止める方法

上述したとおり、給与差押えは複数の段階を経た先にある事態であり、それぞれの段階に、止めるための手立てがあります。

  1. 意見照会書の段階:期限内に適切に回答し、または弁護士を通じて対応方針を立てることで、その後の展開を管理された形で進められます。
  2. 開示後・請求の段階:示談交渉によって解決すれば、訴訟には至りません。金額に折り合いがつかない場合でも、交渉を続けている限り、直ちに差押えという事態にはなりません。
  3. 訴訟の段階:訴訟になった場合でも、和解による解決の余地があります。
  4. 判決後の段階:仮に敗訴しても、判決に従って支払い、または支払方法について協議すれば、強制執行に至ることはありません。

つまり、給与差押えは「対応の機会をすべて見送った場合」にのみ現実化するものです。
一括での支払いが難しい場合には、分割払いの交渉など、支払能力に応じた解決の設計もあり得ます。

あわせて読みたい
トレントの示談金が払えない|学生・無職でも取れる現実的な解決方法を弁護士が解説 【この記事の結論・要約】 「払えないから」と無視するのが最悪の選択です。放置すれば訴訟で金額が確定し、法定利率による遅延損害金が加算され続け、将来の収入(就職...

公務員・資格職など、職場への影響が特に不安な方へ

公務員の方や、資格に基づく職業(士業・金融・教育関係など)の方からは、「民事の示談をしたこと自体を勤務先に報告する義務があるのか」「懲戒の対象になるのか」というご質問を受けます。

一般論として、民事上の示談は当事者間の合意であり、それ自体が勤務先に通知されることはありません。
報告義務の有無は、それぞれの服務規程・就業規則等の定めによるため一概には言えませんが、民事の示談にとどまる限り、報告義務や懲戒が直ちに問題となる場面は限定的と考えられます。

これに対し、刑事事件に発展し、起訴や有罪に至った場合には、服務規程上の報告事由や懲戒事由、資格の欠格事由等との関係が問題となり得ます。
つまり、職務上の立場への影響を避けるという観点でも、民事の段階で解決を完結させることの意味が大きいのです。

ご自身の職種・規程との関係で具体的な不安がある方は、規程の内容を踏まえた個別の検討が必要ですので、ご相談の際にお申し付けください。

職場に知られないために取るべき行動・避けるべき行動

本記事の内容を、行動の形で整理します。
取るべき行動は次のとおりです。

  1. 意見照会書の回答期限を確認し、期限内に対応する
  2. 示談による解決を軸に、早期に方針を立てる(必要に応じて弁護士に相談する)
  3. 支払いが難しい場合は、放置ではなく分割等の交渉で対応する

避けるべき行動は次のとおりです。

  1. 書類の放置:訴訟・差押え・刑事化という、職場に知られ得るルートはいずれも放置の先にあります。
  2. 社内環境での対応:社用PC・社内ネットワークでの本件に関する検索、書類の作成・保存、勤務先での関係先との電話は避けてください。
  3. 職場の同僚への相談:秘密を守る法律上の義務を負わない相手への相談は、伝達の経路を自ら作ることになります。相談は、守秘義務を負う弁護士にしてください。

弁護士に依頼する意味

職場への影響を避けたい方にとって、弁護士に依頼する意味は次の点にあります。

  • 連絡の一本化:受任通知により、権利者側とのやり取りはすべて事務所宛てになります。勤務中にあなたの電話へ連絡が入る状態を解消できます。
  • 連絡時間の調整:ご依頼者との連絡は、勤務時間外の時間帯やメールに限定するなど、就業への影響がない形で進められます。
  • 示談の成立による遮断:訴訟・差押え・刑事化という職場に知られ得るルートを、その手前の示談で断つことが、依頼の中心的な目的になります。
  • 家族への配慮との両立:職場と並んで家族に知られたくないというご希望にも、同じ体制で対応できます(※C-7スポークへリンク)。

よくある質問(FAQ)

開示請求を受けたことが、会社に通知されることはありますか?

基本的にありません。

開示されるのはプロバイダが保有する契約者の氏名・住所などであり、手続上、勤務先に連絡が行く仕組みはありません。
権利者側からの通知や訴状も、自宅宛てに届きます。

訴訟になったら、会社に知られますか?

訴状は自宅に届くため、訴訟になったこと自体が勤務先に通知されることはありません。
勤務先に連絡が届くのは、敗訴が確定した後も支払わず、給与の差押えに至った場合です。
訴訟段階でも和解等による解決の余地はあり、差押えまで至る前に止める手立てがあります。

公務員です。示談をしたら懲戒処分になりますか?

民事上の示談は当事者間の合意であり、それ自体が勤務先に通知されることはありません。

報告義務や懲戒の要否は服務規程等の定めによるため一概には言えませんが、民事の解決にとどまる限り、直ちに問題となる場面は限定的と考えられます。
刑事事件に発展した場合は影響が別問題となるため、民事段階での解決が重要です。

逮捕されて会社に知られることはありますか?

トレントの事案で直ちに逮捕に至ることは通常想定されにくいですが、請求を放置し続けた場合などに刑事告訴に発展するリスクはあります。
示談による民事解決は、刑事化のリスクを大きく下げる意味を持ちます。

社用PCや会社のWi-Fiで使ってしまいました。どうすればよいですか?

その場合、意見照会書は会社宛てに届くため、本記事の前提とは状況が異なります。
社内での発覚と懲戒の問題を含めた対応が必要になりますので、会社の回線・社用PCのケースを扱った記事をご覧の上、早めにご相談ください。

テレワーク中に、自宅の回線で使った場合は会社に知られますか?

自宅のご自身名義の回線であれば、書類はすべてご自宅に届き、勤務先に通知される仕組みはありません。
ただし、社用PCを使用していた場合には、端末の調査等から発覚する可能性が残ります。

ご自身の通信環境と使用端末を確認した上でご相談ください。

まとめ

トレントの開示請求は、あなたと権利者側との間の民事上の問題であり、通常の経過をたどる限り、勤務先に知られることは基本的にありません。
職場に知られ得るルートは、会社の回線での利用、給与差押え、刑事事件化、ご自身の言動の4つに特定でき、このうち差押えと刑事化は、いずれも放置を重ねた先にのみ現実化する事態です。

勤務先への影響を避けたい方が取るべき対応は、明確です。書類を放置せず、示談による解決を早期に進めること。
それにより、職場に知られ得るルートは手前で遮断できます。

当事務所では、勤務時間に配慮した連絡調整、権利者側との窓口の一本化、示談による早期解決まで、お仕事への影響を避けたいというご希望を前提とした進行に対応しています。
公務員・資格職の方の個別のご不安にも対応しますので、お早めにご相談ください。

トレントに関するご相談はこちらから

弊所の弁護士へのご相談等はこちらから

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

目次