「同意があったと思っていた」のに不同意性交等罪で訴えられたら|弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 2023年の刑法改正により、明確な拒絶や抵抗がなくても不同意性交等罪が成立しうるようになりました。「合意だと思っていた」というだけでは安全といえない時代になっています。
  2. 「同意があると思っていた」という主張(同意の誤信)は、故意の問題として法的に意味を持ちえますが、その誤信に至った事情に合理性があるかが厳しく問われます。
  3. 訴えられたことを知ったら、相手に直接連絡してはいけません。記憶と証拠を保全し、できる限り早く弁護士に相談することが、その後の結果を大きく左右します。

はじめに

「マッチングアプリで知り合った相手と、合意の上だと思って関係を持った。
それなのに後日、警察から連絡が来た」 「飲み会の後、流れで関係を持った知人から、『同意していなかった』と言われている」

このように、自分では合意があったと思っていた性行為について、後日「同意していなかった」と訴えられる事案が増えています。
2023年7月に施行された不同意性交等罪は、従来よりも広い範囲の行為を処罰の対象としており、当事者間の認識のズレがそのまま刑事事件につながりうる時代になりました。

不同意性交等罪は、5年以上の有期拘禁刑という極めて重い犯罪です。
罰金刑はなく、起訴されれば裁判員裁判で審理されます。
それだけに、訴えられたと知った直後の対応を誤ると、取り返しのつかない事態になりかねません。

本記事では、「同意があったと思っていた」のに不同意性交等罪で訴えられた場合に、その主張が法的にどう扱われるのか、何をしてはいけないのか、どう防御していくのかを、弁護士が解説します。

なぜ「合意だと思っていた」のに訴えられるのか

2023年改正|暴行・脅迫がなくても成立する犯罪になった

改正前の強制性交等罪は、原則として「暴行または脅迫」を用いたことが成立の要件でした。
しかし、2023年7月13日に施行された不同意性交等罪(刑法177条)では、この要件が見直されました。

現在は、暴行・脅迫がなくても、アルコールの影響、意識が明瞭でない状態、拒絶するいとまがないこと、地位に基づく影響力など、刑法176条1項各号に掲げられた事由により、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態」であったと評価されれば、犯罪が成立しえます
成立要件の詳細は、別の記事で解説しています。

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つまり、「無理やりしたわけではない」「脅してもいない」という事情は、もはや犯罪の成立を否定する決定的な理由にはならないのです。

拒絶しない・抵抗しない=同意ではない

「相手は嫌がらなかった」「抵抗されなかった」という事情を、同意の根拠と考える方は少なくありません。
しかし、これは現在の実務では通用しない考え方です。

人は、恐怖や驚き、混乱によって、体が動かなくなったり、声が出せなくなったりすることがあります(いわゆるフリーズ)。
相手が拒絶の言葉を口にしなかったこと、抵抗しなかったことは、同意していたことを意味しません。
沈黙や受動的な態度だけをもって「同意があった」と評価することは、極めて困難です。

「家に来た」「ホテルに入った」=同意でもない

「自分の家に来てくれた」「一緒にホテルに入った」という事情も、性行為への同意を意味するものではありません
家やホテルに行くことへの同意と、性行為への同意は、別のものとして扱われます。
「ついてきたのだから同意していたはずだ」という理屈は、法的には通らないと考えるべきです。

認識のズレは、双方に悪意がなくても生じる

こうした事案では、「相手が嘘をついているのではないか」と考えたくなるかもしれません。
しかし、認識のズレは、必ずしもどちらかの悪意によって生じるものではありません。

一方は「雰囲気として合意があった」と受け止め、他方は「怖くて拒めなかっただけで、同意はしていなかった」と受け止めている。
そういうすれ違いが、双方とも自分の認識に嘘がないまま、起こりうるのです。
だからこそ、感情的に相手を非難するのではなく、行為の前後に何があったのかを冷静に整理し、法的に適切な防御を組み立てることが重要になります

「同意があると思っていた」は法的にどう扱われるか

「同意があると思っていた」という主張は、法律上、どのような意味を持つのでしょうか。

犯罪の成立には故意が必要

不同意性交等罪が成立するためには、客観的な要件を満たすことに加えて、行為者に「故意」があることが必要です。
相手が同意しない意思を形成・表明することが困難な状態にあることを認識しながら、性交等に及んだ、といえなければなりません。

したがって、行為者が「相手は同意している」と本当に信じていた(同意があると誤信していた)場合には、故意が否定され、犯罪が成立しない余地があります

ただし「誤信していた」と言えば済むわけではない

しかし、単に「同意があると思っていた」と口で言いさえすれば故意が否定される、というものではありません。

第一に、誤信に至った事情に合理性があるかが問われます。
当時の状況に照らして、「同意があると信じたのも無理はない」といえるだけの根拠があったのかが、客観的に検討されます。
たとえば、「拒絶されなかったから同意していると思った」という説明は、前述のとおりフリーズの可能性がある以上、それだけでは合理的な根拠と評価されにくいでしょう。

第二に、未必の故意の問題があります。
「同意していないかもしれない」と頭をよぎりながら、あえて行為に及んだ場合には、確定的に認識していなくても、故意が認められる可能性があります。
「たぶん大丈夫だろう」という認識は、故意を否定する方向には働きにくいのです。

結局、何が問われるのか

結局のところ、「同意があると思っていた」という主張が通るかどうかは、行為時の客観的な状況がすべてです

行為に至る経緯、二人の関係性、その場での会話ややり取り、相手の様子、飲酒の程度。こうした客観的な事情を積み重ねて、「その状況であれば、同意があると認識していたことに合理性がある」と示せるかどうかが勝負になります。
主観的な思い込みを語るのではなく、客観的状況を丁寧に立証していく作業が必要になるのです。

【最重要】訴えられたと知ったら、やってはいけないこと

相手が被害を訴えている、警察が動いている。
そう知ったときに、絶対にやってはいけないことがあります。

相手に直接連絡して「話し合おう」としない

最も危険なのが、相手に直接連絡を取ることです。「誤解を解きたい」「話せば分かってもらえる」と考えて連絡したくなる気持ちは理解できますが、これは事態を決定的に悪化させます。

被害を訴えている相手への接触は、捜査機関から威迫や証拠隠滅のおそれと評価され、逮捕・勾留のリスクを一気に高めます。
また、動揺した状態でのやり取りは、こちらの発言が切り取られて不利な証拠として使われる危険もあります。
示談や話し合いが必要な場合も、必ず弁護士を通じて行ってください。

相手とのメッセージや記録を削除しない

「疑われそうなやり取りを消してしまいたい」と考えるのも危険です。

まず、行為の前後のメッセージには、あなたに有利な事情(親密なやり取り、事後の通常の会話など)が含まれていることが多く、削除すればそれを失います。
さらに、削除という行為自体が証拠隠滅と評価され、逮捕の理由になりかねません。
記録は、有利にも不利にも見えるものすべてを、そのまま保全してください。

SNS等で反論・相手の批判をしない

SNSなどで自分の言い分を発信したり、相手を批判したりすることも避けてください。
名誉毀損などの新たな法的問題を生むだけでなく、反省がない、被害者を攻撃していると受け取られ、刑事手続上も不利に働く可能性があります。

やるべき初動

やってはいけないことの裏返しとして、やるべきことは次のとおりです。

記憶が新しいうちに経緯を時系列で記録する

出会った経緯、当日の行動、会話の内容、飲酒の状況、行為に至る流れ、その後のやり取り。
覚えている事実を、できる限り具体的に、時系列で書き出してください。
時間が経つほど記憶は薄れ、供述の一貫性を保つことも難しくなります。
この記録は、後の弁護活動の土台になります。

証拠を保全する

相手とのメッセージのやり取り、当日のレシートや決済記録、位置情報、一緒にいた人の連絡先など、当時の状況を裏付けうるものを保全してください。
前述のとおり、削除は厳禁です。
防犯カメラの映像など自分では取得できないものは、弁護士が確保に動きます。

できる限り早く弁護士に相談する

そして、できる限り早く弁護士に相談してください。
警察から連絡が来る前、逮捕される前に動けるかどうかで、打てる手の数がまったく変わります。

すでに警察から呼び出しの連絡が来ている場合も、無視は禁物です。
無視すれば逃亡のおそれありと判断され、逮捕のリスクが高まります。出頭する前に弁護士に相談し、取調べへの対応を整えてから応じてください。

警察からの呼び出しへの対応は、別の記事でも解説しています。。

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同意を裏付けうる客観的な事情

同意は内心の問題であり、それを直接示す証拠は基本的に存在しません。
だからこそ、当時の状況を裏付ける客観的な事情の積み重ねが重要になります。

行為の前後のメッセージのやり取り

行為に至る前の親密なやり取りや、行為の後も通常どおりの友好的なやり取りが続いていたことは、当時の関係性や状況を示す重要な手がかりになりえます。

防犯カメラ・ドライブレコーダー等の記録

ホテルや飲食店、路上の防犯カメラの映像から、二人の様子や、相手の歩行状況(酩酊の程度)が明らかになることがあります。
タクシーのドライブレコーダーに車内の会話が残っていることもあります。

同席者・関係者の証言

飲み会の同席者など、当日の二人の様子を見ていた人の証言も、状況を裏付ける材料になりえます。

それでも立証は容易ではない

ただし、これらの証拠が揃ったとしても、同意の立証は容易ではありません
不同意性交等罪の事件では被害者の供述が重視され、客観証拠はあくまでその信用性を検討する材料として位置づけられることが多いのが実務です。

だからこそ、どの証拠をどう位置づけ、どのような主張を組み立てるかは、専門的な判断が不可欠です。
自己判断で動かず、弁護士の助言のもとで進めてください。

否認と示談は二者択一ではない

「やっていない(故意がない)と主張するなら、示談などしてはいけないのではないか」と考える方が多いと思います。
実際に、弁護士の研修等でも、一般論として否認事件の場合には示談をするべきでないと説明をされることもあります。
しかし、実務はそれほど単純ではありません。

「故意がない」ことと「相手の意に反した事実」は両立しうる

「同意があると思っていた」というケースでは、仮にあなたに故意がなく犯罪が成立しないとしても、客観的には相手が意に反する性行為をされたと感じているという事実が存在する場合があります。
あなたの認識に嘘がなくても、相手が深く傷ついている可能性はあるのです。

無罪主張をしながら謝罪・被害弁償をする選択もある

そう考えると、「故意はなかった」という主張を維持しながら、「結果として意に反することになったのであれば申し訳ない」という趣旨で謝罪し、被害弁償や示談を行うことは、論理的に矛盾しません。

実際、示談が成立すれば不起訴の可能性は高まり、重い刑事処分のリスクを大きく下げられます。
全面的に争って起訴されるリスクを取るのか、認識の主張は維持しつつ示談で解決を図るのか。
これは、証拠の状況や見通しを踏まえた、極めて重要な判断です。

どの方針を取るかは事案次第

否認を貫くべき事案もあれば、示談を優先すべき事案もあります。
その見極めは、証拠関係、相手の主張内容、起訴された場合の見通しなどを総合して行う必要があり、弁護士との綿密な検討が不可欠です。

一人で方針を決めてしまう前に、必ず相談してください。

否認事件の現実と、早期の弁護士介入の重要性

起訴されると覆すのは容易でない

不同意性交等罪の事件は、密室で起こることが多く、被害者の供述が重視されます。
そして、いったん起訴されてしまうと、裁判で無罪を勝ち取るのは容易ではありません。

だからこそ捜査段階の弁護活動が決定的

勝負は、起訴されるかどうかが決まる捜査段階にあります。
検察統計によれば、不同意性交等罪(改正前の関連犯罪を含む区分)では、起訴・不起訴の判断がされた人員のうち6割以上が不起訴となっています。
捜査段階で適切な防御と交渉を尽くすことが、起訴を回避する現実的な道です。

弁護士ができること

弁護士は、次のような活動を行います。

  • 経緯の整理と供述方針の助言:記憶の整理を助け、取調べで供述の一貫性を保てるよう支援します。
  • 客観証拠の収集・保全:メッセージ、防犯カメラ映像など、あなたの認識の合理性を裏付ける証拠を確保します。
  • 検察官への意見:故意が認められないこと、起訴すべきでないことを、証拠に基づいて主張します。
  • 身柄解放に向けた活動:逮捕された場合には、勾留を争い、早期の釈放を目指します。
  • 示談交渉:方針として示談を選択する場合、相手側と直接接触することなく交渉を進めます。

よくある質問(FAQ)

合意の上だと思っていたのに、後日「同意していなかった」と言われました。犯罪になるのですか?

犯罪になる可能性があります。

2023年の改正により、明確な拒絶や抵抗がなくても、相手が同意しない意思を形成・表明できない状態だったと評価されれば、不同意性交等罪が成立しえます。
「同意があると思っていた」という主張が法的に意味を持つ場合もありますが、その誤信に至った事情の合理性が問われます。

早めに弁護士にご相談ください。

相手が抵抗しなかったのだから、同意があったのではないですか?

抵抗しなかったこと=同意ではありません。
恐怖や驚きで体が動かなくなる(フリーズする)ことがあることは、現在の実務では広く前提とされています。
「嫌がらなかった」という事情だけで同意を裏付けることは困難です。

相手に連絡して誤解を解きたいのですが、してもいいですか?

やめてください。

相手への直接の連絡は、威迫や証拠隠滅と評価されて逮捕のリスクを高めるうえ、やり取りの内容が不利な証拠として使われるおそれもあります。

話し合いが必要な場合も、必ず弁護士を通じて行ってください。

同意があったことは、どうすれば示せますか?

行為の前後のメッセージのやり取り、防犯カメラやドライブレコーダーの記録、同席者の証言などが、当時の状況を裏付ける手がかりになりえます。
ただし、同意は内心の問題であり、立証は容易ではありません。

何をどう集めるかは、弁護士の助言のもとで進めてください。

身に覚えがない部分もありますが、相手に悪かったという気持ちもあります。謝罪すると罪を認めたことになりますか?

「故意がなかった」という主張と、「結果として相手の意に反していたのなら申し訳ない」という謝罪・被害弁償は、必ずしも矛盾しません。
事案によっては、否認の主張を維持しつつ示談を進める選択もありえます。

どのような方針が適切かは事案により異なるため、弁護士と検討してください。

警察から連絡が来ました。逮捕されるのでしょうか?

任意の呼び出しの段階であれば、直ちに逮捕されるとは限りません。
ただし、呼び出しを無視したり、相手に接触したりすると、逮捕のリスクが高まります。

出頭する前に弁護士に相談し、対応方針を整えることを強くおすすめします。

まとめ

2023年の改正により、不同意性交等罪は、明確な拒絶や抵抗がなくても成立しうる犯罪になりました。
「合意だと思っていた」という認識だけでは、もはや安全とはいえません。
そして、「同意があると思っていた」という主張が通るかどうかは、行為時の客観的な状況をどれだけ丁寧に立証できるかにかかっています。

訴えられたと知ったら、相手に連絡しない、記録を消さない、SNSで反論しない。
そのうえで、記憶と証拠を保全し、できる限り早く弁護士に相談してください。
否認を貫くのか、認識の主張を維持しつつ示談で解決を図るのか。
その見極めこそが、この類型の事件で最も重要な判断です。

当事務所では、「同意があったと思っていた」のに訴えられた方からのご相談に対応しています。
経緯の整理から、証拠の保全、検察官への働きかけ、示談交渉まで、事案に応じた最善の方針をともに検討します。
警察から連絡が来る前の段階でも構いません。
お一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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