飲み会・デートの後の性的行為と不同意性交等罪|酔った相手との行為はなぜ危険か弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. お酒に酔って正常な判断ができない相手との性的行為は、暴行・脅迫がなくても、また形式的な同意の言葉があっても、不同意性交等罪に問われるリスクがあります。
  2. 「相手から誘ってきた」「自分も酔って覚えていない」という事情は、思っているほど防御になりません。特に「覚えていない」は免罪符にならず、酔っていたことを理由に責任を免れることも、現実にはほとんどありません。
  3. 訴えられたら、相手に連絡せず、記憶と証拠を整理し、できる限り早く弁護士に相談してください。事案によっては、示談が最も現実的な解決策になります。

はじめに

歓送迎会や納涼会、夏のイベントなど、お酒を飲む機会が増える時期には、飲み会やデートの後の性的行為をめぐる刑事事件・相談も増える傾向にあります。

「飲み会の後、いい雰囲気になって関係を持った。相手も嫌がっていなかったのに、後日『同意していなかった』と言われている」 「マッチングアプリで会った相手と飲んだ後の行為について、警察から連絡が来た」

こうした事案の多くに共通するのが、お酒です
2023年7月に施行された不同意性交等罪では、アルコールの影響で相手が同意しない意思を形成・表明できない状態での性交等が、明文で処罰の対象とされました
お酒の場の性的行為は、当事者が思っている以上に、刑事事件と隣り合わせなのです。

本記事では、飲み会・デートの後の性的行為がなぜ不同意性交等罪に問われうるのか、「相手から誘ってきた」「自分も酔って覚えていない」という言い分は法的にどう扱われるのか、そして訴えられた場合にどう対応すべきかを、弁護士が解説します。

なお、お酒が絡まない場面も含めた「同意があったと思っていた」という認識のズレ全般については、別の記事で解説しています。
本記事は、お酒が絡む場面に特化してお伝えします。

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なぜ「酔った相手との性的行為」が犯罪になりうるのか

刑法が明記する「アルコールの影響」「意識が明瞭でない状態」

不同意性交等罪(刑法177条)は、刑法176条1項各号に掲げる事由などによって、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態」であるのに乗じて性交等をした場合に成立します。
法定刑は5年以上の有期拘禁刑で、罰金刑はありません

そして、その事由として条文に明記されているのが、次の2つです。

  • 3号:アルコールもしくは薬物を摂取させること、またはそれらの影響があること
  • 4号:睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、またはその状態にあること

つまり、相手にお酒を飲ませた場合はもちろん、相手が自分で飲んで酔っていた場合であっても、その影響で正常な判断や拒絶ができない状態にあることに乗じて性交等をすれば、犯罪が成立しうるということです。
「飲ませたわけではない」という事情は、決定的な防御にはなりません。

泥酔中の「いいよ」は有効な同意と認められない場合がある

「相手は『いいよ』と言った」「拒否されなかった」という言い分も、注意が必要です。

お酒の影響で正常な判断ができない状態でなされた同意は、有効な同意とは認められない場合があります。
ろれつが回らないほど酔った相手が口にした承諾の言葉は、性行為の意味やその結果を理解したうえでの判断とはいえないと評価されうるからです。
形式的な同意の言葉があったことと、法的に有効な同意があったこととは、別の問題なのです。

どの程度の酔いから危険なのか|明確な線引きはない

では、相手がどの程度酔っていたら危険なのでしょうか。

結論からいえば、明確な線引きは存在しません。
実務では、次のような事情から、行為時の相手の状態が事後的に総合評価されます。

  • 会話がまともに成立していたか
  • まっすぐ歩けていたか(ふらつき・介助の要否)
  • 嘔吐していなかったか
  • 相手に当時の記憶が残っているか
  • 飲酒の量・種類・時間帯

「このくらいの酔いなら大丈夫」という基準はなく、しかも判断はすべて事後的に行われます。
行為の時点で「大丈夫だろう」と思っても、後から「同意できる状態ではなかった」と評価されるリスクが常に残ります。
だからこそ、明らかに酔っている相手との性的行為は、それ自体が高い法的リスクを伴う行為だと認識すべきです。

「相手から誘ってきた」は通用するか

お酒の場の事案で、当事者から最も多く聞かれる言い分が、「相手から誘ってきた」「相手もノリノリだった」というものです。
これは法的にどう扱われるのでしょうか。

酩酊中の積極的な言動と、同意の有効性は別問題

たしかに、相手から積極的な言動があったという事情は、当時の状況を示すものとして意味を持ちえます。
しかし、その言動が泥酔状態でのものだった場合、話は単純ではありません。

前述のとおり、正常な判断ができない状態での意思表示は、有効な同意と認められない可能性があります。
酩酊した人が、普段ならしないような大胆な言動をとることは珍しくなく、「誘ってきた」という事実があっても、それが判断能力のある状態での真意に基づくものだったかは、別途問われるのです。

翌朝、相手に記憶がないとき何が起こるか

さらに深刻なのが、相手に当時の記憶がないケースです。

相手が泥酔して記憶を失っていた場合、翌朝目覚めた相手には「同意した覚えがない」という認識しか残りません。
あなたの認識では「相手から誘ってきた合意の行為」でも、相手の認識では「気づいたら性行為をされていた」となる。
こうして、双方のどちらにも嘘がないまま、被害申告に至ることがあるのです。

この構図は、認識のズレによる事件化の典型です。
「相手が誘ってきたのだから、訴えられるはずがない」という考えは、通用しないと考えてください。

ホテルに一緒に入った・部屋に上げた=同意ではない

「一緒にホテルに入った」「相手が部屋に来た」という事情も、性行為への同意を意味するものではありません。
場所の移動への同意と性行為への同意は別のものとして扱われますし、まして相手が酩酊していた場合には、移動自体が正常な判断に基づくものだったかも問われます。

「自分も酔って覚えていない」はどう扱われるか

飲み会の事案では、相手だけでなく自分も酔っていた、というケースが少なくありません。
「自分も泥酔していて、ほとんど覚えていない」という場合、法的にはどうなるのでしょうか。

記憶がない=無罪ではない

まず押さえるべきは、記憶がないことは無罪の理由にならない、ということです。

犯罪の立証責任は検察官にあり、記憶がないこと自体で有罪になるわけではありません。
しかし、「泥酔して記憶がない」というあなたと、「被害を具体的に記憶し申告している」相手という構図では、捜査機関は相手の供述を信頼して捜査を進める傾向があります。
相手の供述が具体的で合理的だと判断されれば、あなたに記憶がなくても、起訴のリスクがあります。

「酔っていたから責任がない」もほぼ通らない

「酔って訳が分からない状態だったのだから、責任を問えないのではないか」と考える方もいます。
刑法上、心神喪失・心神耗弱という制度は存在しますが、現実には、記憶を失うほど酔っていた場合でも、通常の酩酊として完全な責任能力があると判断されるケースがほとんどです。

責任能力が否定されるのは、病的な酩酊など、ごく例外的な場合に限られます。
「酔っていたから」という主張が刑事責任を免れさせることは、実務上ほぼ期待できないと考えるべきです。

「覚えていない」の一点張りも、言われるがまま認めるのも危険

記憶がない場合の取調べ対応には、二重の危険があります。

一方で、「覚えていない」の一点張りは、説得力が低く、反省がないと受け取られて不利に働きがちです。
他方で、記憶がないのに捜査機関に言われるがまま「やったと思います」と認めてしまうと、実際の行為より重い内容の供述調書が作成されるおそれがあります。
細かなニュアンスの違いで、事実を認識していたかのような調書ができあがる危険もあります。

記憶がない事案こそ、弁護士とともに、残っている記憶の断片を丁寧に喚起し、メッセージの履歴や決済記録などの客観証拠と照合しながら、当日の事実関係を再構成する作業が不可欠です。
その作業を経ずに取調べに臨むことは、避けてください。

後日、訴えられたら|やってはいけないこと・やるべきこと

飲み会・デート後の行為について、相手が被害を訴えている、警察から連絡が来た。
そのときの対応の基本は次のとおりです。

相手に連絡しない・記録を消さない

まず、相手に直接連絡して「誤解を解こう」「話し合おう」とすることは、絶対に避けてください。
威迫や証拠隠滅と評価され、逮捕のリスクを一気に高めます

また、相手とのメッセージなどの記録を削除することも厳禁です。
有利な証拠を失ううえ、削除自体が証拠隠滅と評価されかねません。

訴えられた直後の初動については、別の記事で詳しく解説しています。

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当日の記憶・飲酒状況・やり取りを時系列で記録する

覚えている範囲で、当日の経緯を時系列で書き出してください。
どの店で、何を、どれくらい飲んだか。相手の様子はどうだったか。どんな会話をしたか。行為の前後のやり取りはどうだったか。
記憶は時間とともに失われるため、この作業は早いほど価値があります。

早期に弁護士に相談する

そして、できる限り早く弁護士に相談してください。
警察から呼び出しの連絡が来ている場合は、無視せず、出頭する前に相談することが重要です。
無視は逃亡のおそれありと判断され、逮捕のリスクを高めます。

警察からの呼び出しへの対応は、別の記事でも解説しています。。

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酩酊の程度は客観証拠で検証される

お酒が絡む事案では、当時の酩酊の程度が争点になります。
そして、それは主張の言い合いではなく、客観証拠によって検証されます。

防犯カメラ・ドライブレコーダー・店の記録

飲食店やホテル、路上の防犯カメラには、相手やあなたの歩行状況が映っています。
まっすぐ歩けていたのか、ふらついて介助が必要だったのか。
タクシーのドライブレコーダーには車内の会話が残っていることもあります。
店の注文履歴や決済記録から、飲酒量や滞在時間も明らかになります。

同席者の証言・メッセージの時刻と内容

飲み会の同席者や店員の証言、当日のメッセージの送信時刻や文面(誤字の程度、文章の乱れ)も、当時の状態を示す材料になります。

これらは有利にも不利にも働く

注意すべきは、これらの客観証拠は、あなたに有利にも不利にも働くということです。
相手が普通に会話し歩いていた映像は同意の有効性を支える方向に働きえますが、逆に、相手がふらつき介抱されていた映像は、3号・4号該当を裏付ける方向に働きます。

どの証拠が存在し、それが何を意味するのかの見極めは、専門的な判断を要します。
証拠の確保と評価は、弁護士の助言のもとで進めてください。

示談という選択肢|記憶が曖昧でも検討しうる

事実関係に争いがある場合の示談の考え方

「事実関係がはっきりしないのに、示談などできるのか」と思われるかもしれません。
しかし、実務では、記憶が曖昧な事案や認識に争いがある事案でも、示談を進める判断はありえます。

記憶を喚起し客観証拠と照合した結果、相手の意に反する行為があった可能性が否定できないのであれば、その可能性を前提に謝罪と被害弁償を行うことは、不合理ではありません。
認識の主張と示談は、必ずしも二者択一ではないのです。

この点は別の記事で詳しく解説しています。

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示談が不起訴の可能性を高める

検察統計によれば、不同意性交等罪(改正前の関連犯罪を含む区分)では、起訴・不起訴の判断がされた人員のうち6割以上が不起訴となっています。
被害者との示談の成立は、不起訴処分を得るうえで極めて重要な要素です。
起訴されれば裁判員裁判となり、罰金刑のないこの罪では執行猶予が付かない限り実刑となることを考えれば、捜査段階で示談により不起訴を目指すことの意味は、非常に大きいといえます。

示談交渉は必ず弁護士を通す

示談を進める場合も、あなたが相手に直接連絡することは絶対に避けてください。
捜査機関は、被害者の連絡先を弁護人にのみ伝えるのが通例であり、示談交渉は弁護士を通じて行うのが原則です。

「あれから連絡がないから大丈夫」ではない

最後に、重要な注意点があります。
行為の後、相手から何も言われていない、警察からも連絡がない、だから大丈夫だ、とは言い切れません。

不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年です。
被害申告は、行為から時間が経ってからなされることもあり、ある日突然、警察から連絡が来る可能性は残り続けます。

「あのときの行為が問題にならないか不安だ」という段階でも、弁護士に相談することはできます。
状況を整理し、万一連絡が来た場合の対応方針を事前に立てておくことは、十分に意味があります。
自首を検討すべき事案かどうかの判断も含め、一人で抱え込まず、早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

お酒に酔った相手と性行為をしました。相手も同意していましたが、犯罪になりますか?

相手がアルコールの影響で正常な判断ができない状態だった場合、形式的な同意の言葉があっても、有効な同意と認められず、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
相手の酩酊の程度や当時の状況によりますので、不安がある場合は弁護士にご相談ください。

相手から誘ってきたのに、後日「同意していなかった」と言われています。

酩酊中の積極的な言動があったとしても、相手が正常な判断ができない状態であれば、同意の有効性が否定される可能性があります。
また、相手に当時の記憶がない場合、「同意した覚えがない」という申告につながることがあります。

当時の状況を裏付ける証拠の整理が重要ですので、早めに弁護士にご相談ください。

自分も泥酔していて、ほとんど覚えていません。罪に問われるのでしょうか?

記憶がないことは、無罪の理由にはなりません。

また、記憶を失うほど酔っていた場合でも、法律上は完全な責任能力があると判断されるケースがほとんどです。
「覚えていない」の一点張りは不利に働く一方、言われるがまま認めるのも危険です。

弁護士とともに記憶の整理と客観証拠の確認を進めてください。

どのくらい酔っている相手だと危険なのですか?

明確な線引きはありません。

会話が成立していたか、まっすぐ歩けていたか、嘔吐や介抱の有無、相手に記憶が残っているかなどの事情から、事後的に総合評価されます。
線引きがない以上、明らかに酔った相手との性的行為は、それ自体が高いリスクを伴うと考えるべきです。

訴えられた場合、示談はできますか?

できる場合があります。

記憶が曖昧な事案や事実関係に争いがある事案でも、状況次第で示談を進める判断はありえます。
示談が成立すれば不起訴となる可能性が高まります。

ただし、相手への直接の連絡は絶対に避け、必ず弁護士を通じて行ってください。

行為から時間が経っていますが、今さら訴えられることはありますか?

ありえます。

不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年であり、行為から時間が経ってから被害申告がされることもあります。

警察から連絡が来た場合は、無視せず、出頭する前に弁護士にご相談ください。

まとめ

お酒に酔って正常な判断ができない相手との性的行為は、暴行や脅迫がなくても、形式的な同意の言葉があっても、不同意性交等罪に問われるリスクがあります。
「相手から誘ってきた」という事情も、相手の酩酊の程度によっては防御になりません。
そして、「自分も酔って覚えていない」は免罪符にならず、責任を免れる理由にもほとんどなりません。

飲み会・デート後の行為について訴えられたら、相手に連絡せず、記録を消さず、当日の記憶と証拠を整理して、できる限り早く弁護士に相談してください。
認識の主張を維持するのか、示談による解決を図るのか。
その見極めが、この類型の事件の分かれ目です。

当事務所では、飲み会やデートの後の性的行為をめぐる事件について、記憶の整理と証拠の精査、検察官への働きかけ、示談交渉まで対応しています。
警察から連絡が来ている方はもちろん、「問題にならないか不安だ」という段階のご相談もお受けしています。
お一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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