加害者側の弁護士から示談を持ちかけられたら|応じる前に被害者が知っておくこと

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 加害者側の弁護士から示談を持ちかけられても、その場で返事をする必要はありません。急かされても、一度持ち帰って構いません。
  2. 加害者側の弁護士は加害者の利益のために動いており、提示された金額や条件が、あなたにとって適正とは限りません。
  3. 示談に応じるか断るかは、加害者の処罰を望むか、金銭的な解決を望むかを含めて、あなた自身が決めてよいことです。判断の前に、あなた自身の弁護士に相談してください。

はじめに

性被害に遭われた後、ある日突然、加害者の弁護士を名乗る人物から「示談のお願い」という連絡が来る。
示談金の話を持ち出され、返事を急かされる。
そんな状況に、戸惑い、動揺されている方も多いと思います。

まずお伝えしたいのは、その場で返事をする必要はない、ということです。
示談に応じるかどうかは、あなたが決めることであり、急かされて即断する必要はまったくありません。

本記事では、加害者側の弁護士から示談を持ちかけられたときに、被害者の方が知っておくべきこと、どう対応すべきかを、順を追って解説します。
落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。

なぜ加害者側の弁護士から連絡が来るのか

加害者は示談で刑事処分を軽くしたい

加害者が示談を望む大きな理由は、刑事処分を軽くしたいからです。
性犯罪の事件では、被害者と示談が成立し、被害者が加害者を許す意思を示すと、加害者が不起訴になったり、刑が軽くなったりする可能性が高まります。
加害者側が示談を持ちかけてくるのは、この効果を期待してのことです。

連絡してくるのは加害者本人でなく代理人

多くの場合、連絡してくるのは加害者本人ではなく、加害者が依頼した弁護士(代理人)です。
被害者が加害者本人と直接やり取りすることは通常なく、弁護士が窓口となって示談の話を進めてきます。

【重要】加害者側の弁護士は「あなたの味方」ではない

ここで、必ず理解しておいていただきたいことがあります。
加害者側の弁護士は、あくまで加害者の利益のために活動している、という点です。

その弁護士がどれほど丁寧で誠実な態度であっても、その役割は加害者を守ることにあります。
あなたのために、あなたにとって最も有利な条件を考えてくれる立場ではありません。
これは、その弁護士が悪い人だという意味ではなく、立場がそうなっているということです。
だからこそ、提示される話をそのまま受け入れるのではなく、あなたの側に立って考えてくれる人が必要になります。

まず知っておくこと|その場で返事をしなくてよい

示談は義務ではない

示談に応じることは、被害者の義務ではありません。
示談を断ったからといって、あなたに何かペナルティが科されることもありません。
応じるかどうかは、あなたの自由です。

急かされても、一度持ち帰ってよい

加害者側の弁護士は、刑事手続きのタイミングの都合から、示談を急ぐことがあります。
「早く返事がほしい」「今日中に」などと急かされることもあるかもしれません。

しかし、それに合わせて焦って返事をする必要はありません。
あなたの人生に関わる大切な判断です。
「持ち帰って考えます」「弁護士に相談してから返事をします」と伝えて、時間を取って構いません。

口頭でその場で合意しない

電話や対面で、その場の口頭で合意してしまうことは避けてください。
示談の条件は、書面で提示してもらいましょう。
動揺した状態で口頭でのやり取りだけで話を進めると、後になって「そんなつもりではなかった」という食い違いが生じたり、不利な内容で合意してしまったりするおそれがあります。

示談に応じるメリット・デメリット

示談に応じるかどうかを判断するために、そのメリットとデメリットを整理します。

応じるメリット

  • 賠償金(示談金)を確実かつ迅速に受け取れる:民事裁判を起こす手間や時間をかけずに、賠償を受けられます。
  • 早期に解決できる:長い手続きを経ずに、区切りをつけられます。
  • 生活の平穏を得られる:示談書に接触禁止の約束を入れることで、加害者が今後接触してこないようにできます。
  • 裁判の負担を避けられる:法廷で被害について語る精神的な負担を避けられます。

応じるデメリット

  • 加害者の刑事処分が軽くなる:これが最大のデメリットです。あなたが示談に応じて許す意思を示すと、加害者は不起訴になったり、刑が軽くなったりする可能性が高まります。

断る場合|処罰を望むなら示談を受けない選択もある

加害者に厳しい処罰を受けてほしいと強く望む場合には、示談交渉自体を受けないという選択もあります。
その場合は、担当の検察官に、示談をしない意思と、あなたの連絡先を加害者側に伝えないことを、はっきり伝えておくとよいでしょう。

ただし、断れば必ず重い刑になるとは限らない

ただし、示談を断ったからといって、加害者が必ず起訴され、重い刑を受けるとは限りません。
起訴するかどうかや刑の重さは、事件の内容、加害者の反省の程度など、さまざまな事情を踏まえて、最終的には検察官や裁判所が判断します。
示談の有無は重要な要素の一つですが、それだけで結果が決まるわけではありません。

処罰を望む気持ちと、金銭的な解決を確実に得たい気持ちの、どちらを優先するか。これは難しい判断です。
だからこそ、あなたの側に立つ弁護士と一緒に考えることをおすすめします。

提示された示談金は妥当か

加害者側の提示額が適正とは限らない

加害者側の弁護士が提示してくる金額は、加害者の負担をできるだけ抑えたいという立場から出てくるものです。
そのため、その金額が、あなたが受けた被害に見合った適正な額とは限りません。
提示額が相場より低いこともあります。

民事で認められうる慰謝料を踏まえて考える

示談金が妥当かどうかは、もし民事裁判をしたらどのくらいの慰謝料が認められうるか、という水準を踏まえて考える必要があります。
性被害の慰謝料の相場については、別の記事で解説しています。

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提示額がこの水準に照らして適正かを、専門家の視点で見極めることが大切です。

金額以外の条件も確認する

金額だけでなく、支払方法にも注意が必要です。
たとえば分割払いの場合、途中で支払いが滞るリスクがあります。
一括で支払われるのか、分割ならどのように履行を確保するのか、といった点も確認すべきポイントです。

示談書で気をつけること

示談に応じる場合、示談書の内容にも注意が必要です。
被害者に不利にならないよう、次の点を確認してください。

宥恕条項と嘆願の違い

示談書には、被害者が加害者を「許す」という宥恕条項が入ることが一般的です。
さらに進んで、「加害者の刑を軽くしてほしい」と積極的にお願いする嘆願まで含める場合もあります。

宥恕と嘆願は別のものです。
加害者の処罰を軽くすることに抵抗がある場合は、嘆願まではせず、宥恕のみにとどめるという選択もできます。
どこまで応じるかは、あなたが決めてよいことです。

清算条項に注意

示談書には、「示談で定めた以外に、当事者間に債権債務がないことを確認する」という清算条項が入ることが一般的です。
これがあると、示談の後に、追加で慰謝料などを請求することができなくなります。
示談金の額に納得したうえで合意することが重要です。

接触禁止・守秘義務条項

加害者が今後あなたに接触しないことを約束する接触禁止条項は、あなたの生活の平穏を守るために有用です。
一方、示談の内容を口外しないという守秘義務条項については、その内容があなたに一方的に不利になっていないか確認が必要です。

これらの条項を適切に整えるには専門的な知識が必要です。
示談書に署名する前に、弁護士に内容を確認してもらうことをおすすめします。

【重要】被害者も自分の弁護士を立てられる

加害者に弁護士がいるように、被害者も自分の代理人として弁護士を立てることができます。
これには大きなメリットがあります。

加害者と直接やり取りせずに済む

あなたが弁護士を立てれば、加害者側とのやり取りはすべてあなたの弁護士が引き受けます。
あなたが加害者やその弁護士と直接接触する必要はなくなり、連絡先を加害者に知られることもありません。

適正な金額・条件を主導できる

あなたの側に立つ弁護士は、被害に見合った適正な賠償額を検討し、あなたにとって不利な条件で合意してしまうことを防ぎます。
加害者側のペースではなく、あなたの側から適正な解決を求めていくことができます。

精神的な負担を弁護士に引き受けてもらえる

加害者側との交渉は、被害者にとって大きな精神的負担です。
その負担を弁護士に引き受けてもらうことで、あなたは心身の回復に専念しやすくなります。

刑事手続との関係

示談と刑事処分の関係|何を優先するか

繰り返しになりますが、示談に応じて宥恕を示すと、加害者の刑事処分は軽くなる方向に働きます。
「確実に賠償を受けたい」のか「加害者の厳しい処罰を求めたい」のか、あなたが何を最も望むのかによって、取るべき対応は変わってきます。
この点を整理することが、判断の出発点になります。

示談以外に賠償を受ける方法

なお、示談に応じない場合でも、加害者の刑事裁判を利用して賠償を求める損害賠償命令制度など、賠償を受ける方法は他にもあります。
示談を断つことが、賠償をあきらめることを意味するわけではありません。

損害賠償命令制度やその他については以下の記事もご確認ください。

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よくある質問(FAQ)

加害者の弁護士から示談の連絡が来ました。すぐに返事をしないといけませんか?

その必要はありません。

示談に応じるかどうかは義務ではなく、急かされても一度持ち帰って構いません。
動揺したままその場で合意すると、不利な内容になりかねません。

返事の前に、まずご自身の弁護士に相談してください。

加害者側の弁護士は、私の相談にも乗ってくれますか?

加害者側の弁護士は、あくまで加害者の利益のために活動する立場であり、あなたの味方ではありません。
あなたの利益を守るためには、あなた自身の代理人として、別の弁護士を立てることをおすすめします。

示談に応じると、加害者は罪に問われなくなるのですか?

示談に応じ、あなたが許す意思(宥恕)を示すと、加害者の刑事処分が軽くなる方向に働きます。
不起訴になったり、刑が軽くなったりすることがあります。
厳しい処罰を望む場合は、この点を踏まえて慎重に判断してください。

示談を断ったら、加害者は必ず重い刑になりますか?

必ずそうなるとは限りません。

起訴するかどうかや刑の重さは、事案の内容などを踏まえて検察官や裁判所が総合的に判断します。
示談の有無は重要な要素の一つですが、断ったからといって必ず重い刑になるわけではないことも知っておいてください。

提示された示談金が妥当かどうか、わかりません。

加害者側が提示する金額が、被害に見合った適正な額とは限りません。
民事で認められうる慰謝料の水準を踏まえて検討する必要があります。

金額に迷ったら、応じる前にご自身の弁護士に相談してください。

まとめ

加害者側の弁護士から示談を持ちかけられても、その場で返事をする必要はありません。
加害者側の弁護士はあなたの味方ではなく、提示された金額や条件が適正とは限らないからです。

示談に応じるか、断るか。
それは、加害者の処罰を望むのか、確実な金銭的解決を望むのかを含めて、あなた自身が決めてよいことです。
そして、その判断は一人で抱え込む必要はありません。
あなたの側に立つ弁護士に相談することで、適正な条件を見極め、加害者と直接やり取りする負担からも解放されます。

当事務所では、性被害に遭われた方に代わって、加害者側との示談交渉、適正な賠償額の検討、示談書の確認などを行っています。
加害者側の弁護士から連絡が来てお困りの方は、返事をする前に、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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