性被害の証拠は何が必要か|慰謝料請求に向けて被害者ができることを弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 性被害の慰謝料請求では証拠が重要ですが、「完璧な証拠」がなければ請求できないわけではありません。被害者ご本人の証言も、重要な証拠になります。
  2. 診断書、相談記録、メッセージ、防犯カメラなどが証拠になりえます。防犯カメラのように自分では取得しにくいものは、弁護士や捜査機関が確保します。
  3. 証拠を集めるために加害者に接触するのは危険です。無理をせず、できるだけ早く弁護士や相談窓口に相談してください。

はじめに

性被害に遭われた方が、加害者に慰謝料を請求しようと考えたとき、「証拠がないから無理なのではないか」「何を残しておけばいいのか分からない」と不安になることがあります。

たしかに、慰謝料の請求において証拠は大切です。
しかし、まずお伝えしたいのは、あなた一人で完璧な証拠を揃えなければならないわけではない、ということです。
証拠の収集や見極めは、弁護士などの専門家と一緒に進めることができます。

本記事では、性被害の慰謝料請求に向けて、どのようなものが証拠になるのか、被害者の方が無理のない範囲でできること、そして絶対にやってはいけないことを、弁護士が解説します。

なぜ証拠が重要なのか

慰謝料請求では被害の事実を立証する必要がある

加害者に慰謝料を請求し、特に裁判で認めてもらうためには、被害の事実があったことを、証拠によって示す必要があります。
「被害を受けた」という事実を裏付けるものがあるほど、請求は認められやすくなります。

加害者が「同意があった」と争ってくることが多い

性被害では、加害者が「同意の上だった」「そのような行為はしていない」と主張して争ってくることが少なくありません。
二人だけの状況で起こることが多いため、被害の状況を示す手がかりが重要になります。

ただし「証拠が完璧でないと請求できない」わけではない

ここが大切な点です。証拠が完璧に揃っていなければ請求できない、というわけではありません。

性被害は、その性質上、決定的な証拠が残りにくい類型です。
そのため、被害者ご本人の供述も、重要な証拠として扱われます。一つひとつは断片的な事情であっても、それらを積み重ねることで、被害の事実を立証できる場合があります。
「証拠が何もないから」と、最初から諦める必要はありません。

性被害の証拠になりうるもの

性被害の慰謝料請求で、証拠になりうるものを整理します。
ご自身でできることと、専門家に任せてよいことを分けて考えると、負担が軽くなります。

医療機関の記録(診断書・産婦人科の記録)

被害後に受診した医療機関の記録や診断書は、有力な証拠になります。
外傷についての診断書だけでなく、被害による精神的な不調(PTSDなど)についての診断書も、被害を裏付ける材料になります。
受診の際は、可能な範囲で、被害の状況を医師に伝えておくと、記録に残りやすくなります。

相談の記録(警察・支援センター・カウンセリング)

警察やワンストップ支援センター、カウンセリング機関などに相談した記録も、証拠になりえます。
いつ、どのような内容を相談したかが記録に残ることで、被害を早い段階から訴えていたことの裏付けになります。

加害者とのやり取り(メッセージ・通話履歴)

加害者とのLINE、メール、SNSのメッセージや、通話の履歴も証拠になりえます。
被害の前後のやり取りに、被害の事実や加害者の認識をうかがわせる内容が含まれていることがあります。
これらは削除せずに残しておいてください。

被害を打ち明けたやり取り

被害の後に、友人や家族などに被害を打ち明けたLINEやメールのやり取りも、証拠になりえます。
被害の直後に誰かに相談していたことは、被害の存在を裏付ける事情になります。

防犯カメラ・位置情報など(自分で取りにくいものは専門家が確保)

飲食店、ホテル、駅、タクシーなどの防犯カメラの映像や、位置情報なども、状況を裏付ける証拠になりえます。

ただし、これらの多くは、被害者ご自身で取得するのが難しいものです。
こうした証拠は、弁護士や捜査機関が確保することになりますので、ご自身で無理に集めようとする必要はありません。

被害当時の衣服・物品

被害当時に身につけていた衣服や下着などの物品も、証拠になる場合があります。
つらい記憶を思い出させるものは早く処分したいと思われるかもしれませんが、可能であれば、洗濯や処分をせずに保管しておくことをおすすめします。

自分で残す記録(被害の状況のメモ)

被害の日時、場所、状況、経緯などを、覚えている範囲でメモに残しておくことも有効です。
記憶が新しいうちに書き留めておくほど、価値が高まります。

ただし、こうしたメモは、それ単独で強い証拠になるというより、他の客観的な証拠と併せて意味を持つものです。
メモを残したうえで、他の証拠と組み合わせて活用していくことになります。

被害直後にできること(無理のない範囲で)

被害直後にできることをお伝えしますが、いずれも「できる範囲で」構いません。
つらい状況で無理をする必要はありません。

まず安全と健康を最優先に

何よりも、ご自身の安全と健康が最優先です。
望まない妊娠の心配がある場合、緊急避妊には時間の制約があります。
また、性感染症の検査や外傷の手当ても必要になることがあります。
ためらわずに医療機関を受診してください。

可能であれば、入浴・着替え・洗濯を避ける

被害直後に証拠を残すという観点からは、可能であれば、シャワーや入浴、着替え、洗濯を避けると、証拠が残りやすくなります。
これらを避けて捜査機関に付着した体液等の採取をしてもらうことで捜査がしやすくなります。

ただし、これはあくまで「できれば」の話です。
つらい中で我慢を強いるものではありませんし、すでに入浴などをしてしまったとしても、ご自身を責める必要はまったくありません。
健康と心の安定が第一です。

証拠採取ができる医療機関は限られる

被害の証拠を採取できる医療機関は限られています。
どこを受診すればよいか分からない場合は、先に警察や、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(全国共通ダイヤル #8891)に相談すると、適切な医療機関の案内を受けられます。

時間が経ってしまった場合でも諦めない

「被害からかなり時間が経ってしまった」という方も、諦める必要はありません。

後からでも集められる証拠がある

時間が経っていても、加害者とのメッセージの記録や、相談した記録など、後からでも確保できる証拠があります。
また、被害者ご本人の供述も重要な証拠であることは、時間が経っても変わりません。
まずは、どのような手がかりが残っているかを、弁護士と一緒に確認することができます。

早いほうがよい理由

とはいえ、時間の経過とともに、証拠は失われやすくなります。
防犯カメラの映像は一定期間で消去され、関係者の記憶も薄れていきます。
また、慰謝料を請求できる期間にも限りがあります。

慰謝料請求の時効については、別の記事で解説しています。

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これらの点から、できるだけ早く動くことが望ましいといえます。

【重要】やってはいけないこと

証拠に関して、絶対に避けていただきたいことがあります。

証拠集めのために加害者に接触しない

被害の証拠を得ようとして、加害者に自分から連絡を取り、呼び出して問い詰めたり、会話を録音しようとしたりすることは、絶対にやめてください。

加害者と接触することは、二次被害を受けたり、身の危険が生じたりするおそれがあります。
証拠を得るどころか、あなた自身が新たな苦痛や危険にさらされることになりかねません。
証拠を得るために危険を冒す必要はありません。

加害者との連絡・交渉は弁護士を通す

加害者とのやり取りが必要な場合でも、それはあなたの代理人である弁護士が行います。
あなたが直接加害者と接触することなく、必要な対応を進めることができます。

一人で抱えて無理をしない

証拠のことを含め、すべてを一人で抱え込んで無理をする必要はありません。
何が証拠になるのか、どう集めるのかは、専門家と一緒に考えることができます。
まずは、つらい気持ちを抱えたままで構いませんので、相談の一歩を踏み出してみてください。

証拠のことも含めて弁護士に相談を

証拠については、弁護士に相談することで、次のようなサポートを受けられます。

  • 何が証拠になるかの判断:あなたの手元にあるものの中から、証拠として使えるものを見極めます。
  • 自分で取りにくい証拠の確保:防犯カメラの映像など、ご自身では集めにくい証拠の確保を進めます。
  • 加害者と接触せずに進める:加害者とのやり取りをすべて引き受けるため、あなたが接触する必要はありません。
  • 立証の見通し:現在ある証拠で、どこまで請求できそうかの見通しを立てます。

そして、証拠は時間とともに失われるため、早く相談するほど、残っている証拠を活かすことができます。

よくある質問(FAQ)

証拠が何もありません。それでも慰謝料を請求できますか?

可能性はあります。

性被害は証拠が乏しいことが多く、被害者ご本人の供述も重要な証拠になります。
断片的な事情を積み重ねて立証できる場合もあります。

証拠がないからと諦めず、一度弁護士にご相談ください。

どのようなものが証拠になりますか?

被害直後の受診記録や診断書、警察・支援センターへの相談記録、加害者とのメッセージや通話履歴、友人・家族に被害を伝えたやり取り、防犯カメラの映像などが証拠になりえます。

被害当時の衣服を保管しておくことも有効な場合があります。

自分で証拠を集めた方がいいですか?

無理のない範囲で、手元にあるメッセージや記録を残しておくことは有効です。
ただし、防犯カメラの映像などご自身で取得しにくいものは、弁護士や捜査機関が確保します。

すべてを一人で抱える必要はありません。

証拠を集めるために、加害者に連絡を取ってもいいですか?

絶対にやめてください。

証拠を得ようと加害者を呼び出したり問い詰めたりすると、二次被害を受けたり、身の危険が生じたりするおそれがあります。
加害者とのやり取りは、ご自身の代理人である弁護士に任せてください。

被害直後は、何に気をつければいいですか?

まずは安全と健康を最優先にしてください。

妊娠の心配がある場合、緊急避妊には時間の制約があります。
そのうえで、可能であれば入浴や着替え、洗濯を避けると証拠が残りやすくなりますが、無理はしないでください。

証拠採取ができる医療機関は限られるため、警察や支援センターに相談すると案内を受けられます。

被害からかなり時間が経ってしまいました。もう手遅れですか?

手遅れとは限りません。

時間が経っても、メッセージの記録や相談の記録など、後から集められる証拠もあります。
ただし、時間の経過とともに証拠は失われやすく、請求できる期間にも限りがあります。

できるだけ早く弁護士にご相談ください。

まとめ

性被害の慰謝料請求において、証拠は大切です。
しかし、完璧な証拠がなければ請求できないわけではなく、被害者ご本人の証言も重要な証拠になります。
診断書や相談記録、メッセージなど、手元にあるものを無理のない範囲で残しておくことが、後の助けになります。

一方で、証拠を集めるために加害者に接触することは、二次被害や危険につながるため、絶対に避けてください。
証拠の確保や加害者とのやり取りは、専門家に任せることができます。

当事務所では、性被害に遭われた方の慰謝料請求について、証拠の見極めや確保、加害者との交渉まで対応しています。
あなたが加害者と直接やり取りすることなく、権利を守るお手伝いができます。
「証拠がないかもしれない」と諦める前に、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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