痴漢で警察から呼び出し・連絡が来たら|逮捕を避ける対応を弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 警察からの呼び出しを無視・放置するのが、最も危険な対応です。逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕に直結しかねません。
  2. 呼び出しの段階は、まだ在宅で済む可能性が高い「分岐点」です。出頭する前の準備(弁護士への相談・示談への着手)によって、その後の結果は大きく変わります。
  3. 出頭する前に弁護士に相談し、取調べへの対応と示談の方針を整えてから出頭することが、逮捕と前科を避けるための最善の動き方です。

はじめに

「ずいぶん前のことなのに、今日になって警察から痴漢の件で電話がかかってきた」 「自宅に警察から呼出状が届いた。これから逮捕されてしまうのだろうか」

その場で捕まらなかった痴漢について、後日、警察から呼び出しの連絡が来ることがあります。
心当たりのある方にとっては、これ以上ないほど不安な瞬間でしょう。

しかし、ここで知っておいていただきたいのは、呼び出しの連絡が来た段階は、まだ「逮捕」ではないということです。
むしろ、この段階での動き方次第で、逮捕されずに在宅のまま手続きを終えられるか、それとも逮捕・勾留されて長期間身柄を拘束されるかが分かれます。

本記事では、痴漢で警察から呼び出しの連絡が来たときに、逮捕を避けるためにどう対応すべきかを、弁護士が具体的に解説します。
今からの行動で結果は変わります。落ち着いて読み進めてください。

痴漢で警察から「呼び出し」の連絡が来るのはどういう状況か

なぜ今になって連絡が来たのか

痴漢の現場でその場で逮捕されなかった場合でも、後から捜査が進み、被疑者として特定されることがあります。
特定の手がかりになるのは、主に次のようなものです。

  • 駅構内や車両内の防犯カメラの映像
  • ICカード(交通系IC)の乗車履歴
  • 被害者や目撃者の証言
  • 被害申告を受けた後の警察の捜査

これらの捜査によって被疑者が特定されると、警察は本人に連絡を取り、事情を聞くために出頭を求めます。
捜査に時間がかかることもあるため、痴漢をしたとされる日から数週間、場合によっては数か月が経ってから連絡が来ることもあります。

呼び出しは「任意」だが、無視できるものではない

警察からの呼び出し(任意同行・任意出頭の要請)は、法的には「任意」のものです。
つまり、逮捕状による身柄拘束とは異なり、強制的に連れて行かれるわけではありません。

しかし、「任意だから無視してよい」と考えるのは大きな誤りです。
後ほど詳しく説明しますが、呼び出しに応じないことは、かえって逮捕のリスクを高めてしまいます。
任意ではあっても、実質的には応じるべき連絡だと理解してください。

電話での呼び出しと、呼出状が届く場合

呼び出しの方法には、電話による場合と、書面(呼出状)が郵送される場合があります。
いずれの場合も、対応の基本は変わりません。

また、警察から呼び出される場合だけでなく、事件が検察官に送致された後に、検察庁から呼び出されることもあります。
捜査の段階に応じて複数回の呼び出しがありうると考えておきましょう。

【最重要】呼び出しを無視・放置するとどうなるか

ここが最も重要な部分です。
痴漢の呼び出しを受けたとき、絶対に避けるべきなのが「無視・放置」です。

「逃亡・証拠隠滅のおそれ」と判断され逮捕に直結しうる

そもそも、後日逮捕(通常逮捕)には、裁判官が発付する逮捕状が必要です。
そして逮捕状が認められるためには、大きく分けて次の2つが必要とされています。

  • 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
  • 逃亡のおそれ、または証拠を隠滅するおそれがあること

警察からの任意の呼び出しを無視・拒否すると、この「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」があると判断される方向に働きます。
その結果、逮捕状が請求・発付され、ある日突然、逮捕されるという事態になりかねません。

任意の呼び出しを拒否することが逮捕の引き金になる理由

捜査機関の立場で考えると分かりやすくなります。
任意の出頭に応じない被疑者は、「このまま放置すれば逃げてしまうかもしれない」「証拠を隠すかもしれない」と疑われます。
任意で話を聞けない以上、身柄を確保するしかない、という判断につながるのです。

つまり、本来は在宅で済んだかもしれない事件を、呼び出しを無視したことによって、自ら逮捕事件にしてしまうおそれがあるということです。

「行かなければバレない」は通用しない

呼び出しの連絡が来ているということは、すでに警察があなたを被疑者として特定しているということです。
今さら出頭を避けても、捜査から逃れられるわけではありません。

「出頭しなければうやむやになるのではないか」という考えは通用しないばかりか、前述のとおり逮捕のリスクを高めるだけです。
連絡が来た以上、適切に対応するほかありません。

呼び出し段階は「分岐点」|まだ在宅で終われる可能性が高い

無視が危険である一方で、呼び出しの段階は、決して絶望的な状況ではありません。
むしろ、結果を良い方向に導ける重要な分岐点です。

出頭して逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを示せば在宅事件になりやすい

前述のとおり、逮捕には「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」が必要です。
逆にいえば、これらのおそれが低いと判断されれば、逮捕されずに済む可能性が高くなります。

呼び出しに素直に応じて出頭し、定まった住居があること、誠実に捜査に協力する姿勢があることを示せば、「逃亡や証拠隠滅のおそれは低い」と評価されやすくなります。
その結果、逮捕されることなく、在宅のまま捜査が進む「在宅事件」として扱われる可能性が高まります。

この段階での対応を誤ると身柄事件に転じる

反対に、呼び出しを無視したり、不誠実な対応をとったりすると、本来は在宅で済んだ事件が、逮捕・勾留を伴う「身柄事件」に転じてしまいます。

在宅事件であれば、日常生活や仕事を続けながら手続きを進められますが、逮捕・勾留されると、最大で23日間にわたって身柄を拘束される可能性があり、その間は出勤できません。
これは、勤務先に痴漢の事実が発覚する大きな原因にもなります。

だからこそ「出頭する前」の準備が結果を分ける

在宅で終われるか、逮捕されてしまうか。
その分かれ道は、出頭する前の準備にかかっています。
何の準備もせずに出頭するのと、弁護士に相談し方針を整えてから出頭するのとでは、結果が変わりうるのです。
次の章で、具体的に何をすべきかを説明します。

呼び出しを受けたら、出頭までにすべきこと

呼び出しの連絡を受けたら、出頭日までに次のことを行いましょう。

ステップ1:日程を確認する(電話口で詳しく話さない)

まず、電話で呼び出された場合、その場で事件の内容について詳しく話す必要はありません。
電話口でやってしまったかどうかを認めたり、逆に否定したりする必要もありません。

確認すべきは、出頭の日時・場所・おおまかな用件にとどめます。
動揺したまま電話で受け答えをすると、不用意な発言をしてしまいかねないため、まずは日程の確認に徹してください。

ステップ2:出頭前に弁護士に相談する

出頭する前に、弁護士に相談することを強くおすすめします。

取調べでは、痴漢の状況について詳しく質問されます。
どのようなことを聞かれるのか、質問にどう答えるべきか、作成された供述調書にどう向き合うべきかを、事前に弁護士から助言を受けておくことで、不利な調書を作られるリスクを大きく減らせます。

取調べは、一度供述調書が作成されてしまうと、後からその内容を覆すのが難しくなります。
だからこそ、出頭する前の助言が重要なのです。

ステップ3:示談の準備に着手する

痴漢に心当たりがある場合は、出頭の前後の早い段階で、被害者との示談に向けた準備に着手することが、結果を大きく左右します。

示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思を示してくれれば、不起訴処分となって前科を回避できる可能性が高まり、身柄を拘束されるリスクも下がります。
示談は早く動くほど有利になりやすいため、呼び出しを受けた段階で着手するのが理想です。

なお、示談の進め方や金額の相場については、別の記事で詳しく解説しています。

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必ず出頭する(日程調整は可能)

仕事などの都合で指定された日に出頭できない場合でも、無断で行かないという選択はしないでください。
その場合は、「出頭する意思はあるが、その日は都合が悪い」と伝え、別の日時を提案して調整します。

応じる姿勢を見せること自体が、「逃亡のおそれがない」ことを示す一つの材料になります。
日程の調整は通常可能ですので、放置だけは避けてください。

取調べでやってはいけないこと・注意点

出頭後の取調べでは、次の点に注意してください。

嘘をつく・証拠を隠す・口裏合わせを頼む

取調べで嘘をついたり、証拠を隠したり、関係者に口裏合わせを頼んだりすることは、絶対にやめてください。

これらは「証拠隠滅」と評価され、逮捕の理由になります。
在宅で済むはずだった事件を、自ら逮捕事件に変えてしまう行為です。
事実に反する小細工は、状況を悪化させるだけだと理解してください。

早く帰りたい一心で、事実と違う供述に署名する

取調べが長引くと、「認めれば早く帰れる」という気持ちから、事実と違う内容を認めてしまうことがあります。
しかし、その場しのぎの供述であっても、いったん供述調書に署名してしまうと、後から覆すのは非常に困難です。

特に、身に覚えがないにもかかわらず認めてしまうと、前科がついてしまう取り返しのつかない結果になりかねません。

供述調書の内容は必ず確認してから署名する

取調べの後には、供述内容をまとめた供述調書が作成され、署名・押印を求められます。
署名する前に、内容が自分の話したとおりになっているかを必ず確認してください。

事実と異なる部分や、ニュアンスが違う部分があれば、訂正を求めることができます。
納得できないまま署名する必要はありません。

なお、身に覚えがない(やっていない)場合の取調べ対応や防御の詳細については、別の記事で解説しています。

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やってしまった場合とやっていない場合で対応は異なる

呼び出しへの基本的な対応(無視しない・出頭する・弁護士に相談する)は共通ですが、実際に痴漢をしてしまった場合と、身に覚えがない場合とでは、その後の方針が異なります。

やってしまった場合

実際に痴漢をしてしまった場合は、反省を示したうえで、被害者との示談を進め、不起訴処分と在宅での解決を目指すのが基本方針です。
出頭して誠実に対応し、早期に示談に動くことが、最良の結果につながります。

やっていない場合

身に覚えがないのに疑われている場合は、その場から逃げたり、曖昧に認めたりすることを避け、一貫して「やっていない」という意思を明確に示すことが重要です。

ただし、否認事件は、認める事件とはまったく異なる難しさがあり、初動の対応が結果を大きく左右します。
やっていない場合の具体的な防御については、別の記事で詳しく解説しています。

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「自首」になるのか?呼び出し後の出頭との違い

「自分から出頭すれば自首になって有利になるのではないか」と考える方もいます。

しかし、すでに警察から呼び出しの連絡が来ている時点では、通常、あなたは被疑者として特定されています。
自首は、捜査機関に犯人として発覚する前に自ら申し出た場合に成立するものであるため、特定された後に出頭しても、自首は成立しにくいと考えられます。

もっとも、自首が成立しなくても、自ら出頭して反省の意思を示すことは、検察官の処分や量刑の判断において有利な事情として考慮されえます。

なお、まだ警察から連絡が来ていない段階であれば、自首を検討する余地があります。
自首をすべきかどうかは判断が難しいため、その前に弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談するメリット(呼び出し段階で依頼する価値)

痴漢の呼び出しを受けた段階で弁護士に依頼することには、次のようなメリットがあります。

  • 取調べ対応の助言:出頭前に、何を聞かれるか、どう答えるべきかを助言し、不利な調書を防ぎます。
  • 警察・検察との連絡調整:弁護士が窓口となり、出頭日程の調整などを代わりに行います。
  • 示談交渉の即時着手:被害者と直接やり取りできない本人に代わり、早期に示談交渉を開始します。
  • 身柄拘束の回避:逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを主張し、逮捕・勾留を避けるための活動を行います。

呼び出しの段階は、まだ打てる手が多く残されているタイミングです。
早く相談するほど、選択肢は広がります。

よくある質問(FAQ)

警察から痴漢の件で電話が来ました。無視したらどうなりますか?

無視や放置は最も危険な対応です。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕状を取得されて逮捕される可能性が高まります。

連絡が来たら、まず日程だけを確認し、出頭する前に弁護士に相談してください。

呼び出しに応じたら、その場で逮捕されますか?

任意の呼び出しに素直に応じ、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せば、逮捕されずに在宅で手続きが進む可能性が高くなります。
逆に、出頭を拒否したり証拠を隠そうとしたりすると、逮捕のリスクが上がります。

仕事があって指定の日に行けません。どうすればいいですか?

日程の調整は可能です。無断で行かないのではなく、出頭する意思を示したうえで、別の日時を提案してください。
応じる姿勢を見せること自体が、逃亡のおそれがないことを示す材料になります。

出頭する前に、何を準備すればいいですか?

まず弁護士に相談し、取調べで聞かれる内容や供述調書への対応について助言を受けることをおすすめします。
心当たりがある場合は、あわせて示談の準備に着手すると、不起訴や在宅での解決につながりやすくなります。

呼び出しの前に自分から出頭すれば「自首」になりますか?

すでに警察から呼び出しの連絡が来ている時点では、通常は被疑者として特定されているため、自首は成立しにくいと考えられます。
ただし、自ら出頭して反省を示すことは、処分の判断において有利な事情として考慮されえます。

まだ連絡が来ていない段階であれば、自首を検討する余地があります。

会社に知られずに解決できますか?

呼び出しに応じて在宅事件として進められれば、長期間の身柄拘束による欠勤がないため、勤務先に知られずに解決できる可能性が高まります。
逆に、対応を誤って逮捕・勾留されると、長期の欠勤から発覚しやすくなります。

まとめ

痴漢で警察から呼び出しの連絡が来たとき、最もやってはいけないのは、それを無視・放置することです。
任意の呼び出しであっても、応じなければ逃亡・証拠隠滅のおそれありと判断され、逮捕に直結しかねません。

一方で、呼び出しの段階は、まだ在宅で終われる可能性が高い分岐点でもあります。
出頭する前に弁護士に相談し、取調べへの対応と示談の方針を整えてから出頭すること。
これが、逮捕と前科を避けるための最善の動き方です。
今からの対応で、結果は変えられます。

当事務所では、痴漢で警察から呼び出しを受けた段階からのご相談に対応しています。
出頭前の取調べ対応の助言、被害者との示談交渉、身柄拘束を避けるための活動まで、早期に動くことで打てる手があります。
呼び出しを受けてお困りの方は、出頭される前に、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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