飲み会やデートで性被害に遭ったら|お酒の場の被害と慰謝料請求を弁護士が解説

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 飲み会やデートでお酒に酔った状態で性被害に遭った場合、「酔っていた自分が悪い」と思う必要はありません。悪いのは、その状態につけ込んだ加害者です。
  2. お酒の影響で正常な判断ができない状態でなされた行為は、形式的に同意があったように見えても、不同意性交・不同意わいせつにあたりえます。
  3. 加害者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。立証のために証拠が重要ですので、できるだけ早く弁護士や相談窓口につながってください。

はじめに

飲み会やデートの後、お酒に酔った状態で性被害に遭ってしまった。
そんなとき、「自分も飲んでいたから」「その場ではっきり断れなかったから」と、ご自身を責めてしまっている方が少なくありません。

歓送迎会や納涼会、旅行やお祭りなど、お酒を飲む機会が増える時期には、こうした被害も起こりやすくなります。
そして、被害に遭われた多くの方が、「自分にも落ち度があったのではないか」と一人で抱え込んでしまいます。

しかし、まずお伝えしたいことがあります。
それは、酔った状態につけ込まれた性被害は、あなたの落ち度ではないということです。

本記事では、飲み会やデートなどお酒の場での性被害について、それがなぜ加害者の責任なのか、加害者に慰謝料を請求できるのか、そのために何をすればよいのかを、被害者の方に向けて弁護士が解説します。

「酔っていた自分が悪い」ではありません

悪いのは、酔った状態につけ込んだ加害者

お酒の場での性被害では、被害者の方が「飲みすぎた自分が悪い」「油断していた自分の責任だ」と考えてしまいがちです。しかし、それは違います。

お酒を飲むこと自体は、何ら責められることではありません。
悪いのは、相手が正常な判断や抵抗ができない状態になっているのをいいことに、性的な行為に及んだ加害者です。
あなたが飲酒したことと、加害者が被害者につけ込んだこととは、まったく別の問題です。

自分を責めて泣き寝入りしてしまう被害者が多い

お酒の場の性被害では、被害者が自分を責めてしまい、「誰にも言えない」「自分が悪いのだから仕方ない」と泣き寝入りしてしまうことが少なくありません。

しかし、泣き寝入りする必要はまったくありません。
あなたには、加害者に責任を問い、賠償を求める正当な権利があります。
まずは、ご自身を責める気持ちを、少しだけ脇に置いてみてください。

まず、あなたの心と体を大切に

法的な話に入る前に、何よりもご自身の心と体を大切にしてください。
被害の直後は、望まない妊娠や性感染症の心配、心身の不調が生じることがあります。
ためらわずに医療機関を受診してください。

どこに相談すればよいか分からない場合は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(全国共通ダイヤル #8891)で、医療的な支援や相談を受けることができます。
まずは安全と健康を確保することが最優先です。

お酒に酔った状態での性的行為は犯罪になりうる

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪とは

同意のない性的な行為は、犯罪です。
相手の意に反してわいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪(刑法176条)、性交等をすれば不同意性交等罪(刑法177条)が成立しえます。
これらは、2023年の刑法改正で新しく定められた犯罪です。

お酒と「同意」|正常な判断ができない状態の同意は有効といえない

これらの犯罪は、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態」でなされた場合に成立します。
そして、その原因となる事由の一つとして、法律は「アルコールもしくは薬物の影響があること」「睡眠その他の意識が明瞭でない状態にあること」を挙げています(刑法176条1項3号・4号など)。

つまり、お酒に酔って正常な判断ができない状態や、意識がもうろうとした状態につけ込んで行われた性的な行為は、これらの犯罪にあたりえます。

「いいよ」と言ったように見えても無効な場合がある

「その場では拒まなかった」「『いいよ』と言ってしまった記憶がある」という方もいます。
しかし、お酒の影響で正常な判断ができない状態でなされた同意は、有効な同意とは認められない場合があります。

正常に物事を判断できない状態での「承諾」は、本当の意味での同意とはいえないからです。
形式的に承諾する言葉があったとしても、それだけで被害でなくなるわけではありません。

自分から飲んだ場合でも被害になりうる

「無理やり飲まされたわけではなく、自分から飲んだ」という場合でも、被害になりえます。

大切なのは、飲んだ経緯ではなく、性的な行為の時点で正常な判断や抵抗ができない状態だったこと、そして加害者がその状態につけ込んだことです
自分から飲んだかどうかは、加害者の責任を否定する理由にはなりません。
「自分から飲んだのだから同意したことになる」というのは、誤解です。

よくある「お酒の場」の被害の例

お酒の場での性被害は、さまざまな場面で起こります。

以下は一般的な例です。

職場の飲み会・歓送迎会で

職場の飲み会や歓送迎会の後、上司や先輩などから被害に遭うケースです。
断りづらい上下関係が背景にあることもあります。
夏は歓送迎会や納涼会など、職場での飲酒の機会が増える時期でもあります。

合コン・デート・マッチングアプリで会った相手から

合コンやデート、マッチングアプリで知り合った相手と飲食をした後に、被害に遭うケースです。
「二人で飲みに行った」「相手の家やホテルに行った」という事情があっても、そこで正常な判断ができない状態での性的行為が行われれば、被害になりえます。

意図的に酔わされる・薬物を使われるケース

中には、加害者が意図的に強い酒を勧めたり、飲み物に何かを入れたりして、被害者を正常な判断ができない状態にするケースもあります。
飲み物から目を離さない、勧められるままに飲まないといった注意も大切ですが、仮にこうした被害に遭ってしまっても、それはあなたの責任ではありません。

加害者に慰謝料を請求できる

性被害は不法行為|慰謝料請求という手段

お酒の場での性被害も、加害者による不法行為です。
被害者は、加害者に対して、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます(民法709条・710条)。
加害者の刑事処罰とは別に、民事上の賠償を求められるということです。

慰謝料の相場

慰謝料の金額は事案によって大きく異なりますが、一つの目安として、不同意性交で100万〜500万円程度、不同意わいせつで数十万〜100万円程度とされることが多いです。

慰謝料の相場や請求の全体像については、別の記事で詳しく解説しています。

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刑事の処罰と民事の慰謝料は別

加害者を刑事的に処罰してもらうこと(刑事)と、慰謝料を請求すること(民事)は、別の手続きです。
処罰を求めるのか、金銭的な賠償を求めるのか、その両方かは、あなたが選ぶことができます。
何を望むのかを整理したうえで、対応を考えていくことになります。

お酒の場の被害は立証が難しい|だからこそ早く動く

記憶がない・密室で証拠が少ないという難しさ

正直にお伝えすると、お酒の場での性被害は、立証が難しい類型です。
被害者が酔っていて記憶が曖昧なことが多く、また二人だけの状況で起こるため、被害を直接示す証拠が乏しいことが少なくありません。

酔った状態を裏付けうるもの

それでも、次のようなものが、当時の状況や被害を裏付ける手がかりになりえます。

  • 飲食店のレシートや注文の履歴
  • 被害後に受診した医療機関の記録
  • 飲食店、ホテル、タクシー、駅などの防犯カメラの映像
  • 一緒に飲んでいた人や、店員などの証言
  • 当日から被害直後にかけての、メッセージやSNSのやり取り
  • 被害直後のあなたの様子を知る人の証言

証拠は時間とともに失われる

これらの証拠は、時間が経つほど失われていきます。
防犯カメラの映像は一定期間で消去され、飲酒の影響を示す検査は被害直後でなければできず、関係者の記憶も薄れていきます。
だからこそ、できるだけ早く動くことが大切です。

証拠をどう確保すればよいかは、専門的な判断が必要です。
ご自身だけで抱え込まず、早めに弁護士や相談窓口につながってください。

証拠については別の記事でも解説しています。

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「同意があった」と加害者が主張してくることへの備え

お酒の場の性被害では、加害者が「同意の上だった」と主張してくることが少なくありません。
だからこそ、酔っていた状況などを裏付ける客観的な事情が重要になります。
この点でも、専門家の関与が力になります。

【重要】加害者と直接やり取りしない

被害の相手に、自分で連絡を取って謝罪や賠償を求めたいと考える方もいるかもしれません。
しかし、加害者と直接やり取りすることは避けてください。

加害者と直接連絡を取ると、二次被害を受けたり、脅されたり、あなたの発言を加害者側に不利に利用されたりする危険があります。
加害者への請求は、あなたの代理人として弁護士を立て、直接接触せずに進めるのが安全です。

なお、加害者側の弁護士から示談を持ちかけられた場合の対応については、別の記事で解説しています。

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被害に遭ったらどうすればよいか

最後に、お酒の場で性被害に遭ったときの対応の流れを整理します。
無理のない範囲で構いません。

安全の確保と医療

まずは安全な場所に移り、心身の状態が心配な場合は医療機関を受診してください。
望まない妊娠や性感染症への対応は、早い方がよい場合があります。
ワンストップ支援センター(#8891)で、医療機関の案内や支援を受けることもできます。

できる範囲で記録を残す

つらい時期ではありますが、可能な範囲で、当時の状況やその後のやり取りを記録に残しておくと、後の助けになります。無理をする必要はありません。

早めに弁護士に相談する

証拠には時間の制約があり、加害者との直接のやり取りには危険が伴います。
だからこそ、早めに弁護士に相談することが、あなたの権利を守ることにつながります。

よくある質問(FAQ)

お酒に酔って抵抗できないうちに性行為をされました。自分も飲んでいたので、被害を訴えられますか?

訴えられます。

お酒の影響で正常な判断や抵抗が難しい状態でなされた性的行為は、たとえ自分から飲んでいたとしても、不同意性交・不同意わいせつにあたりえます。

「酔っていた自分が悪い」と考える必要はありません。

「いいよ」と言ってしまった記憶があります。それでも被害になりますか?

なる場合があります。

お酒の影響で正常な判断ができない状態でなされた同意は、有効な同意とは認められないことがあります。
形式的に承諾する言葉があったとしても、それだけで被害でなくなるわけではありません。

状況を弁護士にご相談ください。

酔っていて、記憶がほとんどありません。それでも慰謝料を請求できますか?

可能性はあります。

記憶がなくても、当日の飲酒の状況、店やホテルの防犯カメラ、一緒にいた人の証言、被害後の受診記録などから、被害を裏付けられる場合があります。
ただし、これらの証拠は時間とともに失われるため、できるだけ早く相談してください。

加害者は「同意の上だった」と言っています。どうすればいいですか?

性被害では、加害者が「同意があった」と主張することは少なくありません。
だからこそ、酔っていた状況などを裏付ける客観的な事情が重要になります。

ご自身で加害者と直接やり取りせず、弁護士に相談して対応を進めてください。

慰謝料はどのくらい請求できますか?

事案によって大きく異なりますが、一つの目安として、不同意性交で100万〜500万円程度、不同意わいせつで数十万〜100万円程度とされることが多いです。

加害者に直接連絡して、謝罪と賠償を求めてもいいですか?

おすすめできません。

加害者と直接やり取りすると、二次被害を受けたり、発言を不利に利用されたりする危険があります。
ご自身の代理人として弁護士を立て、加害者と接触せずに請求を進めるのが安全です。

まとめ

飲み会やデートで、お酒に酔った状態で性被害に遭っても、酔っていたご自身を責める必要はありません。
悪いのは、正常な判断や抵抗ができない状態につけ込んだ加害者です。
そのような状態でなされた性的行為は、形式的な同意があったように見えても、不同意性交・不同意わいせつにあたりえます。

そして、あなたには加害者に慰謝料を請求する正当な権利があります。
お酒の場の被害は立証が難しい面がありますが、だからこそ、証拠が残っているうちに早く動くことが大切です。

当事務所では、飲み会やデートなどでの性被害について、加害者への慰謝料請求、証拠の整理、加害者側との交渉まで対応しています。
加害者と直接やり取りすることなく、あなたの権利を守るお手伝いができます。
「自分にも落ち度があったのでは」と一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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