【この記事の結論・要約】
- 盗撮の示談金は10万〜50万円程度が目安で、30万円前後となることが多いです。ただし一律の基準はなく、事案によって大きく変わります。
- 撮影の態様、余罪・常習性、データの拡散、被害者が未成年であることなどが、金額を押し上げる要因になります。
- 示談金は単なる賠償ではなく、前科を避け、民事責任もまとめて解決するための費用です。金額だけでなく、示談書の条項と進め方が結果を左右します。
はじめに
盗撮が発覚し、被害者との示談を考え始めた方が最初に突き当たるのが、「いくら用意すればよいのか」という問題です。
盗撮の示談金には、法律で決まった基準はありません。
それでも、実務上の目安となる水準と、金額を上下させる要因ははっきりしています。
この記事では、盗撮の示談金の相場と増額要因、罰金との違い、そして金額と同じくらい重要な示談の進め方を解説します。
盗撮がどの罪に当たるのかの整理と、発覚した場面ごとの対応は、次の記事で扱っています。

盗撮の示談金の目安
盗撮事件の示談金は、おおむね10万〜50万円程度が目安で、30万円前後となることが多いですです。
ただし、この数字は「この金額を払えば示談できる」という基準ではありません。
示談金は被害者との合意によって決まるものであり、同じような態様の盗撮でも、被害者の受けた苦痛や処罰感情によって、金額には相応の差が生じます。
実際、同種の事案でも数十万円単位の開きが出ることは珍しくありません。
水準に影響する土台となるのが、行為がどの罪に当たるかです。
下着や身体を直接撮影する撮影罪の事案は、着衣の上からの撮影で迷惑防止条例違反にとどまる事案より、被害の重さに応じて高い水準になる傾向があります。
トイレや更衣室への設置型のように建造物侵入罪が重なる事案では、さらに金額が上がる傾向にあります。
金額が上がる要因
相場の中でどこに落ち着くか、あるいは相場を超えるかは、主に次の要因で決まります。
- 撮影の部位・態様:下着の中や裸の撮影は、着衣の上からの撮影より重く評価されます。トイレ・更衣室・自宅などプライベートな空間での撮影や、カメラを設置する計画的な手口も、悪質性を高めます。
- 余罪・常習性:押収された機器の解析で過去の撮影データが多数見つかった場合、被害の全体像が大きくなり、金額を押し上げます。
- データの共有・ネット公開:撮影データを第三者に送っていた、インターネットに公開していたという事情は、大きな増額要因です。被害の回復が困難になるためで、この場合は相場を大きく超えることがあります。
- 被害者が未成年:被害者が未成年の場合は水準が上がり、30万〜50万円程度、あるいはそれ以上になることもあります。保護者との交渉になる点でも、慎重な対応が必要です。
- 処罰感情の強さ:被害者の受けた恐怖や屈辱が深いほど、解決に必要な水準は上がります。
- 時期の切迫:起訴の判断が迫った段階での示談は、時間的な余地がない分、金額面で譲歩を迫られやすくなります。早く動くほど、適正な水準での解決可能性が高まります。
示談金と罰金は何が違うか
「30万円払うなら、罰金と同じではないか」と考える方がいますが、両者はまったく別のものです。
罰金は刑罰
国に納めるお金であり、罰金刑を受ければ前科が付きます。
被害者には一円も渡らず、被害者との紛争も解決しません。
示談金は被害者への賠償と解決の対価
被害者に謝罪と償いを尽くし、宥恕(処罰を望まない意思)を得ることで、不起訴となる可能性を高める意味を持ちます。
不起訴となれば、前科は付きません。
つまり、同じ金額でも、罰金は「前科とともに支払うお金」、示談金は「前科を避けるために支払うお金」になり得るという違いがあります。
もちろん、示談が成立すれば必ず不起訴になるという保証はありませんが、盗撮のような被害者のある犯罪では、示談の成否が処分を分ける重要な事項となります。
「民事の賠償額より高い」のはなぜか
示談金の水準について、「裁判で認められる慰謝料より高いのではないか」という疑問もあります。
実際、示談が決裂して被害者から民事訴訟を起こされた場合に認められる賠償額は、示談金の相場より低い水準にとどまることが多いとされています。
それでも示談に意味があるのは、示談金が刑事と民事をまとめて解決する対価だからです。
示談をしなければ、民事の賠償責任が残るだけでなく、刑事では前科のリスクを抱えたまま処分を待つことになります。
訴訟対応の時間と費用、事件が長引くことによる発覚リスクも負担です。
示談金の水準は、これらすべてを清算する解決の価格として理解する必要があります。
金額の高低だけを民事の判決水準と比べて損得を判断するのは、適切ではありません。
金額以外で重要なこと(示談書の条項)
示談は、金額の合意だけでは完結しません。示談書に何を盛り込むかが重要です。
- 宥恕文言:被害者が加害者を許し、刑事処罰を望まない旨の記載です。検察官の処分判断に対して重要な部分であり、この文言の有無で示談書の価値は大きく変わります。
- 清算条項:示談金のほかに債権債務がないことを相互に確認する条項です。解決後の追加請求を防ぎます。
- 口外禁止条項:事件と示談の内容を第三者に口外しないことの合意です。双方のプライバシーを守ります。
- 接触禁止条項:今後、被害者に接触しないことの約束です。被害者の安心のために求められることが多い条項です。
金額を用意できても、これらの条項を欠いた示談書では、「支払ったのに解決していない」事態が起こり得ます。
書面の中身まで含めて整えることが、示談をする上で非常に重要です。
示談の進め方と注意
被害者の連絡先は、本人には開示されません
盗撮の被害者は加害者との接触を恐れているのが通常で、捜査機関は加害者本人に連絡先を教えません。
弁護士が就いた場合に限り、捜査機関を通じて被害者の意向を確認し、弁護士限りで連絡先の開示を受けて交渉する、という形で進みます。
示談をするなら、弁護士への依頼が不可欠となります。
本人による接触は厳禁です
SNSなどで被害者を探し出して連絡する行為は、被害者の恐怖と処罰感情を強め、証人威迫等の疑いを招くおそれもあります。
支払いは一括が原則
被害者側からみれば、分割払いは不払いリスクを負わされる提案であり、かつ、事件に長期的に関わることになるため、応じてもらえないことも多いです。
示談を考えるなら、家族の援助を含めて一括の原資を準備することをまず最優先で検討する方が良いでしょう。
不当に高額な要求を受けた場合
被害感情を背景に、相場を大きく超える金額を求められることもあります。
応じられない金額での決裂は刑事処分のリスクを高める一方、過大な要求に言いなりになる必要もありません。
事案の重さに見合った適正水準の見極めと、決裂した場合の次善策(供託・贖罪寄付など)まで含めて、弁護士と方針を決めてください。
発覚した場面ごとの初動と、示談を含む手続き全体の流れは、次の記事で解説しています。


よくある質問(FAQ)
- 初犯でエスカレーターでの盗撮です。いくらくらいになりますか。
-
事案によりますが、初犯で、データの拡散がなく、撮影が1回にとどまる事案であれば、10万〜50万円程度の中で、被害者の意向を踏まえた水準での解決を目指すことになります。
- 被害者が複数います。示談金は人数分必要ですか。
-
必要です。
示談は被害者ごとに個別に行うものであり、被害者が複数いれば、それぞれとの示談金が必要になります。
余罪が多い事案で負担が大きくなるのはこのためです。どの範囲の被害者と示談すべきかは、立件されている事実と処分への影響を踏まえて方針を決めます。
- 示談金を払えば、罰金は科されませんか。
-
科されない可能性もありますが保証はできません。
示談の成立は不起訴の可能性を大きく高める事情ですが、処分を決めるのは検察官であり、事案の内容によっては示談が成立しても罰金などの処分に至ることがあります。
もっとも、その場合でも示談の成立は処分を軽くする方向に働きます。 - 相場よりかなり高い金額を求められています。払うべきですか。
-
言い値で即答すべきではありません。
事案の重さに見合った適正水準を見極めたうえで、交渉により調整を図るのが基本です。
ただし、決裂すれば刑事処分のリスクが高まるという緊張関係があるため、金額だけで判断せず、処分の見通しを含めた全体の中で決める必要があります。
弁護士に要求内容を伝えて、対応を相談してください。 - お金をすぐに用意できません。分割にできますか。
-
分割払いは、被害者側に不払いリスクを負わせる提案であるため、応じてもらえないことが多いのが実情です。
ご家族の援助を含めて一括の原資を準備する方が良いでしょう。どうしても難しい場合の進め方(支払時期の調整など)は、事案ごとに検討する必要があるため、弁護士にご相談ください。
まとめ
盗撮の示談金について、ポイントを整理します。
- 目安は10万〜50万円程度、30万円前後が中心。ただし一律の基準はなく、被害者との合意で決まる。
- 撮影の態様、余罪、データの拡散、被害者が未成年であること、処罰感情の強さ等の事情が金額を高くする傾向にある。特にデータの共有・公開は大きな増額要因になる。
- 罰金は前科とともに支払うお金、示談金は前科を避けるために支払うお金になり得る。刑事と民事をまとめて解決する対価として捉える。
- 金額だけでなく、宥恕・清算・口外禁止などの条項が示談する上で重要となる。
- 被害者の連絡先は弁護士経由でしか得られないのが通常で、本人による接触は厳禁。支払いは一括が原則になる。
当事務所では、盗撮事件の示談交渉について、適正な金額水準の見極めから、被害者への連絡、示談書の作成、処分の見通しのご説明までお受けしています。
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