【この記事の結論・要約】
- 被害者や目撃者、駅員による取り押さえは、私人による現行犯逮捕として法律上認められた行為です。逃走やその場でのデータ消去は、事態を悪化させます。
- 盗撮は、初犯で住所・職業が安定していれば、勾留されずに早期に釈放されることも多い類型です。直後に弁護士へ依頼することが、釈放の可能性を高めます。
- 釈放は事件の終わりではありません。その後の処分を左右する中心は、被害者との示談です。
はじめに
盗撮の最中、あるいは直後に、被害者や周囲の人から「今、撮りましたよね」と声をかけられ、腕をつかまれて駅員室や警備室に連れて行かれる。
警察の到着を待つ間、頭が真っ白になり、「逃げたい」「データを消したい」「その場で謝って済ませたい」という考えが次々に浮かぶ。
その場で発覚した盗撮では、この数十分の対応が、その後の流れを大きく左右します。
そして、動揺の中でとってしまいがちな行動の多くが、事態を悪化させる方向に働きます。
この記事では、盗撮がその場で発覚した直後の対応と、警察に引き渡された後の流れ、釈放と示談に向けてすべきことを解説します。
ご本人だけでなく、「家族が盗撮で捕まった」と連絡を受けたご家族にも役立つ内容です。
なお、盗撮がどの罪に当たるのか(撮影罪・迷惑防止条例違反など)は、次の記事で整理しています。
取り押さえは適法(私人による現行犯逮捕)
まず前提として、警察官でない一般人による取り押さえは、違法な拘束ではありません。
現行犯人は、誰でも逮捕することができます(刑事訴訟法213条)。
被害者本人、目撃者、駆けつけた駅員や警備員があなたを確保し、警察に引き渡すことは、私人による現行犯逮捕として法律上認められた行為です。
「一般人に捕まえる権限はないはずだ」と抗議して振り切ろうとする方がいますが、これは誤解であるうえ、極めて危険です。
振り切って逃げた場合でも、犯行から間もない状況で、持ち物などから犯人と認められる事情があれば、準現行犯(刑事訴訟法212条2項)として令状なしに逮捕されることがあります。
また、逃走の事実は「罪を免れようとした」という悪い事情として残り、その後の身柄拘束や処分の判断に不利に働きます。
もみ合いの中で相手を突き飛ばして怪我をさせれば、盗撮とは別の罪(傷害など)が加わることにもなりかねません。
声をかけられた時点で、逃げるという選択肢はすでにない。まずこれを押さえてください。
その場でやってはいけないこと
警察の到着を待つ間、次の行動は避けてください。
逃げる・暴れる
前記のとおりです。取り返しのつかない不利益を生みます。
その場でデータを消す
目の前で撮影データを削除する行為は、証拠隠滅を図ったと評価されるおそれがあり、身柄拘束の判断でも処分の判断でも不利に働きます。
しかも、削除されたデータは捜査機関の解析で復元されることが多く、消したこと自体が「都合の悪いものを隠そうとした」事情として残るだけの結果になりがちです。
虚偽の弁解を重ねる
「撮っていない」「間違って起動しただけだ」といったその場しのぎの説明は、後に機器の解析結果と食い違ったとき、あなたの供述全体の信用を失わせます。
言い分があること自体は構いませんが、嘘は別です。
その場で現金を渡して済ませようとする
「お金を払うので警察は勘弁してください」という申し出は、被害者によって受け止め方は異なりますが、被害者の処罰感情を強め、口止めと受け取られる可能性もあります。
この場面での金銭の申し出は、示談成立の可能性を下げることになりかねません。
適切に示談を進めたい場合は、後日、弁護士を通じて行う方が良いと考えられます。
動揺の中で何かをして挽回しようとするより、「余計なことをしない」ことがこの場面の最適解です。
スマートフォンの提出を求められたら
現場や警察署で、スマートフォンやカメラの提出を求められます。
現行犯逮捕の場面では、犯行に使われた機器は証拠として押収され得ます。
提出を実力で拒み続けることは現実的でなく、抵抗すること自体が心証を悪くします。
他方で、ロックの解除や取調べでの説明について迷いがある場合には、「弁護士と相談してから話します」と伝えることは正当な対応です。
取調べでは、黙秘権があり、話したくないことを話す義務はありません。
作成された供述調書は、内容を確認したうえで、訂正を求めることも、署名押印を拒むこともできます。
事実と異なる調書に署名してしまうと、後から覆すことは困難です。
認める部分と否定したい部分がある場合こそ、弁護士の助言を受けてから話す必要があります。
警察に引き渡された後の流れ(身柄の見通し)
現行犯逮捕された場合、その後は次の時間制限の中で手続きが進みます。
- 警察は、逮捕から48時間以内に事件を検察官に送致します。
- 検察官は、送致から24時間以内(逮捕から72時間以内)に、勾留を請求するかどうかを判断します。
- 勾留が認められると、原則10日間、延長されるとさらに最長10日間、身柄拘束が続きます(逮捕と合わせて最長23日間)。
もっとも、盗撮の場合、必ずここまで身柄拘束が続くわけではありません。
証拠となる機器がその場で確保されており、住所と職業が安定していて、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断されれば、勾留されずに2〜3日で釈放される、あるいはそもそも逮捕に至らず在宅事件として扱われることも多い類型です。
この判断を左右するのが、逮捕直後の対応です。
弁護士が早期に接見し、身元引受人(家族など)を整え、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを検察官・裁判官に働きかけることで、勾留を回避できる可能性が高まります。
逮捕された本人は外部と自由に連絡できないため、ご家族が連絡を受けた場合は、できるだけ早く弁護士に依頼することが最初にすべきことです。
当番弁護士(初回無料で駆けつける制度)を呼ぶこともできますが、継続的な対応を見据えるなら、早い段階で依頼先を決めることをおすすめします。
釈放されても事件は終わっていない
勾留されずに釈放された、あるいは逮捕されずに帰された。
ここで安心して何もしない方がいますが、釈放は事件の終わりではありません。
身柄が解かれただけで、在宅事件として捜査は続き、後日、警察・検察への出頭と取調べを経て、検察官が処分(不起訴・罰金・正式裁判)を決めます。
この処分を分ける重要な点が、被害者との示談です。
被害者に謝罪し、示談が成立して被害者が処罰を望まない意思を示している事案では、不起訴になる可能性が高くなります。
被害者の連絡先は、加害者本人には通常開示されず、弁護士が捜査機関を通じて連絡の意向を確認する形で進めます。
釈放された段階から示談に着手できるかどうかが、最終的な処分の分かれ目になります。
実際に、その場で取り押さえられた事案でも、弁護士の意見書等の活動により処分に至らずに終了した例や、反省と再発防止の取り組みを示して不起訴となった例は存在します。
結果を約束することはできませんが、「その場で見つかったのだから、もう何をしても無駄だ」ということは決してありません。
よくある質問(FAQ)
- 駅員に捕まえられましたが、一般人に逮捕の権限はあるのですか。
-
あります。
現行犯人は誰でも逮捕できると法律で定められており(刑事訴訟法213条)、被害者・目撃者・駅員・警備員による取り押さえと警察への引き渡しは適法です。
違法な拘束だと抗議して振り切る対応は、事態を悪化させるだけです。 - とっさに逃げてしまいました。もう出頭したほうがよいですか。
-
早めに弁護士に相談したうえで、出頭(自首を含む)を検討することをおすすめします。
防犯カメラや交通系ICの記録などから後日特定される可能性は十分にあり、逃げたまま過ごす期間は、突然の逮捕のリスクを抱え続ける期間でもあります。
捜査機関に発覚する前に自ら申告すれば、自首として有利に考慮され得るほか、逮捕されずに在宅で進む可能性も高まります。出頭の仕方や説明の内容は、事前に弁護士と整理してから臨むべきです。
- その場で謝って示談すれば、警察を呼ばれずに済みますか。
-
その場での解決を図ることはおすすめしません。
動揺した被害者に金銭を申し出る行為は、口止めと受け取られて処罰感情を強めることが多く、後日の適正な示談を難しくします。
警察への通報自体は被害者・施設側の判断であり、止めることはできません。謝罪の意思は、後日、弁護士を通じて適切な形で伝えるのが、結果として最も誠意が伝わる方法だと考えられます。
- 家族が盗撮で捕まったと連絡が来ました。何をすればよいですか。
-
最初にすべきことは、弁護士への依頼です。
逮捕から勾留判断までは72時間しかなく、この間に弁護士が接見して働きかけられるかどうかで、早期釈放の可能性が変わります。
あわせて、身元引受人となる準備(同居・監督の体制を整えること)をしてください。ご本人を責める連絡を試みるより、釈放と今後の対応の体制を整えることが、ご本人のためになります。
- 初犯です。逮捕されたら何日くらい戻れませんか。
-
事案によりますが、盗撮の初犯で、証拠が確保されており、住所・職業が安定している場合には、勾留されずに逮捕から2〜3日以内に釈放されることが多いといえます。
他方、余罪が多数ある場合や、証拠隠滅のおそれが疑われる事情がある場合には、勾留により最長23日間の身柄拘束があり得ます。早期の弁護活動が、この分かれ目に影響します。
まとめ
盗撮がその場で発覚した場合の対応を整理します。
- 被害者・目撃者・駅員による取り押さえは、私人による現行犯逮捕として適法。逃走は準現行犯逮捕・悪情状・別の罪のリスクを生むだけになる。
- その場でのデータ消去、虚偽の弁解、現金での解決の申し出はしない。「余計なことをしない」ことが最適解になる。
- 取調べでは黙秘権があり、調書の署名押印は拒める。迷ったら「弁護士と相談してから話す」でよい。
- 盗撮は、初犯・身元安定なら勾留されず早期釈放も多い類型。直後の弁護士依頼と身元引受の準備が釈放の可能性を高める。
- 釈放後も捜査は続く。処分を分ける中心は被害者との示談であり、釈放された段階からの着手が重要になる。
当事務所では、盗撮事件について、逮捕直後の対応から早期釈放に向けた活動、被害者との示談交渉、処分の見通しのご説明までお受けしています。
ご本人はもちろん、連絡を受けたご家族からのご相談も、お早めにお寄せください。
刑事弁護についてはこちらから
当事務所の弁護士へのご相談等はこちらから