【この記事の結論・要約】
- 性交渉を伴う風俗の利用は「不貞行為」に該当する: ソープランド等の利用は法的に不貞行為とされ、夫に慰謝料を請求できます。
- 金額の目安は通常の不倫よりやや低め: 離婚しない場合で50万〜100万円程度、離婚する場合で100万〜200万円程度が目安です。風俗の場合、これを下回ることも少なくありません。
- 請求には期限がある: 不貞行為と相手を知った時から原則3年で時効にかかります(ただし夫への請求は離婚後6か月まで時効が完成しません)。
- 証拠の確保が最優先: 問い詰める前に、クレジットカードの明細や予約履歴などの客観的な証拠を保全することが重要です。
※風俗通いを理由に離婚できるかどうか(法定離婚事由との関係、離婚手続きの進め方、財産分与の注意点等)については、以下のコラムで詳しく解説しています。

はじめに
「夫が隠れて風俗に通っていたことがわかった。これは浮気にならないの?」 「『プロを相手にした遊びだから不倫じゃない』という夫の言い分は正しいのか?」
夫の風俗通いが発覚した際、よく見られるのは、夫側の「これは単なるサービスであり、本気の浮気(不倫)ではない」という主張です。
しかし、裏切られた妻が受ける精神的苦痛は、相手がプロであろうと一般人であろうと変わりません。
法的には、夫婦はお互いに「貞操義務」を負っており、配偶者以外と性的関係を持つことは原則として不法行為にあたります。
夫の風俗利用によって「婚姻共同生活の平和」が乱されたのであれば、それは慰謝料請求の根拠となり得ます。
本稿では、風俗通いがなぜ「不貞行為」とされるのかという法的な解説から、慰謝料の具体的な相場、有利に進めるための証拠集め、そして請求時の注意点まで解説します。
風俗通いは法的に「不貞行為」に該当するのか
【結論】 性交渉を伴う風俗(ソープランド等)の利用は不貞行為に該当する可能性が高く、慰謝料請求の対象となります。性交類似行為(ヘルス等)についても、不貞行為に含まれると解するのが一般的ですが、店舗の業態やサービス内容によって評価が分かれることがあります。キャバクラ等の性交渉を伴わない風俗は原則として不貞行為に該当しませんが、過度な浪費による精神的苦痛を理由に慰謝料が認められる場合があります。
法律の世界では、一般的に使われる「浮気」という言葉ではなく、「不貞行為」という用語を用います。
まず、風俗利用がこの不貞行為に当たるのかを整理します。
不貞行為の定義と肉体関係の有無
裁判実務における「不貞行為」とは、原則として「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係(肉体関係)を持つこと」を指します(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。
ソープランドなどのように、本番行為(性交渉)を伴うことが前提のサービスを利用した場合、不貞行為に該当します。
夫が「金を払っているから」「相手に恋愛感情がないから」と主張しても、不貞の成立には関係ありません。
性交類似行為(ヘルス等)の扱い
一方で、ファッションヘルスやマッサージ店など、直接的な性交渉を伴わない「性交類似行為」の場合はどうでしょうか。
裁判実務上、不貞行為にいう「性的関係」には、性交だけでなく性交類似行為(手淫・口淫等)も含まれると解するのが一般的です。
実際に、デリバリーヘルスの女性従業員から口淫等の性的サービスを受けた夫の行為について、性器の挿入の有無は結論を左右しないとして不貞行為にあたると判断した裁判例があります(福岡地判平成27年12月22日)。
ただし、店舗の業態や実際に行われたサービスの内容によっては、不貞行為該当性の評価が分かれることもあります。
ご自身のケースがどう評価されるかは、個別の事情を踏まえた検討が必要です。
業種別の判断の目安
風俗と一口に言っても業態はさまざまであり、不貞行為にあたるかどうかの判断も異なります。
主な業種ごとの目安を整理すると、次のとおりです。
| 業種 | サービスの性質 | 不貞行為該当性 | 立証上の注意点 |
|---|---|---|---|
| ソープランド | 性交渉を伴うことが前提 | 該当する可能性が高い | 利用の事実を立証できれば性交渉が推認されやすい |
| デリヘル・ホテヘル | 性交類似行為が中心 | 該当すると解される場合が多い | 実際のサービス内容が争点になり得る |
| ファッションヘルス | 性交類似行為 | 該当すると解される場合が多い | 同上 |
| メンズエステ・性感エステ | 店舗により内容に幅がある | 内容次第で評価が分かれる | 「マッサージのみ」との反論が想定される |
| ピンサロ | 性交類似行為 | 評価が分かれ得る | 利用時間が短く、証拠が残りにくい |
| キャバクラ・ガールズバー | 接客・飲酒が中心 | 原則として該当しない | 過度な浪費等を別の観点から問題にできる場合がある |
重要なのは店名や業種の分類そのものではなく、実際に性交渉または性交類似行為があったかどうかです。
業態上は性的サービスを行わないとされる店舗でも、実際の行為内容によっては不貞行為と評価される余地があります。
貞操義務と婚姻共同生活の平和
夫婦は民法上、互いに貞操を守る義務があります。
不貞行為に対する慰謝料が認められる根拠は、「平穏な婚姻生活」という法的保護に値する利益を侵害したことにあります。
「遊びだからいいだろう」という理屈は、平穏な夫婦生活を送る権利を侵害していることから、法的には通用しません。
風俗通いで慰謝料請求ができる条件
慰謝料が認められるかどうかは、風俗利用の回数・期間、夫婦関係への影響(離婚・別居に至ったか)、婚姻関係が既に破綻していたかの3つの要素で大きく変わります。
すべての風俗利用で高額な慰謝料が認められるわけではありません。
法的に「損害」として認められるにはいくつかのポイントがあります。
回数と期間の影響
「たった1回の利用」でも不貞行為は成立しますが、慰謝料の金額には大きな差が出ます。
- 常習的な利用: 長期間にわたり何度も通っている場合、配偶者を裏切り続ける意思が強いとみなされ、高額化しやすいです。
- 1回きりの利用: 出来心で1回のみ利用した場合、慰謝料額が低額に抑えられる傾向があります。
1回だけの利用の場合
1回だけの利用でも、性交渉があれば理論上は不貞行為が成立します。
しかし実務上は、1回限りの利用にとどまる場合、慰謝料請求が認められない、または認められてもごく低額にとどまることがあります。
1回の利用だけでは婚姻関係への影響が限定的と評価されやすく、精神的苦痛に対する賠償として認められる金額も小さくなるためです。
もっとも、1回であっても、その利用が原因で性感染症に罹患した場合や、妊娠中の利用であった場合など、事情によっては相応の慰謝料が認められる余地があります。
「1回だから請求できない」と決めつけず、個別の事情を含めてご相談ください。
夫婦関係への影響(別居や離婚)
慰謝料の額を大きく左右するのは、「その結果として夫婦関係がどうなったか」です。
夫の風俗通いが原因で離婚に至った、あるいは修復不可能なレベルまで別居が続いている場合、侵害された利益が大きいと判断され、慰謝料額は高くなります。
逆に、同居を続け関係修復を目指す場合は、金額は低くなるのが一般的です。
「婚姻関係破綻後」の利用は対象外?
もし、夫が風俗を利用し始める前から、夫婦関係がすでに完全に破綻(長期間の別居や離婚協議中など)していた場合、守るべき「共同生活の平和」がすでに存在しないため、慰謝料請求が認められないことがあります。
しかし、単なる「性格の不一致」や「セックスレス」程度では破綻とはみなされません。
婚姻関係の破綻が認められるかどうかについては、以下のコラムもご確認ください。

一度許した後に再度風俗通いしていた場合
風俗通いが一度発覚し、夫が謝罪して「二度と行かない」と約束したにもかかわらず、再び通っていたというご相談は少なくありません。
法律上、配偶者の不貞を知りながらこれを許したこと(宥恕といいます)は、その時点の行為についての慰謝料請求を難しくする方向に働きます。
一方で、「もう行かない」という約束に反して再び風俗を利用した場合、その約束違反は行為の悪質性を高める事情として考慮される可能性もあります。
実際に、一度は妻が許したものの夫が約束に反してソープランド通いを続けた事案で、裁判所がソープランドの利用を不法行為と認め、慰謝料の支払いを命じた裁判例があります(東京地判平成17年6月24日)。
最初に許した際に、約束の内容を念書などの書面にしていた場合、再度風俗通いが発覚した際の重要な証拠になります。
風俗通いによる慰謝料の相場と金額を左右する要素
具体的な金額感について、一般的な不倫と比較しながら解説します。
状況別の慰謝料相場
- 離婚も別居もしない場合: 50万円〜100万円程度
- 不貞行為が原因で別居した場合: 100万円〜150万円程度
- 不貞行為が原因で離婚した場合: 150万円〜200万円程度
慰謝料の相場まとめ
| 状況 | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 離婚も別居もしない場合 | 50万〜100万円程度 |
| 不貞行為が原因で別居した場合 | 100万〜150万円程度 |
| 不貞行為が原因で離婚した場合 | 100万〜200万円程度 |
※上記は一般的な不貞行為(特定の相手との不倫)を前提とした目安です。風俗通いの場合はこれを下回ることが多く、200万円を超える金額が認められるのは、長期間の常習的な利用や性病の感染など、特に悪質な事情がある場合に限られます。
風俗の慰謝料が通常の不倫より低くなりやすい理由
風俗通いを理由とする慰謝料が、特定の相手との不倫より低く評価されやすいのには、次の3つの構造的な理由があります。
1. 特定の相手との継続的な関係ではないこと
慰謝料の金額は「婚姻共同生活の平和がどれだけ深く侵害されたか」で決まります。
特定の女性と感情的な結びつきを持って関係を続ける不倫と比べ、風俗の利用は婚姻関係そのものを奪う危険が相対的に低いと評価される傾向があります。
2. 請求できる相手が実質的に夫だけであること
通常の不倫では、夫と不倫相手の両方に請求でき、双方から回収する道があります。
これに対し風俗の場合、後述のとおり相手女性への請求は原則として難しく、回収ルートが夫1人に限られる可能性が高いです。
夫の資力が乏しければ、認められる金額にかかわらず現実の回収額は抑えられます。
3. 「性交渉があった」ことの立証に距離があること
クレジットカードの明細や会員証は「店を利用した」ことの証拠であって、「性交渉をした」ことの直接の証拠ではありません。
夫が行為の内容を否認した場合、立証しきれない部分が金額に反映されることがあります。
逆に言えば、この3点をどう補うか(証拠の質・回収方法の確保)が、風俗の慰謝料請求で結果を左右するポイントです。
増額要因となる悪質なケース
相場を超える金額を請求できるのは、以下のような事情がある場合です。
- 多額の散財: 生活費を削ってまで風俗につぎ込んでいた場合。
- 妊娠・育児中の裏切り: 妻が妊娠中や乳幼児の育児で心身ともに大変な時期に利用していた場合、精神的苦痛がより甚大であるとみなされます。
- 性病の感染: 夫が店で病気をもらい、それを妻にうつした場合は、身体的健康を損なう実害があるため、増額の有力な根拠になります。
- 嘘と隠蔽: 発覚後も「行っていない」と嘘を重ねたり、証拠を隠滅したりする行為は反省がないとみなされます。
減額されるケース
- 風俗通いは認められるものの、性行為があったことまで認定できない場合。
- 夫がすぐに事実を認め、心から謝罪し、示談金を一括で支払う意向がある場合。
- 妻側にも婚姻生活における一定の落ち度(暴力や過度な浪費など)が認められる場合。
参考となる裁判例
風俗の利用が問題となった裁判例には、次のようなものがあります。
| 裁判例 | 事案の概要 | 結論 |
|---|---|---|
| 東京地判平成17年6月24日 | 夫が「二度と行かない」との約束に反してソープランド通いを続け、妻が離婚と慰謝料を請求 | ソープランドの利用を不法行為と認め、慰謝料100万円(妻側の事情により減額) |
| 福岡地判平成27年12月22日 | 夫がデリバリーヘルスの女性従業員から口淫等の性的サービスを受けた | 性器の挿入の有無は結論を左右しないとして不貞行為と判断 |
| 東京地判平成22年2月5日 | 夫の暴力、風俗通いによる性病感染、不倫等を理由とする損害賠償請求 | 慰謝料250万円(※風俗通い単独ではなく、暴力等を含めた総合的な判断) |
※3件目のように、風俗通いに加えて暴力や別の不倫などの事情が重なる場合、全体として高額の慰謝料が認められることがあります。
慰謝料請求には期限がある(消滅時効)
【結論】 夫への不貞慰謝料の請求権は、不貞行為の事実を知った時から3年で時効にかかります(民法724条1号)。ただし、婚姻中は夫に対する時効は完成せず、離婚した場合も離婚から6か月を経過するまでは時効が完成しません(民法159条)。「昔のことだから」と諦める前に、請求できる状態かどうかを確認する価値があります。
不貞慰謝料の時効は「知った時から3年」
不貞行為に基づく慰謝料請求権は、損害および加害者を知った時から3年間行使しないと、時効によって消滅します(民法724条1号)。
風俗通いの場合、通常は「夫の風俗利用の事実を知った時」から3年と考えることになります。
なお、不貞行為の事実に長年気づかなかった場合でも、行為の時から20年が経過すると請求できなくなります(民法724条2号)。
夫婦の間では時効は完成しない(民法159条)
見落とされがちですが、夫婦間の権利については、婚姻の解消(離婚)から6か月を経過するまで、時効は完成しません(民法159条)。
つまり、婚姻を続けている間は、風俗通いを知ってから3年以上経っていても、夫に対する慰謝料請求権が時効で消えることはありません。
「発覚したのは何年も前だが、離婚を機に清算したい」という場合でも、請求できる可能性があります。
離婚に伴う慰謝料の時効は「離婚から3年」
離婚そのものによる精神的苦痛に対する慰謝料(離婚慰謝料)は、離婚が成立した時から3年で時効にかかります。
時効が迫っている場合の対応
時効の完成が近い場合でも、内容証明郵便による催告や、調停・訴訟の申立てによって時効の完成を止める(猶予する)ことができます。
期限に不安がある場合は、早めに弁護士にご相談ください。
「証拠」の集め方
裁判や交渉を有利に進めるためには、客観的な証拠が不可欠です。
有効な証拠としては、クレジットカードの利用明細、銀行口座の出金記録、スマートフォンの履歴(予約確認メール・位置情報)、会員証・レシート、本人の自白(録音・念書)が挙げられます。
ただし、夫のスマートフォンを無断でロック解除する行為は不正アクセス禁止法に抵触するリスクがあるため、証拠収集は弁護士に相談してから行うことをお勧めします。
「夫が認めたから大丈夫」と安心するのは危険です。
交渉が難航した際や裁判になった際、言い逃れを許さない客観的な証拠が必要です。
デジタル・金融関係の証拠
- クレジットカードの明細: 風俗店は、決済代行会社を通して別の名前で請求が来ることが多いです。見慣れない会社名や、特定の繁華街での決済履歴を記録しましょう。
- スマートフォンの履歴: 店舗の予約フォームや公式LINEとのやり取りは有力な証拠になります。ただし、夫のスマートフォンを無断で操作して取得することには後述のリスクがあります。なお、夫の車や持ち物に無断でGPS機器を取り付ける行為は、ストーカー規制法の規制対象となり得るため、行わないでください。
- 銀行口座の出金履歴: 普段の生活費とは別に、数万円単位の現金が定期的に引き出されている場合、利用の補強証拠になります。
物理的な証拠
- 会員証・ポイントカード:所持品や車内から発見されることがあります。発見した場合は写真に撮って記録しておきましょう。
- 領収書・サービスチケット: ゴミ箱や車内のポケットを確認してください。
- 本人の自白(録音・念書): 問い詰める際は必ずレコーダーで録音してください。また、その場で事実を認めさせた場合、書面(念書)にサインさせるのが最も確実です。
『利用した』ことと『性交渉があった』ことは別の問題
証拠を集めるうえで理解しておくべき重要な点があります。
それは、クレジットカードの明細や会員証は「店を利用した」ことの証拠にはなっても、「性交渉をした」ことの直接の証拠ではないということです。
夫が「店には行ったが、マッサージを受けただけだ」などと行為の内容を否認した場合、利用の事実だけでは不貞行為の立証として不十分と判断されるおそれがあります。
ソープランドのように性交渉を伴うことが広く知られている業態であれば、利用の事実から性交渉が推認されやすい一方、業態上サービス内容に幅がある店舗では、この点が争いになりがちです。
そのため実務上は、夫自身に事実を認めさせ、それを録音や書面(念書)の形で残すことが決定的に重要になります。
問い詰める際は必ず記録を取り、認めた内容(店名・時期・行為の内容)を具体的に残してください。
証拠集めの際の注意点
無理にスマートフォンのロックを解除したり、夫の許可なくPCのメールを転送したりする行為は、「不正アクセス禁止法」やプライバシー侵害に抵触するリスクがあります。
どこまでの調査が許されるかは、事前に弁護士に確認することをお勧めします。
風俗嬢(相手女性)への請求は可能か
通常の不倫であれば、夫と相手女性の両方に請求できます。
しかし、風俗の場合は事情が異なります。
原則として風俗嬢への請求は困難
不法行為が成立するには、相手に「故意(既婚者と知っていた)」または「過失(既婚者だと気づくべきだった)」が必要です。
相手女性に慰謝料の支払義務が生じるのは、原則として、女性が「夫は既婚者である」と知っていたか(故意)、注意すれば気づけたのに気づかなかった(過失)場合に限られます。
そして、この故意・過失は請求する側が立証しなければなりません。
風俗店では、客が既婚者かどうかを確認する仕組みは通常予定されておらず、従業員が客の婚姻状況を知る手がかりもほとんどありません。
このため、女性が既婚者と知っていたこと、または知り得たことを立証するのは実際上困難であり、相手女性個人への請求は認められにくいのが実情です。
そのため、相手女性個人に慰謝料を求めるのは困難な場合が多いです。
請求が認められる例外的なケース
- 店外で個人的な関係(アフターの域を超えた交際)を持っていた場合。
- 相手女性が夫の家庭事情を詳しく知っており、あえて家庭を壊すような言動を繰り返していた場合。
これらはすでに「風俗利用」ではなく「一般的な不倫」として扱われます。
風俗慰謝料請求を有利に進めるための交渉術
慰謝料は、金額の合意ができても実際に支払われなければ意味がありません。
ここでは、合意した金額を確実に回収するためのポイントを整理します。
請求の目的を明確にする
「離婚したいのか」「離婚せずに二度と行かないと約束させたいのか」によって戦略は変わります。
- 離婚する場合: 財産分与や養育費とセットで、最大限の慰謝料を請求します。
- 修復する場合: 一定の慰謝料を支払わせることで責任を取らせます。また、同時に、再発時の取り決め(再発した場合は離婚に応じる、一定額を支払う等)を合意書に盛り込むことも検討します。ただし、違約金の定めはその金額や内容によって有効性が争われる可能性があるため、条項の作り方は弁護士にご相談ください。
回答書や通知書は「書面」で
口約束は後で「言った言わない」のトラブルになります。
弁護士を通じて内容証明郵便を送ることで、こちらの本気度を伝え、法的なプレッシャーを与えることができます。
経済的な裏付けを確認
夫に支払能力がない場合、高額な合意をしても絵に描いた餅です。
夫の給与、預貯金、退職金の有無などを把握し、現実的に回収可能なプラン(一括か分割か)を提示させましょう。
合意は必ず書面に。分割払いなら公正証書を
夫が支払いに合意した場合、その内容は必ず書面(合意書・示談書)にしてください。
口頭の約束は、後になって「そんな約束はしていない」と争われるおそれがあります。
特に分割払いとする場合は、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことを強くお勧めします。
この文言を入れた公正証書があれば、支払いが滞ったときに、裁判を経ずに給与や預貯金の差押え(強制執行)を申し立てることができます。
合意書に盛り込むべき条項(支払額・支払方法・再発時の取り決め・清算条項など)の設計は、将来のトラブルを防ぐうえで専門的な判断を要する部分です。
やってはいけないNG対応
怒りに任せた行動は、あなたの正当な権利を台無しにする恐れがあります。
- 夫の会社に連絡する・乗り込む: 名誉毀損や業務妨害に問われるリスクがあります。また、夫が解雇されれば慰謝料の支払い原資がなくなってしまいます。
- SNSで暴露する: 今の時代、ネット上での晒し行為は厳しく罰せられます。逆に夫側から多額の損害賠償を請求される事態になりかねません。
- 「風俗嬢に会わせろ」と店で騒ぐ: 建造物侵入や不退去罪になる恐れがあります。
- 証拠を確保する前に問い詰める: 夫を問い詰めた時点で、クレジットカードの利用履歴の確認や、会員証・レシートの処分、店舗とのやり取りの削除が行われるおそれがあります。証拠の保全は、追及より先が原則です。
- 夫のスマートフォンのロックを無断で解除する: 不正アクセス禁止法違反やプライバシー侵害にあたるおそれがあり、収集した証拠が裁判で使えないリスクもあります。どこまでの調査が許されるかは、事前に弁護士にご確認ください。
弁護士ができること
風俗通いのトラブルは、身内だけで解決しようとすると感情が爆発し、長期化しがちです。
- 冷静な第三者としての交渉: 弁護士が代理人となることで、夫と直接話すストレスから解放されます。
- 法的な証拠の精査: 手元にある証拠が裁判で通用するかどうか、足りない場合はどう集めるべきかをプロの視点でアドバイスします。
- 示談書の作成: 再発防止条項や清算条項など、将来のトラブルを未然に防ぐ書面を作成します。
なお、当事務所では慰謝料を請求する側のご相談だけでなく、請求された側のご依頼もお受けしています。
請求を受けた側がどのような反論をしてくるか(婚姻関係の破綻、行為内容の否認、金額の相当性など)を踏まえたうえで、先回りした主張と証拠の準備を行うことが可能です。
よくある質問
- 夫の風俗通いで慰謝料請求できますか?
-
性交渉を伴う風俗(ソープランド等)の利用は不貞行為に該当する可能性が高く、慰謝料請求の対象となります。
性交渉を伴わない風俗(キャバクラ等)でも、過度な浪費や信頼関係の破壊による精神的苦痛を理由に慰謝料が認められる場合があります。 - 風俗通いの慰謝料相場はいくらですか?
-
一般的な不貞行為の慰謝料は、離婚しない場合で50万〜150万円程度、離婚する場合で100万〜200万円程度が目安です。
風俗通いの場合もこの相場がベースになりますが、特定の相手との不倫と比べるとやや低額になる傾向があるとの指摘もあります。
一方、多額の浪費や妊娠中の利用、性病感染などの事情がある場合は増額されることもあり、個別の事情によって大きく変動します。 - 離婚しなくても慰謝料を請求できますか?
-
離婚しなくても慰謝料は請求できます。
ただし、離婚に至った場合と比べると、精神的苦痛の程度が相対的に低いと評価されるため、金額は低くなる傾向があります。 - 風俗嬢(相手女性)にも慰謝料を請求できますか?
-
原則として困難です。
風俗嬢は業務として不特定多数の客を相手にしており、客が既婚者であるかを確認する義務まではないとされるためです。
ただし、店外で個人的な交際関係に発展していた場合は、一般的な不倫として請求が認められる可能性があります。 - 夫の風俗通いの証拠はどうやって集めればいいですか?
-
有効な証拠としては、クレジットカードの利用明細、銀行口座の出金記録、スマートフォンの予約確認メールや位置情報の履歴、会員証やレシート、本人の自白の録音や念書が挙げられます。
ただし、夫のスマートフォンを無断でロック解除する行為は不正アクセス禁止法に抵触するリスクがあるため、証拠収集は弁護士に相談してから行うことをお勧めします。 - 風俗通いで慰謝料が増額されるのはどんなケースですか?
-
多額の生活費を風俗につぎ込んでいた場合、妻が妊娠中や育児中に利用していた場合、風俗店で感染した性病を妻にうつした場合、発覚後も嘘を重ね証拠を隠滅しようとした場合などが増額要因となります。
- 夫の風俗通いを知ったのは5年前ですが、今から慰謝料を請求できますか?
-
婚姻を続けているのであれば、請求できる可能性があります。
不貞慰謝料の時効は事実を知った時から3年ですが、夫婦間の権利については、離婚から6か月を経過するまで時効が完成しないためです(民法159条)。
ただし、離婚後に請求する場合は期限の計算が変わるほか、時間の経過により証拠の確保が難しくなる問題もあります。時効の詳しい仕組みは本コラム内で解説しています。
- 夫は「店に行ったのは認めるが、本番行為はしていない」と言っています。慰謝料は請求できますか?
-
店舗の業態と実際の行為内容によります。
ソープランドのように性交渉を伴うことが前提の業態であれば、利用の事実から性交渉が推認されやすい一方、サービス内容に幅のある店舗では、行為の内容が争点になります。
なお、性交類似行為も不貞行為に含まれると解するのが一般的であるため、「本番行為がない」というだけで請求できなくなるわけではありません。どのような証拠で何を立証すべきかは、本コラム内で詳しく解説しています。
おわりに
夫の風俗通いは、単なる「性欲の発散」や「遊び」では済まず、慰謝料請求の対象になる可能性があります。
夫がいくら「浮気じゃない」と強弁しても、あなたが受けた痛みは法的に保護されるべきものです。
一人で悩まず、まずは状況を整理し、自分にとっての最善の解決策が何なのかを考えてみてください。
これからの人生を前向きに再スタートさせるために、法的な手段を正しく使い、毅然とした態度で臨むことが大切です。
風俗通いを理由に離婚すること自体の可否や、協議・調停・裁判の各段階の手続き、財産分与における浪費の取り扱いについては、夫の風俗通いで離婚できる?をあわせてご確認ください。
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